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早稲田大学 商学部 Criterion を活用した大学英語ラ …3 2010.8.2...

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国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部 TOEFL® テストと国際教育交流の CIEE Criterion を活用した大学英語ライティング教育の試み 早稲田大学 商学部 2010.8.2 CIEE セミナー報告書 早稲田大学 商学学術院 鈴木利彦准教授 発表
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Page 1: 早稲田大学 商学部 Criterion を活用した大学英語ラ …3 2010.8.2 CIEE教職員セミナー 報告書 早稲田大学商学部の鈴木利彦と申します。本日はCriterionを活用した大学英語ライティング教

国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部TOEFL® テストと国際教育交流の CIEE

Criterion を活用した大学英語ライティング教育の試み早稲田大学 商学部

2010.8.2 CIEE セミナー報告書

早稲田大学 商学学術院

鈴木利彦准教授

発表

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32010.8.2 CIEE 教職員セミナー 報告書

早稲田大学商学部の鈴木利彦と申します。本日は Criterion を活用した大学英語ライティング教育の試みということで、私の実践報告を皆様にお伝えさせていただきます。本日の発表の命題として CIEE からいただいたのは「国際社会に通じる英語を大学が学生に意識付けることができるのか」で、これに関連して学生の英語学習の意識付けをどのように行っているのか、それから学生が将来社会に出るにあたりどのような英語教育を意識して行っているのか…これらに対する答えを本日の発表の内容で直接的・間接的に見つけていただければと思います。

本日の発表の流れですが、まずは「Criterion 導入の背景」について、私が実感した「授業で実証された Criterion の有用性」、「実際の授業での活用例」、「指導効果の検証」、最後に「Criterion活用の今後の指針:21 世紀の大学英語ライティング」として、私の現在の試みや今後どのようにやっていきたいかを報告させていただきます。

Criterion 導入の背景私は前の職場、上智大学で Criterion を使っていました。現在は早稲田大学の商学部におりますが、以前の職場と違い学生数も多く、レベルも様々です。Criterion は advanced のレベルでないと使えないだろうと思い、当初は導入していませんでした。ところがなんと 30 名のクラスを 4 クラス、つまり 120 名のライティングクラスを任されることになりまして、これは大変だ、何か考えなければと思った時に、もしかしたら Criterion が解決法になるのではないかと思い、今回再び導入したわけです。

英語ライティング指導において重要なポイントは皆さんもよくご存知だと思いますが、「語彙や文法など文レベルの指導」、「パラグラフレベルでの論理性」、「エッセイとしての一貫した論理性」、さらに「パラグラフの内容作り」。それに付随し て 転 換 語 句(transition signals)も自分の言いたいことを論理的に表現するための指導のポイントになると思います。そして一番大切なのが、スライドに赤で強調して書いたのが、「個々の受講生にフィードバックをどれだけ与えることができるか」ということです。添削の必要性と限界。学生のライティング向上のためにはとにかく量を書くことが必要ですが、どんどん書きなさいと推奨すればするほど教員はある意味自分の首をギューギューと絞めていくようなものです。学生は書けば書いただけフィードバックを付けてほしい。しかし教員もライティング以外の授業や業務がたくさんあり、物理的にできないことがどうしてもあります。ある程度規模の大きなクラスでライティング指導を効果的に行っていくうえで、いかにフィードバックを与えるかという難問に対して、Criterion がひとつの大きな解決法になったと実感しています。

Criterion® を活用した大学英語ライティング教育の試み早稲田大学 商学部

早稲田大学 商学学術院 准教授鈴木利彦(すずき・としひこ)

早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、英国ランカス* ター大学にて M.A.、Ph.D. を取得小・中・高等学校英語教諭、上智大学一般外国語教育セン* ター嘱託講師などを歴任後、2008 年に早稲田大学商学学術院専任講師に就任し 2010 年より現職専門は言語学(語用論)、英語教育* NHK ラジオ第二放送講師(「英語ものしり倶楽部」内、「お* となのための Grammar 講座」2009.7-9、2010.7-9(再放送)担当)上智大学国際言語情報研究所客員研究員*

事例紹介

2009-10 年度、「英語Ⅱライティング」(商学部 ▶2 年必修)4 クラスを担当(各クラス約 30 名の受講生=計 120 名)

英語ライティング指導における重要ポイント ▶文レベルの指導(語彙、文法) • パラグラフレベルの指導(論理性)• エッセイレベルの指導(論理性+パラグラ• フ配列)転換語句(transition signals)の指導•

個々の受講生にフィードバックをどれだけ与え ▶られるか?(添削の必要性と限界)

解決法= Criterion ▶

発表スライドから①

Criterion 導入の背景

Criterion ご案内ページhttp://www.cieej.or.jp/toefl/criterion

本資料は 2010 年 8 月 2 日青山こどもの城にて行われた CIEE 教職員向けセミナーにおける早稲田大学鈴木利彦准教授の発表内容を CIEE TOEFL 事業部が編集したものです。

WEB 版 サンプルエッセイ等を含む「完全版」もあります。詳しくは→ P11

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授業で実証された Criterion の有用性次に私が実際使ってみて実感した Criterion の有用性についてお話します。まずは米国 ETS

(Educational Testing Service)の TOEFL/TWE(Test of Written English) におけるノウハウが集約されているということです。英文ライティングのエッセイ評価というのは、ある意味「ひとりよがり」なものになりがちで、教員ごとに評価方法が異なってくることがあると思います。そこで、Criterion を使うことにより、TWE で集約されたノウハウの裏打ちのある評価を得られるということです。2 点目は、担当教員による Local assessment と TOEFL/TWE の Global assessment のマッチングが行われるということです。教員が自分の授業でどのようにエッセイを捉えるかということも大事です。これは教員にとって非常にありがたいツールであると同時に、受講生にとっても2つの評価を得られるという意味で非常に有益だと思います。

3 点目はインターネットで瞬時にフィードバックが返ってくるということです。例えば担当教員が「添削して返します」と言っても 1 週間かかるのか、2 週間かかるのか分からない。それに対してやはり学生はせっかく書いたのだからできるだけ早くフィードバックがほしい。そういった意味で、瞬時にフィードバックが返ってくるというのは本当に素晴らしいことだと思います。もちろん、担当教員によるフィードバックはとても大切で、それは当然付けなければいけないのですが、先にコンピューターでフィードバックが得られるというのは学生としても満足感が高いと思います。

受講生に対するメリット私の実感とアンケート調査で見えてきた受講生に対するメリットのひとつとして、「より良い英語ライティングへの指標」が提示されるということです。Criterion では、語彙レベル、文法レベル、転換語句、パラグラフレベルの構成、それからエッセイレベルの構成におけるフィードバックが瞬時に出てきます。つまり、何がいけないのか、何が評価されるのか、そしてこれから何をしていけばいいのか、といったガイドラインが瞬時に示されるということです。

また、受講生が使える機能で Writer’s Handbook というものがあります。これは英語ライティングの手引きですが、ライティングの教科書としても使用でき、これだけの機能がついていると考えると安いくらいだと考えています。

教員に対するメリットでは教員に対するメリットは何か、それは「エッセイ評価の指標を得られる」ということです。個々の教員が独自の採点基準や、高く、あるいは厳しく評価するポイントなどを持っていると思いますが、教員が評価を与えるときに、「Criterion はこれは OK にしている」または「これはNG にしている」といった部分が見えてくるということはひとつ大きなことだと思います。文レベルの指導やパラグラフの構成、エッセイ全体の構成、そして総合評価、そういったところの指標を得ることができます。エッセイの評価で非常に難しい点として、何をどれだけ気にして、それを成績・採点にいかに加味すべきかということがあります。Criterion は "holistic"(= 総合的)な評価ですので、全体的なでき栄えを見て、6 点満点で何点くらいかといった指標が得られるというのも非常に大きいと考えています。

実際の授業での活用例それでは実際の授業での活用例としてこの「Change Job or Not」というトピックのこのエッセイを例にとってみたいと思います。

指導の際、学生達には「とにかくインストラクションをよく読みなさい」と、口を酸っぱくして言っています。そして、何が求められているのかをしっかりと把握した上でエッセイに取り組むように言っています。中にはこれだけで読解の問題になってしまう学生もいるかもしれませんが、実際に TOEFL テストなどの試験を受ける場合には問題文が理解できないことには始まりません。

より良い英語ライティングへの指標が提示さ ▶れる

Directions for better English Writing ▶何がいけないのか• 何が評価されるのか• これから何を身につければ良いのか•

エッセイ評価の指標が得られる ▶Assessment Criteria for English Writing ▶

文レベルの指導(語彙・文法)• パラグラフの構成• エッセイ全体の構成• 総合評価•

発表スライドから③

受講生に対するメリット

発表スライドから④

教員に対するメリット

Change Job or Not:Some people prefer to change jobs or professions during their careers. Others choose to stay in the same job or profession. Discuss the advantages of each choice. Which do you prefer? Use reasons and examples to explain your choice.

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これは persuasive タイプのエッセイで、"Which do you prefer?" に対して「こちらの方がいいと思う」ということを thesis statement としてしっかりと述べ、そのサポートをディスカッションしながら展開していくという形になります。

私が指導しているのは 2 年生の必修ライティングであり、アドバンストライティングではないので、とにかくアカデミックエッセイのフォーマットに従って 4 パラグラフを書けるようになることを重視しています。Criterion では(4 パラグラフで提出すると)「もうひとつパラグラフを書きなさい」と指摘が出てしまうのですが、様々なレベルの学生が混在しているクラスでそこまで求めるのは少し難しすぎるということもあり、ひとまずは 4 つを目標にしています。もちろん書ける学生には 5 パラグラフに挑戦することを奨めています。

私が指導している書き方と Criterion のフォーマットに若干違う点がありますので少し説明させていただきます。まず Introduction の最初は General Statement。Criterion では "Introductory Material" となっています。Introduction でいきなり thesis statement から書いてしまうのではなく、そこへのつなぎ、要するに自分の意見に導入していく部分です。それから一番大切なのは次に来る thesis statement で、ここで自分の意見をしっかり述べる。その次は ”Specification of discussion points”、これは Criterion にはありませんが、読みやすくするために「次にこれら2 つ(もしくはそれ以上)の点について述べる」といった前置きを述べます。

次 に body paragraph が 2 つ 続 き ま す。body paragraph は topic sentence と supporting sentences か ら 成 っ て い る わ け で す が、 高 校 ま で に 学 習 し た こ と が な い 学 生 は、「Topic sentence って何ですか?」といった質問をしてくるので、それに対しては「店を開くときに何を売っている店か分からなければ客はこない。だから看板をつけるようなもの」といった説明をしています。そこで reason や example を書いていくわけです。

最後が Conclusion。日本人英語学習者にとって、Conclusion までしっかり書ききるというのはなかなかしんどいことです。しかし指導していけば段々と書けるようになります。Conclusion とは summary であり、今までの discussion のまとめであって、そして自分の一番言いたいことである thesis statement を再び言い換えることでもある。そしてさらに何かしら強め(reinforcement) を行って最後に印象に残るような closing remark で終わるというものです。

1学期もしくは年間を通じてこのフォーマットを使ってエッセイを書けるように指導をしています。

発表スライドから⑤

4 パラグラフライティング

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学生用機能の活用Score Analysis Menu にはスコアやフィードバックの概要が表示されます。すばらしい機能として、Sample Essay も見ることができます。

「どれくらい書けば 6 点なんだろうか?」「どうすると 2 点くらいになっちゃうんだろうか?」等ですね、自分のレベルに合わせて「ああ、2 点取ったということは自分はこれくらいのレベルなのか。次は 4 点を取りたい。じゃあそのためにはどうしたらいいんだろうか?」ということでこのサンプルエッセイを見るとその例が提示されているということですね。

Score Analysis Menu ▶

Trait Feedback Analysis(Grammar/Run-on Sentences) ▶

Writer's Handbook ▶

Trait Feedback Analysis(Organization & Development) ▶

[View Trait Feedback Analysis] ボタンをクリックすると、より詳しい、痒いところに手が届くようなフィードバックが得られます。例えばSummary of Grammar Errors の中の Run-on Sentence がひとつあったとします。つまりちょっと文法的に混乱した文、ということですね。学生がクリックすると、どの文がそうだったのかハイライト(反転表示)で示され、マウスを重ねると指摘の内容が表示されます。この Grammar 以 外 に も Usage、Mechanics、Style、Organization & Development という項目それぞれにさらに複数の項目が含まれています。

画面右上にあるリンクをクリックすると Writer’s Handbook が開きます。私が前任校で使っていたときには英語版だけでしたが、現在は日本語版があり、これにより非常に効果的に学生たちが利用できるようになっています。Grammar、Usage、Mechanics、Style、Organization & Development というすべてのフィードバックについての解説が含まれています。例えば Organization & Development の中で「Introductory Material が何かわからなくてもここでヒントが与えられます。

次に「Organization & Development」、これは私が非常に重宝している機能でして、Criterion がエッセイの Introductory material からThesis、Main idea、Supporting idea、Conclusion といったそれぞれの部分を見分けて色を付けてくれます。[Show All Elements] をクリックするとすべてが色分けされて表示されます。

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指導効果の検証

平均点推移平均点の推移ということで、まずは Criterion の画面をお見せしたいと思います。今回調査の対象にした 2 クラスのうち 1 クラスの結果を表示させたものです。図 1 は最初のエッセイの Holistic Score Summary です。平均点が 6 点中 2.88 でこの時の円グラフで非常に目に付くのは赤(1点・2 点)と黄色(3 点・4 点)の部分です。グリーン(5 点・6 点)の部分はほとんどありません。6 点にいたっては皆無だったということです。それが最後のエッセイではどうなったかというと、こういう色の割合になりました(図2)。半数以上がグリーンになっているということですね。平均点は 4 点を超え 4.46 でした。TOEFL メールマガジン 88 号の記事にも書きましたが、Criterion では4 点というのが threshold(= 境界)になっていまして、4 点取れればなかなか良い、satisfactory なエッセイが書けているということです。もちろん辞書なしというわけにはいかないので辞書は使っています。辞書なしで書けるようにするのは次の段階で、必修ライティングとしてはこれだけの素地を作ってもらえれば、あとは自分たちで、もしくはアドバンストのクラスで練習をしてくれればいいので、この結果には非常に満足しています。グラフの色でスコアの比率がどれだけ変わったかもひと目で分かるということです。

今回この発表のために 2 クラスでデータを取りました(図3)。最初のクラス平均が 2 点台後半でそれが段々と上がっていって 3 回目が4 点くらいとだいぶ書けるようになりました。そして最後(4 回目)のエッセイはテストなんですが、4 点を超えてこれだけの結果を出してくれたということですね。

なぜこれだけ結果が上がったかというと、やはり「どうすれば評価されるのか」を学生が具体的に分かるようになったということだと思います。良いライティングの指針が Criterion、それから担当教員から提示され、「ああ、こういうふうに書けば良いエッセイが書けるんだな」ということが浸透した結果ではないかと思います。

図 3: 平均点推移図1:Holistic Score Summary [ 最初の提出 ]

図 2:Holistic Score Summary [ 最後の提出 ]

CIEE TOEFL メールマガジン 88 号記事 URLhttp://www.cieej.or.jp/toefl/mailmagazine/mm88/

educators-03.html

1. Criterion を使用した授業で力がついたと思いますか:論理的構成力 4.23

2. Criterion のフィードバックについて、分析結果は信頼できると思いますか:文法 4.12

3. Criterion を使用した授業で英語ライティングの実力がついたと思いますか 4.04

学生が高い評価をした項目 Top3

アンケート結果アンケートの結果は、前出のメールマガジン記事も参考にしていただきたいと思います。どんなアンケートをやったかというと、「Criterionは使いやすいですか」とか「出題されるトピックは取り組みやすいと思いますか」、「自動スコアは正確だと思いますか」等です。下表は学生が高い評価をしたトップ 3 の項目です。学術的には問題があるかもしれませんが、指標を得るためのアンケート調査ということで敢えて得点が高いものを整理してみました。一番高い評価がついたのは「論理的構成力について力がついたと思う」でした。

高校までにパラグラフライティングはやったことはあっても、まとまった形のエッセイライティングというのはほぼやったことがないという学生達です。それで Criterion を使って授業を受けてみたら論理的構成力、つまり Introduction の書き方や、Body paragraph にはTopic sentence があり Supporting idea もあって…という書き方が身についたと。文法についてのフィードバックが非常に正確であるというような評価もありました。また、「総合的に英語ライティングの実力がついたと思う」にも高い評価がついている。ある意味当たり前というか、これがそうでなかったら私は困ってしまうんですが、非常に良い結果が出てくれたなと思っています。

受講生が心がけるようになったこと受講生が心がけるようになったこととして、「辞書を使うようになった」ことがあります。最初の授業で辞書を持参したか聞いたときに手を挙げた学生は 1 ~ 2 割ほどしかいませんでした。教員の怠慢もあると思いますが、大学の英語の授業では英語学習に必須なはずの辞書をどうも使っていない。しかしながらライティングをする場合には当然、英和辞典、和英辞典、シソーラス(類義語辞典)も必要ですし、コロケーションの辞典(活用辞典)もやはり使わないと良いライティングはできないわけです。辞書を再び使うようになったことは大きなこととしてひとつ挙げられるのではないかと思います。

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学生インタビュー受講生がどのように感じたのかということをインタビューしましたので是非ご覧ください。

Q1: Criterion を初めて使った時の印象を教えてください

機械が人の書いた作文を評価するということで、まあ本当に評価できるのだろうかと半信半疑でしたけれども、実際最初提出してみましたら、これでもかというくらい精細な評価が返ってきてこれは素晴らしいなと思いました。

Q2: Criterion の操作はすぐに慣れましたか

パソコンに打ち込んで提出するだけなので、操作自体はパソコンで英語が打てればもうあとは簡単だと思いました。

Q3: 英作文をタイプ入力することについて

英語でタイピングするというのは今までやったことがなかったんですけれど、今の時代パソコンは絶対欠かすことのできないツールですから、英語をパソコンでタイピングするということもこれは非常に良い勉強になったと思います。

Q4: 良い点・便利だと思う点は?

提出したらまさに 10 秒ほどですぐに評価が返ってくるというところですけれども、Criterion は他のどの英作文のツールよりも利便性においては勝っていると思います。

Q5: 良くない点・不便だと思う点は?

短い文章は全て ” これは短すぎる ” と評価されてしまうんですけれども、しかし短い文章でも文脈に照らし合わせれば十分筋が通っているにも関わらず、それを短い文章と評価してしまうところが、ちょっと人と機械の違いかなという感じがしましたので、それは改善した方が良いと思いました。

Q6: 自動採点のスコアは信頼できると思いますか?

スコアはそれぞれちゃんとある程度基準が設けられておりまして、その基準もちゃんと英語で書かれておりますから、なかなか参考になると思います。ただし 6 点評価ですから、もう少し細かくしてもいいかなという感じは若干受けました。

Q7: 教員と Criterion 評価の整合性について

全体的に Criterion の成績がいいとやはり鈴木先生のフィードバックも全体的に点数が高くなるのですけれども、やはり例えばさっきも申し上げましたとおり Criterion に短いと評価された部分は鈴木先生は、『ここは私はそれなりに評価します』と言ったりして、若干評価にやはり人と機械の違いと言うか、食い違いがありましたけれども、全体としてはしっかり均衡はとれていると思います。

Q8: 渡邉君の考える Criterion の活用法

Criterion はすぐ返ってくるという利便性においては一番勝っていると思いますので、最初は英作文をCriterion に提出して大まかな評価を Criterion にやってもらう。その部分で、例えば Criterion に悪く評価された部分とかあまり評価されなかった部分に関しては教員の方にしっかり添削してもらって納得いくまで説明してもらうと。こうすれば効率的な面を考えましても、あるいは英語力の実力アップという点に関しましても両方満たしていると思います。

Q9: 半期でライティング自信はつきましたか?

かなりつきました。

Q10: 最後にコメントなどあれば

この Criterion は大学 2 年になって僕は初めて知ったんですけれど、本当に素晴らしいなと思いました。これを高校時代に知っていたらもうちょっと人生が変わってたんじゃないかと思いましたね。

いかがでしょうか。ちょっとオーバーなところもあったかもしれませんが、私だけがいいと言っている訳ではなくて、実際に学生の方もこれは素晴らしいと思ってくれているわけです。インタビューにもありましたが、Criterion と教員の評価の整合性は、合えば合うほど良いと思います。私は成績をつける場合には、100 点満点でつけなければいけません。Criterion は 6 点満点で、私は 100 点満点。100 満点といっても 10 段階でいくつに値するか、例えば 8 点とか 6.5 点というレベルで考える採点システムにして、その中で 80 点とか 65 点といった holistic な点数のつけ方をしています。

渡邉 貴比登くん早稲田大学商学部 2 年(インタビュー時)

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Criterion 活用の今後の指針: 21 世紀の大学英語ライティング

発表スライドから⑥

Criterion 活用今後の指針:21 世紀の大学英語ライティング

EGP EWICTOEFL Writing

English forGeneral Purpose

English Writing forInternational Communication

ESPEnglish for

Specific Purpose

EAPEnglish for

Academic Purpose

WordSmithhttp://www.lexically.net/wordsmith/index.html

今後どのような英語ライティングを私はやっていきたいかということで、21 世紀なんていう非常に大きなタイトルをつけていますが、そんなに気合を入れているわけじゃなくて、こんなことをバランス良く取り組んでいきたいと思ってます。

これは皆さんよくご存知だと思いますが、英語を教える目標と し て は EGP(English for General Purpose)、ESP(English for Specific Purpose)、EAP(English for Academic Purpose) が あ ります。この 3 種類を意識してバランスよくやっていくのが良いと考えています。Criterion(の TOEFL カテゴリートピック)はフォーマットが TOEFL/TWE ですから、EAP に対するケアになります。その他の 2 つに当てはまるのが EWIC(English Writing for International Communication) と名づけた活動です。早稲田大学の LMS(Learning Management System) で あ る Course N@vi の 掲示板機能を使って台湾の大学生たちと、英語と日本語を使って行っている交流活動が当てはまります。その内容は後ほどご紹介します。

1. Criterion 提出データの「学習者コーパス」化とその利用私はコーパスデータ分析に WordSmith というコンコーダンスソフトを使っています。これを使うことで学習者の書いたものをデータベース化することもできます。

図 4 が WordSmith を使って作ったワードリストです。頻出単語順になっており、これを見みると語彙が貧弱だということに気づきます。量も書けるようになり、論理の展開もうまくなってはきたのですが、インストラクションに出てくる単語を非常に多く使っています。インストラクションを大事にするという意味では良いのですが、言い換えがなかなかできないということですね。インストラクションにある "job"、"change" といった語が非常に多いので、次のステップとしてはシソーラスを有効活用して、例えば ”job” を使ったら次は ”occupation” や ”work”などの同義語を有効に使っていくことが大事だということですね。

次は単語をどのように使っているかを ”better” で調べたものです(図5)。コンコーダンスソフトを使うと、単語がどのように使われているかがサッと出てきます。そのパターンを見ると、"I think it is better to change jobs"、"you had better" といった表現が多く出てきます。学生に対して、どういう文章が多かったかとか、こういう言い方はいいけれども、これはいけないかもしれないとか、実際の用例を提示することができます。

インストラクションにない単語では ”experience” が非常に多く出てきました(図 6)。「ひとつのところで長く勤めればそれだけの経験を得る」、「仕事を変えていけばそれだけいろんな仕事の経験が増えていく」といったことを書くうえで ”experience” が学習者たちのキーワードになっているようです。これもパターンで見てみると、例えば "gain experience"「経験を得る」。少し日本語からの直訳的表現に感じられるものの、しっかり英語として通じるので問題ないと思います。"experience various jobs"も非常に多かった。「様々な職業を経験する」を説明するのにこのような書き方が多かったということが分かります。

最後に if(図7)。if もインストラクションにはありませんが非常に多く使われていました。パターンを見ると、"if I change jobs" や "even if I change" などです。”even if” や ”if you stay in the same” といった使い方のパターンも見えてきました。それらが正しいのか間違っているのか、natural なのか unnatural なのか、色々なデータを見てみるとそういったものも浮かび上がってきます。これらのデータは Excel などで加工すれば印刷したり、LMS で配布することも可能になります。そういった使い方もひとつの可能性として考えることができると思います。

図4:頻出順ワードリスト

図 5:better

図 6:experience

図 7:if

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2. Pre-writing における ”Planning Tool” の活用次は Planning tool(図 8)の活用です。エッセイを書く前には考えをまとめなければいけません。そこで非常に有効的に使えるのがこの機能です。まずは Thesis を書きます。「あなたの意見は何ですか、ここに書きなさい」、ということで書かせて、それから Body Paragraph になる部分で Topic をまず考え、加えてその detail について、ということで、このアウトラインを書かせたわけなんです。図 9 は Criterion の Planning tool に入力したものを最終的に word にコピー &ペーストして Course N@vi にアップさせたものです。授業中にこれをスクリーンに映して、ここは OK だけどもここはこういうふうに直して、というように授業中でも添削がある程度できます。そうすると他の受講生たちがどういうふうに書いているのか、というような参考にもなりクラス全体の指導にも役に立つということですね。

3. 早稲田大学 LMS(Course N@vi) の機能のフル活用International Communication ということで Course N@vi の掲示板機能で台湾の日本語学科の学生たちと交流しています。彼らは是非日本語を書きたいということで、私の受講生たちは日本語と英語でやりとりをしています。それだけではなく、ある意味これは和文英訳になると思うんですけれども、それじゃあ国際交流のためにはどんな英語力が必要なのかということです。例えば観光名所や食べ物、エンターテインメントなど、そういったものについて英語と日本語を交えて紹介して国境の垣根を越えて交流していく、そんなこともやっております。

こういった部分で EGP と ESP を次の段階で結びつけるような活動…実は昨日まで台湾に行ってたのですが、2 人の先生方と一緒に、TOEFL テストなどのマテリアルを使って、掲示板で交流してそれでエッセイを書く、そんなようなことも考えております。

より良い英語ライティング指導のために最後になりますが、私が思っている、こんなことを思い出しながらライティング指導を頑張っていきたいということです。

「センテンスレベル」と「パラグラフレベル」の良いバランスを大学だとどうしてもパラグラフとかエッセイライティングといった大きな枠組みの方に重点が置かれがちですが、実はセンテンスレベルで書けていないことにハッと気づくことがあります。ある時点でそういったところに戻って補強していくことも大事だと思っています。同時に、ある程度パラグラフやエッセイのように長いものを書くようになってくると、何となく英語の書き方が分かってきてセンテンスレベルでもだいぶ上達してくるという手ごたえも感じることがあります。これは数値化していないので断定はできないのですが、1年間 Criterionを導入してやってきてよかったと感じるところです。

トピックに応じた語彙の指導を例えばそのトピック特有の語彙やストラクチャーなどいろいろあると思いますが、トピックによってシチュエーションやフレームワークが決まると同時に、使える語彙も決まってくるわけで、そこでまた辞書を使うチャンスがあると思います。大学レベルの英語教育としてはシソーラスを是非活用したいですね。例えば children という単語であれば、少しフォーマルな形で ”offspring” なんかも使わせてみたい。近所の人の話の引用であれば ”kids” なんかも使っていいんじゃないか、といった使い分けを、辞書を積極的に使うことによってできるようになってほしいということです。もちろん TOEFL テストを受験するには、辞書を使わないというのもひとつの目標にしなければいけないことですが、今までこういうエッセイライティングをやっていない学生達で、しかもいろんなレベルの学生が混在している状況の中では、まずは辞書を大切な教材のひとつとして使いこなすことを目標のひとつとしてくみ上げていくことも大事だと思います。そして Transition signals。Criterion では Transitions と呼んでいます。自分の意見を論理的に展開するためには therefore や consequently なども使っていかなければいけません。論理的な文章を書くための Transition signals の指導は是非大事にしていきたいと思っています。

トピックに応じたスタイルとレトリックの指導をさきほど 6 点のエッセイがありましたが、やはり persuasive だったら先に「私は agree(disagree)です。」を述べ、なぜそう思うのかを次に述べていく、というスタイルで首尾一貫したエッセイを書いてほしいということですね。他にもいろいろあると思います。academic なのか businessなのか、それに casual writing だってあると思います。そういったトピックや文脈に応じたスタ

図 8:Planning Tool

図 9:Course N@vi

「センテンスレベル」と「パラグラフレベル」 ▶の良いバランスを(行きつ戻りつ)

トピックに応じた語彙の指導を(辞書 ( 再 ) 活 ▶用のすすめ)

Thesaurus(同義語辞典)等を活用• “Common core” → “Formal” / “Informal”• [Children] → [Offspring] / [Kids]• Transition signal のトレーニング•

トピックに応じたスタイル & レトリックの指導 ▶を

Expository? / Persuasive? / Formal? / • Casual? / Academic? / Business? / Social issue?

受講生たちに実感できる「達成感」を ▶Criterion のスコア & フィードバック• 海外の大学生たちとの英語ライティング交• 流活動など

発表スライドから⑦

より良い英語ライティング指導のために

4. Criterion での「アカデミック・ライティング」(EGP)と「国際コミュニケーションのための英語ライティング」(ESP)の結びつけ

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イルやレトリックも指導していきたいと思っています。

受講生たちに実感できる「達成感」をそしてモチベーションとして何か成果を与えてあげてあげたいというところで Criterion のスコアとフィードバックですね。今の大学生たちはコンピューターゲームの世代ですから、コンピューターで評価が出たりすると、じゃあ次はどうしようかと何となくゲーム感覚で取り組むのは得意なのではないかと思います。例えば 3 点で始めた学生が次は 4 点、さらに 5 点というように、ステップごとに達成感というのが得られるのではないかと思っています。

そして海外の大学生たちとの英語ライティング、交流活動をすることが重要と考えています。上智大学の吉田研作先生が言われているように、教室というのは「Fishbowl」であり、国内だろうと海外だろうと fishbowl を繋ぐことによって「Ocean」にしていくことが重要です。それによって学生たちが何のために英語を勉強しているのかをより実感できるのではないかと思っています。

ご清聴ありがとうございました。

本報告書の「完全版」(学生エッセイ、採点例等を含む)をご希望の方は下記の

方法で E メールにてお申し込みください。PDF ファイルをお送りします。

・送信先 [email protected]

・件名「2010Criterion 報告書完全版希望」

・ご所属、役職、氏名を明記してください

・教職員のみ(学生不可)

・教職員と確認できない場合は送付をお断りさせていただくことがあります

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122010.8.2 CIEE 教職員セミナー 報告書

- effectively addresses the writing task - is well organized and well developed - uses clearly appropriate details to support a thesis or illustrate ideas - displays consistent facility in the use of language - demonstrates syntactic variety and appropriate word choice, though it may have zoccasional errors

- may address some parts of the task more effectively than others - is generally well-organized and well-developed - uses details to support a thesis or illustrate idea - displays facility in the use of language - demonstrates some syntactic variety and range of vocabulary, though it will probably have occasional errors

- addresses the writing topic adequately but may slight parts of the task - is adequately organized and developed - uses some details to support a thesis or illustrate an idea - demonstrates adequate but possibly inconsistent facility with syntax and usage - may contain some errors that occasionally obscure meaning

- inadequate organization or development - inappropriate or insufficient details to support or illustrate generalizations - a noticeably inappropriate choice of words or word forms - an accumulation of errors in sentence structure and/or usage

- serious disorganization or underdevelopment - little or no detail, or irrelevant specifics - serious and frequent errors in sentence structure and usage - serious problems with focus

- may be incoherent - may be undeveloped - may contain severe or persistent writing errors

A typical essay at this level:

A typical essay at this level is flawed by one or more of the following weaknesses:

A typical essay at this level may reveal one or more or the following weaknesses

A typical essay at this level:

A typical essay at this level:

A typical essay at this level:

Score = 3

Score = 5

Score = 4

Score = 1

Score = 6

Score = 2

Scoring Guideline: TOEFL Test

Appendix: TOEFL カテゴリー Scoring Guide

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