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01章 食品工場 CS6 - Nikkan...生産性向上のための工程管理 Ⅰ...

Date post: 22-May-2020
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生産性向上のための工程管理 食品工場の生産性は極めて低い。その原因は生産工程の中 に、改善すべき問題点が多く残っているからである。問題を 解決すれば生産効率が向上し、問題は宝に変わる。従って問 題が多く残る食品工場は、いわば宝の山であると言える。効 率的な生産はまさに円滑なモノと人の流れである。工程管理 はこの円滑な流れ(生産の実行)を改善維持するために行 う。この章では生産における工程管理の基本を学ぶ。
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生産性向上のための工程管理

食品工場の生産性は極めて低い。その原因は生産工程の中に、改善すべき問題点が多く残っているからである。問題を解決すれば生産効率が向上し、問題は宝に変わる。従って問題が多く残る食品工場は、いわば宝の山であると言える。効率的な生産はまさに円滑なモノと人の流れである。工程管理はこの円滑な流れ(生産の実行)を改善維持するために行う。この章では生産における工程管理の基本を学ぶ。

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1食品工場は改善すべき問題が沢山残る宝の山

本書のねらいは、日本中の食品工場、特に生産性の低い加工型食品工場の生産性を向上することにある。著名なトヨタ生産方式(TPS)*の例を挙げるまでもなく、生産性の高い産業・工場には必ずと言ってよいほど、その工場の実態にあった生産性向上のための思想・考え方・方法がある。

これまで著者は、日本中の数多くの食品工場の生産性向上の支援をさせて頂いてきた。そのほとんどの食品工場では少なくても1〜2割、平均すれば2〜3割程度の生産性を向上させてきたつもりである。中には生産性が2倍を超えたラインもある。生産性の向上によって労務費が数千万円減少した企業もあれば、また不良品率を大幅に下げることで、経営者が驚くほど、1ラインで数千万円というコストメリットが出た工場もある。

このような経験を通じて、日本の食品工場の生産性には、まだまだ向上させるべき余地が多く残っていると考えている。と言うよりも多くの食品工場は生産性向上に関しては、手つかずの状態のままではないかとさえ感じている。このような経験の中で食品工場が低生産性である原因も少しずつ見えてきたし、またどうすれば生産性を向上できるかも徐々に分ってきた。

これらの工場の低生産性の原因や改善方法は、勿論それぞれの工場によって異なるけれども、案外と共通する部分もある。それぞれの工場の低生産性の原因を解決すれば、食品工場の生産性はもっともっと向上できると確信している。

筆者が何故生産性にこだわっているかと言うと、前著「食品工

*トヨタ生産方式(TPS):トヨタ自動車で開発された生産方式の総称、ムダを極力排除することに力点がおかれることからリーン生産方式とも呼ばれる。

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Ⅰ 生産性向上のための工程管理

場の生産管理」に述べたように、図Ⅰ–1に示される食品製造業の生産性は、全ての製造業の中で、残念ながら最も低いレベルにある事と、図Ⅰ–2のように食品製造業を構成している小分類食品製造業の生産性と給与/人の関係を比較すると、生産性の高い食品製造業ほど給与が良いと言う事実である。すなわち生産性と

3500

3000

2500

2000

1000

500

0食料品

全製造業

飲料・タバコ

繊維工業

パルプ・紙

印刷化学工業

石油・石炭

プラスチック

窯業鉄鉱業

金属製品

一般機械

電気機械

情報通信機

電子部品

輸送機械

精密機械

図Ⅰ–1 産業別生産性(付加価値金額万円/人)

3500

3000

2500

2000

1500

1000

500

0ぶどう糖

清涼飲料

砂糖精製

植物油脂

食用油脂加工

調味料

でんぷん

小麦粉

しょう油

ソース乳製品

製麦精米製造累計

他パン菓子

うま味調味料

食酢砂糖製造

動物油脂

他製粉

味噌ビスケット

米菓餡類

食料品

パン冷凍水産物

肉製品

水産缶瓶詰

生菓子

農産缶詰

海草冷凍調理食品

水産練製品

海草冷凍水産食品

その他水産

他食品

野菜漬物

塩干・塩蔵

豆腐・油揚げ

惣菜畜産食品

従業員百人

万円

付加価値/人 給与/人 従業者数

図Ⅰ–2 �食品製造業業種別�付加価値金額、一人当たり給与、従業員数

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給与は比例関係にあり、給与額は生産性と強く関係しているからである。

このことは、経営者が少しでも従業員の給与を増やしたいと考え、従業員がなるべく良い給与を望むなら、生産性の向上が極めて重要で有ることを示している。そして著者は、適切な工程管理を行えば、日本のほとんどの食品工場で、現状より少なくとも平均的に2割程度の生産性の向上は、それほど難しくないのではないか、そして生産性の向上は食品製造従事者の給与の上昇につながると確信しているのである。

当事者の現実認識(気付き)は強い改善意欲につながる。

現在では生産性向上において先端的な製造業でも、昔から生産性が高かった訳ではない。第2次大戦後から現在に至る先達製造業の活動や努力を調べて見れば、日本の食品製造業に何が欠けていたのか、何をしなければならないのか分って来るはずだ。それでは食品製造業の我々が行わなければならない事とは何だろう。

それには食品工場を低生産性にしている原因を発見し、その解決(改善)策を一つ一つ愚直に実行に移して行く事に他ならない。生産性向上は、先達の製造業が行ったように生産工程の改善により、流れである生産の過程を円滑にし、生産リソースや時間のムダを無くし、作業を効率良く行うための改善を、積み重ね続けることで成し遂げられるのである。

生産性向上は愚直な改善の積み重ねにより実現される。

生産性向上のポイント

生産性向上のポイント

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Ⅰ 生産性向上のための工程管理

2生産管理

生産管理とは、生産を行う際に製品の品質・コスト・納期の最適化を図るために行う、手続き及び活動のことをさす。ここで言う生産管理は、広義の生産計画と広義の生産統制である工程管理から成り立っている。また狭義の捉え方では、生産管理は生産工程における広義の生産統制(工程管理)を指す場合もあるとされる。いささか紛らわしいので、下に生産管理の概念図(図Ⅰ–3)を示した。広義の生産管理は、マーケットの要求に応えるために商品・

サービスを開発する製品計画(企画)、需要に基づいて生産する

生産管理 工程管理

生産実施

生産計画

需要予測 大日程計画

中日程計画

小日程計画

生産統制進度管理

手順・負荷・日程計画

余力管理

現品管理

資料管理

工程管理の領域

広義の生産管理 狭義の生産管理 狭義の工程管理

工程計画等計画機能

広義の生産統制

図Ⅰ–3 生産管理と工程管理の概念(領域)

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ための生産計画、素材を製品にする生産工程を設計する工程設計、及び具体的な作業を設計する生産工程(プロセス)計画、日々の仕事を生産資源(リソース)に割り当てる生産スケジューリングなどの生産計画と、実際に生産を行う生産実施の際に、生産が計画通り行われる様に計画とのずれを調整する生産統制(工程管理)等の、生産に関わる各段階における管理により構成される。

より良い生産の行い方を策定するためには、生産工程(プロセス)設計が必要で、円滑な流れ(生産)を実現する為に取り入れられた手法が、分業化や流れ化、作業研究である。これらは経営工学(IE: industrial engineering)的発想の応用である。

このような手法を活用することにより、多くの先達の製造業は生産性を上げてきたのである。我々食品工場もこの様な考え方やIE手法を取り入れて、先達の製造業に劣らぬようにこれまで以上に生産性を向上して、食品製造業に繁栄をもたらしたいものだ。

3工程管理とは

前述のように生産管理は、広義の生産計画と広義の生産統制により成り立っている。この広義の生産統制のことを工程管理と呼ぶ。製造業における生産管理の根幹である工程管理は、生産計画

(中日程計画等)によって与えられた素材(原料)から、各種の工程を経て生産していく過程を管理することにより、定められた品質の物を効率良く納期までに生産する(QCDを満足する)ことを目的とする。

よく知られている生産の要素として、4M(Man, Material, Machine, Method:人、物、機械、方法)がある。生産現場の各


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