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(208) 44 精神科臨床 │Vol.2 No.4

Explanation

多施設共同 RCTを読む

 今回は2014年に『JAMA Psychiatry』誌上に掲載された「せん妄に対するラメルテオンの予防効果:無作為化プラセボ対照試験」1)を取り上げます。 本研究はわが国の大学病院4施設と総合病院1施設が参加した多施設共同,評価者盲検,ランダム化比較試験

(RCT)であり,メラトニン作動薬ラメルテオン(本邦承認効能・効果外)がせん妄に及ぼす予防的効果をプラセボと 比較検討したものです。身体疾患が重症でせん妄のリスク があり,かつ薬の内服が可能な67例の高齢入院患者をラメルテオン群33例とプラセボ群34例に割付け,7日間にわたり毎晩21時に配薬・内服した結果,ラメルテオンはせん妄の発生率低下と関連し(ラメルテオン群3% vs. プラセボ群32%;p=0.003),リスク因子を調整してもラメルテオン群でせん妄発生率の有意な低下を認めたことが報告されています[p=0.01;オッズ比0.07(95%CI 0.008-0.54)]。 本研究はせん妄予防におけるラメルテオンの有用性を明らかにするとともに,わが国発の医療者主導多施設共同RCTの可能性をも示唆するものです。その試験デザインに注目し,長所と限界に言及しながら本論文を読んでいきたいと思います。 本論文を読むにあたって知っておきたいのは前提となる研究資金(Funding/Support)です。本研究は文部科学省・日本学術振興会の科学研究費補助金にて計画・実施されており,コスト面の制約があるなかで創意工夫が行われ

たことが窺えます。その1例として,本研究は多施設共同RCTの割付法として近年よく用いられるEDC(Electronic Data Capture)システムではなく,封筒法を採用しています。封をされた不透明で連続番号が振られた封筒によって実薬・プラセボへの割付けを隠蔽化する手法で,低コストでのランダム割付けが可能となります。 また,せん妄は精神科リエゾンにおいて最も重要な臨床的課題の1つです。RCTが難しい領域であるにもかかわらず,本研究は救急を介してICU/急性期病棟へ新規入院した他科の重症例から同意を得るという手順を踏んでおり,あえて一般臨床の現場で課題解決に臨もうとする熱意が感じられます。こうしたいわば「手づくり」の研究が精神科領域のコアジャーナルに掲載されたことは,臨床的にも大きな意味をもつはずです。

質の高い試験デザインとその工夫

 本研究は世界的な動きとなっている臨床試験登録制度に則り,事前にUMIN Clinical Trials Registry(UMIN-CTR)に登録されています。盲検化は二重盲検ではなく,評価者および投薬を担当しない看護師,理学療法士を盲検化するものでした。本来は研究参加者や治療者・評価者すべての盲検化が理想ではあるものの,これでは試験参加率が低くなり実臨床から乖離するためこのようにした,と著者らは述べています。またプラセボ薬の乳糖が外見上ラメルテオンと類似していない点は本研究の短所と

日本発のエビデンスを読む ─多施設共同 RCT ─Hatta K, et al. JAMA Psychiatry. 2014;71:397-403.

京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康増進・行動学分野准教授 渡辺 範雄

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