第10章 炭素鋼の熱処理と実用炭素鋼
*各種熱処理(焼・・・) 目的,方法,組織,特性を理解
*焼入れ共析鋼の焼もどし過程 組織,特性の変化 *恒温変態曲線(TTT) 目的,特性 *連続変態曲線(CCT) 臨界冷却速度,焼入れ性との関係
残留マルテンサイトの 割合による
セメンタイトの球状化 高靭性化
目的: 靭性の改善 方法: A1線付近で保持後,徐冷
(1): 共析セメンタイトの分断 (2): 共析セメンタイトの分断+初析セメンタイトの微細化
大型部材用
亜共析鋼 過共析鋼
球状化焼なまし =セメンタイトの球状化処理
焼ならし =γ域からの空冷処理
高強度 高靭性
目的: 微細パーライト組織を得る 方法: A3線 or A3線直上で保持後,空冷
微細パーライト: ソルバイト,トルースタイト
パーライト組織 の微細化による
冷却開始温度 A3, Acm線よりわずかに高い温度 γ粒の粗大化を抑制
パーライトの強度,靭性: フェライトとセメンタイトの中間
焼入れ温度高すぎても,硬さの上昇はみられない。
焼入れ =マルテンサイトを得る処理
目的: γ→マルテンサイトにする 方法: A3線 or A3線直上で保持後,水冷
焼もどし =マルテンサイト組織の分解
目的: マルテンサイトに靭性を持たせる 方法: 100℃~A1線で等温保持後,炉冷
焼もどし =マルテンサイト(M)の時効処理
共析鋼では,以下の3つの段階で焼もどしが進行する
第1段階(80~220℃): Mからの炭素排出
M(bct) → Fe2.4C(ε-M,六方晶)+ 低炭素M(bcc)
第2段階(200~300℃): 残留γの分解
残留γ → Fe2.4C(ε-M,六方晶)+ 低炭素M(bcc)
第3段階(200~500℃): 低炭素Mからの炭素排出,Fe2.4C→Fe3C
低炭素M(bcc) → α(フェライト) Fe2.4C(ε-M,六方晶) → Fe3C(セメンタイト,斜方晶)
体積↓ 電気抵抗↓
体積↑ 電気抵抗↓ 磁化
非平衡状態から平衡状態へ遷移過程
500℃以上では平衡状態図どおりの組織になる
強度
靭性
恒温変態: 時間依存型の相変態
恒温変態曲線(Time-Temperature-Transformation (TTT) Curve)
共析鋼
ベイナイト: 微細セメンタイト(or Fe2.4C) と高ひずみフェライト の混合組織
(形態) 上部ベイナイト;羽毛状 下部ベイナイト:針状
ベイナイト組織:強度を維持しながらも,高い靭性を示す(図10.23)。
恒温変態を利用した熱処理として
○恒温焼なまし ○オーステンパー ○マルクエンチ ○マルテンパー ○パテンティング ○オースフォーミング
連続冷却変態: 速度依存型の相変態
連続冷却変態曲線(Continuous-Cooling-Transformation (CCT) Curve)
共析鋼
上部臨界冷却速度
合金元素を含む鋼(高張力鋼)のCCT曲線
焼入れ性の評価(ジョミニー試験)
臨界直径:
中心まで焼きが入る ような最大直径
焼入れ硬さHRC55が目安
U曲線
圧縮残留応力を表面に残すのが 実用的には好ましい形。
疲労き裂の伝播を抑制
熱型残留応力
残留応力 圧縮(熱型)
引張(変態型)
SPCC: S: Steel, P: Plate, C: Cold, C: Commercial(汎用) SPCD: S: Steel, P: Plate, C: Cold, D: Drawing(絞り) SPCE: S: Steel, P: Plate, C: Cold, E: Electroly>c(めっき)
SPCC(冷間圧延鋼板)
C<0.12%
最近では, 自動車用途への割合が大きい
炭素鋼生産の約50%が薄鋼板
第10章 炭素鋼の熱処理と実用炭素鋼 (まとめ)
○ 焼なまし,焼ならし,焼もどし,焼入れ →名称は似ているが,中身は全く異なる ○ 焼入れ共析鋼の焼き戻し過程 →マルテンサイト,残留γの分解を伴い平衡状態に戻る ○恒温変態曲線(TTT) →一定温度で相変態させる、各種の恒温変態あり ○連続変態曲線(CCT) →冷却で相変態させる ○焼入れ性の判断 →冷却速度遅くてもマルテンサイト変態が生じる =焼入れ性良好