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229 229 公募研究:2006 ~ 2009 年度 疾患関連変異探索のための遺伝統計学的解析法の開発とデング出 血熱関連解析への応用 ●大橋 順 筑波大学大学院人間総合科学研究科生命システム医学専攻 <研究の目的と進め方> 数十万種類の SNP マーカーを用いてゲノムワイド関連解析を 行うことができるようになり、ありふれた疾患の感受性と関連す る SNP が多数報告されている。ゲノムワイド関連解析で解析さ れる SNP 数は膨大であり、偽陽性も含めて多数の SNP が極めて 小さなP値を示すため、二次解析(またはreplication study)によっ て偽陽性を減らし、真に疾患感受性と関連する多型を同定する統 計学的手法の開発が急務である。 そこで、本研究では、ゲノムワイド関連研究(候補遺伝子アプ ローチに基づく関連研究含む)において、効果的・効率的に真の 感受性変異を絞込むための、遺伝統計学的解析手法の開発を行 う。また、関連解析研究におけるサンプルサイズの設定を含めた、 最適な研究デザインを提案していく。 さらに、開発した統計学的手法の有効性・妥当性を評価すべく、 デング出血熱発症のヒト側の原因因子の解明も目的として、タイ 人集団を対象に、デング出血熱関連遺伝子変異の探索を行う。全 世界で、年間 2000 万人がデングウィルス感染し、24000 人が死 亡している。近年、地球温暖化の影響で、デングウィルスを媒介 するネッタイシマカやヒトスジシマカの生息域が拡大しており、 最近(平成 19 年 10 月)も台湾で集団感染が発生している。デン グ出血熱の死亡率は5%(適切な治療を受けなければ40~ 50%)程度にも達するが、その発症機序および原因(ウィルス側 およびヒト側の因子を含めて)は未だ不明であり、治療としては 対症治療しかない。血漿漏出と出血傾向がデング出血熱の主症状 であるため、ヒトの過剰な免疫応答がその原因の一つと考えられ る。過剰な免疫応答がヒト側の遺伝因子によって規定されるとす ると、デング出血熱と関連する遺伝子多型を同定すれば、原因と なる遺伝子が明らかとなるだけではなく、病態進行の予測や、そ の遺伝子産物をターゲットにした有効な治療法の開発につながる と期待される。 <研究開始時の研究計画> (1) 遺伝統計学的手法の開発 真の感受性変異の同定(候補領域の絞り込みを含む)を目指し、 ケース・コントロール関連研究に特化した、遺伝統計学的手法の 開発を行う。 (2) デング出血熱関連多型の探索 デング出血熱関連変異解析は、タイ国公衆衛生省医科学部門 Sawanpanyalert 博士およびタイ国マヒドン大学熱帯医学研究所の Patarapotikul 博士を共同研究者とする海外共同研究である。デン グ出血熱研究は、タイ側で既に 2000 名以上のデング熱患者から 血液を採取し、1000 名以上のデング熱患者からのゲノム DNA の 抽出は完了している。 遺伝子解析に先立ち、患者の年齢、感染したデングウイルスの 型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)、2度目以降の感染か否か、 患者の居住地域などの要因が、デング出血熱と関連するかどうか を検討する。 各種サイトカイン(IL3、IL4、IL6、IL8、IL13)、トール様受 容 体 遺 伝 子(TLR) フ ァ ミ リ ー(TLR2、TLR3、TLR4、 TLR7、TLR8、TLR9)、HLA ク ラ ス I(HLA-A、HLA-B、 HLA-C)を、候補遺伝子として解析を行う。また、デングウィル ス感染との関連が疑われるヒト側分子が報告されれば、そのよう な遺伝子も解析対象とする。HLA 以外については、遺伝子全体 がカバーできるように、HapMap 東アジア集団の SNP 遺伝子型 情報をもとに、TagSNP の選定を行う。SNP タイピングについ ては、TaqMan アッセイのほかに、DigiTag2 法を用い、研究コス トの軽減を図る。 <研究期間の成果> (1) 遺伝統計学的手法の開発 (i) 解析対象ゲノム領域の連鎖不平衡の程度を、SNPマーカーの タイピング結果、またはHapMapデータベースより推定し、その 結果に基づいて疾患感受性変異が存在するゲノム領域を最尤法に よって予測する遺伝統計学的手法を開発した。 候補領域中の SNP マーカー(高密度に配置していない)につ いて、全ての組み合わせのペアワイズ SNP 間での連鎖不平衡の 程度 r 2 と物理距離 d の関係を表す関数(r 2 は d の減少関数)を推 定する。当該領域上のある地点 x に、仮想感受性変異 A が存在す ると仮定する。i 番目の SNP マーカーにおける関連アリル B(case 群での頻度が control 群よりも高い方のアリル)の頻度を q(control 集団から推定する)、そのアリルの浸透率をg2、g1、g0とすると、 そのマーカーでの尤度 Li は と記述することができる。また、浸透率g2、g1、g0については、 A の頻度、A の浸透率、A と B との連鎖不平衡の程度(r 2 )を用 いて記述することができる。全マーカー T 個に対して尤度 Li を 計算し、それらを掛け合わせた値の対数をとった対数尤度 を最大にするような、Aの頻度、Aの浸透率、地点 xを求める。 コンピュータシミュレーションによる検証の結果、候補領域中 の連鎖不平衡の程度がほぼ一定であれば、適切な範囲で A の頻度 と A の浸透率を探索的に探すことで、地点 x を精度よく推定でき ることが確認された。 (ii) SNP マーカーを用いた疾患関連解析では、同一ハプロタイ プブロック内の複数の SNP が有意な関連を示すことがある。真 の感受性変異が最も強い関連(最も低い P 値)を示すとは限らな いため、機能解析を行う SNP を選定する際には注意を要する。 そこで、真の感受性変異を確率的に評価するため、タイピング 結果(ケースとコントロールの遺伝子型データ)に対し、ブート ストラップ法を用いて各 SNP に対して P 値を計算し(ケースを ケース群のみから、コントロールをコントロール群のみから、重 複を許してリサンプルリングする)、最も小さな P 値を出した回
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公募研究:2006 ~ 2009 年度

疾患関連変異探索のための遺伝統計学的解析法の開発とデング出血熱関連解析への応用●大橋 順 筑波大学大学院人間総合科学研究科生命システム医学専攻

<研究の目的と進め方>数十万種類の SNP マーカーを用いてゲノムワイド関連解析を

行うことができるようになり、ありふれた疾患の感受性と関連する SNP が多数報告されている。ゲノムワイド関連解析で解析される SNP 数は膨大であり、偽陽性も含めて多数の SNP が極めて小さな P 値を示すため、二次解析(または replication study)によって偽陽性を減らし、真に疾患感受性と関連する多型を同定する統計学的手法の開発が急務である。

そこで、本研究では、ゲノムワイド関連研究(候補遺伝子アプローチに基づく関連研究含む)において、効果的・効率的に真の感受性変異を絞込むための、遺伝統計学的解析手法の開発を行う。また、関連解析研究におけるサンプルサイズの設定を含めた、最適な研究デザインを提案していく。

さらに、開発した統計学的手法の有効性・妥当性を評価すべく、デング出血熱発症のヒト側の原因因子の解明も目的として、タイ人集団を対象に、デング出血熱関連遺伝子変異の探索を行う。全世界で、年間 2000 万人がデングウィルス感染し、24000 人が死亡している。近年、地球温暖化の影響で、デングウィルスを媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカの生息域が拡大しており、最近(平成 19 年 10 月)も台湾で集団感染が発生している。デング出血熱の死亡率は 5%(適切な治療を受けなければ 40 ~50%)程度にも達するが、その発症機序および原因(ウィルス側およびヒト側の因子を含めて)は未だ不明であり、治療としては対症治療しかない。血漿漏出と出血傾向がデング出血熱の主症状であるため、ヒトの過剰な免疫応答がその原因の一つと考えられる。過剰な免疫応答がヒト側の遺伝因子によって規定されるとすると、デング出血熱と関連する遺伝子多型を同定すれば、原因となる遺伝子が明らかとなるだけではなく、病態進行の予測や、その遺伝子産物をターゲットにした有効な治療法の開発につながると期待される。

<研究開始時の研究計画>(1) 遺伝統計学的手法の開発

真の感受性変異の同定(候補領域の絞り込みを含む)を目指し、ケース・コントロール関連研究に特化した、遺伝統計学的手法の開発を行う。(2) デング出血熱関連多型の探索

デング出血熱関連変異解析は、タイ国公衆衛生省医科学部門Sawanpanyalert 博士およびタイ国マヒドン大学熱帯医学研究所のPatarapotikul 博士を共同研究者とする海外共同研究である。デング出血熱研究は、タイ側で既に 2000 名以上のデング熱患者から血液を採取し、1000 名以上のデング熱患者からのゲノム DNA の抽出は完了している。

遺伝子解析に先立ち、患者の年齢、感染したデングウイルスの型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)、2 度目以降の感染か否か、患者の居住地域などの要因が、デング出血熱と関連するかどうかを検討する。

各種サイトカイン(IL3、IL4、IL6、IL8、IL13)、トール様受容 体 遺 伝 子(TLR) フ ァ ミ リ ー(TLR2、TLR3、TLR4、

TLR7、TLR8、TLR9)、HLA ク ラ ス I(HLA-A、HLA-B、HLA-C)を、候補遺伝子として解析を行う。また、デングウィルス感染との関連が疑われるヒト側分子が報告されれば、そのような遺伝子も解析対象とする。HLA 以外については、遺伝子全体がカバーできるように、HapMap 東アジア集団の SNP 遺伝子型情報をもとに、TagSNP の選定を行う。SNP タイピングについては、TaqMan アッセイのほかに、DigiTag2 法を用い、研究コストの軽減を図る。

<研究期間の成果>(1) 遺伝統計学的手法の開発(i) 解析対象ゲノム領域の連鎖不平衡の程度を、SNPマーカーのタイピング結果、またはHapMapデータベースより推定し、その結果に基づいて疾患感受性変異が存在するゲノム領域を最尤法によって予測する遺伝統計学的手法を開発した。

候補領域中の SNP マーカー(高密度に配置していない)について、全ての組み合わせのペアワイズ SNP 間での連鎖不平衡の程度 r2 と物理距離 d の関係を表す関数(r2 は d の減少関数)を推定する。当該領域上のある地点 x に、仮想感受性変異 A が存在すると仮定する。i 番目の SNP マーカーにおける関連アリル B(case群での頻度がcontrol群よりも高い方のアリル)の頻度をq(control集団から推定する)、そのアリルの浸透率を g2、g1、g0 とすると、そのマーカーでの尤度 Li は

と記述することができる。また、浸透率 g2、g1、g0 については、A の頻度、A の浸透率、A と B との連鎖不平衡の程度(r2)を用いて記述することができる。全マーカー T 個に対して尤度 Li を計算し、それらを掛け合わせた値の対数をとった対数尤度

を最大にするような、A の頻度、A の浸透率、地点 x を求める。コンピュータシミュレーションによる検証の結果、候補領域中

の連鎖不平衡の程度がほぼ一定であれば、適切な範囲で A の頻度と A の浸透率を探索的に探すことで、地点 x を精度よく推定できることが確認された。

(ii) SNP マーカーを用いた疾患関連解析では、同一ハプロタイプブロック内の複数の SNP が有意な関連を示すことがある。真の感受性変異が最も強い関連(最も低い P 値)を示すとは限らないため、機能解析を行う SNP を選定する際には注意を要する。

そこで、真の感受性変異を確率的に評価するため、タイピング結果(ケースとコントロールの遺伝子型データ)に対し、ブートストラップ法を用いて各 SNP に対して P 値を計算し(ケースをケース群のみから、コントロールをコントロール群のみから、重複を許してリサンプルリングする)、最も小さな P 値を出した回

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数を SNP 間で比較するアルゴリズムの開発を行った。これにより、最小の関連 P 値を示した SNP が、2 番目や 3 番目に小さいP 値を示した SNP よりも、どの程度疾患と関連する可能性が高いかを、統計的に評価できるようになった。(iii) HapMapプロジェクトにより、日本人集団(JPT)のSNPハプロタイプ構造は詳細に調べられている。そこで、HapMapデータベースのハプロタイプ頻度情報を利用すれば、タイピングしたSNPの頻度情報をもとに、タイピングしていないSNPの頻度を推測できる可能性がある。

そこで、ゲノムワイド関連解析または候補遺伝子アプローチによって、ある SNP マーカーにおいて有意な関連が検出された場合に、その SNP マーカーを含む 2SNP ハプロタイプ頻度情報をHapMap データベースより取得し、実際にタイピングした SNPの情報と HapMap データベースの情報とを組み合わせることで、実際にはタイピングしていない SNP での関連検定の結果(関連P 値)を予測するアルゴリズムを開発した。

コンピュータシミュレーションによる検証の結果、開発した手法を用いると、偽陽性の確率を極端に上昇させることなく、未タイピング SNP の関連 P 値を予測できることが確認された。(iv) 系統樹理論に基づき、ハプロタイプブロック中に存在するハプロタイプの中から、系統発生的に感受性変異を共有しうるハプロタイプの組合せを検出し、それらのハプロタイプの組合せについてのみ検定を行うアルゴリズムを開発した。下図を例にすると、ハプロタイプH1とH2が共通変異を有しているが、それがタイピングされていない状況を考える。ハプロタイプH1とH2の組合せ(とそれ以外の組合せをケースとコントロール間で比較)に対して検定を行えば、H1とH2とが疾患と共有する変異を有する可能性を検討できる。また、H1とH4のような、進化的に離れている組合せは検定しない。このように検定する組合せを絞ることで、起こり得ない組合せから生じる偽陽性を抑え、検定数を絞ることで無用なP値の補正を避けることもできる。

(v) アミノ酸置換を伴う派生アリルの頻度スペクトラムを、集団遺伝学的理論計算によりもとめた。有害変異の対立遺伝子頻度は中立なものより低いが、疾患と関連している可能性は高いので、得られた頻度スペクトラム(下図)をもとに、有害変異のスクリーニングに必要な患者検体数、関連解析のサンプル数などを算出するアルゴリズムを開発した。

(vi) コピー数多型(copy number variation)とは、約 1kb 以上の大きさをもつゲノム領域のコピー数が個人によって異なる多型のことをいい、ヒトゲノムの 10% 以上にあたる領域でコピー数多型が観察されている。その中には、多型領域が遺伝子全体を含んでいるものもあり、FCGR3B 遺伝子コピー数と全身性エリテマトーデス、CCL3L1 遺伝子コピー数と HIV 感染など、コピー数または遺伝子数の個体間の違いが疾患感受性に影響を与える例も報告されている。コピー数多型を調べる方法の一つに、DNAチップによって、PCR 産物とプローブとのハイブリダイゼーションのシグナル強度をゲノム全域にわたって調べ、シグナル強度の相対値から、各コピー数多型領域におけるコピー数を推定する方法がある。しかし、このような方法では、各個体のコピー数の表現型(総コピー数 = 2 本の染色体のコピー数の和)を調べることはできても、コピー数多型の遺伝子型(各染色体におけるコピー数)を知ることはできない。このことが、単一塩基多型(single nucleotide polymorphism)に比べ、コピー数多型と疾患との関連解析を難しくしている要因の一つでもある。全ての遺伝子コピーが等しく機能的であれば、コピー数と疾患感受性とは相関する可能性は高いが、中程度のコピー数が疾患抵抗性を示す場合も想定できる。また、ある遺伝子コピーは非機能的である(遺伝子の一部が重複した)場合は、コピー数と疾患感受性との間の単純な相関関係は期待できず、異なるコピー数を有する染色体(ハプロタイプ)は異なる疾患感受性を示すことになる。もし同一集団の多数の検体を調べることができれば、ハーディ・ワインバーグ平衡を仮定して、EM(expectation-maximization)アルゴリズムによって、集団中のコピー数多型の遺伝子型頻度やコピー数アリル頻度(または全検体中の各コピー数アリルの染色体数)を推定することができる。これまで、疾患遺伝子関連解析に使用されてきた統計学的手法は、遺伝子型頻度やアリル頻度に基づくものがほとんどであり、コピー数多型の遺伝子型頻度やアリル頻度が推定できれば、従来の手法をそのまま利用して統計解析することも可能となる。

そこで、本研究では、EM アルゴリズムによるコピー数アリル頻度推定を利用した、疾患と CNV アリルとの関連を評価する並べ替え検定法の開発を行った。アルゴリズムの概要は以下のとおりである。集団中から無作為にサンプルした、k 個の総コピー数を有する個体数をNk ( 観察可能 ) とし、i 個のコピー数アリルとk-i 個のコピー数アリルNi, k-i), を有する個体数をNi, k-I ( 観察不可能 )とする。集団中のi 個のコピー数アリルの頻度をaj とすると、Ni, k-i は以下のように推定される(expectation step):

次に、推定したNi, k-i を用いて、ai を更新することができる(maximization step):

ここで、H は CNV 遺伝子座における理論上最大のコピー数(観察された総コピー数の最大値)である。これらのステップを、次

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の対数尤度が収束するまで交互に繰り返せば、a i の最尤推定値を求めることができる

ケースとコントロールのそれぞれについて、コピー数アリル頻度を推定し、各アリルに対するカイ 2 乗統計量を計算し、並べ替え検定によって、その有意性を評価する。(2) デング出血熱関連多型の探索(i) 年齢、デングウイルスの型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)、2度目以降の感染、患者の居住地域の中で、2度目以降の感染であることが、デング出血熱と関連していた。(ii) インターロイキン遺伝子クラスターが存在する5q31を候補領域として、デング出血熱と47個の SNPとの関連を評価した。二地域(LampangとRatchaburi)の結果を統合したところ、IL13領域のSNPとデング出血熱との有意な関連を見出した。さらに、関連するSNPまたはハプロタイプが存在しうるハプロタイプブロック領域を連鎖不平衡解析によって限定した。

(iii) TLR7およびTLR8遺伝子中のSNPとデング出血熱は関連しないことが確認された。(iv) CD209遺伝子プロモーター領域のSNPとデング熱の重症化との関連を報告した先行研究がある。そこで、同じSNPとデング出血熱との関連を検討したが、本研究の対象集団においては、有意な関連はみられなかった。(v) TNFは重要な炎症性サイトカインの1つである。そこで、様々な疾患との関連が報告されているTNFAプロモーター領域多型-308A/Gを調べたが、デング出血熱と関連していなかった。(vi) IL1B遺伝子のプロモーター多型、およびIL1RA多型はデング出血熱と関連していなかった。(vii) 先行研究によって、CLEC5Aは、デングウィルスがヒトの細胞に感染する際に必要なレセプターである可能性が示唆されている。そこで、CLEC5A遺伝子のタグSNPとデング出血熱との関連を検討したが、有意な関連は見出されなかった。

<国内外での成果の位置づけ>ゲノムワイド関連解析によって、ありふれた疾患との関連が報

告されている SNP の中には、SNP チップに搭載されている既知の SNP であるものが多い。そのため、関連が報告されているSNP が真の感受性変異ではない可能性がある。本研究で開発した統計学的手法を用いることで、今後、真の感受性変異が検出されることに期待したい。また、我々のように、デング熱患者のDNA サンプルを 1000 例以上保有しているグループは世界的にも少なく、本研究による成果は、高い信頼をもって評価されると考

えている。

<達成できなかったこと、予想外の困難、その理由>本研究において、感受性変異候補領域を効率よく絞り込むため

の統計学的手法を複数開発した。しかしながら、その検証を行うためのデング出血熱関連解析において、5q31領域のSNP以外に、それらの手法を用いて解析すべきほどの有意な関連が検出されなかった。

<今後の課題、展望>本研究では、SNP チップを用いるような、比較的マイナーア

リル頻度の高い SNP を解析する疾患関連研究において、疾患感受性変異を探索するための統計手法の開発を行ってきた。

SNP チップを用いたゲノムワイド関連解析により、様々なありふれた疾患の感受性遺伝子(変異)が同定されている。ゲノムワイド SNP 関連解析によって同定される、疾患感受性変異のアリル頻度は 5%以上であり、統計学的に極めて有意な関連はあるが、その疾患発症リスクは低い(オッズ比で 1.2 ~ 1.4 程度)ものがほとんどである。また、ゲノムワイド SNP 関連解析によって同定されたリスクアリルのみでは、疾患発症に与える遺伝的寄与を十分に説明できないことも明らかになり、さらなる疾患関連遺伝子の探索が必要と考えられている。しかし、マイナーアリル頻度の高い SNP マーカーを用いた連鎖不平衡マッピングでは、アリル頻度の低い、未知の感受性変異を同定することは困難である。

全ゲノム配列再解析を行うことにより、高密度全ゲノム SNP関連解析では検出することができなかった、アリル頻度は低いが、高いリスクを有する新規感受性変異を発見しうると期待されている。しかし、ゲノム配列再解析データをもとに、疾患と感受性変異(感受性遺伝子)との関連を評価するための、有効な統計学的手法は確立されていない。そこで、今後は、ありふれた疾患の新規疾患感受性遺伝子の同定を目指し、ゲノム配列再解析による関連解析に特化した、遺伝統計学的解析基盤の構築をしたいと考えている。

<研究期間の全成果公表リスト>1)論文/プロシーディング(査読付きのもの)1. 901120251 ( 論文 ) Ohashi, J., A practical case-control association test for

detecting a susceptibility allele at a copy number variation locus, Journal of Human Genetics, 54(3):169-73 (2009).

2. 911291311 ( 論文 ) Naka I, Patarapotikul J, Tokunaga K, Hananan H, Tsuchiya N,

Ohashi J. A replication study of the association between the IL12B promoter allele CTCTAA and susceptibility to cerebral malaria in Thai population, Malaria Journal, in press

3. 910281851 ( 論文 ) Naka I, Nishida N, Patarapotikul J, Nuchnoi P, Tokunaga K,

Hananantachai H, Tsuchiya N, and Ohashi J, Identification of a haplotype block in the 5q31 cytokine gene cluster associated with the susceptibility to severe malaria, Malaria Journal, in press

4. 910281842 ( 論文 ) Noranate N, Prugnolle F, Jouin H, Tall A, Marrama L,

Sokhna C, Ekala MT, Guillotte M, Bischoff E, Bouchier C, Patarapotikul J, Ohashi J, Trape JF, Rogier C, and Mercereau-Puijalon O, Population diversity and antibody selective pressure to Plasmodium falciparum MSP1 block2 locus in an African malaria-endemic sett ing , BMC

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Microbiology, 9: 219 (2009)5. 910281819 ( 論文 ) Naka I, Patarapotikul J, Hananantachai H, Tokunaga K,

Tsuchiya N, and Ohashi J IFNGR1 polymorphisms in Thai malaria patients, Infection, Genetics and Evolution, 9: 1406-1409 (2009)

6. 910281810 ( 論文 ) Fujimoto A, Nishida N, Kimura R, Miyagawa T, Yuliwulandari

R, Batubara L, Mustofa MS, Samakkarn U, Settheetham-Ishida W, Ishida T, Morishita Y, Tsunoda T, Tokunaga K, and Ohashi J, FGFR2 is associated with hair thickness in Asian populations, Journal of Human Genetics, 54: 461-465 (2009).

7. 811191110 ( 論文 ) Fujimoto A, Ohashi J, Nishida N, Miyagawa T, Morishita Y,

Tsunoda T, Kimura R, Tokunaga K, A replication study confirmed the EDAR gene to be a major contributor to population differentiation regarding head hair thickness in Asia, Human Genetics, 124: 179-185 (2008)

8. 801092012 ( 論文 ) P Nuchnoi, J Ohashi, R Kimura, H Hananantachai, I Naka, S

Krudsood, S Looareesuwan, K Tokunaga, J Patarapotikul, Significant association between TIM1 promoter polymorphisms and protection against cerebral malaria in Thailand, Annals of Human Genetics, 72, 327-336 (2008)

9. 811191105 ( 論文 ) Teeranaipong P, Ohashi J, Patarapotikul J, Kimura R,

Nuchnoi P, Hananantachai H, Naka I, Putaporntip C, Jongwutiwes S, Tokunaga K, Functional SNP in the CR1 Promoter Region Contributes to Protection against Cerebral Malaria., The Journal of Infectious Diseases, 198(12):1880-91 (2008)

10. 806201541 ( 論文 ) Naka I, Ohashi J, Nuchnoi P, Hananantachai H, Looareesuwan

S, Tokunaga K ,Patarapotikul J, Lack of association of the HbE variant with protection from cerebral malaria in Thailand, Biochemical Genetics, 46:708-11 (2008)

11. 806201546 ( 論文 ) Nuchnoi P, Ohashi J, Naka I, Nacapunchai D, Tokunaga K,

Nishida N, Patarapotikul J, Linkage Disequilibrium Structure of the 5q31-33 Region in a Thai Population, Journal of Human Genetics, 53(9):850-6 (2008)

12. 806201536 ( 論文 ) Hirayasu K, Ohashi J, Tanaka H, Kashiwase K, Ogawa A,

Takanashi M, Satake M, Jia GJ, Chimge NO, Sideltseva EW, Tokunaga K, Yabe T, Evidence for natural selection on leukocyte immunoglobulin-like receptors for HLA class I in Northeast Asians, American Journal of Human Genetics, 82: 1075-1083 (2008)

13. 710171803 ( 論文 ) Jun Ohashi, Izumi Naka, Ryosuke Kimura, Kazumi Natsuhara,

Taro Yamauchi, Takuro Furusawa, Minato Nakazawa, Yuji Ataka, Jintana Patarapotikul, Pornlada Nuchnoi, Katsushi Tokunaga, Takafumi Ishida, Tsukasa Inaoka, Yasuhiro Matsumura, Ryutaro Ohtsuka, FTO polymorphisms in Oceanic populations, Journal of Human Genetics, 52(12):1031-5 (2007)

14. 801271714 ( 論文 ) Kimura R, Fujimoto A, Tokunaga K, Ohashi J, A practical

genome scan for population-specific strong selective sweeps that have reached fixation, PLoS One, 2, e286 (2007)

15. 701252110 ( 論文 ) Hananantachai, H., Patarapotikul, J., Ohashi, J., Naka, I.,

Krudsood, S., Looareesuwan, S., Tokunaga, K., Significant association between TNF-a (TNF) promoter allele (-1031C, -863C, and -857C) and cerebral malaria in Thailand, Tissue Antigens, 69(3):277-80 (2007).

16. 801271636 ( 論文 ) Fujimoto A, Kimura R, Ohashi J, Omi K, Yuliwulandari R,

Batubara L, Mustofa MS, Samakkarn U, Settheetham-Ishida W, Ishida T, Morishita Y, Furusawa T, Nakazawa M, Ohtsuka R, Tokunaga K, A scan for genetic determinants of human hair morphology: EDAR is associated with Asian hair thickness, Hum Mol Genet, 17(6):835-43 (2007)

17. 705042021 ( 論文 ) Naka, I., Ohashi, J., Patarapotikul, J., Hananantachai, H.,

Wilairatana, P., Looareesuwan, S., and Tokunaga, K., The genotypes of GYPA and GYPB carrying the MNSs antigens are not associated with cerebral malaria, Journal of Human Genetics, 52(5), 476-479 (2007)

18. 801271647 ( 論文 ) Hirayasu K, Ohashi J, Kashiwase K, Takanashi M, Satake M,

Tokunaga K, Yabe T, Long-term persistence of both functional and non-functional alleles at the leukocyte immunoglobulin-like receptor A3 (LILRA3) locus suggests balancing selection, Human Genetics, 119, 436-443 (2006)

19. 702041637 ( 論文 ) Dechkum N, Hananantachai H, Patarapotikul J, Ohashi J,

Krudsood S, Looareesuwan S, Tokunaga K., Monocyte chemoattractant protein 1 (MCP-1) gene polymorphism is not associated with severe and cerebral malaria in Thailand., Jpn J Infect Dis., 59(4):239-44 (2006).

2)データベース/ソフトウェア1. 911251658 ( ソフトウェア ) Ohashi, J, 疾患関連 CNV アレル同定のためのケースコント

ロール関連検定法の web ツール


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