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4-port RCislab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H17(2005... · 2006-03-23 ·...

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4-port ネットワークアナライザを いた RC ポリフェーズフィルタ システム 大学 0211200024 2005 2 28
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卒業論文

4-portネットワークアナライザを用いたRCポリフェーズフィルタの周波数特性自動測定システム

北見工業大学電気電子工学科電子基礎研究室

在籍番号 0211200024

秋田 悟志

2005年 2月 28日

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目次

1 序論 1

2 Sパラメータ 22.1 Sパラメータとは . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22.2 4-portネットワークアナライザ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 52.3 PSpiceで Sパラメータを測定する方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

3 RCPFの電圧伝達関数を測定する方法 73.1 Sパラメータ測定方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 73.2 Sパラメータを Zパラメータに変換する方法 . . . . . . . . . . . . . 83.3 Zパラメータを電圧伝達関数に変換する方法 . . . . . . . . . . . . . 9

4 測定結果とシミュレーション結果の比較 104.1 計算式の確認 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 104.2 4-portに見立てたRCPFの測定結果とシミュレーションとの比較 . . 104.3 4-portに見立てたRCPFとRCPFの特性を比較 . . . . . . . . . . . . 11

5 結論 12

A 4-port に見立てる測定プログラム 13A.1 プログラム内容 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13A.2 使用方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16

B 8-portのRCPF測定プログラム 17B.1 プログラム内容 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17B.2 使用方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18

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1 序論ユビキタス社会では携帯電話が大きな役割をすると期待されている.そのため

には携帯電話を低コスト,小型化し,更なる機能 (定期,クレジットカード等)を付加させ,バッテリー持続時間を長くする必要がある.電子基礎研究室では,その可能性として,現在は全てデジタルで行われている複素信号処理の一部を,アナログ複素信号処理回路を利用することにより,消費電力を低減できると考えている.そのため,アナログ複素係数フィルタの一種である,RCポリフェーズフィルタの試作,設計を進めている. 本論文では,試作した RCポリフェーズフィルタの周波数特性 (電圧伝達関数)を測定することを目的としている.しかし,4入力,4出力であるRCポリフェーズフィルタの伝達関数を測定するには,4相入力を入れ,出力を測定することになる.しかし,100MHzまでの高周波帯域まで測定する必要があるため,入力の 4相を作る事が難しく,また,出力の測定自体も難しくなる.したがって,入出力のそれぞれの電圧伝達関数を別々に測定することになる.すると合計 16個の電圧伝達関数を知るにはかなりの手間がかかる.そこで,一度に 4つのポートが測定でき,位相の測定もできる 4-portネットワークアナライザで測定するのが効果的である.しかし,ネットワークアナライザでは直接電圧伝達関数を測定できないため,Sパラメータを測定し,計算する必要がある.また,RCPFは 8ポートのフィルタのため,4ポートのアナライザでは 6回の測定が必要になる.したがって,これらの問題の解決,検討をするのが,本論文の目的である.

1

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2 Sパラメータ

2.1 Sパラメータとは

Sパラメータとは,Zパラメータや,Yパラメータと同様で,線形nポート回路の特性を表すパラメータの一つである.違うのは,Zパラメータや,Yパラメータが電圧や電流を表しているのに対して,Sパラメータは入射波および,出射波の波振幅を表している.波振幅と “絶対値が進行波の電力の平方根に,また,位相が進行波の電圧の位相に等しい複素数”である.入射波と出射波を a,bとすると,それぞれの式は下のようになる.

Z2

Zn

Z1

DUT

V1

V2

Vn

I1

I2

In

b1

a1

an

b2

bn

a2

.

.

.

.

.

.

.

図 2.1: nポート回路

b1

b2...

bn

=

S11 S12 . . . S1n

S21 S22 . . . S2n...

.... . .

...

Sn1 Sn2 . . . Snn

a1

a2...

an

(2.1)

V1

V2...

Vn

=

z11 z12 . . . z1n

z21 z22 . . . z2n...

.... . .

...

zn1 zn2 . . . znn

I1

I2...

In

(2.2)

I1

I2...

In

=

Y11 Y12 . . . Y1n

Y21 Y22 . . . Y2n...

.... . .

...

Yn1 Yn2 . . . Ynn

V1

V2...

Vn

(2.3)

2

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これらの式を見て解るようにZパラメータと,Yパラメータはポートを開放,短絡にすることにより容易に知ることができる.しかし,高周波帯域では配線のインダクタや,終端に寄るキャパシタが無視できなくなり,正確な終端開放状態や終端短絡状態を実現することができない.したがって,高周波帯域で測定する必要のある,RCポリフェーズフィルタの特性を知るには適していないことが解る.これに対して,Sパラメータの場合,終端に抵抗を付けた状態で測定するため,

リード線のインダクタや,終端に寄るキャパシタが Sパラメータの測定に与える影響が少なくなり,より測定に適している.  Sパラメータの考え方は,線形nポート回路の一つのポートに入射波を入れ,それぞれのポートで検出された出射波の比を行列で表したものである.入射波を入れ,ポートから帰ってきた進行波は反射波と呼ばれ,入射波との比を反射係数と言い ΓL = Sii に対応している.また,他のポートの進行波と入射波との比を透過係数と言い Si j に対応している.下の図を元に 1-portの反射係数を考える.

Z0ZL

VL

VLiVLr

IL

図 2.2: 1-portモデル

入射波と反射波の電圧を VLi,VLr とすると反射係数 ΓLは

ΓL = VLr/VLi (2.4)

と表される.基準インピーダンスをZ0とすると,電圧計や電流計で実際に測定できる電圧VLや電流 ILは

VL = VLi + VLr

IL = (VLi − VLr)/Z0(2.5)

と表せる.負荷インピーダンス ZLは VL/ILに等しいため,式より

ZL =VLi + VLr

VLi − VLr=

1 + ΓL

1− ΓLZ0 (2.6)

となる.したがって,反射係数は次のように表せる.

ΓL =ZL − Z0

ZL + Z0(2.7)

3

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この式を見て解るように,Sパラメータは基準インピーダンスによって値が変わる.例えば

Z0 � ZL → ΓL = −1Z0 � ZL → ΓL = 1Z0 = ZL → ΓL = 0

(2.8)

となる.これから解るように,基準インピーダンスと負荷インピーダンスが同じ場合,反射波はゼロになる.負荷が開放されていると,入射波は全て反射される.また,短絡されていると,反射波はマイナスに流れることになる.考え方を変えると,反射波は負荷インピーダンスと基準インピーダンスが等しいときを基準のゼロとして,基準インピーダンスとの違いによって a1 ≥ b1 ≥ −a1だけ流れる.次に 2-portの Sパラメータについて考えると

Z01DUT

Z02

a1

b1 b2 Z02DUT

Z01

b1 b2

a2

(a) (b)

図 2.3: 2-portモデル

(a)のようにポート1に電源を入れた場合,a1が入射波,b1,b2が出射波とすると

S11 =b1

a1(2.9)

S21 =b2

a1(2.10)

また,(b)のようにポート2に電源を入れた場合,a2が入射波,b1,b2が出射波とすると

S12 =b1

a2(2.11)

S22 =b2

a2(2.12)

となり,Sパラメータは入射波と出射波を測定して計算することになる.振幅を測定する際の問題は,入射波と反射波は同じリード線を流れているため,

それぞれを分けて測定する必要がある.そのため,ネットワークアナライザで測定するのが普通である.

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2.2 4-portネットワークアナライザ

4-portネットワークアナライザでの Sパラメータ測定の流れは下の図のようになっている.

図 2.4:ネットワークアナライザ

まず,信号源から出た信号はパワースプリッタによって二つに分けられ,そのうちの一つが入射波として検出される.次に,方向性結合器を低損失で通過し,DUTに流れる.このとき,検出器にはほとんど流れない.DUTで反射された反射波は方向性結合器により検出器に流れて測定され,DUTを通過した透過波はそのまま測定される.

図 2.5:パワースプリッタと方向性結合器

パワースプッリッタは入力信号が 6dB程度下がるが,上下同じ信号を出力する.したがって,片方を基準信号 (入射波)として検出できる.

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方向性結合器(ディレクショナルカプラ)は,メイン・アームの Paと Pb間は1~2dB程度の損失である.しかし,Paと Pc間が 10~20dB程度で,Pbと Pc間が 30~50dB程度と損失にかなりの差があるため,反射波だけを測定することができる.

2.3 PSpiceでSパラメータを測定する方法

測定結果の比較対象としてシミュレーションで Sパラメータ測定する必要がある.しかし,PSpiceには直接 Sパラメータを測定してくれる機能がないため,測定方法を考える必要がある.透過係数を測定する一般的な方法として,下の図のようにポート 1に 2Vの電源を入れ,ポート 2の電圧を測定すれば,そのまま S21となることが用いられる.

図 2.6:透過係数測定方法の例

しかし,反射係数を測定するにはネットワークアナライザと同じように入射波と反射波を分ける必要がある.そのため,参考文献 [3]を元に,下の図のように正負の電圧制御電流源 2つでジャイレータを構成する.

図 2.7: 3端子ジャイレータの実現回路

この付加サーキットに終端抵抗Rを付けることにより,理想的なアイソレータが実現される.したがって,端子 1に入力された入射波は,そのまま端子 2に出力

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され,ポートで反射された反射波は端子 2に入力され,端子 3に出力され,反射波が測定できるそこで,下の図のように接続すると,V11 = S11,V2 = S21を測定することができる.

図 2.8: SPICEで反射波を測定するための回路図

3 RCPFの電圧伝達関数を測定する方法

3.1 Sパラメータ測定方法

8ポートある RCPFの Sパラメータは 8× 8個で構成される.これを 4-portのネットワークアナライザで測定するには,任意に 4つのポートにベクトルネットワークアナライザを接続し,残りのポートを 50Ω終端して測定,また別のポートにベクトルネットワークアナライザを接続しなおし,残りのポートを 50Ω終端して測定,と合計で 6回測定し,これらを合成して 8× 8のSパラメータを知る必要がある.

R

R

R

R

C

C

C

C

R

R

R

R

C

C

C

C

図 3.1: 1段RCPFを 4-portに見立てる

しかし,RCPFの特性は,回路図を見て解るように,回転対称である.したがって,入力 1から見た,出力 1,2,3,4と,入力 2から見た,出力 2,3,4,1,同様に入力 3,4からみた出力は全て同じである.そのため,入力のどれか一つからの,出力全ての電圧伝達関数が分かれば,RCPFの特性を知ることができる.また,

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入力 1から見た出力 3,4と,入力 3から見た出力 1,2が等しい事を考慮すると,入力 1,3,出力 1,2をベクトルネットワークアナライザに接続し,他の入力を接地,出力を開放にして得られるSパラメータでG11,G21,G13 = G31,G23 = G41が計算できる.これで一回の測定で,RCPFの特性が測定できたことになる.これは下の図のように,RCPFを 2入力,2出力の 4-portに見立てて測定していることになる.この方法の問題点は,理論的には成り立つはずのG13 = G31,G23 = G41の式が実際の RCPFを測定したとき,少しずつ違うことが予想される.なぜなら,現実の素子を使う以上,素子値にばらつきがあるため,厳密には回転対称とはいえないからである.また,ベクトルネットワークアナライザに接続していない入力と出力を,接地,開放しているため Sパラメータで測定する利点の一つ”抵抗を付けた状態で測定できる”が半分意味を成さなくなっている.第 2章でも述べたように,高周波帯域では短絡にはインダクタ,開放にはコンデンサが入っているように見える.これは,50Ω終端して測定したときと比べて誤差が大きくなると考えられる.したがって,8× 8のSパラメータから求めた電圧伝達関数と比較し,誤差がどの程度か知る必要がある.

3.2 SパラメータをZパラメータに変換する方法

Sパラメータは波の振幅を表している.そのままではRCPFの特性を知ることが難しいため,電圧伝達関数に変換する必要がある.その一般的な方法の一つとして,SパラメータをZパラメータに変換してから電圧伝達関数を計算することにする.そのためのSパラメータ‐Zパラメータ変換式を下に示す.負荷への入射波の電力と電圧を PLi,VLi,基準インピーダンスを Z0とすると,

PLi =|VLi |2Z0

(3.1)

波振幅の定義を考えると,aは,

a =VLi√

Z0

(3.2)

同様に bは,

b =VLr√

Z0

(3.3)

となる.そして式を参照すると,

V = (a + b)√

Z0

I = (a− b)/√

Z0(3.4)

これを行列で考えると,[V] =

([a] + [b]

)√Z0

[ I ] =([a] − [b]

)/√

Z0(3.5)

8

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上式を Zパラメータに代入すると,

([1] + [S]

)=

1Z0

[Z]([1] − [S]

)(3.6)

ここで, 1Z0

[Z] = [z]と正規化すると,上式は,

[z] =([1] + [S]

)([1] − [S]

)−1 (3.7)

これでSパラメータ‐Zパラメータ変換式ができた.この式はSパラメータのサイズに関係なく成り立つため,被測定回路が何ポートでもこの式が成り立つ.

3.3 Zパラメータを電圧伝達関数に変換する方法

次に,Zパラメータを電圧伝達関数にする式を考える.ベクトルネットワークアナライザの port-1,2をRCPFの入力の 1と 3に,port-3,4に出力の 1と 2を接続し,4-portに見立てて測定する.入力は接地,出力は開放されている状態の伝達関数が知りたい.これらの条件の下に,G11,G21,G13,G23を求める.出力が開放されているため,I3 = I4 = 0,したがって Zパラメータの式は,

V1

V2

V3

V4

=

=

=

=

z11I1 + z12I2

z21I1 + z22I2

z31I1 + z32I2

z41I1 + z42I2

(3.8)

また,G11,G21を求めるとき,上記の条件より V2 = 0を上式に代入して解くと,

G31 =V3

V1=

z31z22− z21z32

z11z22− z12z21(3.9)

G41 =V4

V1=

z41z22− z21z42

z11z22− z12z21(3.10)

同様にG13,G23を求めると,

G32 =V3

V2=

z32z11− z12z31

z11z22− z12z21(3.11)

G42 =V4

V2=

z42z11− z12z41

z11z22− z12z21(3.12)

これで,2入力,2出力の電圧伝達関数を算出する式ができた.8× 8の Zパラメータでも同じ条件で同様に求めることができる.

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4 測定結果とシミュレーション結果の比較

4.1 計算式の確認

Sパラメータ-電圧伝達関数の式が正しいか確かめるため,1段RCPFでPSpiceで Sパラメータを測定し算出した電圧伝達関数と,PSpiceで電圧をそのまま測定した電圧伝達関数とを比較する.また,4-portに見立てる測定方法が正しいかを検討するため,Sパラメータを測定する際はRCPFの入力 1と 3,出力の 1と 2のSパラメータを測定し,電圧の測定は入力 1から見た全ての出力を測定することにする.図 4.1は電圧伝達関数のシミュレーション結果を示すグラフである.

図 4.1:電圧伝達関数のシミュレーショングラフ

これを見て解るように絶対値と位相のグラフもそれぞれ対応した線が一致している.したがって,計算式および,測定方法に問題がないことが確認された.

4.2 4-portに見立てたRCPFの測定結果とシミュレーションとの比較

図 4.2は今回測定した,二段RCPFの回路と,その回路図である.それぞれの素子値はR1 = R2 = 50Ω,C1 = 2.2nF,C2 = 100pFである.二段RCPFを 4-portに見立てて測定した電圧伝達関数から,RCPFに 4相入力を入れたときに予想される出力を算出し,SPICEでのシミュレーション結果と比較する.また,素子値のばらつきによる影響を知るため,RCPFの測定端子を変えて測定する.図 4.3は RCPFに 4相入力を入力したときに予想される出力を示すグラフである.1回の測定で知ることのできる電圧伝達関数で正の周波数と,負の周波数の二つのグラフができる.測定するポートで色を分け,マーカーのなし,あるで周波数の正負を区別している.測定器は Agilent Technologiesの E5071Bというネットワークアナライザで測定する.

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C2C1

C2

C1

C1 C2

C1

C2

R2

R1 R2

R1

R2

R2

R1

R1

図 4.2: 2段RCPF

4���ü�˝�ð�ü�Œ�‰� �̆«�Ì�o�˝

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08

�ü�g��

V[dB]

�“�Ł1

�“�Ł1

�“�Ł2

�“�Ł2

SPICE

SPICE

図 4.3: 4-portに見立てた測定値とシミュレーションの比較

測定とシミュレーションのノッチのズレは,ノッチの場所が抵抗とコンデンサの値により決定することから,それによる誤差と考えられる.しかし,高周波帯域にあるノッチのズレは,素子値の誤差によるものか,高周波帯域による誤差か,4-portに見立てたことによる誤差か判断がつかない.したがって,8-portのSパラメータから電圧伝達関数を測定したものと比較する必要がある.

4.3 4-portに見立てたRCPFとRCPFの特性を比較

4-portに見立てたRCPFの電圧伝達関数が,8-portのSパラメータから測定した電圧伝達関数と,どの程度の誤差があるか調べるため,先ほどと同じ回路で比較する.図 4.4は 4相入力を入れたRCPFのそれぞれの出力電圧とと 4-portに見立てたRCPFの出力電圧,シミュレーションの出力電圧を示すグラフである.このグラフを見ると,高周波帯域ではシミュレーション値と測定値にかなりの

誤差がある.これは,周波数が高いため,リード線のインダクタ等が測定値に影

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�‡�Ì�ü�g���Ì�o�˝�d�‡

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08

�ü�g��

V[dB]

8*8 �o� 5̋ 8*8 �o� 6̋8*8 �o� 7̋ 8*8 �o� 8̋4*4 �o�˝ 4*4 �o�˝�V�~�����[�V����

���Ì�ü�g���Ì�o�˝�d�‡

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08

�ü�g��

V[db]

図 4.4: RCPFのそれぞれの出力電圧

響を与えたと考えられる.この誤差は現実の回路にあるインダクタが影響しているため,回路が実際にこの様な特性を持っていることになる.したがって,この誤差は,素子値のばらつきや,リード線が問題となる.また,60MHz程度のところで,4-portに見立てた出力電圧と実際のRCPFの出力電圧の差が大きいことである.この誤差は,4-portに見立てたときの終端開放,終端短絡による誤差だと考えられる.これは,RCPFの特性を考慮すると,無視できない誤差である.

5 結論本論文では,RCPFの測定法に関して,4相入力を作らないで,高周波帯域まで

測定できる測定方法の確立,また,測定方法の簡略化を目的として研究を行った.その結果,8-portの Sパラメータから電圧伝達関数を導く方法を提案した.第 2章では,多ポートのSパラメータについて説明した.第 3章では,4-portと

してRCPFのSパラメータを測定し,電圧伝達関数を算出する方法を提案した.第4章では,実際に回路を測定し,誤差や,問題点などを示した.当初,測定の手間や,計算が複雑になる,等の理由から,4-portに見立てる測定

方法を提案したが,実際に 4-portで測定するには,正確な終端開放や,終端短絡にする必要があるため,それによる誤差をなくすのは難しい.したがって,面倒であっても,8-portとして測定する方が正確な結果が得られることが分かった.しかし,8-portとして測定すれば従来の測定方法のように 4相入力を作る必要がなく,また,高周波帯域でもかなりの精度で測定ができることが分かった.以上のように,本研究では,提案した Sパラメータの測定結果から RCPFの周

波数特性を求める方法は有効であること明らかにした.この方法はネットワークアナライザを使っているので,より高周波まで適用できる測定方法である.

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謝辞本研究を終えるにあたり,ご指導,ご鞭撻頂いた谷本洋教授に深く感謝いたし

ます.また,数多くのご協力を頂きました.また,院生の皆さん,同研究室の皆さん,たいへんお世話になりました.本当にありがとうございました.

参考文献[1] Agilent Technologies,「計測の基礎セミナ  RF/マイクロ波コース ネットワークアナライザの基礎」,セミナのプレゼンテーション,2002-05-27

[2] Agilent Technologies,「マルチポート・デバイスおよび平衡デバイスの測定について」,Applecation Note 1373-1,2002年

[3] 谷本 洋,「SpiceによるSパラメータのシミュレーション」,内部資料 1997年

[4] 横島 一郎,「高周波測定技術の基礎  Sパラメータ入門」,リアライズ社,1992年

[5] 古屋 茂,吉田洋一監修,「新数学シリーズ  5 行列と行列式」,培風館,1957年

A 4-portに見立てる測定プログラム

A.1 プログラム内容

図A.1は4-portに見立てたRCPFを測定するプログラムの主な流れを表している.

“Call globals”と “set up Excel Worksheet”のオブジェクトでExcelを起動し,“Fillin Tittle” で Excelの 1行目にそれぞれのデータのタイトルが入力される.

“E5071B (age5071b @ 715)”の中は図 A.2のようになっている.1行目;連続で測定することができるように設定する.2行目;トリガの設定をバスにし,プログラムでトリガのタイミングを決めるこ

とができるようにする.3行目;アナライザのディスプレイを設定している.今回は左右に二つに分ける

設定にしている.4行目;チャンネル 1のトレース数を 16にする.5~20行目;それぞれトレースする Sパラメータを決める.21行目;アクティブ・チャンネルに設定し,下のプログラムが全てのトレースに適応されるようにする.

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図 A.1: VEE Proの 4-portに見立てる測定プログラム

22行目;測定周波数をログ掃引に設定する.23,24行目;掃引する周波数帯域を設定する.25行目;トリガを掛ける.26,27行目;Sパラメータが測定される時間を待つ.28行目;出力される転送フォーマットを ASCIIに設定する.29,30行目;プロットした周波数を読み,Zに代入し,出力する.31行目~;同様に測定した Sパラメータを読み,A~Pに代入し,出力する. “ [1 − S]−1” の中は図 A.3のようになっている.1~4行目;それぞれのパラメータを [1-S]の計算をする.5~29行目;4次元の逆行列の計算をしそれぞれを AA~APに出力する.

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図 A.2: “E5071B (age5071b @ 715)”

“ [1 + S] ∗ [1 − S]−1” の中は図 A.4のようになっている.1~4行目;A~Pは [1-S]の計算がされているため [2-S]の計算をする.5~20行目;は算出された逆行列と [1+S]を掛ける.21~32行目;それぞれの電圧伝達関数を算出し,絶対値と,位相を出力する.33,34行目;4相入力を入れたときの出力を算出し,出力する.“Fill in Tittle” では,Excelに,出力された電圧伝達関数の絶対値と位相,4相入力を入れたときの出力を入力する.

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図 A.3: “[1 − S]−1”

A.2 使用方法

まず,4-portネットワークアナライザの電源を入れ,校正をする.RCPFの接続の仕方は,RCPFの入力 1,2と出力 1,3の様に回転対称を考慮し,全ての電圧伝達関数が測定できるように,入出力ポートに 2つずつネットワークアナライザに接続する.(ネットワークアナライザの port1,2をRCPFの入力,port3,4を出力に接続する) そして,残った RCPFのポートは,入力は短絡,出力は開放の状態にする.次に,実験室のパソコン “rhra”でソフト “Agilent VEE Pro”のファイル“4-portRCPF.vee”を起動し,測定する周波数帯域を決め実行する.すると,“Excel”が起動し,セルにそれぞれの入出力電圧伝達関数と,4相入力を入力したときに予想される出力が入力される.

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図 A.4: “[1 + S] ∗ [1 − S]−1”

B 8-portのRCPF測定プログラム

B.1 プログラム内容

8-portのRCPFのSパラメータを測定するプログラムは,4-portRCPFの測定プログラムの “E5071B (age5071b @ 715)”まで同じで,その後,Sパラメータを Excelに出力したものである.違うのは,後の処理をしやすくするため,虚数形式ではなく,実部と虚部を別々のセルに実数形式で入力されるようにした.

4相入力を入れたときの出力を算出するプログラムは “Mathematica”で作り,図B.1のようになっている.一行目の文で,測定したSパラメータの値 “spara.dat”を読み取り,“a” に入力す

る.3~28行目で,Sパラメータから Zパラメータを算出している.次の行で,出力ポートが開放されている条件を電流 Iで表し,“i” に代入し,1Vの 4相入力の正

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図 B.1: 8-portのRCPFの出力特性を算出するMathematicaのプログラム

の周波数を “vs”,負の周波数を “vh” に代入している.最後に Zパラメータの式にそれぞれを代入し,連立方程式を算出し,“sei.txt”,“hu.txt” のファイルにそれぞれ出力する.

B.2 使用方法

4-portネットワークアナライザの電源を入れ,校正をする.接続方法は,RCPFの任意のポート 4つに,アナライザの port4つを接続し,残りのポートを 50Ω終端する.そして,“sparameta.vee”を起動し,測定する周波数帯域を決め,アナライザに接続したポートを入力し実行する.すると,“Excel”に接続したポートのSパラメータが出力される.これを 6回繰り返し,8ポートの Sパラメータを測定する.そして,Excelのセルに左から周波数,S11の実部,虚部,S12の実部,虚部,・・・S88の実部,虚部の順番に並べる.できた 8次元のSパラメータのデータを全てコピーし,ノートパッドに貼り付けし,“kiwi” の “C:¥Program Files¥WolframResearch¥Mathematica¥5.0”にファイル名を “spara.dat”として上書きする.この際,Sパラメータのタイトル等はコピーせず,数値のデータのみにする.周波数の値はコピーする.(ファイルが長いため “Mathematica”が読み込めないことがある.そのときは数回に分けてプログラムを実行する必要がある.その際,プログラム

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の “For[j=1,j<202,・・・” の部分の “202”をファイルの長さによって変える必要がある.)次に,“Mathematica”で “RCPF.nb”を実行すると,“C:¥Program Files¥WolframResearch¥Mathematica¥5.0”に “sei.txt”,“hu.txt”に 4相入力を入れたときの出力がそれぞれ虚数形式で出力される.(ファイルはプログラムを実行するたびに書き足されることになるので,連続で測定する場合,ファイルを移動するかファイル名を変える必要がある.)あとは,このデータを置換等をしてから “Excel”に貼り付け絶対値を取ると,4相入力を入れたときの出力が計算できる.

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