+ All Categories
Home > Documents > -三井-MAN B&W電 子制御式機関について 解説Explanation

-三井-MAN B&W電 子制御式機関について 解説Explanation

Date post: 17-Nov-2021
Category:
Upload: others
View: 1 times
Download: 0 times
Share this document with a friend
1
Transcript

解説Explanation2サ イクル低速機関のメカ トロニクス技術*

-三井-MAN B&W電 子制御式機関について

花 房 眞**島 田 一 孝**志 岐 純 平**

1.は じめに

2サ イ クル低速機 関 におい ては,旧 来の機械式制

御 システ ムが使用 されて きた が,メ カ トロニ クス技

術 の飛躍 的向上 と信頼性 の確 立 に伴 い,現 在 では電

子ガバナ及び電子VIT(Variable Injection Timing)

装置 な どが開発 され,メ カ トロニ クス技術 が実用化

されてい る。

IMOのNOx排 出規制(MARPOL 73/78 Annex VI)が

2005.05.19に 発効 し,今 後毀 階的 に強化 されてい

くと予想 されている.こ の排 出ガス規制 を大 きな転

機 として,従 来 の機械制 御式機 関では不 可能 であ

った燃料 噴射 と排気弁駆 動 の最適 な制御 が可能 と

な る電子制御化が,2サ イ クル低速機 関の今後の生

き残 りをか けた必須技術 と して位 置づ け られて い

る。

MAN B&W社 を始め,W�RTSIL�,三 菱の2サ イクル

低速機 関 の3ラ イセ ンサー は主要制御部分 を電子制

御化 した電 子制御式機関 をライ ンア ップ してお り,

大 口径機 関 を中心にその採用実績は増加 している.

以 下に,三 井-MAN B&W電 子 制御 式機 関を通 して2

サイ クル 低速機 関の メカ トロニ クス技術 採用例 を

紹介す る.

2.三 井-MAN B&W電 子制御式機関(LE機 関)

電子制御式 のME機 関 と従来のカム軸制御式 のMC

機 関 との構造比較を図1に 示す.

図1.MC機 関とME機 関の比較

従来型機関の燃料噴射,排 気弁制御,起 動空

気及びシリンダ注油を制御してきたカム軸を廃止し,電 子制御方式 に変更 した以外は,実 績のあ

る三井-MAN B&W MC機 関の構造を踏襲 している.

電子制御式機 関では従来のカム軸による機械式

制御 と異なり,作 動油による油圧制御 となる.図2

に油圧系統の概念図を示す.作 動油は機関潤滑油か ら分岐 して,供 給 され,自 動逆洗フィルターを

介 して,機 関駆動油圧ポンプにより約200barに 加

圧 され各シリンダに導かれる.シ リンダ毎に装備

されたFIVA弁 と呼ばれる可変ソレノイ ド弁により

燃料噴射及び排気弁駆動を適切なタイ ミングで制

御する.

図2.電 子制御式機関油圧系統概念 図

3.電 子制 御 式機 関システ ム制御 図

図3に 電子制御 式機 関の コン トロール システ

ム を示す.

制御部分は,2つ 以上の冗長性 を持たせ た設計

とな ってお り,1つ の部品の故障で機関が停止 し

ない よ う配慮 され てい る.

また,ラ イセ ンサーであるMAN B&W Diesel社

は,全 ての制御ユ ニ ッ トで使用 可能 なMPC(Multi

Purpose Controller)を 自社開発 し,変 化 の激 し

い電子機器部 品 を長期 間安定 して,な お かつ迅

速 に供給する体制 も作 り上げている.

各 制御ユ ニ ッ トは ネ ッ トワー クでつ ながれ,

例 えば後述のCCUの 交換時に自動的 にECUか ら必

要 な最 新の設 定デ ー タをダウンロー ドす るこ とが

可能 で ある.以 下 に各制御ユニ ッ トの主な役割 を

記す.

*原 稿受付 平成17年6月20日

**正 会員 三井造船(株)(玉 野市玉3-1-1)

Journal of the JIME Vol.40,No.5(2005) 日本マリンエ ンジニアリング学会誌 第40巻 第5号(2005)

8

2サ イクル低速機関のメカトロニクス技術-三 井-MANB&W電 子制御式機関について 600

図3.電 子制御式機関コン トロールシステム

3.1Main Operating Panel(MOP)

主操作 画面.タ ッチパネル で シンプル なメニ ュー構成 で操 作性 に優れ ,必 要 な運転操作 とエ ンジ

ンの状況が容 易に確認で きるよ う配慮 されてい る.

図4にMOPの 主画面を示す.

MOPに よ り通常の運転操作 は もとよ り,燃 焼最高

圧力(Pmax)調 整 な どもシ リン ダ毎 に調整可能 で あ

り,従 来 の機 械制御式機 関で は機 側で の調整 が必

要 であった シ リンダカ ッ ト運転 や シ リンダ注 油率

の操作 もコン トロールルー ムで行 うことがで きる.

た だ し,一 部の操作 はパ ス ワー ド管理 され たチー

フエ ンジニア レベル に しか許 され てお らず,経 験

の未熟 な乗組員 に よる誤操 作 を防 ぐよ うに配 慮 さ

れている.な お,MOP故 障時に備 えPCを 使用 した

Back-upシ ステムがある.

図4.MOP画 面

3.2 Engine Interface Control Unit(EICU)

オ ペ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム と 電 子 制 御 式 機 関 を 遠

隔操縦す る外部システ ム(遠 隔操縦 装置)と を連結

す る.EICUで 処理 され る主な機能は航 海指令 の受

信,リ モー トコン トロール システ ム,ス ロー ダ

ウン システ ム,ア ラー ムシステ ム,テ レグラフ

システ ム,及 び電源 管 理 システ ム との連結 で あ

る.

3.3Engine Control Unit(ECU)

機 関 に関す る制御機能 を備 えてお り,機 関の起

動(ス ロー ・ターニ ン グ,再 スター ト,ス ター

ト・ブ ロックを含む),停 止及び逆転 の 自動制御,

並 びに 従来 のガバナー に相 当す る機 関 回転速 度の

制御,更 には運転モ ー ドの切 り換 え を行 う.ま

た,燃 料制限,ロ ー ド・プ ログラム,危 険 回転

速度領域 の回避等の機 関保護機能 も備 えてい る

.3.4 Cylinder Control Unit(CCU)

シ リンダ毎に装備 され,当 該 シ リンダの燃料ポ

ンプ及 び排気弁アクチュエータ用比例制御弁(FIVA

弁),ア ル ファシ リンダ注 油器用電磁 弁及 び始動弁

用電磁弁 をそれぞれ制御 している.

3.5 Auxiliary Control Unit(ACU)

油圧 源装置(HPS)の 電動 スター トア ップポンプ

及 び排 気 高圧管へ のブー スター ポンプ を制御 す る

他,補 助 プロアの制御 も行 う.ACUは 油圧源装置

全体 を制御 してお り1つ のACUが 故障 し,該 当す

るポ ンプが運転 できな くなって も必 要 な油圧 を供

給で き るよ う配置 され ている.

4.メ カ トロニ クス技術導入事例

4.1燃 料噴射系

図5に 三井-MANB&WLE機 関の燃料噴射 の概念図

を示す.可 変 ソレノイ ド弁であるFIVA弁 に よって

制御 された作動油で必 要期 間のみ燃 料 を加圧 す る

燃料 油 ブー スター方式 を採用 してい る.燃 料 噴射

プ ロフ ィール及び燃料 噴射率 を機 関負荷 に応 じて

最適 に設 定す ることによ り,機 関の燃 費 とNOx排 出

特 性の組合せ を高い 自由度で変更で きる.

また,従 来 のカム軸 に よる機械式 制御機 関で は

正転 時 と逆転時 で燃料 噴射 タイ ミングを変 える必

要 が あ るため,燃 料 ポ ンプ下部 の ロー ラガイ ドに

装備 され ていたが,電 子制御式機関で はFIVA弁 で

制御す ることで複雑 な逆転機構 が無 くな り,燃 料

ブー ス ターの構造がシンプルになってい る.

Journal of the JIME Vol.40,No.5(2005) 日本マリンエ ンジニアリング学会誌 第40巻 第5号(2005)9

601 2サ イ ク ル低速 機 関 の メ カ トロニ クス技 術 一三 井-MAN B&W電 子 制 御 式機 関 に つ いて

図5.電 子制御式機関燃料噴射系概念図

4.2排 気駆動系

図6に 排気駆動系の作動概略図を示す.排 気弁は

従来型機関同様油圧管制方式で,油 圧により開弁し,排 気弁側のエア ピス トンで閉弁する.排 気

弁の開閉タイ ミングは,FIVA弁 によ り作動油を供

給 ・遮断することにより制御 される.アクチュエータのピス トンは2段 構造 となってお

り,排 気弁が開くまでは2つ のピス トンが作動 し,

その後は内側のピス トンだけが作動す る.こ れによりエネルギーロスを減 らしている.

図6.電 子制御式機関排気駆動系概念図

4.3始 動空気制御系

図7に 始動空気制御 システム概要図を示す.

従来のカム軸による機械式制御機 関では,カ ム軸

に直結 した機械式起動空気管制器 により一元的に

制御 されていたが,電 子制御式機 関では各シリン

ダコン トロールユニ ット(CCU)の指令 により電磁起

動弁 を直接制御す ることとなる.シ リンダ毎に制

御部を持たせているため,冗 長性が増 し,信 頼性が向上する,ま た,エ ア投入 と燃料投入の切換 を

シ リンダサイクル毎に判定す るため,機 関が失速

した場合には再度エア投入により加速させ ること

ができるなど,確 実な起動特性 を得ることができ

る.

図7.電 子制御式機関始動空気システム図

4.3回 転検出(タコシステム)

図8に 電子制御式機関の回転検出(タ コシステム)の配置図を示す.従 来のカム軸による機械式制御

機関では回転検出は設定回転数に合わせ るガバニングにのみ使用 していたが,電 子制御式機関では

燃料噴射 ・排気弁駆動及びシリンダ注油制御 を行 うため,従 来 より高い精度の角度検出が必要 とな

る.そ のため,三 井-MANB&W機 関ではクランク

軸首端に取 り付けられたエンコーダにより機関の回転速度を検出している.エ ンコーダの信号

は各ECUに て従来のガバニング制御に使用す ると

同時に各CCUに 送られサイクル毎のタイ ミング制

御を行っている.

図8.電 子制御式機関回転検出

(タコシステム)

Journal of the JIME Vol.40,No.5(2005) 日本マリンエ ンジニアリング学会誌 第40巻 第5号(2005)10

2サ イクル低速機関のメカトロニクス技術-三 井-MANB&W電 子制御式機関について 602

4.4電 子制御アルファ注油器

電子制御アルファ注油器は高圧のシ リンダ注油

を トップ リング通過のタイ ミングに合わせて噴射

す ることにより従来よりも効率よくシ リンダ油を

リング摺動面に送 り込む ことが可能 とな り,シ リンダ注油率を最適に下げることができる.ア ル フ

ァ注油器 は従来型機 関にも装備可能であ り,こ の

場合にはシリンダ油を直接高圧 に加圧 して各シ リンダの注油器 ピス トンを駆動 させていたが,電 子

制御機 関では シ リンダ注油器 がHCU(Hydraulic Control Unit:油 圧制御装置)に 組み込まれ,燃 料

噴射系などと同様に約200barの 作動油によりシリンダ注油を加圧す る方式 となった.シ リンダ注油

率の設定はMOP画 面上で設定可能 となり,燃料油の

硫黄分に応 じてシ リンダ注油率を簡単に調整することができる.

5.今 後の展望

三井-mm B&W電 子制御式機関を通 して,2サ イ

クル低速機関へのメカ トロニクス導入事例 を紹介

したが,筆 者等が考える電子制御式機 関のメ リッ

トは次のものがあり,今 後 も積極的に利用 されて

行 くであろう.

(1)ライフサイクルコス トの低減

(2)運転モー ド切替による地域環境規制への適応

(3)機関信頼性の向上(冗 長性)

(4)乗組員の負担軽減

参 考 文 献

[1] 花 房 眞,” 排 ガ ス の排 出規 制-主 機 関 に お け る排

ガ ス 制 御 の 現 状-”,日 本 造 船 学 会 誌,第879号,p.16

~20,(2004-05)

[2] 花 房 眞 他,” 三 井 MANB&W エ ン ジ ン(電 子 制 御 エ

ン ジ ン の 開 発)”,日 本 機 械 学 会 第9回 動 力 ・エ ネ ル

ギ ー 技 術 シ ン ポ ジ ウム 講 演論 文 集,No.04-2,p.367~

372(2004-06)

[3] 花 房 眞 他,” 三 井 MANB&W 機 関 の環 境 規 制 対 応 技

術 ”,日 本 マ リ ンエ ンジ ニ ア リン グ 学 会 誌,第39巻

12号 (2004-09)

[4] T. S. Kunudsen他 “The MC/MC-C Engines and

their Development to meet Present and Future

Demands”Paper 81,CIMAC 24th Congress, Kyoto

Journal of the JIME Vol.40,No.5(2005) 日本マリンエンジニアリング学会誌 第40巻 第5号(2005)11

Recommended