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Date post: 26-Apr-2020
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-1- Keyword;排出事業者責任 感染性廃棄物 リスクマネジメント PDCA/PDS 管理サイクル 廃棄 物処理管理体制 CSR 向上 感染と感染性廃棄物の ABC 第 109 回 Ⅲ.排出事業者責任の実際 4 適切な管理体制・リスクマネジメント・管理サイクル 末尾に、平成 30 年 北海道胆振東部地震 感染性廃棄物の状況/医療廃棄物の適正 処理講習会について 参加無料/ トピックス 風疹、関東中心に大流行の兆し - 妊婦は感染にご注意を を掲載しました。ぜひご覧ください。 前回、第 108 回Ⅲ.排出事業者責任の実際 3「2. C2-1.診療所であっても 適切な処理計画を立てているか?」として、具体的な実践を含めた排出事業者責任の遂 行、そして多量排出事業者については、法令規定事項である処理計画の提出とその実行報 告の他に、法令の条文と計画記載事項、報告記載事項を産業廃棄物と特別管理産業廃棄物 (感染性廃棄物他)について示しました。そして医療機関の規模等の違い、特性が異なっ たとしても、また診療所であっても、それなりの処理計画を立てるための例示をしまし た。廃棄物処理の実態をより正確に捉えて、現在、解説中の排出事業者責任遂行の 25 項 目の自己評価を行い、また併行して、必ず現状の廃棄物の排出量、価格等の実績を把握し て行くことは重要です。そして年に一度はこれらの見直しをしていく必要があります。 処理計画に続く管理体制は、企業、医療機関の規模等でも大きく異なってきますし、ま た目的をCSRの向上とした場合であっても、どのような考え方で、適正処理なりの当面 の目標をどのレベルでどう捉え、設定するかで処理計画も変わってきます。そしてさらに 上のレベルでは、どのように考えるべきかに触れます。 処理計画と管理体制は、医療機関にとっては、余り縁がない分野ともいえ、内容的に少 し難解かもしれません。逆にいえば、最も遅れている分野ともいえます。目的・目標の設 定の重要さ、PDCAやPDS(後述)の螺旋状の管理サイクルなど、その推進には部門 別日本式改善中心が良いか、全社アメリカ式トップダウンによるルール徹底が良いかなど にも触れます。 まず廃棄物の適正処理は、排出事業者責任として捉らえれていますが、その基本となる のは廃棄物処理法(正式には、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といいます。)で す。この法律は、この後にまた経緯としても触れますが、1970(昭和 45)年の公害国会 で、公害対策と同じくして生まれ、汚染者負担の原則、そして更に拡大生産者責任まで盛 り込まれているということを前々回にも触れました。2013(平成 25)年辺りから後述の 新たな考え方が廃棄物処理法の上位概念として生まれてきました。 循環型社会の形成と持続可能な社会に向けた統合的取組の展開 地球上では、この後もいくらでも廃棄物は発生し続け、文明の進歩とともに増加の一途 を辿ることは間違いありません。そのような意味からは、単に廃棄物の適正処理を行うだ けでは、廃棄物問題の解決にはなりません。 紙の使用量とGDPの高さは相関し、比例しています。廃棄物処理量もほぼ同様といえ ます。これでみても、日本は、廃棄物処理の先進国になります。 そして世界の中では、日本は突出して焼却処理が盛んです。世界の多くの国では、埋め 立てが主です。これらはまた別の機会で触れます。
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Keyword;排出事業者責任 感染性廃棄物 リスクマネジメント PDCA/PDS 管理サイクル 廃棄

物処理管理体制 CSR 向上

感染と感染性廃棄物の ABC 第 109 回

Ⅲ.排出事業者責任の実際 4 適切な管理体制・リスクマネジメント・管理サイクル

♦ 末尾に、平成 30 年 北海道胆振東部地震 感染性廃棄物の状況/医療廃棄物の適正

処理講習会について 参加無料/ トピックス 風疹、関東中心に大流行の兆し -

妊婦は感染にご注意を を掲載しました。ぜひご覧ください。)

前回、第 108 回は、Ⅲ.排出事業者責任の実際 3「2. C2-1.診療所であっても

適切な処理計画を立てているか?」として、具体的な実践を含めた排出事業者責任の遂

行、そして多量排出事業者については、法令規定事項である処理計画の提出とその実行報

告の他に、法令の条文と計画記載事項、報告記載事項を産業廃棄物と特別管理産業廃棄物

(感染性廃棄物他)について示しました。そして医療機関の規模等の違い、特性が異なっ

たとしても、また診療所であっても、それなりの処理計画を立てるための例示をしまし

た。廃棄物処理の実態をより正確に捉えて、現在、解説中の排出事業者責任遂行の 25 項

目の自己評価を行い、また併行して、必ず現状の廃棄物の排出量、価格等の実績を把握し

て行くことは重要です。そして年に一度はこれらの見直しをしていく必要があります。

処理計画に続く管理体制は、企業、医療機関の規模等でも大きく異なってきますし、ま

た目的をCSRの向上とした場合であっても、どのような考え方で、適正処理なりの当面

の目標をどのレベルでどう捉え、設定するかで処理計画も変わってきます。そしてさらに

上のレベルでは、どのように考えるべきかに触れます。 処理計画と管理体制は、医療機関にとっては、余り縁がない分野ともいえ、内容的に少

し難解かもしれません。逆にいえば、最も遅れている分野ともいえます。目的・目標の設

定の重要さ、PDCAやPDS(後述)の螺旋状の管理サイクルなど、その推進には部門

別日本式改善中心が良いか、全社アメリカ式トップダウンによるルール徹底が良いかなど

にも触れます。 まず廃棄物の適正処理は、排出事業者責任として捉らえれていますが、その基本となる

のは廃棄物処理法(正式には、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といいます。)で

す。この法律は、この後にまた経緯としても触れますが、1970(昭和 45)年の公害国会

で、公害対策と同じくして生まれ、汚染者負担の原則、そして更に拡大生産者責任まで盛

り込まれているということを前々回にも触れました。2013(平成 25)年辺りから後述の

新たな考え方が廃棄物処理法の上位概念として生まれてきました。

循環型社会の形成と持続可能な社会に向けた統合的取組の展開

地球上では、この後もいくらでも廃棄物は発生し続け、文明の進歩とともに増加の一途

を辿ることは間違いありません。そのような意味からは、単に廃棄物の適正処理を行うだ

けでは、廃棄物問題の解決にはなりません。

紙の使用量とGDPの高さは相関し、比例しています。廃棄物処理量もほぼ同様といえ

ます。これでみても、日本は、廃棄物処理の先進国になります。

そして世界の中では、日本は突出して焼却処理が盛んです。世界の多くの国では、埋め

立てが主です。これらはまた別の機会で触れます。

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比較的小規模の焼却施設が多く、今までは余り焼却処理による熱回収(サーマル)とし

てのリサイクル発電なども盛んではありませんでした。現状の感染性廃棄物処理は、貴重

なプラスチックの容器を燃やしてしまうなど、まだまだ改善の余地はあります。例えば、

極力ダンボールを使用して、プラスチック容器は減らす、また詰め過ぎず、空け過ぎずな

どの配慮も必要です。ここでいえることは、感染性廃棄物他の廃棄物の適正処理も、まず

発生量を抑えることから考えるという、発生源での抑制から考えなければなりません。

これが下の図 1 左側の循環型社会のサイクルの ① 廃棄物の発生抑制です。そしてこ

れが ② の廃棄物の適正処理(リサイクルを含む)に続きます。(①、② は、図 1 左下

循環型社会;3R サイクルの数字です。)

これをもう少し詳しくみたものが、図1 の左下のサークル 循環型社会 3R(スリー

アール)の推進です。このサークルの意味するものは、循環型社会形成のしくみで、広く

は、3R(Reduce;リデュース/発生抑制、Reuse;リユース/再使用、Recycle;リサ

イクル/再利用)の推進 といわれるものです。廃棄物の適正処理も、この循環の中の一環

で、処理以外手段ない場合、焼却などするということで、これらの要素を考えながら進め

ていくということを理解してください。

以下、これらの順序を図の中の数字に沿ってみてみます。これらの資源の消費の抑制が

第1で、① 廃棄物の発生を抑える〔Reduce;リデュース/発生抑制〕ということです。

まずは、① 天然資源の消費の抑制を含め、廃棄物等の発生抑制で、極力資源の無駄遣

いは控えるということで、これは地球規模での資源節約からも最も重要です。

図1 循環型社会の形成と持続可能な社会に向けた統合的取組の展開

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冷暖房も元はといえば、主に電力で、石炭、石油、天然ガス、そして電力も原子力など

も含め、資源を使っています。廃棄物のプラ容器の原料は、石油ですし、ダンボールの原

料のパルプは、木材です。廃棄物の発生を抑えないで、いくら廃棄物の適正処理を進めて

も、3R推進の効果は期待できません。

これを表したのが、図1の右下の京都大学の高月 紘名誉教授のイラストで、上流であ

る、「① 天然資源の消費の抑制」を最優先するべきという考え方です。

結論としては、四角内に示すように「3Rよりは、2R」の説明です。

以前に出てきた、廃棄物処理法の第3条の2で規定されているように、医療関係でいえ

ば、医療器具、保健材料、薬剤等々も開発の段階で、廃棄物として量を少なく、処理し易

いような製品を開発するべきとしています。

(https://www.env.go.jp/recycle/waste/laws.html 第3条の2は、第3条の汚染者負担

の原則より、さらに発展的で、拡大生産者責任と呼ばれています。)

① そして、発生抑制の上、もし資源を使うなら、極力廃棄物とはしないで、

② 何度も使えるまで使用することです。〔Reuse;リユース/再使用〕、注射針は、か

つて鉄針の時代は、ディスポーザルではなく、煮沸他で滅菌して、再使用が通常で

した。現在、厚労省で単回使用医療機器(ディスポーザル)のメスやペアンなどの

再製造(再使用とは呼びませんが、滅菌して再度用います。)の動きがあります。

すでにアメリカでは、常時行われており、日本でも協議会が発足しました。

③ どうしても使えなくなったら他のものに利用を考えます。③〔Recycle;リサイク

ル/再利用〕で、例えば、プラスチックのボトルを回収して、これから廃棄物容器を

作るのもリサイクルです。廃棄物として焼却する場合でも熱利用して、発電するな

ども再利用です。ダンボールは、燃やさなければ7回もリサイクルができます。

感染性廃棄物は、滅菌という 1工程が必要となるためにリサイクルはなかなか難

しい点があります。また高周波(マイクロ波)滅菌などの処理方法であれば、焼却

しないので、廃棄物固形化燃料;RPF(Refuse derived paper and plastics

densified Fuel)製造などのリサイクルが可能です。

弊社(TRP)では、産業廃棄物焼却炉と医療廃棄物専用炉で焼却の際に、熱回

収して、発電(23,000Kw、7,700 世帯分)、処理施設での内部利用ばかりでなく、電

力会社に売電をしております。焼却灰は、ガス化溶融炉でさらに処理し、鉄、アル

ミ、スラグなどのマテリアルリサイクルを行い、これらも売却しております。残渣

がほとんど残らず、マニフェストの項で触れましたように、最終処分も行われたと

いうことで、D票と共にE票が発行されます。したがって逼迫する最終処分場に埋

立てる必要もありません。不足する最終処分場確保の課題にも貢献しております。

適正処理と排出事業者責任 — 汚染者負担の原則

繰り返しになりますが、このように感染性廃棄物等の適正処理として、廃棄物処理法の

汚染者負担の原則の基本理念から、委託をしても処理の責任は、あくまで排出事業者にあ

るということ、そればかりか、排出者には、拡大生産者責任という製造の段階から廃棄物

になることまで考えて製品を作るという義務まで規定されているということです。

そして、廃棄物の適正処理には、資源消費の抑制、廃棄物の抑制を最優先し、再使用、

から始まり、再利用を行い、廃棄するしかない場合のみ、廃棄処分します。循環を十分に

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意識した、感染性廃棄物等の適正処理を当面の目標としてはいますが、循環型社会の形成

を目指し、資源が枯渇することなく、持続可能な社会が適正処理の奥にはあります。

このためには、低炭素社会、自然共生社会も同時に求められてきます。このような前提

条件も加味して考えた時に、企業、医療機関として、適正処理に関する処理計画と管理体

制はどうあるべきかということです。廃棄物処理の低減を求めることも現実の問題として

でてきております。しかし一方、企業、医療機関には、社会的貢献、すなわちCSRの向

上ということが強く求められております。この推進のためには、表 1 で示すように廃棄

物から見ただけでも企業、医療機関の存続にまで大きな影響を与えるようなリスクの発生

が考えられます。これらをそれが起きる前に想定して、極力起きないように、しかしもし

起きた時の対処は予め想定していくという考え方が今後ますます要求され、重要なものと

なってきます。排出事業者責任の一環として、廃棄物処理計画と管理体制について、その

管理手法を含め、考え方をご紹介しておきます。

リスクマネジメントの基本的考え方

リスクとは、損害、損失、不利益、破損等の可能性、あるいは、その確率を意味してお

り、世界保健機関(WHO)では、統計的概念として、当該廃棄物や化学物質の曝露によ

り起こり得る、望ましくない影響の予想頻度と定義しています。 廃棄物の視点からみると、廃棄物そのもの、あるいは廃棄物から発生する汚染物質が周

囲の環境、または人の健康に与える良くない影響ということになりますが、ここでは、人

為的なものを含めて、法令違反など事務面のもの、不可抗力の事故的なものもその対象と

しています。

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似た言葉として、「リスクアセスメント」という言葉が使われますが、これは廃棄物が

適正に処理されているかどうかなどを判断する方法として、廃棄物処理の内容に応じてど

の程度の汚染物質が環境に放出され、自然環境や人がどれくらい曝露されて影響を受ける

かを評価する方法です。 そして、「リスクマネジメント」とは、こうした汚染物質の放出を抑制する方法とそれ

に必要な経費、健康影響の程度の減少効果等を考慮して処理レベルや処理方法を決定して

実施することをいいいます。特に、ここではリスクの可能性について、将来起こり得るも

のすべてを含めて考えますので、以下に説明する PDCA、PDS などの考え方を基にアプ

ローチします。 他にリスクコミュニケーションという言葉もありますが、これは廃棄物そのもの、また

は廃棄物の処理に伴って発生する汚染物質について、それらによる環境問題を種々の職種

及び部門間で内部コミュニケーションを行い、外部の利害関係者からの関連するコミュニ

ケーションについて受付け、文章化し及び対応するなどの活動を指します。 PDCA のサイクル活用

PDCAサイクルは、(PDCA cycle.;Plan-Do-Check-Action cycle)のこと

で、計画(Plan)し、実行(Do)し、結果をチェックし(Check)、改善し

(Action)、次の計画に活かしていきます。

PDSサイクルは、ほぼ同義ですが、計画(Plan)し、実行(Do)、評価し(S

ee)、ここで調整も含め、次の計画に活かすということです。しかし現在は、一

度、点検・評価(Check )して、その結果を調整・改善(Action)するPDC

Aの方が、広く使われているようです。

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これらは、第二次世界大戦の後、アメリカの品質管理(Quality Control)の分野から

始まりました。品質管理の先駆者ウォルター・シューハートや、エドワーズ・デミングら

が提唱したものです。今から 55 年ほど前に日本での品質管理の草分けの一人、故唐津 一

元東海大学教授から直接、管理サイクルとして教えを受けました。

テイラーの科学的管理法などの手法も生まれ、当初は、品質管理など統計的な数値解析

を用い、主として生産現場での管理に用いられていました。品質管理も、単に品質など生

産部門だけでなく、全社的な、顧客からの要望も取り込む形に発展し、全社的あるいは、

総合的品質管理(TQC;Total Quality Control)と呼ばれ、現在では、TQCが更に

進化して、TQM(Total Quality Management)という経営管理手法として、1990 年代

にアメリカで広く普及し、アメリカの製造業の復活に大きく貢献し、日本でも広く現在も

用いられています。

管理サイクルの考え方は、企業、医療機関内でも計画、管理という場面で大変重要で

す。リスクマネジメント構築の上で、考え方のいくつかのポイントに触れておきます。

① TQM(PDCA・PDSサイクル)における目的・目標の決定の重要さ

日本とアメリカではTQM(Total Quality Management)では、システム、経営、管理

などをみても大きな違いがあります。お気づきかもしれませんが、この管理サイクルで言

えることは、多くの説明でも目的、目標というものが省略されているなり、曖昧である場

合が多いです。目的と目標は、例えば、ここでは、企業でも医療機関でも大きな目的は、

CSR(社会貢献)です。企業では、目的達成のために何らかの製品、あるいはサービス

を提供して、利益を得るという小さな目的を通して達成していくわけです。当面のゴール

ともいえます。その目的達成のためにもレベルがあり、いくつかの目標を置くわけです。

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先の管理サイクルでは、品質管理から発祥したこともあり、数値的な、例えば売上であ

り、マーケットシェア等々、そして医療機関なら、小さな目的であれば、診療そのものに

なります。目標としては、診断率、延命率、治療率、医療事故など、また経営上は、患者

数なり、経営収支なども含まれてきます。待ち時間や、診療の連携なども含まれます。

リスクマネジメントは、この大きな目的を妨げる重大要因ですので、最高レベルの大き

な目的の1つと考えるべきです。医療では、診療における医療事故的なものは、リスクマ

ネジメントの大きな要因です。表 1 では、廃棄物で考えられるリスクマネジメントの要

素を羅列しましたが、これらを参考に企業、医療機関の事情に合わせて小さな目的とし

て、夫々に具体的な目標を決めてリスクマネジメントの解決策(計画;Plan)を練りま

す。ここでは、その期間も重要なものとなります。(表2参照)

そしてこれを実行(Do)に移します。実際には、目標を決めることは、重要ですが、

中々難しいです。そして実際の目標に向かって実行に移したなら、ある期間で実行の成果

を当初に設定した目標と計画と照合(See,あるいは、Check)します。そしてズレている

点、到達できていない量なりをどのようにして、目標に近づけるか調整し、改善なり図り

(Action、See)、次の計画(Plan)を修正し活かします。明確な目的・目標を設定し、

照合して修正しつつ、スパイラル(らせん)状にレベルを上げていく管理方法です。

② 日本式とアメリカ式TQM(PDCA・PDSサイクル)の相違点

PDCAサイクルにしても、PDSサイクルにしても発祥は品質管理など製造部門から

発展したものです。したがって数値的な目標を立てて行うことには向いているといえま

す。そしてこれが日本で受け入れられましたが、日本での製造部門などの基本的考え方

は、どちらかといえば「改善主義」です。現状の不備などを調査、現状分析してそこから

改善点を見つけ出すという、ボトムアップ方式という考え方です。現在も ZD 運動など

(Zero Defects)が残っています。一方、アメリカの考え方は、システム論などで用いる

目的、目標をトップレベルで決定して、これを下に敷衍してくというトップダウン方式と

いうものです。日本式では、どうしても目的・目標が定まらない、一致しないという欠点

がでてきます。アメリカ式は、トップから全社的に目的・目標を下に徹底していくので、

大きな矛盾は生じにくいです。これは医療機関など見てみると、どうしても部門別に半ば

独立しており、現場からの責任者、担当者の意見は、トップのレベルまで上って目標・計

画などの調整・改善、そして修正というところまでは中々行きにくいです。

③ TQM(PDCA・PDSサイクル)推進の組織・管理体制

日本式の欠点が十分考えられる現状を見ると、実際のリスクマネジメントの徹底実行を

TQM(PDCA・PDSサイクル)によるには、トップまたは近いところの推進者、実

行担当者、そして組織としての情報提供とその結果の情報共有が必須となってきます。

これは前項の通り、トップダウンが優位です。このためには、トップダウンの組織と管

理体制、人の配置と権限を定めておかなければなりません。企業は、製造部門を持ってい

ても、人に関しては、その部分での技術者などの専門職の存在があっても、組織と管理体

制として大きなネックにはなりません。しかし医療機関では、往々にして、組織と管理体

制が、縦割りであるばかりか、医師、看護師、臨床検査技師等々の専門職がおり、入院部

門、外来部門など、そして診療各科に分かれ、それぞれの診療に関する責任者が存在して

おり、経営や管理部門の責任者、担当者の権限、責任の所在が不明確である場合が多いで

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す。このような現状を考えると前途多難に思えますが、CSRを大きな目的に見据え、診

療の向上を目的として考えるなら、現状を嘆いているよりは、組織としてリスクマネジメ

ント検討の体制づくりの一環として、現状の診療体制に加えて、リスクマネジメントの確

立を急ぐべきです。図3では、既存の診療体制にリスクマネジメント協議会を設置しま

す。そして医療問題総合検討委員会が、医療事故調査、医療事故予防対策に当たります。

その全体として、リスクマネジメント協議会、または、医療安全推進委員会という名称

で医療機関全体のリスクマネジメントの対応策検討に当たることとします。

ここでは総括全体責任者は、副院長が当たり、協議会の会長であり、最高責任者となり

ます。そして重要な医療事故などの医療問題総合検討委員会と診療部の各科だけでなく、

看護部の各担当、放射線部他の各部の医療安全管理なり、感染管理なり、廃棄物管理なり

の各テーマ毎(図 3 では、各室として表示)の責任者が集まり、意見交換、検討する会

議が、全科各室会議のCです。そして、さらに担当者レベルでの会議が、Dです。実際に

は、これが1つになる場合も出てきますし、テーマもこのようにたくさんに別れて行うこ

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とは難しいかもしれません。しかし何らかの形で組織として作り、トップから全組織に決

定事項は情報発信し、情報の共有化が図られなければ、ルールの徹底などはできません。

リスクマネジメント、適正処理管理サイクルを進める管理体制作り

医療機関の規模は、病院、診療所でも大きく異なり、病院もその規模は、各々の違いは

大きいです。病院全体での管理体制については、ここで要点のみを触れられるほど、容易

なものではありません。

廃棄物の適正処理、リスクマネジメント等の観点から触れておきます。

重複しますが、管理体制の重要点としては、企業、医療機関とも共通していえること

は、少なくとも廃棄物処理の担当のセクションと担当者を決めることから始めます。そし

て担当者がその処理計画なり、リスクマネジメントに対して検討したこと、そして平常時

の注意事故などの徹底には、担当者の存在が、組織として位置づけられている必要がでて

きます。そして、下記のポイントが、リスクマネジメントへのアプローチとしては重要な

ものとなってきます。

ルールの徹底とアメリカ式のトップダウン方式

そして企業であっても難しいことは、全組織にルールを徹底することです。特に医療機

関では、至難の業ともいえます。往々にして廃棄物関係は、全体計画の中でも、費用のみ

のかかる困りもの扱いをされることが多いです。ここでは、日本式の改善積み上げ主義よ

りは、アメリカ式のトップダウン方式のほうが、ルール徹底なり、目的・目標の浸透とい

う点では、数段優れているといえます。企業では、当たり前のように進んでいますが、組

織、管理体制としては、特殊である医療機関内の現状では、進めにくいこともあろうかと

思いますが、ぜひ環境整備の重要な要素である廃棄物についての担当者を選任し、部門

が、組織として管理、認知され、担当者の意見が反映される体制を作っていただきたいと

願います。これは企業、医療機関の活動を人の身体に例えるならば、脳神経系の部分に当

たるといえます。

同様に、企業、医療機関の活動を血管に例えるならば、企業なら製品を製造、販売する

活動は、動脈に当たり、これが主たる利潤の確保です。医療機関であれば、診療活動がこ

れに該当します。

一方、企業でも製造、生産活動をしていれば、当然その工程の途中で、種々の廃棄物が

発生します。医療機関でも内容こそ違っても、注射針、点滴などのチューブ類等々感染性

廃棄物を始め、検査廃液は血液が混じっており感染性廃棄物ですが、検査試薬は、血液と

は関係ないので、感染性廃棄物ではなく、産業廃棄物あるいは特別管理産業廃棄物などの

廃棄物が発生します。このように費用のみが発生し静脈に当たるといえます。ISO

14001 なり、ISO9001 の認証を取得している企業、医療、あるいは医療機能評価機構の

第三者評価を取得していれば、CSR、環境への影響など廃棄物に対しての理解があり、

これらへの配慮も深いといえます。しかし数年前ですが、医療機能評価機構のある部門の

リスクマネジメントへのアプローチ⇒ 組織としての活動位置づけ

① 担当者の決定 ② ルール作成 ③ 企業、医療機関各組織全体にルール浸透

-10-

部長の説明では、医療機能評価の詳細分析の結果をみると、ワーストワンは、廃棄物処理

であり、例年トップを続けているとのことで、感染性廃棄物に携わる者としては、身に詰

まる思いであり、印象強く残っています。

これは医療機関ばかりではなく、企業もほぼ同様であると聞きますが、リスクマネジメ

ントへのアプローチとしては、上記図 3、4の組織としての活動の位置づけが重要です。

しかし特に医療機関において廃棄物に関する意識が希薄であることは、否めません。

第一は、担当者の決定と共に、企業、医療機関全体において、CSRに関しての認識

と、廃棄物処理に関しての重要さの意識を持つことが大きな課題となります。

①担当セクションと担当者の決定 ②ルール作成 ③企業、医療機関各組織全体にルール

浸透が重要なポイントといえます。(前ページ囲み参照)

前回の処理計画に続く管理体制として、PDCAやPDSの管理サイクルなどは、や

や専門的な、少し馴染みにくい内容となってしまいました。しかし今後、企業ばかりでな

く、医療機関にも要求されるものです。リスクマネジメントの考えは、医療では、医療事

故、インシデント、ヒヤリハットなど廃棄物と関連しても、切っても切れない重要なもの

です。ぜひこの機会に、廃棄物のリスクマネジメントについてご自分なりの考えをまとめ

てみてください。

なお、文献8.のイベントで危機管理カンファレンス 2018(無料)が、9月 27 日に開

催されます。この中には、「学校や病院のリスクマネジメントから学べること~リスク担

当者が知っておくべき対策の盲点~」も取り上げられています。またリスクマネジメン

ト、BCP(災害時などの事業継続計画)などのテーマです。他のシンポの演者の肩書をみ

ると、例えばヤフー㈱ 法務統括本部リスクマネジメント室プリンシパル、佐川急便㈱総

-11-

務・CSR 推進担当 取締役、リスク対策コンサルタント、パナソニック㈱ 情報企画部(社

内複業;兼務です)リスクマネジメント部(女性)、千代田化工建設㈱グローバル本社 危

機管理部(女性)と多数あり、企業ではリスクマネジメントに真剣に取り組んでいます。

今後は、企業、学校も医療機関もリスクマネジメントは、ますます重要なテーマとし

て考えていかなければなりません。その中でも医療機関では、まだまだ廃棄物などのセク

ションと担当者は兼務であれ、権限が制約されがちです。今後の活動に期待したいです。

♦ 平成 30 年 北海道胆振東部地震 感染性廃棄物の状況

原稿終了後に、平成 30 年北海道胆

振東部地震が起きました。まさにリス

クマネジメントの実践が求められまし

た。発生翌日に当地の処理業者の方か

ら頂いた連絡では、感染性廃棄物は、

病院からの回収は禁止で、それ以前に

処理施設は電力の供給が止まり、稼働

にめどが立たないとのこと。数日で大

きな病院では感染性廃棄物が溢れ、ス

ペースがない上に冷房も働かず限界と

のことでした。

BCP(Business continuity planning

/事業継続計画)とも関連することですが、インフルエンザのパンデミックなども予想さ

れます。暑さこそ峠を越していましたが、今回は、2日後に病院からの悲鳴で(写真参

照)、道路は信号なしの状態で、収集に回ったとのことです。平素からこのような災害発

生時の非常事態の対応のシミュレーションは、必須であるといえます。

特に感染性廃棄物等容器、スペース、そして非常用電源等の備えが重要とのことです。

次回は、4.管理体制に続く5.徹底・実践のための教育について解説の予定です。

セルフセスメントの後に、2018(平成 30)年 10 月5日(金)に開催される医療廃棄

物適正処理講習会のご案内(参加無料)とトッピクスとして風疹の大流行について簡単に

触れましたので、ぜひお読みください。

第 109 回 セルフアセスメント

第 109 回の解説の中から設問を用意しました。もしご興味がおありでしたら、お答えく

ださい。解答は次回といたします。

リスクマネジメントへのアプローチでは、組織としての活動を位置づけることが重要で

す。そして、1.( ① )の決定、2.( ② )作成、企業、医療機関各組

織全体に 3.( ③ )が重要なポイントといえます。

第 108 回 解答

1.針刺し事故等について、( ① 平常時 )からマニュアルを用意した対応体制ができて

いる場合は、まだまだ少ないのが現状です。( ② リスクマネジメント )の立場から

は、( ③ マニュアル )を作成し、B型肝炎ワクチンの処理業者への接種を始め、平常

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時の感染防止委員会などとの関連を持った、感染性廃棄物の適正処理を進めるべきで

す。

♦ 神奈川県資源循環協会主催 医療廃棄物の適正処理講習会について 参加無料

開催日時 平成 30 年 10 月 5 日(金)14 時 00 分~16 時 40 分 (休憩・質疑を含む)

開催場所 横浜情報文化センター 6階情文ホール(横浜市中区日本大通 11)

演題及び講師

(1)「(仮題)産業廃棄物(感染性廃棄物)処理の実際」処理の流れ DVD 上映を含む (株)メディカルパワー 岩澤敏治氏 (株)リフレックス 田丸圭介氏 60 分

(2)「知らないとコワイ排出事業者責任-基礎から学ぶ廃棄物適正処理の ABC」80 分 東京臨海リサイクルパワー(株)顧問 原田 優 氏

募集定員 150名 申込み先 協会事務局 樫村 電話(045)681-2989 ※ 講演では、時間的にも排出事業者責任についてすべては難しいので、今回か

ら、テーマを決めて順次基礎からの解説の予定で、今回は適正な分別と適切な

容器の使用で、廃棄物の分類表から分別のフローチャート等を学びます。講習

会場は 横浜みなとみらい線の日本大通り駅の6階で東京からほぼ1時間です。

♦ トピックス 風疹、関東中心に大流行の兆し - 妊婦は感染にご注意を

国立感染症研究所(感染研)は 9 月 11 日、9月2日までの1週間で風疹患者の報告数

が新たに 75 人増え、今年に入り全国で 362 人になったと発表しました。既に昨年1年間

の4倍近くに達し、依然として東京都や千葉県など首都圏での感染が目立っています。

グラフ 1 都道府県別風しん累積報告数 2018 年 第1週から 35 週(患者計 362 人)

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都道府県別では、東京が前週から 28 人増えて 111 人となり、前週まで最も多かった千

葉の 95 人(前週比 11 人増)を上回りました。

この他は、神奈川 33 人(同8人増)、埼玉 23 人(同5人増)と続き、関東地方が全患

者の7割以上を占める状態が続いています。

7月下旬から患者が急増し、特に千葉、東京などで増えています。過去のワクチン接種

方法の変更の影響で接種率が低い 30~50 歳代の男性が特に多く、これらの人達が次の感

染を広げる原因ともなります。女性ばかりでなく男性のワクチン接種が望まれます。 風疹の感染経路は、くしゃみや咳で感染する飛沫感染です。14~21 日間の潜伏期間を

経て、発熱や発疹、リンパ節の腫れが出ます。人への感染は、発疹が出る1週間前から起

こる。妊娠 20 週ぐらいまでの女性が感染すると、赤ちゃんが難聴や心臓病、白内障にな

るリスクがあり、妊婦や家族は特に注意が必要です。2012~2013 年の流行では、1 万 6千

人超えが感染し、不幸にも 45 人の新生児に障害がでてしまいました。

感染研感染症疫学センターの多屋馨子(けいこ)室長によれば、風疹は流行すると

2~3年続くことが多く、患者が増えている地域に住む人や勤める人で、罹患歴や予防接

種歴がないか不明の場合、ワクチンを検討した方が良いとのことです。女性は妊娠前に

ワクチンを2回受けた方が確実です。 グラフ 1 とグラフ 2(次ページ)の 2013(H25)年の流行をみるとほぼ同様の急増をし

ており、当時 3,445 人であり、かなり危険な兆候が見られ厳格な注意が必要といえます。

グラフ 2 風しん 受理週別報告数推移 2013 年1週から 52 週 計 3,445 人

この項の引用文献

国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/rubella.html

東京都感染情報センター http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/rubella/rubella/

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本文[引用・参考文献]

1.FUNAI SOKEN 廃棄物管理の社内体制 排出元のための廃棄物管理、

http://sanpai-web.com/sanpai_cat/taisei/

2.環境省監修、日本医師会・日本産業廃棄物処理振興センター、平成 24 年度 医療関係

機関等を対象にした特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会テキスト、第3章

および資料編 3 医療関係機関等からの廃棄物の安全管理 原田担当部分、日本医師

会・日本産業廃棄物処理振興センター、2012.9

3.原 マサヒコ、仕事のできない人は PDCA がわかっていない トヨタで学んだ男が説く

カイゼン術の超基本、https://toyokeizai.net/articles/-/99619?page=2

4.東京海上日動リスクコンサルティング㈱、東京海上廃棄物管理体制廃棄物リスクマネ

ジメントコンサルティング、

http://www.tokiorisk.co.jp/consulting/enviroment/waste.html

5.日本適合性認定協会、環境マネジメントシステム(EMS)認証 (ISO 14001)他、

https://www.jab.or.jp/iso/iso_14001/

6.吉田薫、リスクマネジメント Management&Golf、

http://mg-consultant.com/consulting-2/riskmanagement/

7.三村 聡、ISO 14001(環境マネジメントシステム)ISO 9001(品質管理マネジメント

システム)、https://www.aims.co.jp/kiso/14001.htm

8.新建新聞社、リスク対策.COM、廃棄物リスクが会社を危機に陥れる ビーフカツ横流

し事件の教訓、危機管理カンファレンス 2018、http://www.risktaisaku.com/


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