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A Case Study on Selection of Emergency...

Date post: 20-Aug-2020
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南海トラフ巨大地震を想定した 四国地域内緊急輸送道路選定に関する事例研究 柳川竜一・三好凌介・岡本孝裕 A Case Study on Selection of Emergency Transportation Road in Shikoku Region Assuming the Nankai Trough Megathrust Earthquake Ryoichi YANAGAWARyosuke MIYOSHI and Takahiro OKAMOTO Abstract: The visualization of disaster information accompanying to the megathrust earthquake and the selection of the effective emergency transportation road considering multiple disasters were examined. Target disasters were tsunami, landslide and liquifaction. The network analysis of the shortest path and target disasters avoidance path by 12 scenarios from Takamatsu City in Kagawa Prefecture to disaster-prevention facilities were conducted, and the relationship between total travel distance and the disaster risk due to the difference in scenario was evaluated. Keywords: 南海トラフ巨大地震(Nankai Trough Megathrust Earthquake),複合災害(Multiple Disaster),緊急輸送道路(Emergency Transportation Road1. はじめに 南海トラフ巨大地震の発生確率は,「30 年以内 70%」・「50 年以内には 90%以上」と言われて おり,近い将来確実に巨大地震およびそれらに付 随する災害が発生するとみられる.内閣府や各自 治体が実施している被害想定を勘案すると西日 本を中心に甚大な被害となることは確実視され るが,応急対応の実施,早期の二次被害防止なら びに復旧を図ることで被害を最小限に食い止め ることが可能であり,そのための緊急輸送経路確 保は重要と言える.巨大地震は様々な自然災害を 引き起こす可能性があるが,津波・液状化・土砂 災害といった地震に付随して発生する複合災害 を考慮した最適緊急輸送経路は検討されていな いのが現状である.また,東日本大震災で明らか となったように,災害の規模が大きくなるほど各 自治体単位で災害対応を完結させることは困難 で,広域連携の重要性は増すばかりである.これ ら背景を踏まえ,香川県は南海トラフ巨大地震で 大規模な被害が想定される四国 3 県への後方支援 拠点地域として機能することが期待されており, 四国全域を対象とした巨大災害発生時の交通網 利用の可否や最適輸送道路の選定,経路上に潜在 する二次災害への被災リスクに関する検討・判定 は重要な検討事項であると考えられる. 本研究では,四国地域を対象に南海トラフ巨大 地震に関連する災害情報を可視化するとともに, 複合災害を考慮した緊急輸送道路の提案とその 効果について考察を行うこととした. 柳川竜一 761-8058 香川県高松市勅使 355 香川高等専門学校 建設環境工学科 Phone: 087-869-3922 E-mail: [email protected]
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Page 1: A Case Study on Selection of Emergency …gisa-japan.org/conferences/proceedings/2017/papers/B65.pdf南海トラフ巨大地震を想定した 四国地域内緊急輸送道路選定に関する事例研究

南海トラフ巨大地震を想定した

四国地域内緊急輸送道路選定に関する事例研究

柳川竜一・三好凌介・岡本孝裕

A Case Study on Selection of Emergency Transportation Road in Shikoku

Region Assuming the Nankai Trough Megathrust Earthquake

Ryoichi YANAGAWA,Ryosuke MIYOSHI and Takahiro OKAMOTO

Abstract: The visualization of disaster information accompanying to the megathrust earthquake

and the selection of the effective emergency transportation road considering multiple disasters

were examined. Target disasters were tsunami, landslide and liquifaction. The network analysis of

the shortest path and target disasters avoidance path by 12 scenarios from Takamatsu City in

Kagawa Prefecture to disaster-prevention facilities were conducted, and the relationship between

total travel distance and the disaster risk due to the difference in scenario was evaluated.

Keywords: 南海トラフ巨大地震(Nankai Trough Megathrust Earthquake),複合災害(Multiple

Disaster),緊急輸送道路(Emergency Transportation Road)

1. はじめに

南海トラフ巨大地震の発生確率は,「30 年以内

に 70%」・「50 年以内には 90%以上」と言われて

おり,近い将来確実に巨大地震およびそれらに付

随する災害が発生するとみられる.内閣府や各自

治体が実施している被害想定を勘案すると西日

本を中心に甚大な被害となることは確実視され

るが,応急対応の実施,早期の二次被害防止なら

びに復旧を図ることで被害を 小限に食い止め

ることが可能であり,そのための緊急輸送経路確

保は重要と言える.巨大地震は様々な自然災害を

引き起こす可能性があるが,津波・液状化・土砂

災害といった地震に付随して発生する複合災害

を考慮した 適緊急輸送経路は検討されていな

いのが現状である.また,東日本大震災で明らか

となったように,災害の規模が大きくなるほど各

自治体単位で災害対応を完結させることは困難

で,広域連携の重要性は増すばかりである.これ

ら背景を踏まえ,香川県は南海トラフ巨大地震で

大規模な被害が想定される四国 3県への後方支援

拠点地域として機能することが期待されており,

四国全域を対象とした巨大災害発生時の交通網

利用の可否や 適輸送道路の選定,経路上に潜在

する二次災害への被災リスクに関する検討・判定

は重要な検討事項であると考えられる.

本研究では,四国地域を対象に南海トラフ巨大

地震に関連する災害情報を可視化するとともに,

複合災害を考慮した緊急輸送道路の提案とその

効果について考察を行うこととした.

柳川竜一 〒761-8058 香川県高松市勅使 355

香川高等専門学校 建設環境工学科

Phone: 087-869-3922

E-mail: [email protected]

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2. 実施手法

道路網データは,国土交通省が取り纏め公表し

ている緊急輸送道路を GIS 上で加工し,ネットワ

ークデータを作成した.その後,ネットワークデ

ータ上に出発地である起点と目的地である終点

を設定し,起点~終点間の条件別で 適なルート

を ArcGIS Network Analyst で分析した. 適なル

ートの設定にあたり,各種災害について許容可能

な通行条件を設定し,通行条件に応じた経路選択

のシナリオとその結果について分析を行った.

2.1 緊急輸送道路

緊急輸送道路(図-1)は,災害直後から避難・

救助をはじめ物資供給等の応急活動のために,緊

急車両の通行を確保すべき重要な路線を示して

おり,高速自動車国道や一般国道およびこれらを

連絡する幹線的な道路とされている.種別や名称

は自治体により取扱いが異なっており,香川県の

定義では第一次輸送確保路線(広域的に輸送に必

要な主要幹線道路),第二次輸送確保路線(市町

村役場等の主要な防災拠点と接続する幹線道路),

第三次輸送確保路線(第一次・第二次輸送確保路

線を補完する道路)と区分されている.本検討で

は,各県が設定している第一次~第三次輸送確保

路線を用いた.

2.2 起点と終点の設定

国土交通省は南海トラフ巨大地震等に備えた

広域的な防災拠点として,高松港区域に隣接する

高松地方合同庁舎(高松サンポート合同庁舎第 2

期)の施設整備を進めている.本検討では,高松

サンポート合同庁舎を経路探索の起点とした.終

点の選定については,高知県庁と徳島県庁付近は

浸水が予想されており,防災拠点として機能しな

いことが考えれられる.そこで,本検討では両県

がそれぞれ独自に防災拠点として設定している

高知県立青少年センター,徳島県阿波市交流防災

拠点を設定した.愛媛県については,津波冠水が

予測されないことから,愛媛県庁を終点とした.

2.3 想定した複合災害

本検討で想定した災害は,津波,土砂災害,液

状化とした.各種災害資料の入手先を表-1に示す.

・津波

陸上域の津波浸水は四国全域で想定されており,

とりわけ太平洋に面した高知市では,約 3,380 ha

もの広範囲にわたるとされている.本検討では,

津波浸水深が 0.8 m を上回る地域は不通区間とし

た.その理由として,東日本大震災でも物資輸送

に活躍した陸上自衛隊の輸送車(73 式大型トラッ

ク)は,6 輪駆動で高い車高や吸排気系を有し悪

路走破性に優れており,約 0.8 m の水に浸かって

も走行可能であるためである.

・土砂災害

土砂災害(斜面崩壊・土石流・地滑り)の発生箇

所については,各都道府県が把握・指定している

土砂災害警戒区域を適用した.一方,土砂災害の

発生は必ず発生するものではないため,シナリオ

表-1 解析に用いたデータの種類と内容

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の種類によって通行する可能性を考慮した.

・液状化

地震に伴いマンホールや地下構造物の浮き上が

り,地盤高低下といった液状化が原因となる交通

障害発生の恐れがある.液状化の危険度を示す

PL 値は,一般的に 5.0~15.0 で液状化の可能性が

中程度,15.0 を上回ると液状化可能性が高いとさ

れており,本検討では PL 値>15 の地域を対象と

した.なお,液状化の発生は必ず発生するもので

はないため,土砂災害と同様の処理を行った.

3. 実施結果および考察

3.1 被害予想の分布

津波冠水地域(図-2)は,太平洋に面した高知

市~香南市の沿岸地域と低平地面積が広い徳島

市~阿南市にかけて広く分布しており,浸水深も

高い.瀬戸内地域の浸水範囲は太平洋側地域より

も狭く,香川県でのその深さは 大でも 3 m 程度

とされている.土砂災害の恐れのある地域は四国

内に数多く点在しており,土砂災害警戒区域の指

定が追いつかない地域も多く含まれる.例えば,

高知県は四国内陸地面積の 37.8%を占めており,

山間部での災害指定地域が拡大中である.液状化

は,吉野川流域に面した地域と愛媛県四国中央市

~今治市,ならびに松山市といった比較的人口が

多く集中する広域で可能性が極めて高いとされ

ている.

3.2 シナリオ別でのルート選択とその特徴

経路解析の結果を図-3,表-2 に示し,ここでは

津波及び土砂災害複合ケースについて議論する.

阿波市防災拠点へ 短で到達するには,香川県

から南の山間地域(讃岐山脈)を抜ける必要があ

り,総距離は 58.01 km に達した.徳島市や鳴門

市で広域な津波冠水が予測されており,内陸に位

置する阿波市防災拠点は津波による道路寸断の

影響を受けることなく辿り着ける.しかし,土砂

災害警戒区域を通る割合が総距離の 13.8 %(8.01

km)に相当し,土砂災害のリスクが高い.土砂災

害をなるべく回避した場合,総距離は 76.33 km と

約 30% 増加するものの,土砂災害警戒区域の通

過は 0.89 km へ大幅減少することが期待され,被

災リスク低減に繋がった.

高知県立青少年センターへの 短距離は

129.20 km であったのに対し,土砂災害警戒区域

を通過する区間は 7.86 km(総距離の 6.1 %)と見

積もられた.土砂災害警戒区域をなるべく通らな

い経路で探索した結果,総距離は 209.61 km とな

り, 短距離よりも 86.69 km(62%)増加した.

その一方,土砂災害警戒区域を通過する区間は

1.67 km へと減少しており, 短経路を選択した

場合と比べ土砂災害のリスクがある区間は 6.19

km 短く( 短距離経路選択時の約 20%)なった.

災害発生前での愛媛県庁への 短距離は,

152.98 km と見積もられた.災害発生後での津波

図-1 四国地域の標高および緊急輸送道路図 図-2 四国地域内における津波浸水・

土砂災害警戒区域・液状化可能性の地域

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冠水地域を避けた場合は,香川県観音寺市~愛媛

県西条市間での津波浸水を避けるために 155.92

km へと距離がやや延びたが,3 km 程度と大きな

影響を及ぼしていなかった.土砂災害警戒区域は

12.35 km(総距離の 7.9%)と土砂災害のリスクを

伴っている区間も長く,土砂災害警戒区域を極力

回避するには,山間部を避けた吉野川に添う経路

が安全性は高いと考えられた.そして,土砂災害

の被災リスクは 短距離経路の半分以下に相当

する 5.22 km と低減できたが総距離は 242.61 km

と大幅に増加しており,土砂災害のリスクを踏ま

えた上で 短経路を選択する余地がある.

4. おわりに

本検討では,複合災害発生を想定した物資輸送

経路の探索を行った.本手法から得られた 適経

路のうち,予め道路寸断が予想される区間の定期

的な補修や補強事業を実施することは,将来への

減災効果に繋がると期待される.

謝辞

香川県危機管理総局危機管理課,徳島県危機管理

部とくしまゼロ作戦課,高知県危機管理部南海ト

ラフ地震対策課,愛媛県県民環境部防災危機管理

課からは,各種災害予測の資料を提供して頂いた.

ここに記し謝意を表す.

参考文献

徳島県とくしまゼロ作戦課(2016):徳島県広域防

災活動計画の見直しについて,徳島県 HP 高知県土木部道路課(2012):高知県緊急輸送道路

ネットワーク計画,高知県 HP 愛媛県県民環境部防災危機管理課(2015):愛媛県

広域防災活動要領の策定について,愛媛県 HP

表-2 条件別・目的地別での経路探索結果

図-3 条件別・目的地別での緊急輸送道路の最短経路

災害発生前(通常時)

津波および土砂災害発生時

津波のみ発生時

津波および液状化発生時


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