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Flight Operational Commonality

に関する調査・研究報告書

(平成29年度)

目 次

第I章 調査研究の目的77

第II章 ワーキンググループの構成及び活動881 ワーキンググループの構成882 ワーキンググループの活動10103 海外調査1212

第III章 調査研究の内容18171 Flight Operational Commonality18171-1 航空機製造メーカーの設計コンセプト18171-1-1 Boeing18171-1-2 Airbus22211-1-3 三菱航空機33321-2 海外におけるCommonalityの取り組み状況39381-3 まとめ4140

2 訓練・審査要件の評価に係る各国の制度概要42412-1 米国(FAA)42412-2 欧州(EASA)46452-3 カナダ(TCCA)56552-4 ブラジル(ANAC)62612-5 中国(CAAC)65642-6 日本(JCAB)67662-7 まとめ9291

3 Type Rating(型式限定)の設定94933-1 米国・欧州におけるType Rating94933-2 日本(JCAB)のType Rating1051043-3 我が国の型式限定の設定に係る考え方の整理1141133-4 まとめ121118

4 Commonalityを考慮した短縮化された訓練・審査1231204-1 ICAOにおける取扱い1241214-2 STAR(Shortened Training and Rating)1271244-3 CCQ(Cross Crew Qualification)1301274-3 Commonalityを考慮した訓練・審査の導入による効果1371344-4 Commonalityを考慮した訓練・審査の導入に向けた対応の方向性1391364-5 まとめ140136

5 Mixed Fleet Flying(MFF)1421385-1 MFFの概要1421385-2 MFFを導入する際の訓練・審査の方法1471425-3 ヒューマンエラーへの対応1611575-4 MFFとCompetency-Based Training and Assessment Program1761715-5 MFF導入による効果1771725-6 MFF導入に向けた対応の方向性1801755-7 まとめ181175

6 Type Rating取得等に係る訓練・審査の考え方1831776-1 米国における実地試験1841776-2 欧州における実地試験1961906-3 カナダにおける実地試験2061996-4 日本における実地試験2102036-5 日本の訓練・審査に係る関連情報2352246-6 マニュアルスキル2432326-7 Upset Prevention and Recovery Training(UPRT)2472346-8 日本の審査に対する考え方の整理2472356-9 まとめ255240

7 海外調査2572417-1 FAA2572417-2 British Airways2582427-3 Etihad Airways2592437-4 Ethiopian Airlines2612457-5 Thai Airways International2622467-6 Finnair2632477-7 Cathay Pacific Airways2652497-8 Air New Zealand2682527-9 Airbus Americas2692537-10 まとめ269253

8 航空運送事業者・航空機製造メーカーにおける運用方法2712558-1 航空運送事業者における訓練・審査に係る基準2712558-2 教官・審査担当者等の資格・経験等の要件2952798-3 諸外国のFSB ReportやOSD Documentの取扱い3213058-4 Operational Evaluationの結果を踏まえた訓練・審査の承認手続き3223068-5 飛行基準評価審査会におけるTテスト3233068-6 まとめ325308

9 Commonalityの考え方の導入に係る基準改正案の提案3273109-1 基準改正案3273109-2 Commonalityの考え方を導入するための基準改正の公布・施行時期329311

10 国際的な動向33331510-1 International Operational Evaluation Policy Board33331510-2 Birateral Agreement33331510-3 2018 BOEING FLIGHT OPERATIONS SYMPOSIUM334316

11 まとめ335317

参考資料337319

付録(Operational Evaluationに関する当局の承認文書)3403221米国と欧州の比較3403222 各航空当局におけるレポート等の公開3433253 試験プロセス3543364 FSB Report及びOSD Documentの概要3713535 日本版FSB Report5174996 まとめ519501

【略語】

  ACAdvisory Circular

  ADRAerodromes

  AMCAcceptable Means of Compliance

  ANACNational Civil Aviation Agency of Brazil

  ANSAir Navigation Services

  ARAAuthority Requirements for Aircrew

  AROAuthority Requirements for Air Operations

  ARAAuthority Requirements for Aircrew

  ARTAviation Repair Technologies

  ATCOAir Traffic Controllers

  ATMAir traffic Management

  ATOApproved Training Organizations

  BRBasic regulation

  CAACivil Aviation Authority

  CAACCivil Aviation Administration of China

  CATCommercial Air Transport Operations

  CCCabin Crew

  CCDCabin Crew Data

  CFRCode of Federal Regulations

  CCQCross Crew Qualification

  CRICertification Review Items

  CSCertification Specifications

  CTLCCommon Take-Off and Landing Credits

  CTRCommon Type Rating

  DEFDefinitions

  DGACDirectorate General for Civil Aviation (France)

  EASAEuropean Aviation Safety Agency

  ECEuropean Community

  ECAMElectronic Centralized Aircraft Monitor

  EDExecutive Director

  EICASEngine Indication and Crew Alerting System

  EISEntry Into Service

  EPEuropean Parliament

  EREssential Requirements (Annex BR)

  EUEuropean Union

  FAAFederal Aviation Administration

  FBWFly By Wire

  FCFlight Crew

  FCDFlight Crew Data

  FCLFlight Crew Licensing

  FCOMFlight Crew Operation Manual

  FCTMFlight Crew Training Manual

  FFCCForward Facing Crew Cockpit

  FMAFlight Mode Annunciator

  FMSFlight Management System

  FSBFlight Standardization Board

  FSIMSFlight Standards Information Management System

  FSTDFlight Simulation Training Devices

  GCGroup Composition

  GMGuidance Material

  IOEPBInternational Operational Evaluation Policy Board

  IPIssue Papers

  IRImplementing Rules

  JAAJoint Aviation Authorities

  JOEBJoint Operations Evaluation Board

  LBALuftfahrt-Bundesamt (German Civil Aviation Authority)

  MCSDMaintenance Certifying Staff

  MDRMaster Difference Requirements

  MEDMedical Requirements for Aircrew

  MEPMembers of European Parliament

  MFFMixed Fleet Flying

  MMELMaster Minimum Equipment List

  MVFMixed Variant Flying

  NAAsNational Aviation Authorities

  NCCNon-commercial operations with complex-motor-powered aircraft

  NPANotice of proposed Amendment

  ODROperator Difference Requirement

  OEBOperations Evaluation Board

  OPSOperations

  ORAOrganization Requirements for Aircrew

  ORIOperational Review Items

  OROOrganization Requirements for Air Operations

  OSDOperational Suitability Data

  PMCProduct Certification Manager

  QRHQuick Reference Handbook

  RMTRulemaking Task

  RPASRemotely Piloted Aircraft Systems

  SERAStandardised European Rules of the Air

  SFFSingle Fleet Flying

  SFI Synthetic Flight Instructor

  SIMDSimulator Data

  SPAOperations requiring Specific Approvals

  SPOSpecialised Operations

  STARShortened Training and Rating

  STRSame Type Rating

  TASETraining Areas of Special Emphasis

  TCType Certificate

  TCCATransport Canada Civil Aviation

  TCDSType Certificate Data Sheet

  TCOThird Country Operators

  TORTerms of Reference

  TRIType Rating Instructor

  TREType Rating Examiner

第I章 調査研究の目的

  航空機の設計に係る安全基準・環境基準への適合性確認については、「型式証明(Type Certificate)」により行われる。また、新たに設計・製造された航空機の運航にあたって、航空会社は、運航乗務員等に対する訓練・審査を実施し、安全運航に必要な装備品等を備え、整備を適切に行うことが求められている。

  航空機のシステム等に応じた運航乗務員等に対する訓練・審査、装備品等の運航許容条件、整備に係る基本要件については、航空機の設計に大きく依存するものである。このため、諸外国では、航空機の設計・製造メーカーが国の運航・整備基準に適合する具体的な実施方法等を作成し、運航国の航空当局は製造メーカーの設計思想を反映したそれらの内容について、運航国の基準を満足していることを審査の評価・承認しを行い、航空会社はその内容を活用しながら航空機の運航を行っている。

  上記の評価・承認を行っている具体的な航空当局は、米国(FAA)、欧州(EASA)、カナダ(TCCA)、ブラジル(ANAC)をはじめとする航空当局はであり、それぞれの国の運航・整備基準への適合性を確認している。

  航空当局によるこうした取り組みは、「航空機の安全性能・環境性能の証明」を行うだけではなく、運航・整備要件に適合した実施方法に関する承認を事前に行うことにより、「航空機の安全運航」への橋渡しを行い、航空会社が円滑かつ安全な運航を実施するために必要な情報を提供することを目的としている。

  この取り組みの中で、航空機乗組員に係る訓練・審査については、上記の航空当局による評価プロセスの調和が図られており、Type Ratingの設定、型式間の類似性を考慮した効率的な訓練・審査プログラム、Mixed Fleet Flying(MFF)の承認が行われている。この際、「『類似性(Commonality)』に関する航空機製造メーカーの設計コンセプトが航空機乗組員のヒューマンパフォーマンスにどの程度影響するか」という観点もから評価においては考慮されているが行われている。

  我が国において、国産リージョナルジェット航空機の開発が進められている状況であり、今後、航空機設計製造国当局・運航国当局政府としての運航・整備基準への適合性についての評価をが進められている行う必要に迫られている。この活動の中においてため、重要な観点の1つであるその評価の根幹をなすFlight Operational Commonalityについてもの理解を深めることが重要であるとなっている。

  本WGでは、Commonalityに関する考え方、諸外国の制度・基準および外国航空会社における運用状況等の調査に加えて、我が国の基準改正において考慮すべき事項について案の検討を行った。ったため、本報告書にその結果を示す。

図 Flight Operational Commonalityの概要

第II章 ワーキンググループの構成及び活動

1 ワーキンググループの構成

  本調査・研究は、以下のメンバーにより構成されるワーキンググループにより実施した(敬称略、順不同)。

 【リーダー】

   古川 大心 日本航空株式会社 運航本部 運航訓練審査企画部 訓練品質マネジメント室 調査役機長(B787)

 【メンバー】

   坂本 真   国土交通省 航空局 安全部 運航安全課 首席航空従事者試験官(平成30年2月~)

   清水 修一  国土交通省 航空局 安全部 運航安全課 航空従事者試験官(平成30年3月~)

   鈴木 崇裕  国土交通省 航空局 安全部 運航安全課 乗員政策室 課長補佐(平成30年5月~)

   伊藤 貴   国土交通省 航空局 安全部 運航安全課 乗員政策室 乗員資格基準係長(平成30年2月~平成30年3月)

   三好 哲史  国土交通省 航空局 安全部 航空事業安全室 運航審査官

   長崎 将志  国土交通省 航空局 安全部 航空事業安全室 運航審査官(第6回WGにおいて代理出席)

   内山 富佐郎 国土交通省 航空局 安全部 航空事業安全室 専門官

   赤井 大介  国土交通省 航空局 安全部 航空事業安全室 専門官

   古川 理   全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンター オペレーションサポート部 副部長 飛行教官(A320)

   多田 圭利  全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンター オペレーションサポート部 乗員基準チーム マネージャー 飛行教官(A320)

   石附 晃   全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンター オペレーションサポート部 乗員基準チーム マネージャー B777機長

   田窪 知広  全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンター オペレーションサポート部 乗員基準チーム マネージャー

   迫  亨   全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンター オペレーションサポート部 乗員基準チーム

   前田 裕貴  全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンター 訓練サポートチーム(平成30年●月~)

   荒井 裕昭  日本航空株式会社 運航本部 運航審査部 査察運航乗務員(B787)

   石橋 拓也  日本航空株式会社 運航本部 運航訓練審査企画部 定期訓練室 マネージャー

   和田 尚   日本航空株式会社 運航本部 運航訓練審査企画部 訓練品質マネジメント室 調査役機長(B767)

   橘  史郎  日本航空株式会社 運航本部 運航訓練審査企画部 訓練品質マネジメント室 アシスタントマネージャー

   松岡 秀樹  日本航空株式会社 運航本部 運航訓練審査企画部 乗員養成室調査役機長(B787)

   松田 一能  日本航空株式会社 運航本部 運航訓練審査企画部 乗員養成室 アシスタントマネージャー(平成29年7月~)

   村杉 汐音  日本航空株式会社 運航本部 運航訓練審査企画部 乗員養成室

   立花 宗和  日本航空株式会社 運航本部 運航企画部付機長(B787)(平成29年8月~)

   田中 聡   日本航空株式会社 運航本部 運航企画部付マネージャー(平成29年8月~)

   寺野 裕子  スカイマーク株式会社 運航本部 訓練審査部 訓練審査企画課 主任

   高田 和朗  スカイマーク株式会社 運航本部 訓練審査部 訓練課 B737機長 教官操縦士(平成29年12月~)

   長谷川 政樹 三菱航空機株式会社 経営企画室 運航企画グループ グループリーダー(平成29年12月~)

   原田 宗洋  三菱航空機株式会社 カスタマーサポート部 訓練グループ 乗員訓練チーム チームリーダー

   齋藤 憲義  三菱航空機株式会社 カスタマーサポート部 訓練グループ 乗員訓練チーム 主席

   島谷 圭一  三菱航空機株式会社 カスタマーサポート部 訓練グループ 乗員訓練チーム 主任

   井原 宏   三菱航空機株式会社 主席操縦士(平成30年3月~)

   Pasi Rainesalo 三菱航空機株式会社 主席操縦士(平成30年3月~)

 【事務局】

   井川 勇喜夫 公益財団法人 航空輸送技術研究センター 技術部長(~平成29年6月)

   平松 丈史  公益財団法人 航空輸送技術研究センター 技術部長(平成29年7月~)

   上田 裕久  公益財団法人 航空輸送技術研究センター 技術部 部長

   大木 暁   公益財団法人 航空輸送技術研究センター 技術部 次長(~平成30年3月)

   秋田 欣計  公益財団法人 航空輸送技術研究センター 技術部 次長(平成30年4月~)

2 ワーキンググループの活動

  ワーキンググループ会議の開催状況及びそれぞれの議題は以下のとおりである。また、ワーキンググループでの議論を円滑に進めるために調査事項の進捗確認や議論の論点を確認することを目的とした作業部会を計5回開催した。

 第1回(平成29年6月6日)

  ・自己紹介

  ・WGリーダー選出

  ・第1回作業部会(平成29年5月19日)を踏まえた調査・研究の方針(活動の目的、調査研究の内容、スケジュール 等)

 第2回(平成29年8月1日)

  ・第2回作業部会(平成29年7月6日)の討議事項の共有

  ・調査事項の共有・議論

  ・海外訪問調査の内容

  ・本邦で行われている運用面での指導について

 第3回(平成29年10月30日)

  ・第3回作業部会(平成29年9月22日)の討議事項の共有

  ・調査事項の共有・議論

  ・本邦で行われている運用面での指導について

 第4回(平成29年12月15日)

  ・第4回作業部会(平成29年11月29日)の討議事項の共有

  ・調査事項の共有・議論

  ・海外訪問調査結果の共有

  ・基準改正案について

  ・WGの結果を成果につなげるための方法について

 第5回(平成30年2月16日)

  ・第5回作業部会(平成29年1月17日)の討議事項の共有

  ・航空局のFOC検討体制とスケジュール

  ・調査事項の共有・議論

  ・報告書案のレビュー

  ・基準改正案のレビュー

 第6回(平成30年3月16日)

  ・報告書案のレビュー

  ・基準改正案のレビュー

 第7回(平成30年4月6日)

  ・報告書案のレビュー

  ・基準改正案のレビュー

 第8回(平成30年5月18日)

  ・~~~~

  ・B777/B787のシミュレータ検証の実施について

 第9回(平成30年6月22日)

  ・報告書案の修正に関するレビュー

 第10回(平成30年7月18日)

  ・報告書案の修正点に関するレビュー

3 海外調査

3-1 外国航空会社等の調査

   Mixed Fleet Flying等のCommonalityに関わる運用状況を確認するため、以下の外国航空会社に対して訪問調査や質問状の送付等を行い、情報収集を行った。

  ●Finnairへの訪問調査

    日 時:平成29年9月8日

    場 所:Finnair Flight Academn @HEL

    参加者:

Finnair

Capt. Arto Helovuo – Head of Training

Capt. Tapani TOPPARI (保有Rating A320/A330A350) – Chief Flight Instructor A350

Capt. Tommi VANSKA (保有Rating A320/A330A350) – Training Manager

Capt. Pasi RAINESALO (保有Rating A320/A330A350) – Flight Operations (JJP にCapt として出向、その後A350 FO として1 年半乗務、調査当時A320 Capt)

Ms. Merja Alhola (元Finnair CA、DC10 等で日本路線乗務経験あり) – Head of Sales and Partnerships

JAL

和田 尚  ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

野澤 祥大 運航本部 運航訓練審査企画部 定期訓練室 調査役機長(B777)

  ●British Airwaysへの訪問調査

    日 時:2017年11月24日

    場 所:British Airways Waterside Head Quarter, London, UK

    参加者:

BA

Capt. Steve Hawkins – Chief Training Pilot (747-400)

Capt. Jerry Palmer – 777/787 Training Standard Captain

JAL

古川 大心 ATEC FOC WGリーダー

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

  ●Cathay Pacific Airwaysへの訪問調査

    日 時:2017年12月11~12日

    場 所:Cathay City (HKG)

    参加者:

Cathay

Capt. Chris Kempis – Chief Pilot (Airbus), Flight Operations

Capt. Cavin Hslemore – Chief Pilot (Airbus), Flight Operations

Capt. Tim Burns – Flying Training manager (Airbus), Flight Operations

Mr. David Hughes – Simulator Training Manager (Airbus), Flight Operations

Airbus

Regine Vadrot – Senior Advisor to VP Flight Operations

JAL

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

  ●Etihad Airwaysへの訪問調査

    日 時:2017年12月14日

    場 所:Etihad Airways Training Academy(Abu Dhabi, UAE)

    参加者:

Etihad

Capt. Sprindon Nakos – Manager Fleet 787

Capt. Carlos Amortegui – Manager Pilot Training 787

Capt. Mohammad Shayeb – Manager Fleet 777

Capt. John Downey – Project Pilot Boeing Fleet

Capt. Henrry Crowley – Head of Boeing Fleet

Boeing

Capt. Paul Maher – 787 Chief Technical Pilot

Capt. Bill Hunt – 777 Chief Technical Pilot

JAL

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

  ●Ethiopian Airlinesとの電話会議

    日 時:2017年12月18日

    場 所:JALテクニカルセンター

    参加者:

ET

Capt. Yohannes Hailemariam

Boeing

Capt. Paul Maher – 787 Chief Technical Pilot

JAL

古川 大心 ATEC FOC WGリーダー

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

  ●Airbus Americas

   本邦におけるUPRT導入の参考のため、FAAを訪問し、UPRT教官訓練を受講するとともに関連会議を持った。その会議上MFF についても説明を受けた。その後、Airbus Americas を訪問し、同様にUPRT に関する会議の席でMFF に関する質疑応答を行った。

    日 時:2018年1月18日

    場 所:Airbus Americas Head Quater(ワシントンDC, 米国)

    参加者:

Airbus

Capt. Craig Heldebrandt– Senior Director, Safety & Flight Operations Technical Affairs(24年間US Airways、12年間JetBlueに在籍し、Airbus機に乗務。2年前にAirbusへ転職。)

Capt. Robert (Bob) Reich – Consultant, Flight Operations and Technical Support(36年間UAにBoeing機Pilotとして在籍し、その後FAAへ転職し、HQにてPolicy関連を3年間およびSEA AEGを7年間勤務し、現在Airbus Americasのコンサルタント。)

JCAB

岩崎 幸弥 運航安全課 航空従事者試験官

高垣 裕史 運航安全課 乗員政策室専門官

福山 博樹 航空機安全課 航空機技術基準企画室 専門官UPRT関係者3名が同席(ただし、MFFは担当外)

JAL

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

藤重 智洋 日本航空 運航本部 運航訓練審査企画部 定期訓練室 調査役機長 (B777)

  ●Thai Airways International及びAir New Zealandへの質問状の送付

   2社に対して、Commonalityに関する質問状を送付し、その回答によりMFFの実施状況等の把握を行った。

 3-2  Commonalityに関するWorkshop

  ●EASA/AirbusによるWorkshop

   A350 のType Rating 評価に関わったEASA担当パイロットとAirbusのOperational Commonality専門家が来日し、A350 Type Ratingの評価プロセスを中心にEASAベースのFlight Operations Commonalityについて説明するWorkshopが開催された。

    日 時:2017年5月12日

    場 所:経済産業省別館

    参加者:

EASA

Capt,Kevin Bonfield – Operational Suitability – Fixed Wing Expert

Airbus

Ms. Regine Vadrot - Head of Operational Certification

Mr. Emmanuel le Maire - Training Key Account Manager

Mr. Jiro Koda (VP, Business Development Dept.1, Airbus Japan)

Ms. Yoshiko Maruoka (Assistant Manager, Business Development Dept.1, Airbus Japan)

JCAB

内山 富佐郎 ATEC FOC WGメンバー

赤井 大介  ATEC FOC WGメンバー

その他数名

ANA

JAL

山岡    日本航空 運航本部 副本部長

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

田中 聡 ATEC FOC WGメンバー

丹治 和貴 日本航空 運航本部 運航技術部 飛行試験室 室長

眞鍋 俊哉 日本航空 運航本部 運航安全推進部

和田 尚 ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

SKY

MITAC

斎藤 憲義 ATEC FOC WGメンバー

島谷 圭一 ATEC FOC WGメンバー

原田 宗洋 ATEC FOC WGメンバー

ATEC

大木 暁 ATEC事務局

  ●BoeingによるWorkshop (1)

   Boeing Technical Pilotと本邦航空会社の定期的なMeetingの機会を利用し、ATEC Flight Operational Commonality WG の調査活動としてSame Fleet Flyingに関するプレゼンテーションが実施された。

    日 時:2017年6月9日

    場 所:中央合同庁舎2号館会議室

    参加者:

Boeing

Capt. Paul D. Maher – 787 Chief Technical Pilot, Flight Technical & Safety

Capt. Brian L. Pakkala – 777X Chief Technical Pilot, Flight Technical & Safety

JCAB

内山 富佐郎 ATEC FOC WGメンバー

赤井 大介  ATEC FOC WGメンバー

その他数名

JAL

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

ATEC

大木 暁 ATEC事務局

  ●AirbusによるWorkshop (1)

   AirbusのOperational Commonality 専門家が再来日し、JCABおよびMITACを対象に、テストProcessを説明するWorkshop が開催された。

    日 時:2018年2月8日

    場 所:国土交通省航空局会議室

    参加者:

Airbus

Ms. Regine Vadrot - Head of Operational Certification

Mr. Jiro Koda (VP, Business Development Dept.1, Airbus Japan)

Ms. Yoshiko Maruoka (Assistant Manager, Business Development Dept.1, Airbus Japan)

JCAB

内山 富佐郎 ATEC FOC WGメンバー

赤井 大介  ATEC FOC WGメンバー

その他数名

JAL

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

田中 聡 ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

村杉 汐音 ATEC FOC WGメンバー

MITAC

井原 宏 ATEC FOC WGメンバー

斎藤 憲義 ATEC FOC WGメンバー

島谷 圭一 ATEC FOC WGメンバー

原田 宗洋 ATEC FOC WGメンバー

Pasi Rainesalo  ATEC FOC WGメンバー

  ●BoeingによるWorkshop (2)

   2017年6月開催のWorkshopのフォローアップとして、Mixed Fleet Flyingに関する勉強会が実施された。

    日 時:2018年3月26日

    場 所:国土交通省航空局会議室

    参加者:

Boeing

Capt. Paul D. Maher – 787 Chief Technical Pilot, Flight Technical & Safety

Capt. Carl

JCAB

内山 富佐郎 ATEC FOC WGメンバー

赤井 大介  ATEC FOC WGメンバー

その他数名

JAL

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

田中 聡 ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

丹治 和貴 日本航空 運航本部 運航技術部 飛行試験室室長

  ●AirbusによるWorkshop (2)

   AirbusのOperational Commonality 専門家が再来日し、JCABおよびATECを対象にEASA/FAAの比較を中心にFlight Operational EvaluationのOverviewとATOに関するEASA/FAA Regulationを説明するWorkshop が開催された。

    日 時:2018年6月15日

    場 所:経済産業省別館

    参加者:

Airbus

Ms. Regine Vadrot - Head of Operational Certification

Capt. Robert Reich (Special Advisor for Airbus Americas, Former FAA AEG Manager)

Mr. Jiro Koda (VP, Business Development Dept.1, Airbus Japan)

Ms. Yoshiko Maruoka (Assistant Manager, Business Development Dept.1, Airbus Japan)

JCAB

坂本 真  ATEC FOC WGメンバー

鈴木 崇裕 ATEC FOC WGメンバー

長崎 将志 航空事業安全室 運航審査官

赤井 大介 ATEC FOC WGメンバー

JAL

古川 大心 ATEC FOC WGメンバー

和田 尚 ATEC FOC WGメンバー

松岡 秀樹 ATEC FOC WGメンバー

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

町田 静 日本航空 運航本部 運航訓練審査企画部 訓練品質マネジメント室

ANA

迫 亨 ATEC FOC WGメンバー

MITAC

井原 宏  ATEC FOC WGメンバー

斎藤 憲義  ATEC FOC WGメンバー

島谷 圭一  ATEC FOC WGメンバー

原田 宗洋  ATEC FOC WGメンバー

ATEC

秋田 欣計 ATEC事務局

 3-32 B787-10に係るTテストのオブザーブ

   本WGで調査・研究を進めるなかで、Commonality を考慮して設計されているB777/B787のMixed Fleet Flying(MFF)の導入について、ボーイングから航空局に対して要望が出された。これを踏まえ、FSBではMFFを前提とした評価が行われていることから、同社より、B787-10のTテストのオブザーブ提案が行われた。TテストはFAA/EASA/TCCAの合同で実施されたが、個別企業の内容であるため可能な範囲で情報が共有された。

   日 時:2017年12月6~8日

   場 所:チャールストン国際空港(米国)

   参加者:

FAA

John Pinnow – FAA AEG, B777&B787 FSB Chairman

EASA

Herbert Mayer – EASA Senior Expert-OSD-FSD

TCCA

Roman Marushko – Transport Canada, B787 OEB Chairman

JCAB

長崎 将志 航空事業安全室 運航審査官Comment by なし: ATEC WGに、代理で出席されていますので、記載してもいいのではないでしょうか?

赤井 大介 ATEC FOC WGメンバー

JAL

丹治 和貴 日本航空 運航本部 運航技術部 試験飛行室 室長

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

 3-43 FAAとの会合

   本邦におけるUPRT導入の参考のため、2018年1月にFAAを訪問しUPRT教官訓練を受講した。その際に、JCAB/ANA/JALの担当者がFAAと会合を持つことができたため、UPRTに加えてMFFやRelated Aircraftに関する意見交換も行うことができた。

   日 時:2018年1月10日

   場 所:FAA Academy, Oklahoma City, US

   参加者:

FAA

Ms. Sheri Pippin – Aviation Safety Inspector (Operations), Air Carrier Training Systems and Voluntary Safety Program Branch

Mr. Robert Burke – Manager, Air Carrier Training Systems and Voluntary Safety Program Branch

JCAB

岩崎 幸弥 運航安全課 航空従事者試験官

高垣 裕史 運航安全課 乗員政策室専門官

福山 博樹 航空機安全課 航空機技術基準企画室 専門官

UPRT関係者3名が同席(ただし、MFFは担当外)

ANA

高須 龍平 フライトオペレーションセンター 訓練サポートチーム

菊池 和也 フライトオペレーションセンター 訓練サポートチーム

JAL

石橋 拓也 ATEC FOC WGメンバー

藤重 智洋 日本航空 運航本部 運航訓練審査企画部 定期訓練室 調査役機長 (B777)

 

3-54 Boeing Flight Operations Symposiumへの参加

   以下の日程で、ボーイング主催のFLIGHT OPERATIONS SYMPOSIUMにおいて、Mixed Fleet Flying/Same Fleet FlyingやFSB and OSD Reportsが議題の一つとして取り上げられることになったため、ATEC WGメンバーも参加し、情報収集や参加者との意見交換を行った。

   日 時:2018年3月19~21日

   場 所:Sheraton Seattle Hotel

   参加者:

JCAB

三好 哲史 ATEC FOC WGメンバー

赤井 大介 ATEC FOC WGメンバー

ANA

前田 裕貴 フライトオペレーションセンター 訓練サポートチーム

長澤 恭子 フライトオペレーションセンター 訓練サポートチーム

JAL

古川 大心 ATEC FOC WGリーダー

立花 宗和 ATEC FOC WGメンバー

村杉 汐音 ATEC FOC WGメンバー

南  正樹 経営戦略部

小今井 隆 経営戦略部

ATEC

大木 暁  ATEC FOC WG事務局

 3-65 A320 to A380 CCQの検証

   ANAにおいてA380の導入が予定されていることから、導入に先立ちA320→A380のCCQの検証が行われた。これに加えて、EASA限定変更実地試験とJCAB限定変更実地試験の比較が行われたため、その結果がWGにおいて共有された。

   日 時:2018年1月9日~2月19日

   場 所:AirbusTrainingCenter Europe(フランス・トゥールーズ)

   参加者:

ANA

古川 理  ATEC FOC WGメンバー

多田 圭利 ATEC FOC WGメンバー

迫  亨  ATEC FOC WGメンバー

JCAB

岩崎 幸弥 運航安全課 航空従事者試験官

 3-76 A350 to A330 Difference Trainingの検証

   AirbusにおいてA350→A330 Difference Trainingの評価が行われ、その結果がOSDにも反映された。JALにおいてA350の導入が予定されており、今後の参考として、A350 to A330の差異訓練の検証がJALにおいて行われたことから、その結果がWGにおいて共有された。

   日 時:2018年3月7日~16日

   場 所:AirbusTrainingCenter Europe(フランス・トゥールーズ)

   参加者:

JAL

和田 尚  ATEC FOC WGメンバー

野澤 祥⼤ 運航本部 運航訓練審査企画部 乗員養成室定期訓練室 調査役機長 777飛行教官(B777)Comment by WADA TAKASHI(JALI TYONFQ): 挿入

3-8 B777/B787 Joint MFF検証

   MFFのように異なる機種に乗務する中で、どのようなヒューマンエラーが発生し得るかを把握するとともに、そのエラーが運航に及ぼす影響を安全上許容可能な範囲のレベルにするための対策について検討することを目的とした検証を実施した。とりわけ現状では、本邦航空会社において、B777とB787のMFF実施の要望が挙げられており実現性が高いことから、B777/B787間の検証フライトを行うことになった。

   日 時:2018年6月25日~26日

   場 所:ANA訓練センター(6月25日)

JALテクニカルセンター(6月26日)

   参加者:

Boeing

Paul D. Maher  B787 Chief Technical Pilot

Van Chaney   B787 Chief Test Pilot

村上 大     民間航空機部門 日本担当 ジェネラルマネージャー カスタマーエグゼクティブ

JCAB

鈴木 崇裕  ATEC FOC WGメンバー

村山 雅治  航空事業安全室 運航審査官

内山 富佐郎 ATEC FOC WGメンバー

赤井 大介  ATEC FOC WGメンバー

JAL

古川 大心  ATEC FOC WGリーダー

石橋 拓也  ATEC FOC WGメンバー

立花 宗和  ATEC FOC WGメンバー

足立 純一  日本航空 運航本部 767乗員部 主席

植田 竜   日本航空 運航本部 運航技術部 試験飛行室 室長 (B787)

福本 尚志  日本航空 運航本部 運航技術部 試験飛行室 補佐役 (B787)

ANA

前田 裕貴  ATEC FOC WGメンバー

九川 義憲  ~~

辰野 午郎  ~~

高橋 周作  ~~

第III章 調査研究の内容

1 Flight Operational Commonality1-1 航空機製造メーカーの設計コンセプト1-1-1 Boeing

     過去、Boeingは、同じ設計のCockpitを適用した狭胴機のB757及び広胴機のB767に対し、FAAから、それぞれ別のType Ratingながら、Common Type Rating (CTR)として承認されている(B757/B767の初期の評価が行われた時期のCTRは、現在のFAAの定義とは異なる)。

     Boeing Workshopにおける説明によれば、BoeingにおけるCommonalityに係る設計コンセプトとは、Cockpit自体の物理的な共通性ではなく、むしろ、共通のPhilosophyを適用することに重点が置かれている。具体的には、機体に対して運航乗務員が操作を行う場合に、同じ挙動を示すことをCommonalityとして考えていることに特徴がある。

     具体的なCockpitの設計では、

· Control Column(操縦桿)を採用し、Back Driveがあり、左右のInterlinkがあり、大きな動きがあり、Trim操作を必要としている(※)。

· Speed Brake Leverは、Back Driveがあり、認知性を高める。

· Thrust Leverは、Back Driveがあり、認知性を高める。

· マニュアルのTrim操作は、認知性を高める。

    という共通性を持つ。

 ※B777/B787はFBWで制御されており、運航乗務員のPitch方向の入力はPitch RateもしくはgをコマンドするC*コントロールに加え、Speed ReferenceのFeed Back機能を追加し、Stab Trim SWの操作を行う必要のあるC*Uコントロールを採用している。そのため、従来機同様の操縦感覚を持つことが可能となっている。(詳細は、参考資料:調査-03(Fly By Wireについて)を参照)

     BoeingにおけるFlight Deck Design Philosophyは、次の9項目とされている(参考資料:調査-01(BoeingのFlight Deck Design Philosophy)参照)。

     (1) 運航乗務員は、航空機の運航に関する最終権限を有する

     (2) 両運航乗務員は、飛行の安全に対して最終責任を有する

     (3) 運航乗務員のTaskは、安全性、快適性、効率性の優先順位である

     (4) 航空機の設計は、過去の実践および運用に基づき、運航乗務員の運用と訓練に適したものであること

     (5) エラーを犯した場合でも、エラーを許容できるようにシステムを設計すること

     (6) 設計における優先順位は、Simplicity(簡素化)、Redundancy(冗長化)、Automation(自動化)であること

     (7) 自動システムは、運航乗務員を支援するものであること

     (8) NormalおよびNon-normal Operationにおいて、ヒューマンパフォーマンス、基本的限界、運航乗務員個々の業務遂行能力の差を認識したものであること

     (9) 新技術や新しい機能の適用を行うのは、次の場合であること

      -明確で明瞭な運航上又は効率上の優位性をもたらす場合

      -HMI(Human Machine Interface)に悪影響をもたらさない場合

     また、BoeingのCommonalityに関する考え方をまとめると以下のようになる。

     -Handling Quality、Control Input、Displayed Information

      (PFD/ND/EICAS)、Symbology、Procedures Flows、Memory Itemが同一であること。

     -Flight Profiles、FMC Functions、Normal Checklists、

      Non-Normal Checklists、System Interface Locationが類似していること。

     BoeingはB787の開発を始めた頃、B737/B747/B757/B767/B777を対象に、それまで機種間で整合されていなかったNormal Procedures、Non-Normal Proceduresの標準化に関する作業に着手し、この結果として、2004年以降、各機種のFCOM(Flight Crew Operatinon Manual)、QRH(Quick Reference Handbook)、FCTM(Flight Crew Training Manual)が改定された。これにより、従来と比較して機種間の移行訓練を短縮し(以下で説明するSTAR(Shortened Training and Rating)と呼ばれる訓練)、また、効率的なMFF(Mixed Fleet Flying)を実現することを可能とした。

     開発中のB777X(B777-8/-9)を含めると、FAAにおけるB777/B787の機種移行訓練の日数は次図のとおりである。B777→B787の差異訓練ではB787標準装備のHUDがLevel Dで最も差異が大きく、B787→B777ではB777でのTAC(Thrust Asymmetry Compensation)Offに関する項目がLerel Dで最も差異が大きい(差異レベルA~Eの詳細は、付録にて述べる)。

図1-1 B777/B787の機種移行訓練の日数

     B777/B787/B777XのCommonalityは、AirbusがA320以降打ち出したコンセプトと同等のものであり、近年の民間航空機マーケットを意識した結果であると言える。

     シアトル製造のBoeing Heritage ModelであるB737/B747/B757/B767/

B777/B787は、FAAの定義において、Related Aircraftと呼ばれ、機種間におけるCommonalityのクレジットが認められている(Related Aircraftが認められた場合のPart 121の訓練要件の設定の仕方についてはFAA Notice N8900.286 “Part 121 Training Program Review”参照)。

     Boeing STARとは、Boeing Related Aircraft間での機種移行訓練期間が標準より短縮された訓練プログラムであり、具体的な日数は次図のとおりである。

図1-2 Boeing Related Aircraftにおける機種移行訓練の日数

     現在、B777/B787のMFFを行っている航空会社の例は次図のとおりである。このうち、全運航乗務員でMFFを実施している航空会社は、KLM、Ethiopian、Thai、Air Australであり、限定乗員(Management、Training、Checking Pilot)で実施している航空会社は、British Airways、Etihad、Air New Zealand、Qatarである。

図1-3 B777/B787のMFFを行っている航空会社

  1-1-2 Airbus

     Airbusは3名編成のA300(A300B2/B4)を1974年に民間航空業界で就航させた。その後、Overhead Panelの設計変更、ECAM(Electronic Centralized Aircraft Monitor)の装備、FMS(Flight Management System)の装備により、2名編成のA310を開発した。その後、A310の技術はA300にも適用され、2名編成のA300-600Rも開発された(A300-600はA300FFCC(Face Forward Cockpit Crew)とも呼ばれる)。

     民間航空業界において後発であるAirbusは市場における差別化を図り、安全性を向上するために、1980年代中頃にFBW(Fly By Wire)を含む当時の最先端技術を結集して狭胴機種であるA320の設計を開始し、それは今日のAirbus Family Conceptの布石に繋がっている。

     A320における技術革新とは、

· A300、A310に装備したControl Columに代わるSide Stickの採用

· Back DriveのないThrust Leverの採用及びAuto Thrust Controlの装備

· Normal Lawでは機体の運用限界を超えることのないEnvelope Protectionの装備

    などに代表される。

    (参考資料:調査-04(Airbus FBW- Background Information)参照)

     A320は1988年に型式証明(TC:(Type Certificate)を取得し、同年に就航を開始した。その後、Airbus社は更にマーケットシェアを拡大すべく、A320の技術を適用した広胴機であるA340(4発エンジン)とA330(双発エンジン)を開発し、それぞれ1991年および1992 年にTCを取得し、1993年および1994年に就航させている。

     Airbusは1989年にA330およびA340の開発プロジェクトを開始するに際し、当時のJAA(Joint Aviation Authorities)に対し、JOEB(Joint Operations Evaluation Board)にMMEL(Master Minimum Equipment List)だけではなく、Crew Qualificationを含めるよう依頼を伝えた。また、同時期には、米国ではFAAがCrew Qualification に関するAC 120-53の発行準備が行われ(実際の発行は1991年)、国際的にCrew Qualificationを考慮する動きが高まった時期であった。

     A320/A330/A340の3機種がそろったことにより、Airbusは機体設計におけるCommonalityを活用し、型式限定取得時に相互の機種間での移行訓練を従来と比較して圧倒的に短くするCCQ(Cross Crew Qualification)を導入することに成功した(DGACにおけるA320/A330/A340のCCQ承認は1995年)。また、欧州では、これらのうち2機種に同時乗務できるMFF制度が認められた(LH(ルフトハンザ航空)はA320/A340のMFFを1994年に開始し、CX(キャセイパシフィック航空)はA330/A340のMFFを1995年に開始している)。

     A320/A330/A340のCrew Qualificationに関する活動は、各国の航空当局別に行われていたが、2001年にA340-600(以降A340-600を含む)に対するOperational EvaluationをJAA、FAA、TCCAが合同で行うことになった。結果としてA340-200/300とA340-500/600はFAA FSB、JAA JOEB、TCCA OEにおいてSame Type Rating(STR)として承認された。

     その後、A320シリーズとして、A318、A319、A321が開発され、Operational Evaluationを経て、全てA320とのSTRが承認された。

     Airbusは、更に技術革新を図りつつも、A320/A330/A340とのCommonalityを踏襲し、ハブ&スポークの運航を世界的に拡大すべく、総2階建て広胴機のA380を設計し、2007年に就航させた。AirbusはA380のOperational EvaluationをJAA、FAAおよびTCCA合同で実施することを依頼した。その後、A380の技術を応用し、最新鋭機種となるA350を2015年に就航させた。

     Airbus FBWであるSide Stickは、左右のInter Connectionがなく、Auto Pilotからのフィードバックもなく、Trimは自動で行われるため、NormalおよびAlternate ModeにおいてStab Trim SWの操作は不要である(C* Control Lawと呼ばれる)。

図1-4 エアバス機の変遷

図1-5 フライバイワイヤ

図1-6 フライバイワイヤ

図1-7 エアバス・フライバイワイヤのPitch Normal law

     Non FBW機種ではHandling Qualityが個別の特性を持っていたため、訓練や経験はそれぞれの機種別に必要であった。しかしながら、Airbus FBW 機では、「パイロットのPitch方向の入力は“Pitch Rate”もしくは“g”、Roll方向の入力は“Roll Rate”をコマンドするするため、機種間におけるHandling QualityがNormal Modeでは機体サイズに依らず同等となり、Airbus Family機種間における移行訓練を短くすることができ、更に安全かつ効率的なMFFを可能としている。

     Airbus社のFlight Operational Commonalityとは、

· Handling Qualityが同じであること

· Normal Procedureが同じであり、AbnormalおよびEmergency ProcedureにおいてProcessやDiscipline(規律)が同じであること

· Crew Task Sharingが同一であること

    を指している。

     Cockpitの設計思想として、A320からA350まで同様のPanel Arrangementを有している。

図1-8 エアバス機のコックピットレイアウト

     Overhead Panelは、各システムのSW(スイッチ)、Lightを同じ配置にしている。

     また、Glareshieldの配置も機種間で同様になっている。

図1-9 エアバス機のOverhead Panelの配列

図1-10 エアバス機のGlareshieldの配置

図1-11 エアバス機のGlareshieldの配置

     Airbus社において、Crew Qualificationに関してCommonalityを有する機種は現在、以下のとおりである。

     A320-200/A318-100/A319-100/ A321-100/200/A320neo/A321neo

     A330-200/-300/A330neo(開発中)

     A340-200/300/500/600

     A350-900/-1000

     A380-800

図1-12 エアバス機のMan-Machineインターフェース

     AirbusにおけるCockpit Design Philosophyは、次の10項目とされている(参考資料:調査-02(AirbusのCockpit Design Philosophy)参照)。

     (1) 航空機の安全運航の最終的な責任は運航乗務員にある。運航乗務員は、適切な情報を持ち、安全運航の権限を行使する手段を有し、かつ最終権限を行う立場にある

     (2) 機体への過度なストレスやオーバーコントロールのリスクを排除することを目指しつつも、必要な場合には、単純かつ直感的な操作が行えるよう配慮する(注:運航乗務員は、必要な場合、すぐにEnvelop Protection 領域まで操作を行うことが許容されていることを意味する)Comment by WADA TAKASHI(JALI TYONFQ): 挿入

     (3) 操縦室の設計は、様々な運航乗務員のスキルレベル及びこれまでに運航した航空機の経験を活かせるものである

     (4) 操縦室設計の優先順位は、安全性、快適性、効率性の順番である

     (5) 操縦室設計においては、状況や航空機の状況認識を高め、運航乗務員のTask を簡素化する

     (6) 自動化は、運航乗務員が状況に応じ、自動化のレベルを下げる時期や必要な自動化のレベルを判断できるよう、補佐的に位置づけるべきである

     (7) ヒューマン・マシン・インタフェースは、運航乗務員の長所と短所を踏まえ、システム機能を考慮して設計される

     (8) 総合的な操縦室の設計は、運航乗務員のコミュニケーションを支援するよう設計される

     (9) 運航乗務員が持つ潜在的なエラーに対処するシステムを設計する際に、最先端のヒューマンファクターを適用する

     (10) 新技術の使用や新機能の適用は、以下によって決定される。

       -著しい安全上の利点

       -明確な運用上の優位点

       -運航乗務員のニーズへの明確な回答

     また、Airbusでは一貫したOperational PolicyとしてGolden Rules for Pilotsを掲げており、Airbus提供のManualにも記載され、啓蒙されている。

     1. Fly, navigate and communicate: In this order and with appropriate tasksharing

       (Fly、Navigate、Communicateの優先順位で適切なTaskshareを行う)

     2. Use the appropriate level of automation at all times

       (Automationは、常に適切なレベルで使用する)

     3. Understand the FMA at all times

       (常にFMAの表示内容を理解する)

     4. Take action if things do not go as expected

       (予期せぬことが起こった場合は、Actionを取る)

図1-13 Golden Rules for Pilots

     A350は、当初よりA330とのType Ratingを同一とするように設計され、EASAとFAA合同によるOperational Evaluationの結果、2014年にEASAではSingle License Endorsementと認定され、FAAでは従来の考えにおけるCTR(現在の規則ではRelated Aircraft)と認定された。

     結果として、EASAにおいて、現在Airbus FamilyのType Ratingは、A320、A330/A350、A340、A380の4種類となっている。

     Airbus Family機種間におけるCCQ TrainingおよびDifference Trainingの日数は次図のとおりであり、Airbus機種以外からの標準機種移行訓練が24日間程度であることを踏まえると、非常に短期間での機種移行訓練又は差異訓練が可能となっている。

     なお、EASAにおいて、A330/A350はSingle License Endorsementとして認められ機種移行訓練期間が8日と短くなっている。一方、また、A330とA340は比較的近い時期に開発されておりシステムが類似しているが、エンジン数が異なるため、別型式限定であるにも係わらず、その機種移行訓練はが2~3日とさらに短くなっており、興味深い点である。

図1-14 エアバスのCommonalityの概要

図1-15 エアバス機間の型式移行時の訓練日数

     Airbus機種でMFFおよびSFFを行っている航空会社は36社あり、

      A320/A330   :23社(MFF)

      A320/A340   :2社(MFF)

      A330/A340   :16社(MFF)

      A330/A350   :5社(SFF)

      A330/A340/A350 :1社(SFF/MFF)

    となっている。

図1-16 エアバス機でMFF及びSFFを行っている航空会社の例

(2018年5月時点)

  1-1-3 三菱航空機

    MRJ開発は、2002年に経済産業省が発表した30席から50席クラスの小型ジェット機「環境適応型高性能小型航空機」の開発案について、機体メーカー3社(三菱重工業、川崎重工業、富士重工業)に提案を求めたことに端を発している。

    現在では、三菱航空機(設計者)・三菱重工業(製造者)を中心に、YS-11以来約半世紀ぶりに日本独自の旅客機の新規開発が進められている。2014年10月にロールアウトが行われ、2015年11月に県営名古屋空港において初飛行が行われた。

図1-17 三菱リージョナルジェット(MRJ)

    MRJは、基本となる90席機のMRJ90及び70席機のMRJ70の開発が予定されており、さらに100席機が計画されている。MRJは、ボンバルディア製のCRJやエンブラエル製のERJと競合する市場に投入されることになる。

    MRJファミリーについては、共通のエンジン、共通の整備プログラム、共通のスペアパーツを確保するなど、機種間の共通性を高めることにより、機体導入コストの削減や整備・運航効率の向上を図れるよう設計・開発が進められている。

図1-18 MRJの競合機種

図1-19 MRJファミリーのCommonality

図1-20 MRJの航続性能

図1-21 MRJのサイズ

図1-22 MRJのAdvanced Aerodynamics

    MRJでは、Rockwell Collins社の最新鋭フライトデッキPro Line Fusion®を搭載し、4面の15インチ大型液晶ディスプレイにより飛行状況や地形情報等の状況視認性を向上させるとともに、フライバイワイヤーを採用したことにより運航乗務員のワークロードを低減するよう設計されている。

図1-23 MRJのFlight Deck Arrangement

図1-24 MRJコックピットのディスプレイ

    MRJのフライトデッキの設計思想としては、「人間の性能や特性に根ざす要求事項を重要な設計要求と置き、人間と機械との役割分担を適正化することによって、Human Factorsに起因する事故要因を排除するFlight Deckを目指す」とされ、具体的な考え方は以下のとおりとされている。

    1. Feedback philosophy – Pilot in the loop control

      -機体の置かれている状況を、パイロットが感じ取れるようなフィードバックを提供する

      -オートメーションは、行動の目的に適う効果的なフィードバックをパイロットに提供する

    2. Information management philosophy – at right time, in right place and format

      -認知に関わるパイロット負荷を最小化するため、効果的かつ感覚的な情報提供をする

      -情報は、簡潔かつ整理されたものとする

      -パイロットの解釈を必要としないよう、情報は直接利用可能な形で提供する

      -タスク完了に追加の参照を必要としないよう、画面にはできるだけ関連情報を含めて表示する

      -重要な情報は常に表示されるよう、情報に順位付けをする

    3. Automation philosophy – as an aid to the pilot

      -オートメーションはパイロットにその動作モード・意図・機能・出力・エラーや劣化・マニュアル選択による潜在的な危険なモードについて、タスク遂行の妨げにならないようにする

      -パイロットがオーバーライドできるようにする

      -一般的な用語と手順で効果的に使用でき、また、エラーは予測可能な最小限度に留め、高い信頼性を保つこと

      -命令系統からパイロットを外さないこと

      -画面は直観的で理解しやすく、また使いやすいものとする

      -オートメーション使用の最終判断はパイロットにある

 1-2 海外におけるCommonalityの取り組み状況

   ボーイングのLeading Authorityである米国(FAA:Federal Aviation Administration)、エアバスのLeading Authorityである欧州(EASA:European Aviation Safety Agency)、ボンバルディアのLeading Authorityであるカナダ(TCCA:Transport Canada Civil Aviation)、エンブラエルのLeading Authorityであるブラジル(ANAC:Agência Nacional de Aviação Civil)は、航空機製造国政府として運航・整備要件の評価を行っており、中でも運航乗務員に対する訓練・審査の妥当性については、その評価プロセスの国際調和(ハーモナイゼーション)が図られ、合同で試験が行われている。

   中国では、中国商用飛機有限公司(COMAC:Commercial Aircraft Corporation of China, Ltd)において、ジェット旅客機の製造・開発が進められており、現在ARJ21、C919、CR929の3つの型式の航空機が存在している。

   「ARJ21」は、中国単独で開発された最初のリージョナルジェットであり、78~90席が標準とされている。FAAのType Certification取得の申請が行われた最初の航空機とされている。

   「C919」は、中国単独で開発が進められてきた国産大型旅客機であり、2017年5月に初試験飛行が行われた。158~170席を標準としたC919は、A320やB737と競合する機体サイズとなっているが、米国(FAA)及び欧州(EASA)の型式証明を取得できていないため、現時点では中国国内専用の旅客機であり、既に中国国内だけで計570機を受注している状況にあると言われている。

   「CR929」は、COMAC及びロシアの統一航空機製造会社(UAC)が共同で開発予定のワイドボディ機であり、280席の機体サイズが想定されている。

   これらの国産機の開発にあたり、米国(FAA)や欧州(EASA)と同様に、運航乗務員に対する訓練・審査の評価を行うための準備を進めているようである。プロセスのハーモナイゼーションを図っている。さらに、中国当局は、こうした運航乗務員に対する訓練・審査の評価について議論が行われているIOEPB(International Operational Evaluation Policy Board)にも積極的に参加している。

図1-25 COMAC製の航空機(ARJ21/C919/CR929)

   また、ロシアでは、2017年5月に、統一航空機製造会社(UAC)の傘下であるイルクート及びヤコブレフで開発されてきた双発中短距離ジェット機「MS-21」の初飛行が行われた。

   高コストのオートクレーブと呼ばれる複合材硬化炉を使わず、軽量の炭素繊維複合材で造られた主翼で飛行する初の旅客機とされている。この機体はエアバスA320シリーズとほぼ同等のキャパシティの旅客機で、160人乗りの2モデルが計画されている。

   ロシア航空当局におけるOperational Evaluationに係る取り組み状況は不明であるが、旧ソ連諸国の型式証明を担当するIACだけでなく、米国FAA、欧州EASAの型式証明取得を目指しているとされている。このため、MRJと同様に、ロシアの航空当局においても、Operational Evaluationの準備が進められているのではないかと思われる。

図1-26 統一航空機製造会社製MS21

   その他、Commonalityの考え方を導入している諸外国(カタール、アラブ首長国連邦、タイ、香港、シンガポール、マレーシア 等)では、航空機製造国政府が認可したFSB ReportやOSD Document等を参照し、STAR/CCQやMFFなどの導入を認めている。

図1-27 Commonalityの考え方を導入している国々

 1-3 まとめ

   航空機製造メーカーにおいては、民間航空機マーケットを意識して、型式間の設計コンセプト・運航コンセプトを類似したものとすることにより、効率的な訓練・審査の実施や安全にMFFが実施できるよう設計上の考慮が行われている。

   このため、製造メーカーのLeading Authorityとなる各国当局を中心として、Operational Evaluationが実施されており、その情報を活用することにより、世界的に型式間のCommonalityを考慮した訓練・審査や複数型式の同時乗務が活発に行われている。

2 訓練・審査要件の評価に係る各国の制度概要

  Operational Evaluationを実際に行っている米国(FAA)、欧州(EASA)、カナダ(TCCA)、ブラジル(ANAC)、中国(CAAC)の制度の調査結果(概要)を以下に示す。

  また、FAA FSB Report及びEASA OSD Documentの内容の調査を行っており、その調査結果を付録に示すため、当局が承認したこれらの文書の内容を確認したい場合には、付録を参照されたい。

 2-1 米国(FAA)

  2-1-1 米国における評価体制

     ライセンシングに関する要件はCFR Part61に、航空運送事業者の運航・整備に関する要件はCFR Part121に具体的に規定されており、これらの要件に対する適合性について、以下に示すAEGにおいて評価が行われている。

     FAA Order 8110.4C(Type Certification)及びFAA Order 8110.112A(Standardized Procedures for Usage of Issue Papers and Development of Equivalent Levels of Safety Memorandums)において、Aircraft Evaluation Group(AEG)とその関連Boardの設立及びIssue Papersの発行について定められている。

     米国では、新型式の航空機に対する型式証明(TC)を検討する際の各種活動の一つとしてAEGが組織されており、米国内の5つの事務所でOperational Evaluationが行われている。AEGでは、認証を扱うFAAのエンジニアとパイロットが当該型式機の運航及び整備に関する事項を評価するため、FSB(Flight Standardization Board)、FOEB(Flight Operational Evaluation Board)、MRB(Maintenance Review Board)という3つのBoardが設置されており、それぞれのBoardが活動を行っている(参照14 CFR 21.19, FAA Order 8110.4C Par2-6)。

     FSBは、Pilot Type Rating、Training / Checking / Currency、MFFの要件などを評価、FOEBはMMELを評価、MRBは耐空証明のための整備手順を評価している。

     FSBに関する活動は、AC120-53B(Guidance for Conducting and Use of Flight Standardization Board Evaluations)及びFAA Order 8900.1 FSIMS Vol.8 Ch.2 Sec.5(Flight Standardization Boards)and Sec.6(Serve as a Member of a Flight Standardization Board)等に基づいて行われている。

図2-1 米国におけるAircraft Evaluation Group Offices

図2-2 米国におけるAEG Officeの担当範囲

【参考:AC120-53B Change1(抜粋)】

1. PURPOSE. This advisory circular (AC) has two purposes:

 a. Evaluating Manufactured or Modified Aircraft. It provides a means, but not the only means, of evaluating manufactured or modified aircraft by the use of standard systems, processes, and tests necessary to determine pilot training and qualification requirements.

 b. Differences in Training and Qualification Between Aircraft. It describes an acceptable means, but not the only means, of compliance with applicable Title 14 of the Code of Federal Regulations (14 CFR) that provide for differences in training and qualification between aircraft with the same type certificate (TC). It further describes an acceptable means for providing related aircraft differences training and qualification under provision of 14 CFR part 121 between aircraft with different TCs that have been “designated” by the Administrator as related. Both of these processes use the provision of the Flight Standardization Board (FSB) report as the basis for the approval of pilot training and qualification necessary for the operation of aircraft. This AC is intended to enhance safety by:

  (1) Providing a standard method of assessing applicant programs.

  (2) Directly relating pilot training and qualification requirements to fleet characteristics, operating concepts, and pilot assignments.

  (3) Permitting better industry planning and management by outlining what Federal Aviation Administration (FAA) requirements apply, what training resources or devices are needed, and what alternatives are possible.

  (4) Encouraging aircraft manufacturers to design with the goal of developing common characteristics between related aircraft.

  (5) Providing a recommended framework for application of suitable credits or constraints to better address new technology and future safety enhancements.

  2-1-2 FSBの概要

     FSBは、次図に示すような評価プロセスを経て、その結果を機種別にまとめて、FSB Reportとして発行している。FSB Reportに記載すべき内容は、AC120-53(最新版は120-53B Change1、参考資料:調査-06(FAA, 120-53B抄訳)参照) にガイダンスとして示されており、型式毎の基本要件を定めることになっている。

 Airbus Workshopにおける元SEA AEG ManagerであるCapt. Bob Reichの説明によればFAAにおけるType Ratingの在り方についての変遷は以下の通りである。

· 1962 年に定められたFARにより、Type RatingとTC結びつけられた。

· 1991年にOriginalである AC120-53が発行され、757/767のCTRがPart 121航空会社に適用された。

· 2008年にAC120-53Aが発行され、Pqart121に限定せず、Level B TrainingまではVariant、Level D TrainingまではCTRとして定義されることになった。(現在のEASAと同じ定義に相当する。)

· 2009年に発生したColgan Airの事故後、2013年に”Qualification, Service, and Use of Crewmembers and Aircraft Dispatchers”に関するFinal Ruleが発効となり、SimilarなDesignとHandling Characteristicsを持つMulti Aircraft Typeの運航についてTraining Programの修正をすることが義務付けられた。これに合わせてAC120-53Bが発行され、再びPart121運航会社に限りRelated Aircraftの申請が可能となった。(したがって上記AC120-53Aとは異なり、Part 121以外は対象外となった。)

· 2016年にAC120-53B CHG1が発行され、ODR TableからCurrency項目が除外となり、現在EASAとのHarmonizationから若干離れる経緯となった。(Currencyが除外となったのは、原則規程を尊重するためにCurrencyはPart 61でカバーし得るという見解である。)

図2-3 FAAにおける評価プロセス(AC120-53B Change1参照)

     FSB Reportに記載される基本要件は、基本共通要件(Master Common Requirements:MCR)と基本差異要件(Master Difference Requirements:MDR)から構成され、MDRは、訓練(Training)/審査(Checking)/カレンシー(Currency)の差異レベルの要件が示されている。

     また、MDRの要件に適合した具体的な実施方法を運航者差異要件(Operator Difference Requirements:ODR)として設定し、FAAにより承認されてきた。

     しかし、上記の変遷の通り、2016年10月24日にAC120-53B Change1が発行され、FSB Reportの再構築が行われている。今後、FSB ReportにはODR Tableを記載するのではなく、航空機の設計上の差異を示すDifferences Tablesを記載するという見直しが行われている。航空会社は、MDR Tableに示された最低限の要件を遵守するために、Differences Tablesを参考に、導入航空機の仕様に応じた独自のODR Tableを作成し、FAAの承認を受けなければならない。ODR Tableの参考となる内容がFSB Reportに記載されているため、米国では FSB Reportが審査基準として使用されている。

     さらに、これまで、Training / Checking / Currencyの3項目について差異レベルが設定されていたが、AC120-53B Change1において、Currencyの項目が削除されたことから、今後はTraining / Checkingの2項目について差異レベルが設定される。ただし、Currencyは、Recency of experienceの概念も含んでいるためFSB Reportの要素として記載されている。

     なお、FAAにおけるType Rating区分はTC活動の一部ではあるが、TCに直接影響を与えるものではないため、TCDS(Type Certificate Data Sheet)上にType Ratingに関する記載はない。

図2-4 FAAにおける差異レベル(AC120-53B Change1参照)

 2-2 欧州(EASA)

  2-2-1 欧州における法体系と各加盟国の関係

     欧州では、European Parliament(EP)において基本となる規則(BR/ER : Basic Regulation / Essential Requirements)が制定され、European Council(EC)においてImplementing Rules(IR)が制定されている。さらに、これらの規則を遵守するために必要な内容が、各分野の専門機関であるAgency(航空分野ではEuropean Aviation Safety Agency : EASA)において、Certification Specification(CS)、Acceptable Means of Compliance(AMC)、Guidance Material(GM)として策定されている。

     EU域内における基準の遵守を確保するため、各加盟国の航空当局NAA(National Aviation Authority)において、許認可等が行われている。

図2-5 欧州の法体系及びEASA/NAAの関係

図2-6 EU加盟国(2018年3月末時点)

  2-2-2 OSDの変遷

     欧州では、1990年代初めにAirbusの要請を受け、Crew Qualificationに関わるFull Type Rating Course及びA320/A330/A340間のCCQ(Cross Crew Qualification)を評価するために、FAAのFSBと同様な組織であるJOEB設置の検討が行われた。JOEBが組織されるまでの間、Type Ratingのプログラムは各国別に評価が行われていたが、JOEBを正式に発足するため、1995年のJAR-OPS発行、1997年のJAR-FCL1の発行を待つことになった。

     最初のJOEBはCRJ700のOperational Evaluationを行う際に組織され、14社の製造機に関し38回のJOEBが組織された。JOEBが発行するReportには、ODR TableやOperational Recommendationが記載された。2001年にJAAとFAAがシカゴで会議を開催して以降、JAA、FAA及びTCCAはFCLやOPSに関するOperational Evaluationの整合性をとるようになった。JAA/FAA/TCCAとして初のJoint Operational Evaluationは2002年のA340-600型機が対象であった。

     2006年2月にJOEB評価プロセスはEASAに移管され、完全な移行に4年間を要し、2009年以降はJOEBに代わりOEBが組織されるようになった。その後、2014年2月にEASAは認証と実運航を直接繋ぐ目的のため、EASAが組織するOEBからOSDへ遷移された。

図2-7 JAA JOEB→EASA OEB→EASA OSDへの遷移

図2-8 EASA OEBからOSDへの遷移

  2-2-3 OSDの概要

     EASAにおける、訓練・審査に係る具体的な基準は参考資料:調査-11(EASA Regulation抄訳)にまとめられているとおりであり、OSDに基づきType Ratingが決定され、OSDに基づく訓練・審査の一部を省略することが可能であることが定められている。

     OSDは、当局が行う許認可行為と航空会社における安全運航の橋渡しをする役目を果たしている。

     OSDはBR及びPart-21に基づき、型式証明保有者(TC Holder)に求められるものであり、エンドユーザーである航空会社や訓練機関は、この内容に応じた訓練・審査を実施することが義務づけられている。

図2-9 OSDの概要

     EASAはTC Holderに対し、Required DataとVoluntary Dataの提供を求め、OSD DocumentにはMandatory DataとRecommendation Dataが記載される。OSD DocumentはTC Holderが所有し、EASAが承認する形式であり、各航空会社と各航空当局が使用する。TC Holderの介在は、設計を熟知し、設計の知識を活用することになり、EIS(Entry Into Service)前に全ての必要な情報を確認することにより、新型式機の安全運航を支えることになる。

     OSDに記載すべき内容はCertification Specifications(CS)にガイドラインとして定められている。CSには以下の種類があり、Type Rating、Flight Operational Commonalityに関する事項はCS-FCD(参考資料:調査-12(EASA CS-FCD抄訳)参照)に基づくことになる。

     ・CS-FCD(Flight Crew Data)

     ・CS-SIMD(Simulator Data)

     ・CS-MMEL

     ・CS-GEN-MMEL

     ・CS-CCD(Cabin Crew Data)

     ・CS-MCS(Maintenance Certifying Staff)

     FAAのAC120-53Bに基づく評価プロセスとEASAのCS-FCDに基づく評価プロセスは概ね整合性がとられている。

図2-10-1 FAA・EASAのOperational Evaluationに係る基準

図2-10-2 FAA・EASAのOperational Evaluationに係る承認文書

図2-11 EASAにおける評価プロセス(CS-FCD参照)

     FAAでは、2016年のAC120-53B Change1の発行により、Currencyに係る項目が削除され、Training / Checkingの2項目について差異レベルが設定されることになったが、EASAでは、これまでどおりTraining / Checking / Currencyの3項目について差異レベルが設定される。

図2-12 EASAにおける差異レベル(CS-FCD参照)

     また、OEBからOSDへの遷移により、OSDは型式証明プロセスに完全に包含されるようになり、TCDSにType RatingやVariantが記載される仕組みとなった。したがって、OSDは運航乗務員、客室乗務員、MMEL、整備確認者をカバーするシステマチックなアプローチであり、OSDの概念は、Operational Standardを高い水準で維持し、技術革新を効果的に促進できるものである。OSDは、欧州における高い安全性を構築するための標準となっている。

図2-13 Certification / OSD / Operationの関係

     TCDSの例として、A350は2014年9月30日にEASAのTCを取得したが、TCDSにOperational Suitability Data (OSD)の項目があり、Flight Crew Dataに関しては、A330とA350が一つのLicense Endorsementを有していることが明示されている。

図2-14 A350 TCSDのOSD記述

     なお、継続的なOperational Suitabilityを担保するため、TC Holderは設計変更などの場合、OSDへの影響をモニターし、STC(Supplemental Type Certificates)を発行する他社も当該OSDへの影響を考慮しなければならない。欧州では、EASAが安全性を保証する仕組みを作り上げる一方、TC Holderが設計変更による影響を分析し、継続的にEASAの承認を得ることで安全性の確保が継続されるようになっている。

 2-3 カナダ(TCCA)

   カナダにおいても、航空機製造メーカーとしてボンバルディアが存在しており、FAA FSBやEASA OSDと同様の取り組みが行われている。

   TCCAでは、Canadian Aviation Regulations(CARs)に、訓練・審査や運航に関連する基準が定められており、その構成は以下のとおりとなっている。

    Canadian Aviation Regulations(CARs)

Part I

- General Provisions

Part II

- Aircraft Identification and Registration and Operation of a Leased Aircraft by a Non-registered Owner

Part III

- Aerodromes, Airports and Heliports

Part IV

- Personnel Licensing and Training

Part V

- Airworthiness

Part VI

- General Operating and Flight Rules

Part VII

- Commercial Air Services

Part VIII

- Air Navigation Services

Part IX

- Repeals and Coming into Force

   また、TCCAでは、Operational Evaluationに関するPolicy Letters 136が発行されており、この文書の方針の下、カナダ国内で運航される型式の航空機について、CARsへの適合性の評価が行われるようになっている。

   TCCAのOperational Evaluationは、FAAのAC120-53やGuidance for Conducting and Use of Flight Standardization Board (FSB) Evaluations及びJAA/FAA/TCCA が発行するCommon Procedures Document for Operational Evaluation Boards (CPD)に基づき実施されている。

   Mixed Fleet Flyingについては、Policy Letters 173(Flight Crew Member Qualification Credits for Transition Programs and Mixed Fleet Flying Programs)を発行しており、CARs 705.106(Pilot Qualifications)や705.113(Validity Period)の要件の免除(Exemption)を行っている。なお、Policy Letters 173に基づき、CTLC creditの申請に応じてT6テストを行うことは可能であるが、実際に行われた実績はない。

   TCCAでは、航空機製造国としてボンバルディアの機体を中心に評価を行っているが、ボーイング機についてはB787及びB737等の評価が行われており、エアバス機についても評価が進められているようである。

図2-15 TCCAのOEB Report(ホームページより抜粋)

【参考:Canadian Aviation Regulations (抜粋)】

Part VII - Commercial Air Services

 Pilot Qualifications

  705.106 (1) Subject to subsection (3), no air operator shall permit a person to act and no person shall act as the pilot-in-command, second-in-command or cruise relief pilot of an aircraft unless the person

       (a) holds the licence, ratings and endorsements required by Part IV;

       (b) within the previous 90 days,

        (i) has completed at least three take-offs and three landings as the pilot at the controls and one sector assigned to duty as a flight crew member in an aircraft of that type,

        (ii) has completed five sectors assigned to duty as a flight crew member in an aircraft of that type, or

        (iii) has fulfilled the training requirements set out in the Commercial Air Service Standards;

       (c) has successfully completed a pilot proficiency check, the validity period of which has not expired, for that type of aircraft, in accordance with the Commercial Air Service Standards;

       (d) has successfully completed or is undergoing a line check or line indoctrination training, the validity period of which has not expired, for that type of aircraft, in accordance with the Commercial Air Service Standards; and

       (e) has fulfilled the requirements of the air operator’s training program.

      (2) A pilot who does not meet the requirements of subparagraph (1)(b)(i) or (ii) shall regain competency in accordance with the Commercial Air Service Standards.

      (3) An air operator may permit a person to act and a person may act as the pilot-in-command or second-in-command of an aircraft where the person does not meet the requirements of subsection (1), if

       (a) the aircraft is operated on a training, ferry or positioning flight; or

       (b) the air operator

        (i) is authorized to do so in its air operator certificate, and

        (ii) complies with the Commercial Air Service Standards.

      (4) A pilot shall, on successful completion of a pilot proficiency check, meet the requirements of the consolidation period in accordance with the Commercial Air Service Standards.

 Validity Period

  705.113 (1) Subject to subsections (4) and (5), the validity period of a line check and of the training referred to in section 705.124 expires on the first day of the thirteenth month following the month in which the check or training was completed.

      (2) Subject to subsections (4) and (5), the validity period of a pilot proficiency check expires

       (a) on the first day of the seventh month following the month in which the check was completed;

       (b) on the first day of the thirteenth month following the month in which the check was completed, where the pilot successfully completes the six-month recurrency training that has been approved by the Minister, in accordance with the Commercial Air Service Standards, as a substitute for the pilot proficiency check and that is identified in the company operations manual; or

       (c) at the end of the validation period, where the air operator has an operations specification authorizing an advanced qualification program in accordance with the Commercial Air Service Standards and the pilot completes a proficiency evaluation within the evaluation period authorized for the air operator in the operations specification.

      (3) The validity period of a flight dispatcher competency check expires on the first day of the thirteenth month following the month in which the check was completed.

      (4) Where a pilot proficiency check, a flight dispatcher competency check, a line check or training is renewed within the last 90 days of its validity period, its validity period is extended by six or 12 months, as appropriate.

      (5) The Minister may extend the validity period of a pilot proficiency check, a flight dispatcher competency check, a line check or any training by up to 60 days where the Minister is of the opinion that aviation safety is not likely to be affected.

      (6) Subject to subsection (7), where the validity period of a pilot proficiency check, a line check, or annual or semi-annual training has been expired for 24 months or more, the person shall requalify by meeting the training requirements specified in the Commercial Air Service Standards.

      (7) Where the validity period of a flight dispatcher competency check or annual training has been expired for 12 months or more, the person shall requalify by meeting the training requirements specified in the Commercial Air Service Standards.

【参考:Policy Letters 136(抜粋)】

Policy

  When a Region is informed that an air operator plans to introduce an aircraft type not previously operated in Canada, the Regional Manager, Commercial & Business Aviation (RMCBA) will contact CBA Operational Standards, Programme Manager Flight Technical (PM FT), to determine if an OE will be conducted. The PM FT will review any existing FSB Reports concerning the aircraft type in question and decide if an OE should be conducted and the scope of any evaluation, using AC 120-53 for guidance. A recommendation will then be made to the Chief, Operational Standards.

  If an OE is approved, a team will be formed consisting of at least two inspectors. The Team Leader will be an inspector from Operational Standards, and the RMCBA will nominate an inspector as team member. The PM FT will ask the RMCBA to arrange a meeting with the air operator as soon as possible, in order to explain the OE process and what will be required of the air operator and the manufacturer. All costs associated with the OE are recoverable, including overtime, but not including regular salary.

  As a minimum, operators will normally also be required to pay the costs of training the OE team to type rating level on the aircraft, using the manufacturer's proposed training progra


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