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の基礎的検討 ラテックス免疫比濁法によるCK-MB蛋白量測定試薬

Date post: 19-Dec-2021
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技術論文 ラテックス免疫比濁法による CK-MB 蛋白量測定試薬 の基礎的検討 中川 正巳 1) 杉浦 直子 1) 安田  誠 1) 1) 医療法人豊田会刈谷豊田総合病院高浜分院医療技術科検査(〒 444-1321 愛知県高浜市稗田町 3-2-11)  ラテックス免疫比濁法による CK-MB 蛋白測定試薬の基礎的検討を行った.同時再現性,日差再現性,直線性,共存物 質の影響などの基本性能において良好な結果が得られた.化学発光免疫測定法および CK-MB 活性を測定する酵素法(免 疫阻害法)との相関はほぼ良好であった.本試薬はミトコンドリア CK,およびマクロ CK の影響がなく,CK-BB の影響 も少ない.しかしながら,異好性抗体の影響に注意が必要である.本試薬は,汎用自動分析装置で短時間に測定可能であ る.日常的な臨床検査に用いることのできる有用性のある試薬と考えられる. キーワード CK-MB 蛋白,ラテックス免疫比濁法,異好性抗体 クレアチンキナーゼ creatine kinaseCK)は,骨 格筋,心筋細胞などの可溶性分画に存在する酵素で, 細胞の損傷によって血液中に遊出する酵素である. CK 2 量体の酵素で M 型(筋型)と B 型(脳型) 2 つのサブユニットからなり,主に骨格筋由来の CK-MM 型,脳・平滑筋由来の CK-BB 型,心筋由来 CK-MB 型の 3 種のアイソザイムのほかにミトコ ンドリアにはミトコンドリア CK mitochondrial CKMt CK)がある.臨床的意義としては,各 CK アイソザイムの由来から,骨格筋・心筋・脳・平滑 筋などに障害をきたしている場合の診断や,経過観 察に有用である.現在,CK-MB は,心筋トロポニ ンとともに心筋障害のバイオマーカーとして汎用さ れている.CK-MB 測定には,免疫阻害法,電気泳 動法,蛋白量測定法などがあるが,国内では汎用自 動分析装置にて短時間で測定が可能な免疫阻害法が 日常検査の主流となっている.免疫阻害法の測定原 理は抗 CK-M 活性阻害抗体で CK-MMCK-MB M サブユニット活性を阻害し,残存する B サブユ ニット活性を 2 倍することで CK-MB 活性とするも のである.また,この測定原理においては CK-BB が血中に微量にしか存在しないこと, CK-BB が出現 する病態は限られたものであることを前提とした酵 素活性測定方法である.しかし,抗 CK-M 活性阻害 抗体で阻害出来ない CK-BB や免疫グロブリン結合 CK(マクロ CK タイプ 1)および重合 Mt CK(マク CK タイプ 2)を含む Mt CK が血中に存在した場 合に CK 活性が偽高値となる問題点が指摘されて いる 1) .電気泳動法は,CK アイソザイムパターンか らその全体像を把握できるが日常検査として使用さ れることは希である.蛋白量測定法は免疫阻害法に 比べ CK-MB に対する特異性が高い 2), 3) が,専用装置 による測定が必要なことからわが国では普及率が低 い.近年,和光純薬工業(株)が,緊急検査にも対 応可能な,汎用自動分析装置にて測定できるラテッ クス免疫比濁法を開発した.今回,この試薬の基礎 的検討と疾患別の CK-MB 蛋白測定の評価について の検討する機会を得たので報告する. (平成 26 2 26 日受付・平成 26 5 2 日受理) 68464 医学検査 Vol.63 No.4 2014
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技術論文

ラテックス免疫比濁法によるCK-MB蛋白量測定試薬の基礎的検討

中川 正巳 1) 杉浦 直子 1) 安田  誠 1)

1) 医療法人豊田会刈谷豊田総合病院高浜分院医療技術科検査(〒 444-1321 愛知県高浜市稗田町 3-2-11) 

要 旨

ラテックス免疫比濁法による CK-MB 蛋白測定試薬の基礎的検討を行った.同時再現性,日差再現性,直線性,共存物質の影響などの基本性能において良好な結果が得られた.化学発光免疫測定法および CK-MB 活性を測定する酵素法(免疫阻害法)との相関はほぼ良好であった.本試薬はミトコンドリア CK,およびマクロ CK の影響がなく,CK-BB の影響も少ない.しかしながら,異好性抗体の影響に注意が必要である.本試薬は,汎用自動分析装置で短時間に測定可能である.日常的な臨床検査に用いることのできる有用性のある試薬と考えられる.

キーワードCK-MB 蛋白,ラテックス免疫比濁法,異好性抗体

クレアチンキナーゼ creatine kinase(CK)は,骨格筋,心筋細胞などの可溶性分画に存在する酵素で,細胞の損傷によって血液中に遊出する酵素である.CK は 2 量体の酵素で M 型(筋型)と B 型(脳型)の 2 つのサブユニットからなり,主に骨格筋由来のCK-MM 型,脳・平滑筋由来の CK-BB 型,心筋由来の CK-MB 型の 3 種のアイソザイムのほかにミトコンドリアにはミトコンドリア CK(mitochondrialCK:Mt CK)がある.臨床的意義としては,各 CKアイソザイムの由来から,骨格筋・心筋・脳・平滑筋などに障害をきたしている場合の診断や,経過観察に有用である.現在,CK-MB は,心筋トロポニンとともに心筋障害のバイオマーカーとして汎用されている.CK-MB 測定には,免疫阻害法,電気泳動法,蛋白量測定法などがあるが,国内では汎用自動分析装置にて短時間で測定が可能な免疫阻害法が日常検査の主流となっている.免疫阻害法の測定原理は抗 CK-M 活性阻害抗体で CK-MM,CK-MB のM サブユニット活性を阻害し,残存する B サブユニット活性を 2 倍することで CK-MB 活性とするものである.また,この測定原理においては CK-BB

が血中に微量にしか存在しないこと,CK-BB が出現する病態は限られたものであることを前提とした酵素活性測定方法である.しかし,抗 CK-M 活性阻害抗体で阻害出来ない CK-BB や免疫グロブリン結合CK(マクロ CK タイプ 1)および重合 Mt CK(マクロ CK タイプ 2)を含む Mt CK が血中に存在した場合に CK 活性が偽高値となる問題点が指摘されている 1 ).電気泳動法は,CK アイソザイムパターンからその全体像を把握できるが日常検査として使用されることは希である.蛋白量測定法は免疫阻害法に比べ CK-MB に対する特異性が高い 2 ), 3 )が,専用装置による測定が必要なことからわが国では普及率が低い.近年,和光純薬工業(株)が,緊急検査にも対応可能な,汎用自動分析装置にて測定できるラテックス免疫比濁法を開発した.今回,この試薬の基礎的検討と疾患別の CK-MB 蛋白測定の評価についての検討する機会を得たので報告する.

(平成 26 年 2 月 26 日受付・平成 26 年 5 月 2 日受理)

(68)464 医学検査 Vol.63 No.4 2014

I 対象と測定方法

1.対象豊田会にて救急室より検査依頼のあった患者検体

で急性心筋梗塞患者,心不全患者,その他高 CK 活性値患者,CK-MB 活性比が 0.25 以上を示した患者の 172 件を用いた.なお,本検討は倫理委員会の承認の下に行った.2.CKおよび CK-MB測定試薬および機器1)CK活性測定

JSCC 標準化対応法「L タイプワコー CK」(和光純薬工業(株))を日立 7180 形自動分析装置((株)日立ハイテクノロジーズ,以下日立 7180)にて測定した.2)CK-MB活性測定

免疫阻害法「L タイプワコー CK-MB(2)」(和光純薬工業(株),以下 CK-MB activity)を日立 7180にて測定した.3)CK-MB蛋白量測定

ラテックス免疫比濁法「L タイプワコー CK-MBmass」(和光純薬工業(株),以下 CK-MB mass)を日立 7180 にて測定した.比較対照として,化学発光酵素免疫測定法「スフィアライト CK-MB」(和光純薬工業(株),以下 CK-MB SL)を自動化学発光酵素免疫分析装置 SphereLight Wako にて測定した.3.CKアイソザイム電気泳動

各測定法との相関において乖離を認めた検体についてはアガロース電気泳動((株)ヘレナ研究所)を用いて,メーカー指定の分析条件にて CK アイソザイム解析を行った.4.免疫グロブリン吸収試験

吸収処理剤としてヤギ抗ヒト IgG,A,M 血清(和

光純薬工業(株))を用いて,検体と吸収処理剤を 1対 2 で混和し,冷蔵庫で一晩反応させ,遠心分離

(15,000 rpm,30 分間)後の上清を CK-MB mass にて測定した.対照は吸収処理剤の代わりに生理食塩水を使用し,同条件で測定した.

II 結 果

1.再現性異なる 2 濃度のプール患者血清(平均 9.68,52.14

ng/mL)を使用し,20 重複測定した同時再現性の変動係数(CV%)は,2.76,1.11%と良好であった.

また,同時再現性に用いた 2 濃度のプール患者血清(平均 9.58,51.28 ng/mL)を小分けして–40℃で凍結し,14 日間測定した日差再現性の CV は 2.90,2.08%と良好であった(Table 1).2.希釈直線性

CK-MB 高値血清を生理食塩水を用いて 10 段階希釈し各 2 重測定を行ったところ,測定可能上限の 200ng/mL まで良好な直線性が得られた(Figure 1).3.共存物質の影響

アスコルビン酸 50.0 mg/dL,溶血 500 mg/dL,乳

200

150

100

50

0CK-MB mass(ng/mL)

0 2/10 4/10 6/10 8/10 1Dilution ratio

Dilution linearityFigure 1 

Precision

Within-run precision(n = 20)

Between-day precision(n = 2, 14 days)

Sample 1 Sample 2 Sample 1 Sample 2

Mean (ng/mL) 9.68 52.14 9.58 51.28SD (ng/mL) 0.267 0.576 0.278 1.069CV (%) 2.76 1.11 2.90 2.08Max (ng/mL) 10.4 52.9 10.2 53.3Min (ng/mL) 9.3 50.9 9.0 48.2

Table 1 

医学検査 Vol.63 No.4 2014 465(69)

び(イントラファット添加濃度)5%,ビリルビン F40.0 mg/dL,ビリルビン C 40.0 mg/dL,RF 500 IU/mLまでは,測定値に影響は認められなかった(Figure 2).4.相関

CK-MB activity と CK-MB mass の相関は,n = 172,r = 0.916,y = 0.731x – 6.73 であった.標準残差を基に 15 検体を乖離検体とした.乖離検体を除いた相関は,n = 157,r = 0.989,y = 0.837x – 5.67 であった

(Figure 3).CK-MB SL と CK-MB mass の相関は,n = 172,r =

0.996,y = 0.945x + 0.34 と非常に良好な結果であったが,標準残差を基として乖離検体が 7 件認められた(Figure 4).5.乖離事例

CK-MB mass と CK-MB activity の乖離検体 15 件

0

50

100

150

200

250

300

350

CK-MB mass(ng/mL)

0 100 200 300 400CK-MB activty (U/L)

Correlation dataDeviation data

n = 157y = 0.837x ─ 5.67r = 0.989

Correlation between CK-MB activity and CK-MBmass except the deviation data

Figure 3 

について精査した結果,マクロ CK タイプ 1 による影響が 3 件,Mt CK による影響が 5 件,CK-BB による影響が 7 件あった.一方,CK-MB mass と CK-MBSL の乖離検体は 7 件あったが,その原因は異好性抗体の影響が 3 件,CK-BB による影響が 4 件あった.1)マクロ CKタイプ 1による乖離例

CK-MB mass は 3.0 ng/mL,CK-MB activity は 46U/L と乖離が認められ,電気泳動法では CK-MM バンドのみを認めるパターンであったが,抗 CK-M 活性阻害抗体添加の電気泳動では CK-MM とほぼ同位置に,マクロ CK を疑わせるバンドを認めた.そこで,免疫グロブリン吸収試験を実施したところ,IgGを吸収する事により CK-MB activity が 3 U/L に低下した 4 ).この結果から,IgG 結合型のマクロ CK タイプ 1 の存在が確認され,CK-MB activity が偽高値を示したと考えられた(Figure 5).

050100150200250300350

CK-MB mass(ng/mL)

0 100 200 300 400CK-MB SL (ng/mL)

n = 172y = 0.945x + 0.34r = 0.996

Correlation between CK-MB SL and CK-MB massFigure 4 

01020304050

CK-MB mass(ng/mL)

0 10 20 30Ascorbic acid(mg/dL)

40 5001020304050

0 100 200 300Hemoglobin(mg/dL)

400 50001020304050

0 1 2 3Chyle(%)

4 5

01020304050

CK-MB mass(ng/mL)

0 10 20 30Free billirubin(mg/dL)

4001020304050

0 10 20 30Conjugated billirubin(mg/dL)

4001020304050

0 100 200 300Rheumatoid factor(IU/mL)

400 500

Effects of interfering substancesFigure 2 

(70)466 医学検査 Vol.63 No.4 2014

2)ミトコンドリア CKによる乖離例CK-MB mass は 5.5 ng/mL,CK-MB activity は 84

U/L と乖離が認められ,抗 CK-M 活性阻害抗体添加の電気泳動パターンでは CK-MM 付近に Mt CK と

考えられる 2 つの CK バンドを認めた 5 ).さらに,Mt CK を阻害することができる免疫阻害法試薬の測定値が 5U/L と低下したことから,Mt CK の存在により CK-MB activity が偽高値を示したと考えられた

CK-MB massng/mL3.0

測定項目単位測定値

CK-MB SLng/mL3.1

CK-MB activityU/L46

CKU/L1,058

CK-MB activityU/L4534547

測定項目単位生食IgG 吸収IgA吸収IgM吸収

IgGmg/dL9363

1,0351,017

IgAmg/dL2132407

222

IgMmg/dL108116990

電気泳動

グロブリン吸収試験

1/2 希釈 1/2 希釈 抗 CK-M 抗体添加

(-) (+) (-) (+)

CK-MM

マクロCK

Estrangement example by the influence of Macro CK tape 1Figure 5 

CK-MB massng/mL5.5

測定項目単位測定値

CK-MB SLng/mL5.2

CK-MB activityU/L84

CKU/L1,210

電気泳動

1/2 希釈 1/2 希釈 抗 CK-M 抗体添加

(-) (+) (-) (+)ミトコンドリアCK

Estrangement example by the influence of Mt CKFigure 6 

医学検査 Vol.63 No.4 2014 467(71)

(Figure 6).3)CK-BBによる乖離例

CK-MB mass は 53.7 ng/mL,CK-MB activity は 199U/L,そして CK-MB SL は 44.3 ng/mL と乖離が認められ,電気泳動では CK-MB 以外に CK-BB の存在が確認された.CK-BB が存在することにより,CK-MBactivity では測定原理上,偽高値を示したと考えられた.また CK-MB mass > CK-MB SL であったことから CK-MB mass においても CK-BB が存在することにより正誤差の影響を受けていると考えられた

(Figure 7).4)異好性抗体による乖離例

CK-MB mass は 15.7 ng/mL,CK-MB activity は 2U/L,そして CK-MB SL は 2.9 ng/mL と乖離が認められ,電気泳動では CK-MM のみで他の異常バンドを認めなかった.CK-MB mass での測定値が他の 2 法にくらべ高値に乖離していたため,異好性抗体の存在を疑い,免疫グロブリン吸収試験を実施した.その結果,IgM を吸収した場合でのみ CK-MB mass の測定値が 3.2 ng/mL と低下し,CK-MB SL の測定値に近似した.CK-MB mass の試薬はラテックス感作マウスモノクロナール抗体を使用していることから,異好性抗体の存在が正誤差の原因と考えられた

(Figure 8).6.疾患別の CK-MB蛋白測定の評価

CK-MB は心筋細胞のみならず,骨格筋にも存在

し,打撲,骨折,痙攣等により上昇することが知られている 6 ).今回,CK-MB mass のカットオフ値 5.0ng/mL と CK-MB 蛋白量/総 CK 活性値×100(%)を計算して求めた RI(Relative index)の比較による感度,特異度の評価を試みた.RI の判定値については複数の報告があるが 7 ), 8 )今回,心筋梗塞> 3.5%の指標 9 )を用い検討した.その結果,CK-MB mass のカットオフ値を用いた場合は急性心筋梗塞における感度は 28.7%,特異度は 98.8%であったが,CK-MB massのカットオフ値と,RI 値 3.5%以上を併用することにより感度は 56.8% ,特異度は 96.2% となった

(Table 2).

III 考 察

今回,汎用自動分析装置用のラテックス比濁比濁法による CK-MB 蛋白量測定試薬「L タイプワコーCK-MB mass」の基礎的検討を行った.同時再現性,日差再現性はともに良好な結果であった.直線性においては,測定可能上限の 200 ng/mL まで良好であった.共存物質の影響について,影響は認められなかった.CK-MB activity と CK-MB mass の相関は,免疫阻害法の問題点である CK-BB,マクロ CK タイプ 1および Mt CK はいずれも正誤差を認めた.なお,乖離検体を除外した場合は良好な相関性であった.一方,CK-MB SL と CK-MB mass の相関も良好な結果

電気泳動

1/2 希釈 1/2 希釈 抗 CK-M 抗体添加

(-) (+) (-) (+)CK-MB

CK-MB massng/mL53.7

測定項目単位測定値

CK-MB SLng/mL44.3

CK-MB activityU/L199

CKU/L1,082

CK-MM

CK-MB CK-BB CK-BB

Estrangement example by the influence of CK-BBFigure 7 

(72)468 医学検査 Vol.63 No.4 2014

であったが,大久保ら 10 )の報告で交差反応性を検討し CK-MB mass では高濃度 CK-BB の存在により濃度依存的に高値傾向を示したとあるように,CK-MBmass において CK-BB 高値検体では正誤差の影響を受けていた.また,異好性抗体の存在する検体で正誤差を受けていたが,異好性抗体は IgM 型の抗体であった.

疾患別 CK-MB mass の評価において,CK-MB mass単独よりも RI を併用した方が急性心筋梗塞での感度が向上することが示唆された.日常緊急検体においては多様な疾患検体があり,CK-MB 蛋白量の報告に加え RI を併用した報告も必要であると考えられた.しかしながら,RI 判定値については,今後の検

討課題であると考える.

IV 結 語

汎用自動分析装置用のラテックス免疫比濁法による CK-MB 蛋白量測定試薬「L タイプワコー CK-MBmass」は,同時再現性,日差再現性,直線性,共存物質の影響について良好な結果が得られた.また,マクロ CK タイプ 1,Mt CK の影響は認められないが,CK-BB,異好性抗体の影響が確認された.臨床医への報告については,CK-MB 蛋白量の他に RI を併用した報告も必要であると考えられた.本試薬は,CK-MB 蛋白量測定を化学発光酵素免疫測定法より

CK-MB massng/mL15.7

測定項目単位測定値

CK-MB SLng/mL2.8

CK-MB activityU/L2

CKU/L36

CK-MB massng/mL15.114.616.33.2

測定項目単位生食IgG 吸収IgA吸収IgM吸収

IgGmg/dL8506

843863

IgAmg/dL4054127

432

IgMmg/dL4543410

電気泳動

グロブリン吸収試験

無希釈 抗 CK-M 抗体添加

(-) (+) (-) (+)CK-MM

Estrangement example by the influence of heterophile antibodyFigure 8 

Comparison of clinical diagnosis with CK-MB mass, RI

分類 No. 確定臨床診断名CK-MB mass > 5 ng/mL

CK-MB mass > 5 ng/mLand RI > 3.5%

該当 非該当 該当 非該当

A 急性心筋梗塞(発症後 48 時間以内) 25 1 21 5B その他心疾患(心不全,心筋炎,狭心症等) 15 49 7 57C 骨折,打撲,運動後,麻痺,筋炎,横紋筋融解症 15 14 1 28D その他(悪性腫瘍,腸炎,脳梗塞,膠原病,敗血症等) 32 18 8 42

Table 2 

医学検査 Vol.63 No.4 2014 469(73)

短時間で測定可能であり,CK 等の汎用自動分析装置で測定される項目と同時測定ができることから緊急検査への対応が可能である.以上より,ラテックス免疫比濁法による CK-MB 蛋白量測定試薬は日常の臨床検査に用いることができる有用な試薬であると考えられた.

本論文の要旨は,第 45 回日本臨床検査自動化学会にて報告した.

謝辞本検討の精査・解析に御協力いただいた和光純薬工業(株)に

深謝致します.

■文献

 1) 祖父江富由貴,他:免疫阻害法による CK-MB 活性測定法のCK アノマリーの反応性に関する検証,医学検査 2009;

58:1168–1173. 2) 石沢修二,他:全自動化学発光免疫測定装置 ACS180 による

CK-MB 蛋白量測定の検討,医学と薬学 1993;29:681–691. 3) 天近友子,他:酵素免疫測定法による CK-MB 蛋白量測定の

有用性に関する検討,日本臨床検査自動化学会誌 2004;29:151–154.

 4) 林 景子,他:CK 結合性免疫グロブリン例の臨床像,生物物理化学 1991;35:45–48.

 5) 星野 忠:ミトコンドリア CK の測定法,検査と技術 2000;28:1499–1504.

 6) 古賀聖士,他:総論 虚血性心疾患のバイオマーカー,診断と治療 2013;101:51–55.

 7) Skogen W et al. : Guidelines for interpreting the CK-MB relativeindex value, Clin Chem 1991 ; 37 : 916.

 8) Nusier MK, Ababneh BM : Diagnostic efficiency of creatinekinase (CK), CKMB,troponin T and troponin I in patients withsuspected acute myocardial infarction, Journal of HealthScience 2006 ; 52 : 180–185.

 9) Lewandrowski K et al. : Cardiac markers for myocardialinfarction, Am J Clin Pathol 2002 ; 118 : S93–S99.

10) 大久保学,他:L タイプワコー CK-MB mass 測定試薬の性能評価,臨床病理 2013;61:989–994.

Technical Article

Fundamental study of CK-MB protein reagent by latex turbidimetricimmunoassay

Masami NAKAGAWA 1) Naoko SUGIURA 1) Makoto YASUDA 1)

1) Department of Clinical Laboratory, Kariya Toyota General Hospital Takahama Branch Hospital (3-2-11, Hieda-cho,Takahama, Aichi 444-1321, Japan)

SummaryWe evaluated the ‘L-type Wako CK-MB mass’ reagent in terms of fundamental performance. This reagent can be

used to measure CK-MB protein values in a short time on an automated analyzer. In this study, the reagent exhibitedsatisfactory performance in terms of sensitivity, with-run precision, between-day precision, linearity, and effects ofinterfering substances. This reagent showed good correlation with the chemiluminescent enzyme immunoassay andthe immunoinhibition method. This reagent did not have an effect on macro-CK type 1 and mitochondrial CK, but havelittle effect on CK-BB. Although extremely rare, we found that heterophile antibodies affected the results obtained usingthis reagent. On the basis of the present results, we conclude that the reagent performs sufficiently well in routinelaboratory tests.

Key words: CK-MB protein, Latex turbidimetric immunoassay, Heterophile antibody(Received: February 26, 2014; Accepted: May 2, 2014)

(74)470 医学検査 Vol.63 No.4 2014


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