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投稿論文 - M-Review

Date post: 16-Oct-2021
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Epilepsy Vol.12 No.22018 1159 119はじめに 脳腫瘍患者の診療では,しばしば,てんかん発作を 経験する.脳腫瘍の 30%以上にてんかんを合併する といわれ 1) ,てんかん発作により脳腫瘍の診断に至る 例も多い.日本脳神経外科学会の脳腫瘍全国集計調査 報告では,初発症状がてんかん発作であった悪性脳腫 瘍患者は 18%にものぼるとされている 2) 脳腫瘍は他の脳器質病変と比較して,てんかん発症 のリスクはかなり高い(1).てんかん有病率は人口 の約 1%といわれるが,脳腫瘍患者のてんかん発症の 相対リスクは 40 倍にも達し,くも膜下出血の 34 倍や 重症頭部外傷の 29 倍より際立って高い 3) 脳腫瘍に合併するてんかん発作は,Todd 麻痺のよ うな運動障害や認知障害を引き起こし大幅に患者の QOL(quality of life)を低下させるので,極力制圧す ることが重要である.しかし,脳腫瘍関連てんかんは, 腫瘍細胞内から細胞外への薬物排出に関する ABC 輸 送体遺伝子や多剤耐性関連蛋白の高発現などにより, 他のてんかんより薬剤耐性を獲得しやすく,難治化し たり,さらに重度のてんかん重積状態に至ることも少 なくないといわれている 1) .てんかん発作を制圧する ことは患者の QOL 向上につながるが,そのために多剤, 大量の抗てんかん薬を投与することは副作用の点から 望ましくない.また,多くの患者は,すでに抗腫瘍剤 やステロイドをはじめさまざまな薬物治療を受けてお り,これらとの相互作用に対する配慮も重要である. 近年,新規抗てんかん薬の登場に伴い,特徴ある作 用機序をもつ,強力で副作用が少ない薬剤がこれら脳 腫瘍患者にも利用できるようになってきた.本稿では, 脳腫瘍関連てんかんの特徴について紹介し,てんかん の薬物療法について解説する. 1 脳腫瘍における てんかんの疫学と発症機序 てんかんの発症率は,脳腫瘍の種類や発症部位に よって異なる 1, 4, 5) .胚芽異形成性神経上皮腫瘍(dyse- mbryoplastic neuroepithelial tumor:DNT)では 100%, 神経節膠腫(ganglioglioma)においては80〜90%と高 頻度にてんかんを発症する(1).低悪性度(Grade 2) の星細胞腫(astrocytoma)における発症率は75%に対 し,悪性の膠芽腫(glioblastoma:GBM)では29〜49% である.低悪性度の腫瘍にてんかんの発症率が高い傾 向にある.悪性度が低い腫瘍患者においては長期の予 後が期待できるので,それにあわせててんかん治療も 計画すべきである.また,転移性脳腫瘍においても 20〜35%にてんかんの発症が報告されている. 前頭葉など運動野や側頭葉など大脳辺縁系近傍の腫 瘍は,てんかん発症率が高い.脳腫瘍患者におけるて んかんの発症機序(てんかん原性獲得機序)はさまざま 加藤天美 近畿大学医学部脳神経外科,難治てんかんセンター教授 投稿論文 総説「脳腫瘍関連てんかんの薬物療法」
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総説「脳腫瘍関連てんかんの薬物療法」

Epilepsy Vol.12 No.2(2018 ─ 11) 59 (119)

はじめに脳腫瘍患者の診療では,しばしば,てんかん発作を

経験する.脳腫瘍の 30%以上にてんかんを合併するといわれ1),てんかん発作により脳腫瘍の診断に至る例も多い.日本脳神経外科学会の脳腫瘍全国集計調査報告では,初発症状がてんかん発作であった悪性脳腫瘍患者は 18%にものぼるとされている2).

脳腫瘍は他の脳器質病変と比較して,てんかん発症のリスクはかなり高い(図 1).てんかん有病率は人口の約 1%といわれるが,脳腫瘍患者のてんかん発症の相対リスクは 40 倍にも達し,くも膜下出血の 34 倍や重症頭部外傷の 29 倍より際立って高い3).

脳腫瘍に合併するてんかん発作は,Todd 麻痺のような運動障害や認知障害を引き起こし大幅に患者のQOL(quality of life)を低下させるので,極力制圧することが重要である.しかし,脳腫瘍関連てんかんは,腫瘍細胞内から細胞外への薬物排出に関する ABC 輸送体遺伝子や多剤耐性関連蛋白の高発現などにより,他のてんかんより薬剤耐性を獲得しやすく,難治化したり,さらに重度のてんかん重積状態に至ることも少なくないといわれている1).てんかん発作を制圧することは患者の QOL 向上につながるが,そのために多剤,大量の抗てんかん薬を投与することは副作用の点から望ましくない.また,多くの患者は,すでに抗腫瘍剤やステロイドをはじめさまざまな薬物治療を受けてお

り,これらとの相互作用に対する配慮も重要である.近年,新規抗てんかん薬の登場に伴い,特徴ある作

用機序をもつ,強力で副作用が少ない薬剤がこれら脳腫瘍患者にも利用できるようになってきた.本稿では,脳腫瘍関連てんかんの特徴について紹介し,てんかんの薬物療法について解説する.

1 脳腫瘍における てんかんの疫学と発症機序

てんかんの発症率は,脳腫瘍の種類や発症部位によって異なる1, 4, 5).胚芽異形成性神経上皮腫瘍(dyse-mbryoplastic neuroepithelial tumor:DNT)では 100%,神経節膠腫(ganglioglioma)においては 80〜90%と高頻度にてんかんを発症する(表 1).低悪性度(Grade 2)の星細胞腫(astrocytoma)における発症率は 75%に対し,悪性の膠芽腫(glioblastoma:GBM)では 29〜49%である.低悪性度の腫瘍にてんかんの発症率が高い傾向にある.悪性度が低い腫瘍患者においては長期の予後が期待できるので,それにあわせててんかん治療も計画すべきである.また,転移性脳腫瘍においても20〜35%にてんかんの発症が報告されている.

前頭葉など運動野や側頭葉など大脳辺縁系近傍の腫瘍は,てんかん発症率が高い.脳腫瘍患者におけるてんかんの発症機序(てんかん原性獲得機序)はさまざま

加藤天美近畿大学医学部脳神経外科,難治てんかんセンター教授

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総説「脳腫瘍関連てんかんの薬物療法」

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であるが,おおまかに下記のような項目が挙げられている1).① 腫瘍そのものが,てんかん原性をもつ  皮質形成異常をともなう腫瘍(DNT,結節性硬化症

など)②腫瘍周辺組織がてんかん原性をもつ  浮腫,ヘモジデリン沈着などによるグリオーシス,

ニューロンの変化③腫瘍による生理学的環境改変  低酸素,pH 変化,血液脳関門破綻による血液成分,

興奮性アミノ酸やサイトカイン拡散④遺伝子要因  体細胞遺伝子変異,腫瘍関連遺伝子変異のてんかん

原性など⑤ 2 次性てんかん原性形成  Dual pathology(難治てんかんにより遠隔の海馬硬

化が生じ,さらに難治化する)など脳腫瘍摘出術によって 60〜80%の患者で発作消失

が得られている.抗腫瘍剤が効き,腫瘍が静止あるいは縮小した場合もてんかん発作が減少するので,てん

Brain tumor

MR/CP

Family history

Complex febrile seizures

Simple febrile seizures

Alzheimer disease

SAH

Hemorrhagic CVA

Ischemic cortical CVA

Cerebrovascular disease

Aseptic meningitis

Bacterial meningitis

Encephalitis

Mild TBI

Moderate TBI

Severe TBI

0RR1

10 20 30 40

40

27

2.5

8.2

2

7.5

34

26

9.7

6.5

2.3

4.2

16

1.5

4

29

図 1 脳障害患者のてんかんの発症リスクRR:relative risk,MR/CP:mental retardation/cerebral palsy,SAH:subarachnoid hemorrhage,CVA:cerebro-vascular accident,TBI:traumatic brain injury.

(文献 3 より転載)

Tumor histology Seizure frequency

Dysembryoblastic neuroepithelial tumor 100%

Ganglioglioma 80~90%

Low-grade astrocytoma 75%

Meningioma 29~60%

Glioblastoma multiforme 29~49%

Metastasis 20~35%

Leptomeningeal tumor 10~15%

Primary CNS lymphoma 10%

(文献 1 より転載)

表 1 脳腫瘍の病理分類とてんかんの発症

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かん原性領域は主に腫瘍周辺組織にあると推定される.しかし,脳腫瘍によるてんかん発症の機序は,患者数の多い脳卒中や頭部外傷後の症候性てんかんと比較して複雑であり,今後の解明が待たれる.

2 脳腫瘍関連てんかんに対する 薬剤選択のポイント

脳腫瘍関連てんかんは部分てんかんに分類され,二次性全般化やてんかん重積状態をともなうことも多い.脳腫瘍患者の多くは抗腫瘍剤を,特に高齢の場合はさまざまな全身合併症に対する薬物治療を受けている.そのため,抗てんかん薬を選択する場合,後述するガイドラインの推奨とは異なる特別な判断が必要である.とりわけそれぞれの薬剤との薬物相互作用や副作用に注意すべきである1, 5, 6).主な抗てんかん薬とその作用機序を表 2 にまとめた.

肝臓における薬物代謝酵素を誘導するカルバマゼピン,フェニトイン,フェノバルビタールは,抗腫瘍剤を含め多くの薬剤の血中濃度を低下させるので,望ましいとはいいがたい.逆にバルプロ酸は,代謝酵素を阻害し抗腫瘍剤などの血中濃度を上げ毒性を高める可能性がある1).実際,バルプロ酸による肝毒性やそれにともなう高アンモニア血症がしばしば観察され,抗癌剤の血液毒性のリスクを上げることが報告されてい

る7).また,ラモトリギンは抗てんかん効果,副作用プロファイルや精神作用の面で優れた特徴があるが,導入時に必須の漸増処方や重症薬疹のリスク,手術のため中止したとき,再開し維持期に到達するまでのてんかん発作リスクなど,病状が変化しやすい脳腫瘍患者では使いづらい面もある.同様に,ゾニサミドやトピラマートは,うつや認知障害などの精神面での副作用もあり,脳腫瘍患者に処方する観点からは優先しにくい.

その点,レベチラセタム,ラコサミド,ペランパネルなどの新規抗てんかん薬は薬剤相互作用が起こりにくく処方しやすいとされている8).抗腫瘍剤との併用にあたっては,抗腫瘍剤と抗てんかん薬の双方の副作用徴候に留意する必要がある.脳神経外科領域で頻用されているレベチラセタムは,比較的,身体的な副作用は少ないとされているが,それでも,Stevens-Johnson症候群や重篤な白血球減少症,肝機能異常のリスクが報告されている.これらは多くの抗腫瘍剤でも懸念される副作用であり,レベチラセタムとテモゾロミドとの併用で肝障害のリスクが高まることも報告されている9).すでに使用中の抗腫瘍剤の安全性を確認し,あまねく抗てんかん薬の併用はさらに毒性が高まる可能性も考慮すべきであり,投与開始前および投与中の臨床検査値や臨床症状の定期的なモニタリングが重要である.

抗てんかん薬 主な作用機序

カルバマゼピン,オクスカルバゼピン,フェニトイン,ラモトリギン,ラコサミド,ルフィナミド,ゾニサミド

ナトリウムチャネル阻害

ガバペンチン,エトスクシミド カルシウムチャネル阻害

レベチラセタム シナプス小胞蛋白SV2A結合

ペランパネル AMPA受容体阻害

ビガバトリン GABA代謝阻害

ベンゾジアゼピン,バルビツレート GABAa受容体活性化

バルプロ酸,トピラマート 複数作用機序

表 2 主な抗てんかん薬と主な作用機序

(筆者作成)

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投稿論文

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3 脳腫瘍関連てんかんに対する 主要な抗てんかん薬の効果

脳腫瘍にともなうてんかんなど,新規発症の部分てんかんには,「てんかん診療ガイドライン 2018」10)において,第一選択薬としてカルバマゼピン,ラモトリギン,レベチラセタム,次いでゾニサミド,トピラマートが挙げられ,第二選択薬としてフェニトイン,バルプロ酸,クロバザム,クロナゼパム,フェノバルビタール,ガバペンチン,ラコサミド,ペランパネルが推奨されている.上述のように,これら第一選択薬と第二選択薬のなかから,効果,副作用,薬物相互作用,実臨床において脳腫瘍患者への使いやすさを考慮すれば,レベチラセタム,ラコサミド,ペランパネルの 3 剤が挙げられる.

1.レベチラセタム

レベチラセタムは,各種受容体および主要なイオンチャネルとは結合せず,主に,神経終末のシナプス小胞蛋白質 2A(SV2A)と結合し,従来の抗てんかん薬とは異なる機序で発作抑制作用を発現することが示されている.肝臓のチトクローム P-450 では代謝されず,薬物相互作用はほとんどない11).重篤な身体的副作用もまれで,部分てんかんの第 1 選択薬として,幅広く用いられている.神経膠腫患者 176 例を登録した前向き研究では,82 例がてんかんと診断され,レベチラセタムの治療により,平均 13 カ月のフォローアップで 75 症例(91%)が発作消失を得たという12).この研究では相対的に低悪性度神経膠腫が多く,患者群のバイアスや短いフォローアップなど,実際の臨床と多少異なった点はあるが,優れた効果といえる.実臨床でもレベチラセタムは脳腫瘍領域で頻用されている.

2.ラコサミド

ラコサミドは新規のナトリウムチャネル阻害薬である.ナトリウムチャネル阻害は,従来より定番の抗てんかん薬作用機序でもあり,安定した効果が期待できる.神経膠腫関連てんかんへの処方に関し,薬剤抵抗

性のてんかん患者 71 例における観察研究の結果が報告されている13).3 カ月,6 カ月,9 カ月の治療で,50%以上の発作改善を認めた症例の割合は 74.6%,76.0%,86.2%,発作消失の割合は 42.2%,43.0%,50.0%と期待通りの効力が確認された.腫瘍の悪性度の違いや抗腫瘍剤併用の有無によっても発作抑制効果に有意な差異は認められず,副作用が少なく,安全に使用できる薬剤のひとつであるといえる.

3.ペランパネル

ペランパネルは後シナプスに存在する AMPA(α-amino-3-hydroxyl-5-methyl-4-isoxazole-propionate)型グルタミン酸受容体を選択的に阻害するユニークな作用機序をもつ抗てんかん薬として開発された14).世界において上市後の期間が短いため大規模な臨床研究はないが,2 剤以上の抗てんかん薬によっても発作が抑制されない神経膠腫による難治てんかん 12 例に対し,ペランパネルを投与したところ,75%の患者で発作回数が半分以下となり,50%の患者では発作が消失したと報告されている15).

血液脳関門が破綻した脳腫瘍では,グルタミン酸をはじめ,さまざまな生体物質が腫瘍や周辺組織に拡散し,複雑な分子病理学的反応を惹起する.さらに,脳腫瘍とてんかんの機序には共通する点が多いという.たとえば神経膠腫細胞は,グルタミン酸を過剰に分泌しその受容体を介し腫瘍の増大を促進するが,過剰のグルタミン酸はてんかんを誘導するリスクがある.また,GABA(γ-aminobutyric acid)はてんかんの過剰な神経活動を抑制するが,同時に腫瘍抑制効果があるともいわれている6).一部の神経膠腫細胞には AMPA受容体が発現しており,腫瘍増殖にもかかわっていると考えられていることから,腫瘍の進行に対するペランパネルの作用が注目されている6).

ここで,私どもが施行した神経膠腫関連てんかんに対するペランパネルの臨床研究を紹介する16).患者には抗てんかん薬として主にレベチラセタムやバルプロ酸の治療を行ったが十分な効果が得られず,ペランパネルの追加投与を行った.研究から脱落した 2 例を除

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き,10 例全例に 50%以上の発作改善が認められ,このうち 6 例(60%)に発作消失が得られた(表 3).ペランパネル投与開始 6 カ月後に,MRI FLAIR(fluid at-tenuated inversion recovery)法による画像上の腫瘍体積を測定した結果,興味深いことに,体積測定した 9例全例にペランパネル血中濃度依存的な腫瘍体積の減少が認められ,腫瘍進行ないし,腫瘍増殖に対するペランパネルの抑制効果が示唆された16).

従来の抗てんかん薬の多くが,グルタミン酸を放出する前シナプスを抑制することにより抗てんかん作用を発揮する.その効果が十分でない場合に,後シナプスの AMPA 受容体を阻害するペランパネルを併用することは,てんかん治療において強力な治療オプションとなりうる.さらに腫瘍の進展とグルタミン酸とのかかわりが明らかにされつつあり,抗てんかん作用を超えた脳腫瘍に対する効果が,ペランパネルに期待される.

4 抗てんかん薬の抗腫瘍効果について前述のように,脳腫瘍とてんかんの機序には共通す

る点が多く,抗てんかん薬が抗腫瘍効果を有する可能性が推測されている.バルプロ酸の抗てんかん作用には,GABA シグナルの亢進などさまざまな機序が提唱されているが,さらに,癌細胞の DNA 合成に重要なヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase:HDAC)の阻害活性を有することが知られている6).また,レベチラセタムには,DNA 修復蛋白 MGMT の発現を抑制する作用があり,テモゾロミドの抗腫瘍効果を増強すると考えられている6).このように,抗てんかん作用に加え抗腫瘍効果への期待からも,バルプロ酸とレベチラセタムは脳腫瘍関連てんかんに広く用いられてきた.しかし,これらの薬剤の抗腫瘍効果についてはさまざまな報告があり,十分な確証は得られていない.GBM 患者 1,869 例を対象にした臨床試験の統合解析では,バルプロ酸またはレベチラセタムを用いた患者群において,無増悪生存期間(progression-free

CaseAge,

genderGliomatype

Initialsymptom

Sz type AEDSz type

after PERResponse to Sz frequency

TMZ BevPost RT(M)

1 31, M As SGS SGS LEV SPS Sz<50% 4

2 32, F AA headache SPS VPA ─ Sz Free 24

3 65, M AA SGS SPS LEV ─ Sz Free + 15

4 70, M AA SPS SGS LEV+VPA ─ Sz Free + 20

5 42, M AO SGS SGS LEV ─ Sz Free + 22

6 47, M AO SGS SGS LEV SPS Sz<50% + 14

7 74, F AO SGS SPS LEV ─ Sz Free + 6

8 37, F AO SGS SPS PHT+CLB SPS Sz<50% 141

9 83, F GB hemiparesis SGS VPA SPS Sz<50% 9

10 84, M GB SPS SPS LEV ─ Sz Free + 6

表 3 神経膠腫関連てんかんに対するペランパネル追加治療の効果

As:diffuse astrocytoma,OA:oligoastrocytoma,AA:anaplastic astrocytoma,AO:anaplastic oligodendroglioma,GB:glioblastoma,SGS:

secondary generalized seizure,SPS:simple partial seizure,AED:anti-epileptic drug,TMZ:temozolomide,Bev:bevacizumab,CLB:clo-

bazam,LEV:levetiracetam,VPA:valproic acid,PHT:phenytoin,RT:radiation therapy,Sz:Seizure,Sz<50%:More than 50% seizure

reduction.

(文献 16 より転載,一部改変)

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投稿論文

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survival:PFS),全生存期間(overall survival:OS)ともに延長は認められなかったという17).神経膠腫の増殖におけるグルタミン酸の意義や,上述したペランパネルの腫瘍進行抑制効果を含め,今後のさらなる解析が待たれる.

おわりに脳腫瘍にともなうてんかんについて,薬物療法を中

心に解説した.脳腫瘍関連てんかんの治療のゴールは,てんかん発作の制圧により患者の QOL を向上させることにある.疾患の性格上,エビデンスレベルの高い研究は多くない.また,一般のてんかんに対するガイドラインが当てはまらない場合も多い.しかし,近年の抗てんかん薬は優れた薬剤特性を備えており,これを積極的に用いることで,治療成績の向上が望まれる.てんかんの診断技術の開発や,脳腫瘍関連てんかんを含むてんかん動物モデルの研究も盛んに進められており18),てんかん治療に変革をもたらすことを期待したい.

利益相反開示本論文に関連し,開示すべき利益相反状態にある企業は,

エーザイ株式会社,第一三共株式会社,UCB Japan 株式

会社である.エーザイ株式会社よりメディカルレビュー社

へ,本論文の掲載費用の負担があった.

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