1
病原性真菌 Candid a a lb i cans の
バイオフィルム形成機序の解析および形成阻害薬の探索
B io f i lm Form at ion Mech an i sms o f P a t hogen ic Fun gus Ca ndida a lb i cans
and Scr een in g o f B io f i lm Inh ib i to r s
平成 29 年度
論文博士申請者
倉門 早苗( Ku rak ado , San ae)
指導教員
杉田 隆
1
目次
略語一覧 5
序論 6 -18
材料および方法 19 -37
1 ) 供試菌株および培地 19
2 ) 試薬の調製 19
3 ) バイオフィルムおよび浮遊細胞の培養条件 19
4 ) サブトラクション 22 -26
(1 )cDNA の合成 22 -24
( i ) s s cDNA の合成 22
( i i )ds cD NA の増幅 22
( i i i )カラムクロマトグラフィー 23
( iv )RsaⅠ処理 23
(2 )サブトラクション 24 -26
( i ) アダプターの結合 24
( i i )1s t ハイブリダイゼーション 24
( i i i )2nd ハイブリダイゼーション 25
( iv )1s t PCR 25
(v ) 2nd PCR 25
(3 )クローニング 26
(4 )ホモログ検索 26
5 )遺伝子破壊株の作製 26 -29
(1 )供試菌株および培地 26
(2 )プライマー一覧 27
2
(3 )1s t PCR 27
(4 )URA3 カセットの作製 27
(5 )1s t トランスフォーメーション 27
(6 )ARG4 カセットの作製 29
(7 )2nd トランスフォーメーション 29
6 )遺伝子再導入株の作製 30 -31
(1 )URA3 の脱落 30
(2 )再導入プラスミドの作製 30
(3 )トランスフォーメーション 31
7 )バイオフィルムの感受性試験 31
8 )成熟バイオフィルムの感受性試験 32
9 )バイオフィルムの定量法 32 -33
(1 )XTT-r educ t ion a s sa y 32
(2 )Cr ys t a l v io l e t a s sa y 32
10 )浮遊細胞の感受性試験 33
11)生細胞数カウント法 33
(1 )CFU ass a y 33
12 )菌糸形成抑制試験 33
13)RNA 抽出 34
14 )ノーザン・ブロット法 34
15)Rea l -Time PCR 35
16 )疎水性試験 35
17)β -1 ,3 g lu can の測定 37
3
結果 38 -68
Ⅰ.バイオフィルム形成に関与する遺伝子の解析 38 -44
1 ) バイオフィルム形成関連遺伝子の抽出 38
2 ) ノーザン・ブロット解析 38
3 ) 遺伝子破壊株のバイオフィルム形成 38
4 ) 遺伝子破壊株の菌糸形成 41
5 ) 亜鉛のバイオフィルム形成への影響 41
Ⅱ.ステロイド薬による二形性変換阻害作用と
新規二形性変換経路 44 -54
1 ) 17β - es t r ad io l の二形性変換への影響 44
2 ) 17β - es t r ad io l の増殖への影響 47
3 ) 菌糸特異遺伝子の発現変動 47
4 ) エストロゲン結合タンパク質 ( EBP1 )破壊株に対する
17β - es t r ad io l の効果 51
5 ) 17β - es t r ad io l のバイオフィルム形成への影響 51
Ⅲ.ミノサイクリンによるバイオフィルム形成阻害作用と
その機序の解析 54 -68
1 ) 既承認抗細菌薬のバイオフィルム形成阻害作用
スクリーニング 54
2 ) テトラサイクリン系抗細菌薬の二形性変換阻害作用 54
3 ) ミノサイクリンの増殖に対する影響 59
4 ) ミノサイクリンのバイオフィルム形成阻害作用 59
5 ) 二形性変換関連遺伝子の発現変動 62
6 ) 疎水性試験 66
7 ) 細胞外マトリックス成分の測定 66
4
考察 69 -81
総括 82 -87
謝辞 88
参考文献 89 -97
5
略語一覧
5 -FO A 5-Fluo rooro t i c a c id
BF Bio f i lm
CFU Colon y f o rmin g un i t
CNS Coagu lase -nega t ive S taph ylo cocc i .
d s cDN A Doub le s t r and complemen ta r y DN A
EtBr E t id ium bromide
GlcNA c N - ace t yl g lu cosamin e
J AN IS J apan Nosocomia l In fec t ions Su rve i l l ance
M IC Min imal i nh ib i to r y concen t ra t ion
MOPS 3 - (N -morpho l ino ) p r opanesu l fon ic ac id
PBS Phospha te bu ff e red sa l ine
PC P lank ton ic c e l l
PC I Pheno l , ch lo ro fo rm , i soam yl a l coh o l
PSS Ph ys io lo gica l s a l in e so lu t ion
RPM I RPM I1640 med iu m wi th L - gl u t ami ne and wi thou t
sod ium b ica rb ona te
SA Sabouraud agar
s s cDNA S ingle s t r and comp lemen ta r y DN A
YNB Yeas t n i t ro gen b ase
YPD Yeas t ex t rac t , p ep t one , dex t rose
YPDU Yeas t ex t rac t , p ep t one , dex t rose , u r id i ne
XTT 2 ,3 -Bi s (2 -m ethox y- 4 -n i t ro -5 - su l foph en yl ) -2H -
te t razo l ium -5- ca rb ox yan i l i de
6
序論
高度医療推進国家であり、超高齢社会を迎えた我が国では、免疫
不全患者の増加に伴い、日和見感染症である深在性真菌症の発症が
問題となっている。病理剖検例における深在性真菌症の発生頻度は、
1989 年のアゾール系抗真菌薬フルコナゾールの上市後に一度減少
に転じたが、 1990 年代後半から再び増加の一途をたどっている 1 -
4 )。カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、接合菌
症の四大真菌症の中でも、特に発生頻度が高いのがカンジダ症およ
びアスペルギルス症である。カンジダ症は、フルコナゾールの上市
に伴い、発生頻度が一旦減少したが、その後横ばい状態である( Fig .
1)。一方、アスペルギルス症は増加を続けており、現時点でもカン
ジダ症およびアスペルギルス症が、死亡に至る深在性真菌症の原因
菌として主要な位置を占めている。また、臨床における深在性真菌
症の頻度(患者数)ではカンジダ症が最も多いことが報告されてお
り 5 )、深在性カンジダ症への感染制御が求められている。
深在性カンジダ症の約 50%は、 Candida a lb icans を起因菌とし
て発症する。近年、 C. g labrata や C. parapsi los is といった Non-
C. a lb icans Candida spp.の検出頻度が増加しているものの、現時
点においても主要起因菌は C. a lb icans である 6 )。 C. a lb icans は、
消化管や膣の粘膜表面に定着する常在菌であるが、免疫抑制状態や
粘膜障害により血管内にトランスロケーションし、血流を介して各
臓器へと播種する。カンジダ血症は致死率が 40%以上に及ぶ予後不
良の感染症であり 7 )、その患者の多くが中心静脈カテーテル等の体
内留置物を挿入していることが報告されている 8 )。 JANIS の集計
7
8
データによれば、カテーテル関連血流感染症の原因菌として、 C.
a lb icans は CNS (coagulase -negat ive Staphylococci . ) , S . aureus
に次いで検出されている 9 )。また、米国においても Candida 属は
血流感染症原因 菌の第 4 位に挙 げられている( Fig . 2) 1 0 )。 C.
a lb icans は、カテーテル等を基質としてバイオフィルムを形成し
( Fig . 3)、抗真菌薬に対して耐性化することで治療を困難とし、持
続的な感染を成立させていると考えられる。本邦では、中心静脈カ
テーテルの年間使用量は約 200 万本と推定されるが、今後、増加し
ていくことが予想される。バイオフィルムを原因とするカテーテル
関連血流感染症の制御は、我が国において重要な課題である。
C . a lb icans のバイオフィルムは、酵母形および菌糸形で形成さ
れる高次構造体であり、その周囲を多糖を主成分とする細胞外マト
リックスが覆っている 11 )。他の細菌および真菌と同様、バイオフィ
ルム形成時には薬剤に対して耐性を示すことから、治療が困難とな
る 1 2 )。 C. a lb icans のバイオフィルム形成は、 1)酵母形が基質表面
に付着し、2)一部の細胞が接着能の高い菌糸形へと変換し巨大化し
ていき、3)細胞外マトリックスの産生により物理的な刺激への抵抗
性を獲得する過程を経る 1 3 )。また、ある程度まで成熟したバイオ
フィルムは、その一部を崩壊させ血流を介して到着した新たな基質
でバイオフィルムを形成する( Fig . 4) 1 4 )。この形成・崩壊過程に
は、細胞密度感知機構であるクオラムセンシングが関与していると
考えられる。ファルネソールは、 2001 年に同定された C. a lb icans
のクオラムセンシング分子で、酵母形から菌糸形への形態変換を抑
制する作用を持つ 1 5 )。ファルネソールの産生量は、バイオフィル
ムの成熟期にかけて増大することから、崩壊過程への関与が推測さ
9
10
11
12
れる 1 6 )。また、ファルネソールを外因的に添加することによるバ
イオフィルム形成阻害作用も報告されている 1 7 )。以上のことから、
C. a lb icans において、酵母形から菌糸形へと形態変換する二形性
がバイオフィルム形成において重要な因子であることが分かる。
二形性変換は、 C. a lbicans の病原因子のひとつと考えられてい
る。二形性変換の必須遺伝子を破壊した株では、マウスに感染させ
た場合に野生株と比較して生存率が上昇することが報告されてい
る 1 8 )。菌糸形成には、温度、 pH、 CO 2 といった培養条件や N-
acety lg lucosamine, Methionine , 血清等の様々な誘導物質が報告
されており 1 9 , 2 0 )、それぞれ異なるシグナル経路を介して菌糸形を
誘導する( Fig . 5)。菌糸形成における二大経路としては、Ras1 を
上 流 と し て 分 岐 す る Cek1 MAP kinase 経 路 と cAMP-Prote in
kinase A 経路が挙げられる。Cek1 MAP kinase 経路では Cph1 が、
cAMP-PKA 経路では Efg1 が、菌糸特異遺伝子を正に制御する転写
因子として存在し、それぞれの経路は N-acety lg lucosamine 培地と
Spider 培地で誘導される 2 0 - 2 2 )。一方、菌糸特異遺伝子を負に制御
する因子には、DNA 結合タンパクである Nrg1 や Rfg1 とコリプレ
ッサーである Tup1 がある 2 0 , 2 3 - 2 5 )。菌糸特異タンパク質には、細
胞壁関連タンパク質である Hwp1, Als3 , Ece1 等が挙げられ、これ
らは接着に関与する因子でもある。Hwp1 は菌糸細胞壁上に発現す
る接着因子であり、 Als3 は接着に関与する ALS (Agglut inin - l ike
sequence )ファミリーに属するタンパクである 2 6 , 2 7 )。 Ece1 は、そ
の機序の詳細は明らかにされていないが、接着因子の細胞表面への
露出を促進していると考えられている 2 8 )。また、Hwp1 と Als3 は
相補的に接着することが報告されている 2 9 )。 hwp1 欠損株と
13
14
als1 /a ls3 欠損株は、共に通常のバイオフィルムを形成することが
できない株であるが、これらの欠損株を混合した場合、強固なバイ
オフィルムを形成する。これらの菌糸特異タンパクは、基質との接
着だけでなく、相補的な接着を行うことでバイオフィルム形成に必
要な細胞間における接着性を高めていると考えられる。
酵母形から菌糸形への二形性変換の他にも細胞外マトリックス
の存在は、バイオフィルムの重要な構成因子として挙げられる。細
胞外マトリックスは、多糖 (β -1 , 3 g lucan, α -1 , 6 mannan)の他、
タンパク質、脂質、核酸等で構成されており、外的な刺激から物理
的にバイオフィルムを保護する役割がある 3 0 )。 C. a lb icans の細胞
外マトリックスの制御因子としては、負の制御を担う Zap1 が報告
されている 3 1 )。 Zap1 は、 CSH1 や IFD6 といった細胞外マトリッ
クスの産生を負に制御すると考えられる遺伝子を活性化させ、一方、
正に制御すると推測される GCA1, GCA2, ADH5 の遺伝子発現を低
下させる。Gca1, Gca2 は、 glucoamylase で、不溶性の長鎖β -1 . 3
g lucan から水溶性のβ -1 ,3 g lucan を加水分解していると考えられ
ている。 Csh1, I fd6 は aryl -a lcohol dehydrogenase を、 Adh5 は
alcohol dehydrogenase をコードしており、クオラムセンシング物
質である aryl -a lcohol や acyl -a lcohol を産生することでバイオフ
ィルム形成に関与していると推測されている。
また、宿主内でバイオフィルムを形成・維持するためには、宿主
環境への適応が求められる。宿主環境では、微生物が栄養源として
利用できる微量金属元素は限られている。例えば、血液中では遊離
鉄イオンは約 0.2 μM、遊離亜鉛イオンは約 0.08 μM と低濃度で
ある 3 2 )。Zap1 は細胞内の亜鉛濃度の恒常性も制御している因子で
15
あり、下流には亜鉛トランスポーターの Zrt1 , Zrt2 , Zrt3 が存在し、
これらを正に制御している。さらに、Zap1 の制御下に存在する Pra1
は、亜鉛トランスポーターである Zrt1 とともに宿主内での亜鉛獲
得システムにおいて、亜鉛結合性タンパク (Zincophore )としての役
割を担っている 3 3 )。また、Zap1 やその下流の遺伝子群は二形性変
換にも関与している。 zap1 破壊株は野生株と比較して菌糸形成が
抑制されるが、それは ZRT1, ZRT2 の過剰発現によってリカバーさ
れる 3 4 )。Pra1 は菌糸形成時に発現が上昇するタンパク質で、pra1
破壊株は高温条件下において発芽管形成が減少した。このことから
も 、 亜 鉛 の 恒 常 性 を 制 御 し て い る こ れ ら の タ ン パ ク 質 群 が C.
a lb icans のバイオフィルム形成において重要な因子であることが
推測される。
第一章では、 C. a lb icans のバイオフィルム形成に関与する因子
を明らかにするために、亜鉛の恒常性に着目し、亜鉛獲得システム
に関与する Pra1 および Zrt1 の影響を検討した。
次に、バイオフィルム形成に関与する二形性変換に関与する化
合物を探索し、その機序について検討を行った。その結果、 17β -
estradio lを始めとするステロイド薬に二形性変換阻害作用が認め
られた。ステロイドホルモンは、ヒトにおいては、生殖細胞の分
化や糖新生を制御するが、微生物においても増殖や形態変換、薬
剤感受性に影響を与えることが報告されている 3 5 - 3 7 )。その作用機
序は解明されていないが、興味深いことに、微生物にもステロイ
ド結合タンパク質を有しているものがある 3 8 )。 Saccharomyces
cerevis iae , Paracoccidio ides brasi l iensis , Pseudomonas
aeruginosaは estrogen b inding prote inを有しており 3 9 - 4 1 )、
16
Trichophyton mentagrophytesでは progesterone b inding prote in
が同定されている 4 2 )。 P. brasi l iensisでは、 estradio lおよび
diethylst i lbestro lによってmycel ium-to-yeast trans formationが
抑制され、 EBPと各化合物の親和性とmycel ium-to-yeast阻害活性
の強さは相関していることが報告されている 4 3 )。それゆえ、
stero id b inding prote inがステロイド暴露時に起こる現象のメデ
ィエーターとして働いているということが推測される。 C.
a lb icansにおいても、 estrogen b inding prote in (EBP 1) ,
cort i costero id b inding prote in , progesterone b inding prote inと
いった stero id b inding prote ins を有していることが明らかにさ
れている 4 4 - 4 5 )。 C. a lbicansの EBP1は、哺乳類の stero id receptor
superfami lyとの相同性は低く、一方、 S. cerevis iaeのNADPH
oxidoreductase , Old yel low enzyme (OYE)とは 46%の相同性を示
す。 EBP1も oxidoreductase活性を持っており、 estrogenが結合す
ることでその活性が阻害されることが報告されている 4 4 )。また、
OYEと同様に、 EBP1もエストロゲン以外の phenol i c structureを
持つ化合物―α , β -不飽和ケトン , アルデヒド―とも結合する
4 6 )。しかしながら、 EBP1の生理学的機能は不明である。 C.
a lb icansにおいては、 17β -est radio lが germinat ionを促進すること
や、 progesteroneによってバイオフィルム形成が抑制されること
が報告されているが 4 7 , 4 8 )、 EBP1との関連については検討されて
いない。
本研究の第二章では、17β -est radio l が C. a lb icans の二形性変換
についてどのような影響を与えるかを評価し、その作用が EBP1 を
介して発現しているのかどうかを検証することを目的とした。
17
最後に、バイオフィルム感染症の克服を目指し、 C. a lbicans の
バイオフィルム形成を阻害する薬剤を既承認医薬品の中から探索
した。真菌はヒトと同じ真核生物であり、治療薬として標的にでき
る部分が少ないため新規抗真菌薬の開発は困難を極める。現在、深
在性真菌症の抗真菌薬として承認されているのは、フルコナゾール
等のアゾール系、ミカファンギン等のエキノキャンディン系、アム
ホテリシン B 等のポリエン系、フルシトシンのフルオロピリミジ
ン系の 4 系統のみである( Fig . 6)。既承認医薬品は、ヒトに対する
安全性が確立されており、新薬を開発する場合に比べ、実用化する
までのコストや時間の減少が見込まれる。本研究の第三章では、抗
真菌薬と作用機序が類似しており、薬剤種類の多い抗細菌薬に着目
しスクリーニングを行った。
18
19
材料および方法
1 ) 供試菌株および培地
実験に使用した菌株および培地を Tab le 1 に示す 4 9 - 5 1 )。遺伝子破
壊株および再導入株の遺伝子型は、 Tab le 2 に示す。遺伝子破壊
用の菌株およびプラスミドは、元・国立感染症研究所 新見 昌一
室長よりご提供頂いた。
2 ) 試薬の調製
17β - es t r ad io l , ミノサイクリン , テトラサイクリン , オキシテト
ラサイクリン , デメチルクロルテトラサイクリンは和光純薬(大
阪、日本)から、ドキシサイクリンは Sigma -Aldr i ch ( S t . Lou i s ,
MO, USA)より購入した。全ての試薬は DMSO で溶解して Stock
so lu t ion を作製し、-30℃で保存した。バイオフィルム形成阻害薬
の ス ク リ ー ニ ン グ に 用 い た 抗 細 菌 薬 は 、 FDA Ap proved Dru g
Screen -Wel l Lib r a r y を用いた。
3 ) バイオフィルムおよび浮遊細胞の培養条件
サブロー寒天培地または YPD 寒天培地で前培養した C. a lb i cans
を A 6 3 0 =0 .1 の菌液に調製し、 96 wel l マイクロタイタープレート
(フラットボトム、ポリスチレン製、TPP, Trasad in gen , CHE)、ま
たは 40 mm ce l l cu l tu re d i sh (ポリスチレン製、TPP)に接種し、37℃
24 時間または 4 8 時間静置培養した。その後、浮遊細胞を除去し、
PBS で洗浄した。半定量する場合は、XTT-r educ t ion as sa y または
Cr ys t a l v io l e t a s s ay によりバイオフィルム形成を測定した。培地
20
Table 1 Strains and media used in this study.
Experiments Strains Media (% (w/v))
Northern blot analysis J1-97 Preculture: YPD
(1 % Yeast Extract, 2 % Peptone, 2 % Glucose, 1.5 % Agar)
RPMI + MOPS (10.4g/L RPMI1640, 0.165 M MOPS)
BF formation test TUA1-1 Preculture: YPD
(Δpra1 , Δzrt1 ) Δpra1 , Δzrt1 RPMI (10.4g/L RPMI1640)
RevPRA1 , RevZRT1
BF formation test SC5314 Preculture: SA
J2-40 (1 % Peptone, 4 % Glucose, 1.5 % Agar)
J2-88 RPMI + MOPS
Hyphal formation test SC5314 Preculture: YPD, SA
GlcNAc (0.5 % GlcNAc, 0.5 % Peptone, 0.3 % KH2PO4) 49)
Spider (1 % Nutrient broth, 1 % Mannitol, 0.2 % K2HPO4) 50)
Lee (0.5 % (NH4)2SO4, 0.02 % MgSO4・7H2O, 0.25 % K2HPO4,
0.5 % NaCl, 1.25 % Mannitol, 0.05 % Alanine, 0.13 % Leucine,
0.1 % Lysine, 0.01 % Methionine, 0.00714 % Ornithine,
0.05 % Phenylalanine, 0.05 % Proline, 0.05 % Threonine, 0.0001 % Biotin) 50,
51)
BF formation inhibitory test SC5314 Preculture: SA
RPMI + MOPS
17β-estradiol, minocycline, tetracycline, anti-bacterial agents for screening
BF formation inhibitory test TUA1-1 Preculture: YPD
(Δebp1 ) Δebp1 GlcNAc
RevEBP1 17β-estradiol
Hydrophobicity measurement SC5314 Preculture: SA
RPMI + MOPS
β-1, 3 glucan measurement SC5314 Preculture: SA
RPMI + MOPS
21
Table 2 Strains and media used for gene disruption and reinsertion.
Strain Genotype Source
CAI4 SC5314 ura3::imm434 /ura3::imm434 Provided by Dr. Niimi M.
TUA1-1 CAI4 arg4::hisG200-URA3-hisG200 /ARG4 Provided by Dr. Niimi M.
TUA2 CAI4 arg4::hisG200 /ARG4 Provided by Dr. Niimi M.
TUA3 CAI4 arg4::hisG200 /arg4::hisG200-URA3-hisG200 Provided by Dr. Niimi M.
TUA4-2 CAI4 arg4::hisG200 /arg4::hisG200 Provided by Dr. Niimi M.
Δpra1 TUA4-2 pra1::hisG200-URA3-hisG200 /pra1::ARG4 This study
revPRA1 TUA4-2 pra1::hisG200 /pra1::ARG4 /RP10:: pFLAG-Met3-PRA1 This study
Δzrt1 TUA4-2 zrt1::hisG200-URA3-hisG200 /zrt1::ARG4 This study
revZRT1 TUA4-2 zrt1::hisG200 /zrt1::ARG4 /RP10:: pFLAG-Met3-ZRT1 This study
Δebp1 TUA4-2 ebp1::hisG200-URA3-hisG200 /ebp1::ARG4 This study
revEBP1 TUA4-2 ebp1::hisG200 /ebp1::ARG4 /RP10:: pFLAG-Met3-EBP1 This study
Selective media
SC-Ura 0.67 % YNB w/o Amino Acid, 0.07 % CSM-ARG-HIS-URA, 2 % Glucose,
(Ura+select) 2 % Agar, 0.002 % Histidine, 0.002 % Arginine
SC-Arg, Ura 0.67 % YNB w/o Amino Acid, 0.07 % CSM-ARG-HIS-URA, 2 % Glucose,
(Arg, Ura+select) 2 % Agar, 0.002 % Histidine
5-FOA-Arg 0.67 % YNB w/o Amino Acid, 0.07 % CSM-ARG-HIS-URA, 2 % Glucose,
(Ura-select) 2 % Agar, 0.002 % Histidine, 0.01 % Uridine, 0.05 % 5-FOA
LB+amp. 0.5 % Yeast Extract, 1 % NaCl, 1 % Tryptone, 1.5 % Agar, 0.005 % Ampicilin
(Amp.R.select)
YNB w/o Amino Acid, Tryptone (Becton, Dickinson and Company)
CSM-ARG-HIS-URA (FORMEDIUM LTD, Hunstanton, England)
Histidine, Arginine, Uridine, 5-FOA, Ampicilin (Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)
Contents (% (w/v))
22
は、 RPM I16 40 med ium+MOPS, RPMI1 640 med ium (M OPS 不含 ) ,
G lcNA c 培地を使用した。また、バイオフィルム形成時と同様に
菌懸濁液を作製し、それを同培養条件にて振とう培養し、浮遊細
胞とした。
4 ) サブトラクション
サブトラクション法の概略を S upp l . F i g . 1 に示す。
(1 ) cDNA の合成
SMART T M PCR cDN A S yn thes i s Ki t (Bec ton , Di ck inson and
Compan y)を用いた (Supp l . F i g . 2 )。
( i ) s s cDNA の合成
各 RNA サンプルに Appen d ix 1 (a )に示す試薬を加えて混和し、
サーマルサイクラーで 70℃、 2 分間インキュベートした。その
後、 Append ix 1 (b )に示す試薬を各チューブに添加して混和し、
42℃で 1 時間インキュベートした。 TE バッファーを 4 0 µ L 添加
して希釈した後、サーマルサイクラーで 72℃、 7 分間加熱し s s
cDNA を得た。サンプルは使用時まで- 20℃で保存した。
( i i ) d s cDNA の増幅
各 s s cD NA をそれぞれ 3 本のチューブに 1 µ L ずつ加え、更に
精製水を加えて全量を 10 µ L とした。混和した後、Ap pend ix 1 ( c )
に示した Mast e r M ix を 90 µ L 添加し、 Append ix 1 (d )に示したプ
ログラムで反応を開始した。 15 サイクルが終了したところで 2
本のチューブを取り出し、 4℃で保存した。残りの 1 本のチュー
23
ブからは 15 µ L を抜き取り、残りの 85 µ L は更にサイクルをかけ
た。同様に 18、21、24 サイクル終了後にも 15 µ L ずつ抜き取り、
各サイクル数のサンプルを 1 .2 %アガロース / E tBr ゲルにて電気
泳動し、最適なサイクル数を決定した。その後、 4℃で保存して
いた 15 サイクル済みのサンプルをサーマルサイクラーに戻し、
最適サイクル数までサイクルを追加した。サイクル終了後、サン
プルを泳動し最適化の結果と比較、および確認し、各チューブに
0 .5 M EDTA を 2 µ L 添加して反応を終了させた。
( i i i )カラムクロマトグラフィー
2 本の ds cDNA を 1 .5 m L チューブへまとめ、等量の PC I を加
えて倒立攪拌した後、 14 ,000 r pm で 10 分間遠心した。水層を新
しいチューブに移し、 n -ブタノール 700 µ L を添加し攪拌の後、
14 ,000 rpm で 1 分間遠心をした。 n -ブタノール層を除去し、最
終量が 40~ 70 µ L になっていることを確認した。次に CHROM A
SP IN- 1000 カラムに 1×TNE バッファーを 1 .5 m L 添加した。添
加したバッファーが全て流出した後、サンプルを添加した。その
後、 1×TNE バッファーを 25 µ L、 1 50 µ L 添加してどちらも完全
に流出させ、カラムを新しい 1 .5 mL チューブに移した。更に 1
×TNE バッファーを 320 µ L、75 µ L 添加して流出したものを精製
ds cDN A 分画として保存した。
( i v ) RsaⅠ処理
精製 ds cD NA を RsaⅠで 37℃、3 時間制限酵素処理し、処理後
の cDN A を 2 本のチューブに分け、 Nucleo Sp in を用いて精製し
24
た。溶出は 50 µ L で行った。チューブを 1 本にまとめ、エタノー
ル沈殿させ風乾させたサンプルを 1×TNE バッファー 6 .7 µ L に溶
かした。このサンプル 1 .2 µ L に 11 µ L の精製水を加え吸光度を
測定後、収量を評価した。
(2 ) サブトラクション
PCR-Se lec t T M cDNA Sub t r ac t ion Ki t (Bec ton , Di ck inson and
Compan y)を用いて行った (Supp l . F i g . 3 , 4 )。
( i )アダプターの結合
RsaⅠ処理し、精製した cDNA を 300 ng/ µ L になるように希釈
した。 Tes t e r cDN A(=BF cDN A) 1 µ L に滅菌水 5 µ L を加え、それ
を 2 µ L ずつ 2 本のチューブに分注した (Tes t e r1 -1 , Tes t e r1 -2 )。 各
チューブに App en d ix 2 ( a , b )に示す試薬を表示順に従って添加し
た。混和後、Tes te r 1 -1 と Tes t e r1 -2 から各 2 µ L を 1 本の新しいチ
ューブ (1 -C )に加え、 Tes te r1 -1 , Tes t e r 1 -2 , 1 -C を 16℃で一晩ライ
ゲートした。その後、各サンプルに 1 µ L の E DTA/G l yco gen Mix
を加えてライゲーションを停止させ、 72℃で 5 分間加熱しリガ
ーゼを不活化した。
非サブトラクションコントロールとして、1-C から 1 µ L を 1 . 5
m L チューブに移し、1 m L の H 2 O で希釈した。(後述の PCR 増幅
で使用、保存は- 20℃ )
( i i ) 1 s t ハイブリダイゼーション
RsaⅠ処理し、濃度を揃えた D riv er cD N A (= PC cDN A)を 1 .5 µ L
ずつ、 2 本のチューブに分注した (ハイブリダイゼーションサン
25
プル 1、ハイブリダイゼーションサンプル 2) 。 Append ix 2 (c )の
試薬を表示順に従って添加し、各チューブにミネラルオイルを 1
滴重層した。サーマルサイクラーを用いて 98℃、1 .5 分間加熱し
た後、68℃で 8 時間インキュベーションを行った。インキュベー
ション後、直ちに 2nd ハイブリダイゼーションを行った。
( i i i ) 2nd ハイブリダイゼーション
Append ix 2 (d )の試薬をチューブに加え、混合溶液から 1 µ L を
抜き取って新しいチューブに移し、ミネラルオイルを 1 滴重層
した。サーマルサイクラーで 98℃、1 .5 分間加熱して得た熱変性
Drive r cDNA を、ハイブリダイゼーションサンプル 1、 2 と同時
に混合した。その後、ミネラルオイルを 1 滴重層し、68℃で一晩
インキュベートした。サンプルを別のチューブに移し、200 µ L の
Di lu t ion buffe r を加えてよく混和し、 68℃で 7 分間の加熱を行っ
た。
( i v ) 1 s t PCR
希釈済みのサブトラクションサンプルと非サブトラクション
サンプルを、それぞれ 1 µ L ずつチューブに入れた。 Append ix 2
( e )に示す試薬で Maste r Mix を調製し、各チューブに 24 µ L ずつ
加え、App end ix 2 ( f )に示すプログラムで反応を行った。反応後、
アガロース / E t Br ゲルにて電気泳動を行った。
( v ) 2nd PCR
各 1s t PCR 産物 3 µ L に 27 µ L の H 2 O を加え希釈し、各 1 µ L を
26
チューブに入れた。 Append ix 2 ( g )に示す試薬で Mast e r Mix を調
製し、各チューブに 24 µ L ずつ加え、 Append ix 2 (h )に示すプロ
グラムで反応を行った。その後、 1s t PCR と同様に電気泳動を行
った。
(3 )クローニング
TA Clon in g Ki t Vers ion R ( Inv i t ro gen , CA, USA)を用いて、サブ
トラクションの 2 nd PCR 産物をクローニングした。すなわち、
サンプルと試薬を氷上で混和して室温で 5 分間静置した後、そ
の 2 µ L をコンピテントセル (Es cher i ch ia co l i TOP10) 50 µ L に加
え、ピペッティングにより混和した。 30 分間氷冷し、 42℃で 30
秒間ヒートショックを行いトランスフォームさせた。処理後の
混合液に SOC med ium を 250 µ L 加え、 37℃で 1 時間振盪培養し
た。その後、LB+アンピシリン + X-G a l 培地にプレーティングし、
37℃で一晩培養した。白色コロニーについてコロニー PCR を行
い、 DNA 塩基配列を決定した。
(4 )ホモログ検索
得 ら れ た DNA 塩 基 配 列 を BLAS T (UR L:
h t tp : / /www.ncb i .n l m.n ih .gov / BLAST/ )を用いて検索した。
5 ) 遺伝子破壊株の作製
遺伝子破壊株の作製実験の概略を S upp le . F i g . 5 に示す。
(1 )供試菌株および培地
遺伝子破壊および再導入実験に使用した菌株および培地を Tab l e
27
2 に示す。
(2 )プライマー一覧
遺 伝 子 破 壊 お よ び 再 導 入 実 験 に 使 用 し た プ ラ イ マ ー の 配 列 を
Tab le 3 に示す。
(3 ) 1 s t PCR
目的遺伝子の OR F の上流および下流 (Supp le . F i g . 6 -1 )に、プライ
マー (d i s -1 , d i s - 2 , d i s -3 , d i s -4 )を、約 5 00 bp の領域を増幅するよう
に作製した。d i s -2 , d i s -3 には、プラスミドのマルチクローニング
サイトの上流および下流にある配列 (M13-47 , RV-M)を付加した。
これらのプライマーを用いて、 Ap pend ix 3 に示す条件で PCR を
行い、 d i s -A, d i s - B 領域を増幅させた (Supp le . F i g . 5 - 1 )。 PCR 産
物は、アガロース / E tBr ゲルにて電気泳動し、目的のバンドを切
り出して、Minelu t e Ge l Ex t rac t ion Ki t を使って抽出した。
(4 ) URA3 カセットの作製
ゲル抽出した d i s -A,d i s - B を用いて、Append ix 3 に示す条件で PCR
を行い、URA3 領域 (URA3 カセット‐ L, URA3 カセット‐ R)を増
幅させた (Supp le . F i g . 6 -2 )。アガロースゲル電気泳動を行い、目
的のバンドを確認した。URA3 カセット‐ L および R を 1 つのチ
ューブにまとめ、エタノール沈殿を行い URA3 カセットを得た。
(5 ) 1 s t トランスフォーメーション
C. a lb i cans の T UA4-2 株を YPDU 液体培地中に懸濁し、30℃で一
28
Table 3 Primers used for gene disruption and reinsertion in this study.
Primer Sequences (5'→3')
URA3-F AATAGGAATTGATTTGGATGGTATAAACGG
URA3-R CCACCTTTGATTGTAAATAGTAATAATTAC
RV-M GAGCGGATAACAATTTCACACAGG
M13-47 CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC
hisURA-R CCATCCAAATCAATTCCTATTAAGATCCCG
discheckARG4-R GCTCTTGGTGGTACTGCTAAAAGTGCCG
discheckURA3-R1 AATTCACTGGCCGTCGTTTTACAAC
discheckURA3-R2 AAACAGCTATGACCATGATTACGCCAAGC
disPRA1-1 GAACACTAGCAGACAGGTTCAGTG
disPRA1-2 GTCGTGACTGGGAAAACCCTGGCGCTGTAGTGGTTGTGATGAGAGTGC
disPRA1-3 CCTGTGTGAAATTGTTATCCGCTCCTCTTTGCACTACGTCATTAATC
disPRA1-4 GGTCAACTGTGAATCATTATTGCC
discheckPRA1-F CGTCATGGTTATTGTCATCGACAC
discheckPRA1-R GGTAACCGTAACTGGTGCAGCAAC
revPRA1-A-xho GGCCTCGAGATGAATTATTTATTGTTTTGT
revPRA1-B-sph GCCGCATGCTTAACAGTGGACTTCACC
disZRT1-1 CCAATCGTAACCTGTAGGTGAAGC
disZRT1-2 GTCGTGACTGGGAAAACCCTGGCGGTATATATCTTCATTGCTACGG
disZRT1-3 CCTGTGTGAAATTGTTATCCGCTCCCAATGCCTCTGACCACCATAATG
disZRT1-4 CACAATCATGCTGTTGTGACAGTG
discheckZRT1-F GAATCTGTGTAACAAGTCACCTGCC
discheckZRT1-R GCTCCGTGGTTGCTAATCTGTAGC
revZRT1-A-bam GGCGGATCCATGAAGTTTACCCATTTATT
revZRT1-B-xho GCCCTCGAGTTACGCCCAATTACCCAATA
disEBP1-1-2 TCCGATATCATCGCATGAG
disEBP1-2-2 GTCGTGACTGGGAAAACCCTGGCGAACTTGAAGAAACATGGCTG
disEBP1-3-2 CCTGTGTGAAATTGTTATCCGCTCGGGAATGAAGTTCTATTAGC
disEBP1-4 TACTACAGGGCCACAAACCAATGG
discheckEBP1-F GCATAATTTGTCAGCAACGG
discheckEBP1-R AGTAACCATGAGCACCATGG
revEBP1-A-bam GGCGGATCCATGACTATTGAATCAACTAAT
revEBP1-B-xho GCCCTCGAGCTATGCCAATGGTTTACCAAT
29
晩振盪培養した。培養液 100 µ L を新しい YPDU 液体培地 10 m L に
加え、 30℃、 4 時間振盪した。遠心して上清を取り除いたペレット
に 50 %ポリエチレングリコール 3 350、 1 M 酢酸リチウム、熱処理
した Carr i e r DNA、 URA3 カセットを添加し、更に 3 0℃で 3 時間振
盪した。その後、 42℃、 1 時間のヒートショックを行い、 5 分間の
氷冷後、遠心して上清を取り除いたペレットを滅菌水で再懸濁し、
ウリジン不含栄養制限培地にプレーティングした。27℃、48 時間培
養後、発育したコロニーについて A ppend ix 4 の条件で PCR を行い
URA3 の導入を確認した (Supp le . F i g . 6 -3 , 6 - 4 )。
(6 ) ARG4 カセットの作製
URA3 カセットの作製と同様に、Append ix 3 に示す条件で PCR を
行い、 ARG4 領域 ( ARG4 カセット‐ L, ARG 4 カセット‐ R) を増幅
させた (Supp le . F i g . 6 - 2 )。アガロースゲルにて電気泳動し、目的の
バンドを確認した後、エタノール沈殿により ARG4 カセットを得た。
(7 ) 2nd トランスフォーメーション
1s t トランスフォーメーションに成功した株を、 YPD 液体培地に
懸濁し、 30℃で一晩振盪培養した。培養液の 100 µ L を YPD 液体培
地 10 m L に加え、 30℃、 4 時間振盪した。その後、 1s t トランスフ
ォーメーションと同様に ARG4 カセットを用いて、 2n d トランスフ
ォーメーションを行った。滅菌水に再懸濁した菌液は、アルギニン
およびウリジン不含栄養制限培地にプレーティングし、 27℃で 48
時間培養後、発育したコロニーについて Append ix 4 の条件で PCR
を行い OR F の欠損および URA3 , ARG4 の導入を確認した (Supp le .
30
Fi g . 6 -3 , 6 -4 )。
6 ) 遺伝子再導入株の作製
遺伝子再導入株の作製実験の概略を Supp le . F i g . 5 に示す。
(1 ) URA3 の脱落
遺伝子破壊株を Y PDU 液体培地に懸濁し、30℃で一晩振盪培養し
た。培養液を遠心し、上清を取り除いたペレットを滅菌水で再懸
濁した。 5- FOA 選択培地に懸濁液を塗抹し、 27℃で 4 8 時間培養
して URA3 脱落株を得た。
(2 )再導入プラスミドの作製
プライマー ( rev -A, rev -B)を OR F の開始部分と終止部分に作製し、
それぞれに適当な制限酵素サイトを付加した。これらのプライ
マーを用いて、 Ap pend ix 5 に示す条件で PCR を行い、 ORF 領域
を増幅した。 PC R 産物をアガロース /E tBr ゲルにて電気泳動し、
目的のバンドを切り出して、Minelu t e Ge l Ex t rac t ion Ki t で抽出し
た。ゲル抽出した ORF と、プラスミド (pF LAG -MET3)を 37℃、 2
時間で制限酵素処理し、アガロース / E tBr ゲルで電気泳動した後、
各バンドを 1 本のチューブにまとめて、ゲル抽出を行った。
溶出した DN A は 16℃で 1 時間ライゲートし、ライゲーション反
応後にコンピテントセル (E. co l i TOP10)を加え、15 分間氷冷した
後、42℃で 30 秒間ヒートショックを行った。5 分間氷冷し、2× LB
液体培地を加えて、 37℃、 1 時間振盪した。 LB+アンピシリン培
地にプレーティングし、37℃、一晩培養した。発育したコロニー
についてコロニー PCR を行い、 OR F の導入を確認した。導入に
31
成功した大腸菌を、2×YT +アンピシリン液体培地に懸濁し、37℃
で 一 晩 振 盪 培 養 し た 。 培 養 液 か ら Q IApr ep Sp in Min ip rep
(Q IA GEN )を用いて、プラスミドを抽出した。
(3 )トランスフォーメーション
URA3 脱落株を YPDU 液体培地中に懸濁し、30℃で一晩振盪培養
した。培養液 100 µ L を YPD U 10 m L に加え、 30℃、 4 時間振盪
した。遠心して上清を取り除いたペレットに、50 %ポリエチレン
グリコール 3350、 1 M 酢酸リチウム、熱処理した ca r r i e r DNA、
制限酵素処理したプラスミドを添加し、更に 30℃で 3 時間振盪
した。その後、 4 2℃、 1 時間のヒートショックを行い、 5 分間の
氷冷後、遠心して上清を取り除いたペレットを滅菌水で再懸濁
した。アルギニンおよびウリジン不含栄養制限培地に塗抹し、
27℃で 48 時間培養後、発育したコロニーについて、 rev -A およ
び rev - B を用いて PCR を行い、遺伝子再導入株を確認した (Supp le .
F i g . 6 -5 )。
7 ) バイオフィルムの感受性試験
サブロー寒天培地または YPD 寒天培地で前培養した C. a lb i cans
を最終接種菌濃度 A 6 3 0 =0 .1 に調製し、 96 w el l マイクロタイター
プレート(フラットボトム、ポリスチレン製、 TPP)のウェルに
加えた。各感受性試験供試試薬を各設定濃度に調製し、同様にプ
レートに接種した。コントロールには、薬液と同量の溶媒 (DMSO
または滅菌水 )を添加した。接種液量は、最終 100 μL とした。
37℃で 48 時間培養し、バイオフィルムを形成させた後、浮遊細
32
胞を含む上清を除いた後、PBS で洗浄し、XTT- redu c t ion as sa y ま
たは cr ys t a l v io l e t a s sa y により測定した。
8 ) 成熟バイオフィルムの感受性試験
4 )バ イ オ フ ィ ル ム 感 受 性 試 験 と 同 様 に 菌 液 を 作 製 ・ 接 種 し 、
37℃ 24 時間静置培養した。その後、上清を除き、各供試試薬を
設定濃度に調製し、プレートに接種した。コントロールには、薬
液と同量の溶媒 (D MSO または滅菌水 )を添加した。 3 7℃ 48 時間
培養後、上清を除き、PBS で洗浄し、XTT-reduc t ion as sa y または
cr ys t a l v io l e t a s s ay により測定した。
9 )バイオフィルムの定量法
(1 ) XTT-r educ t i on as sa y
Haws er S . P,らの方法に従って行った 5 2 )。すなわち、 XTT (2 , 3 -
b i s [ 2 -Methox y-4 -n i t ro -5 - su l fophen yl ] - 2H- te t r azo l ium -5-
carb ox yan i l i de , S i gma -Aldr i ch )を乳酸リンゲル液に溶解させ 0 .5
mg/m L の溶液を作製し、 0 .45 µ m のフィルターでろ過滅菌した。
一定量ずつ分注し、保存は- 80℃で行った。使用する際には、メ
ナジオン (アセトンで 10 mM に調整 , S igma)を最終濃度 1 µ M とな
るように加えた。バイオフィルムを洗浄後、各ウェルに 100 µ L ず
つ分注した。37℃、遮光下で 1 時間または 2 時間静置し、492 nm
における吸光度を micro t i t e r p l a t e r e ade r (Mul t i skan J X ; Thermo
Labs ys t ems , M A, U SA)で測定した。
(2 ) Cr ys t a l v io l e t a s sa y
33
Cr ys t a l v io l e t(和光純薬)をエタノールに溶解し、 0 .1%溶液を作
製した。バイオフィルムを洗浄後、45 分間乾燥させた後、各ウェ
ルに 100 µ L ずつ分注した。 45 分間染色した後、 cr ys t a l v io l e t 溶
液を除き、 PBS で 3 回洗浄した。エタノール 150 µ L を各ウェル
に添加し、 45 分間溶出した後、上清 100 µ L を新しいウェルに移
し、630 nm における吸光度を mic ro t i t e r p l a t e r ead er (M ul t i skan J X)
で測定した。
10 ) 浮遊細胞の感受性試験
6 )バイオフィルム感受性試験と同様に菌液を作製・接種し、 96
wel l マイクロタイタープレート( U ボトム、ポリスチレン製、TPP)
のウェルに加えた。または、前述の菌液を 1 ,000 倍希釈して使用
した。各感受性試験供試試薬を各設定濃度に調製し、同様にプレ
ートに接種した。コントロールには、薬液と同量の溶媒 (DMSO ま
たは滅菌水 )を添加した。接種液量は、最終 100 μ L とした。37℃ 48
時間培養し、判定を行った。定量する場合は、 CFU as sa y により
生菌数を測定した。
11 )生細胞数カウント法
(1 )CFU ass a y
培養後のプレートウェル中の菌液を懸濁し、PSS で適宜希釈をし、
その希釈液をサブロー寒天培地に滴下してコンラージ棒で培地
表面に塗布した。37℃ 24~ 48 時間培養後、発育したコロニー数を
カウントし、希釈倍数から元の菌液中の生菌数を算出した。
34
12)菌糸形成抑制試験
バイオフィルム形成時と同様に菌懸濁液を作製し、 U 底 96 wel l
プレートに接種した。薬剤等による阻害作用を観察する場合は
同量の溶媒 (DMS O または滅菌水 )をコントロールにも添加した。
37℃で 24 時間または 48 時間培養後、光学顕微鏡にて観察した。
13 )RNA 抽出
回収した菌体から、酸性フェノール・クロロホルム法にて RNA を
抽出した。すなわち、各条件で培養した菌懸濁液を遠心し、上清
を除いた。ペレットを PBS で洗浄後、 TES 溶液 (10 mM Tr i s -HCl ,
10 mM EDTA, 0 .5 % SDS)および酸性フェノール溶液 (0 . 1 M クエン
酸バッファーにて飽和、 pH 4 .3±0 . 2 , ニッポンジーン )を加えて懸
濁し、ヒートブロックで 65℃、 4 分間加熱した。熱処理後、急冷
し 14 ,000 rpm, 4℃で 2 分間遠心した。水層を新しいチューブに移
し、そこへ酸性フェノール・クロロホルム溶液を加えて混合した。
遠心した後、水層をエタノール沈殿処理し、上清を取り除いた。
得られたペレットを 70 %エタノールで洗浄し、遠心後、上清を取
り除き風乾させて DEPC wat e r で溶解した。 DN A のコンタミネー
ションを避けるため、 DNas e (Wako Pure Chemica l Ind u s t r i e s , Ltd . )
を処理し、 PCR で DN A が混入していないことを確認した。保存
は- 80℃で行った。
14 )ノーザン・ブロット法
抽出したトータル RNA 5 μg を、 0 .9 %ホルムアルデヒドゲル /
1×MOPS (20 mM MOPS, 5 mM 酢酸ナトリウム , 1 mM EDTA・ 2Na)
35
にて電気泳動した。泳動後のゲルを 10×SSC で 15 分間洗浄し、
20×SSC (3 M 塩化ナトリウム , 0 .3 M クエン酸ナトリウム ) で
H yb ond-N + ナ イ ロ ン 膜 (Amersham Bios c i ence) に 一 晩 ブ ロ ッ テ
ィングした。 U V クロスリンカー (U VP, CA, USA) を用いて強度
1 ,200×100 µJ / cm 2 の UV を 2 回照射して RNA を固定させたメン
ブレンに、プレハイブリダイズしたアルカリフォスファターゼ
ラベル化プローブを加え、 55℃で一晩ハイブリダイズさせた。
DNA プ ロ ー ブ は 、 Gene Images Al kPhos Di rec t Labe l l i ng and
Detec t ion S ys t em ( Amersh am Biosc i en ce)を用いて作製した。ハイ
ブリダイズ後、メンブレンを洗浄し、 C D P - s t a r D e t ec t i o n r e a g en t
および H yp e r f i l m E C L (Am ersh am Bi osc i ence)を用いて検出した。
15 )Rea l -Time PCR
抽出したトータル RNA 500 n g から、 Pr imeScr ip t ® RT Mas te r Mix
(TaK aRa Bio Inc . , O t su , J apan)を用いて cDN A を作製した。試薬
は Power SY BR ® Gr een PCR Mas te r Mi x (App l i ed Bios ys t ems , Fos t e r
C i t y, CA, USA )、装置は A BI7500 R ea l - Time PCR s ys t em (App l i ed
Bios ys t ems)を使用し、 Real -Tim e PC R を行った。プライマーは
Tab le 4 に示す 5 3 - 5 6 )。相対遺伝子発現量は、 26S rRN A をコント
ロールとして⊿ Ct 法にて算出した。
16 )疎水性試験
水 -オクタン層二層試験で行った。すなわち、バイオフィルムを
回収し YPD 培地に懸濁させ、 A 6 0 0 =1 .0 の菌液を作製した。菌液
1 .2 m L をチューブに移し、その上にオクタン 0 .3 m L を添加し、
36
Primera Sequence (5’-3’) Reference
HWP1-F CGGAATCTAGTGCTGTCGTCTCT Samaranayake et al. 2013 53)
HWP1-R CGACACTTGAGTAATTGGCAGATG Samaranayake et al. 2013 53)
ALS3-F GTGATGCTGGATCTAACGGTATTG Uppuluri et al. 2009 54)
ALS3-R GTCTTAGTTTTGTCGCGGTTAGG Uppuluri et al. 2009 54)
ECE1-F CCAGAAATTGTTGCTCGTGTTG Bassilana et al. 2005 55)
ECE1-R CAGGACGCCATCAAAAACG Bassilana et al. 2005 55)
BCR1-F CACTAACGCCGACATTAACC This study
BCR1-R GAACTTGATGCCGACGATTC This study
EFG1-F CACTTCTGCTTCGGCTCCTC This study
EFG1-R CAGCCTTGGTATTTACCGGACTA This study
TEC1-F TCGGGCAATCCTTTGAATAAA Bassilana et al. 2005 55)
TEC1-R TGGATTCATACCGTATTGGTCATTA Bassilana et al. 2005 55)
CPH1-F CTCCACTACCCCCAATATCATC This study
CPH1-R CTTCTCCACCATTAGCACTCTG This study
NRG1-F ACCAACAACCCATGTACCAAAAC Bassilana et al. 2005 55)
NRG1-R ATTAGCCCTGGAGATGGTCTGA Bassilana et al. 2005 55)
TUP1-F CTCAAAGGACCGTGGTGTCA This study
TUP1-R GGCCCTGCAACATCAACAA This study
26S-F GAGTCGAGTTGTTTGGGAATGC Hierro et al. 2006 56)
26S-R TCCATCACTGTACTTGTTCGC This study
Table 4. Primers used for RT-qPCR in this study
aAbbreviations: F, forward primer; R, reverse primer
37
ボルテックスにて 3 分間混合した。静置し二層に分離した後、水
層の吸光度 ( A 6 3 0 )を測定した。同じ菌液を用い、オクタン非添加
の系をコントロールとした。相対疎水性の値は、以下の計算式で
算出した; [ (OD 6 3 0 con t ro l - OD 6 3 0 oc t ane ov er l a y) /OD 6 3 0 con t ro l ] ×
100。
17)β -1 , 3 g lu can の測定
バイオフィルム形成後、上清を回収し 14 ,500 rpm で 5 分間遠心
し、その上清をサンプルとした。使用までは -30℃で保存した。
バイオフィルム本体の菌体は別途回収し、プレートカウント法
により生菌数を測定した。 β -1 , 3 g lu can 濃度は、 Glu ca te l l (1 ,3 ) -
β -D-Glu can D etec t ion Reagen t k i t (Cape Cod , Massachus e t t s , USA)
を用いて測定した。
38
結果
Ⅰ.バイオフィルム形成に関与する遺伝子の解析
1 ) バイオフィルム形成関連遺伝子の抽出
バイオフィルム形成に関与する遺伝子を特定するため、バイ
オフィルム条件(静置培養)と浮遊細胞条件(振とう培養)から
抽出した RNA について、サブトラクション法を用いたトランス
クリプトーム解析を行った。その結果、バイオフィルム状態で発
現亢進している遺伝子として、 C. a lb i cans の亜鉛獲得システム
において亜鉛結合タンパク質をコードする Pra1 および亜鉛トラ
ンスポーターをコードする Zr t1 が抽出された ( F i g . 7 , Tab le 5 )。
2 ) ノーザン・ブロット解析
サブトラクションにより特定されたバイオフィルム状態で発
現が亢進している遺伝子 PRA1 および ZRT1 について、バイオフ
ィルム条件と浮遊細胞条件における遺伝子発現をノーザン・ブ
ロット法を用いて確認した。コントロールには、rRN A を用いた。
その結果、両遺伝子とも、浮遊細胞条件下と比較して、バイオフ
ィ ル ム 形 成 条 件 下 に お い て 明 ら か な 発 現 の 亢 進 が 認 め ら れ た
(F i g . 8 )。 rRN A は両培養条件で同等の発現を示した。
3 ) 遺伝子破壊株のバイオフィルム形成
PRA1 および ZRT1 が、バイオフィルム形成に必須の因子であ
ることを検証するため、両遺伝子の破壊株 (Δpra1 , Δzr t1 )を相同
組み換え法により作製した。両破壊株とも増殖能は、野生株
39
Table 5 Genes overexpressed in biofilm cells.
Gene GenBank accession No. Function
PRA1 U84261 Cell surface glycoprotein, pH-regulated antigen
ZRT1 AACQ01000085/AACQ01000086 High-affinity zinc transport protein
40
41
(WT)と同等であった。各遺伝子破壊株のバイオフィルム形成能
を XTT-r edu c t ion a s sa y により評価した結果、 Δpra1 , Δzr t1 は、野
生株と比較して強固なバイオフィルムを形成することができず、
バイオフィルム形成率は野生株の 5 0 %程度まで減少した。また、
Δpra1 , Δzr t1 において低下したバイオフィルム形成能は、当該遺
伝子を再導入することによって (R ev PRA1 , RevZRT1 )、野生株と同
等まで回復した ( F i g . 9A )。
4 ) 遺伝子破壊株の菌糸形成
バ イ オ フ ィ ル ム 形 成 に は 二 形 性 変 換 が 関 与 し て い る た め 、
Δpra1 , Δzr t1 について、菌糸形成能を野生株と比較した。菌糸誘
導培地には、cAMP -PKA 経路を誘導する Spider 培地、MAPKinase
経路を誘導する N - ace t yl g lucos amine (GlcNAc) , 転写因子 Tec1 を
介する Lee 培地の 3 種類を使用した。その結果、Spi der 培地誘導
条 件 下 に お い て 、 両 破 壊 株 は 野 生 株 よ り 短 い 菌 糸 を 形 成 し た
(F i g . 9 B)。遺伝子再導入株 (Rev PRA1 , RevZRT1 )は、野生株と同等
の菌糸を形成した。一方、Gl cNA c 培地および Lee 培地による誘
導条件下では、 Δpra1 および Δzr t1 と野生株の菌糸形成に差は認
められなかった。
5 ) 亜鉛のバイオフィルム形成への影響
P ra1 および Zr t 1 はバイオフィルム形成に関与する因子である
ことが示唆された。両タンパク質は、C. a lb i cans の亜鉛獲得シス
テムに関与している。亜鉛結合タンパク質である Pra1 は、生体
内で遊離の亜鉛や宿主タンパク質と結合している亜鉛を補足し、
42
43
44
亜鉛トランスポーターである Zr t1 の元へ届ける役割を担うと考
えられている( Fi g . 10)。細胞内における亜鉛濃度の変化がバイ
オフィルム形成へ影響を与えている可能性が考えられたため、
亜 鉛 添 加 条 件 に お け る バ イ オ フ ィ ル ム 形 成 に 対 す る 影 響 を
Cr ys t a l v io l e t a s say により評価した。 C. a lb i cans 3 株について、
培地中の亜鉛( Zn SO 4)濃度を 1 , 10 , 100 µM に段階的に変化さ
せた条件でバイオフィルム形成を測定した結果、3 株中 2 株は 1 0
µM の亜鉛添加条件で亜鉛非添加コントロールと比較して 130~
150 %程度にバイオフィルム形成が増加した。また、 3 株中 1 株
は 100 µM の亜 鉛添加条 件にお いてバイ オフィ ルム形成 が約
180 %に増加した (F i g . 11 )。前述の 2 株については、 10 µM まで
は濃度依存的な増加が認められた。 100 µM 添加条件ではコント
ロールよりは高い値を示したが、 10 µM 添加条件よりは減少し
た。後述の 1 株は、100 µM まで濃度依存的な増加を示しており、
株による至適亜鉛濃度の差が認められた。
Ⅱ.ステロイド薬による二形性変換阻害作用と新規二形性変換経路
1 ) 17β - es t r ad io l の二形性変換への影響
エストロゲンは、es t rone , e s t rad io l , e s t r i o l を主要成分とするス
テロイドホルモンである。その中でも、最もエストロゲン活性の
高い 17β - es t r ad io l の菌糸形成への影響を評価した。菌糸誘導培
地には、 GlcN Ac 培地および Spide r 培地を用い、 17β - es t rad io l の
濃度は 10 µg/m L とした。37℃、48 時間後に顕微鏡で観察したと
ころ、17β - es t r ad io l は両誘導培地において菌糸形成を抑制してい
た (F i g . 12A)。また、 17β - es t rad io l 添加条件での菌糸長は、 17β -
45
46
47
es t rad io l 非添加コントロールと比較して 50 %以上低下しており、
有意に短かった ( P< 0 .05 , F i g . 12 B)。
2 ) 17β - es t r ad io l の増殖への影響
17β - es t r ad io l による菌糸形成阻害作用が、増殖抑制によって起
こっているかどうかを確認するため、プレートカウント法によ
り生菌数( CFU: C o lon y Fo rmin g Uni t)を測定した。培地は、 1)
二形性変換への影響と同様に Gl cNA c 培地および Spid er 培地を
用いて、測定は、0 , 4 , 8 , 20 , 24 , 48 時間培養時に経時的に行った。
1 µg/m L および 10 µg/m L の 17β - es t r ad io l は、どの測定時間にお
いても 17β - es t rad i o l 非添加のコントロールと同等の発育を示し
ており、 17β - es t rad io l による増殖抑制は認められなかった ( F ig .
13 )。
3 ) 菌糸特異遺伝子の発現変動
17β - es t r ad io l 添加条件で菌糸形成抑制作用が認められたため、
17β - es t r ad io l 添加条件および非添加条件における菌糸特異遺伝
子 H WP1 の発現変動を、Real - Time P CR にて測定した。相対比較
コントロールには、rRNA を用いた。その結果、17β - es t r ad io l は、
GlcNA c 培 地 に よ る 菌 糸 誘 導 条 件 下 に お い て 、 濃 度 依 存 的 に
H WP1 の発現を減少させることが確認された。また、Spider 培地
においては、17β - e s t rad io l による H WP1 の発現は Gl cN Ac 培地同
様に減少したが、その効果は 1 および 10 µg/m L の 17 β - es t r ad io l
添加条件において同等程度であった (F i g . 14 )。
48
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51
4) エ ス ト ロ ゲ ン 結 合 タ ン パ ク 質 (EBP 1 ) 破 壊 株 に 対 す る 17β -
es t rad io l の効果
C. a lb i cans には、エストロゲン結合タンパク質 (E bp1)が存在す
る。 17β - es t rad io l による二形性変換阻害作用が、 Ebp 1 を介した
作用なのかどうかを検証するため、 ebp1 破壊株 (Δebp1 )を作製
し、17β - es t rad io l による菌糸抑制作用を野生株と比較した。菌糸
誘導条件は、 Gl cN Ac 培地および Spi der 培地の 2 種類で行った。
そ の 結 果 、 GlcNAc 培 地 で の 菌 糸 誘 導 時 は 、 接 種 菌 濃 度 10 3
ce l l s /m L、24 時間培養条件において、また、Spider 培地での菌糸
誘導時は、接種菌濃度 10 6 ce l l s /m L、 48 時間培養条件において、
Δebp1 に対する 17 β - es t r ad io l の菌糸形成阻害作用は、野生株およ
び EBP1 再導 入 株に 対す る場 合 と比 較し て減 弱 が認 めら れた
(F i g . 15 )。
5 ) 17β - es t rad io l のバイオフィルム形成への影響
17β - es t r ad io l に二形性変換阻害作用が認められたため、バイオ
フィルム形成阻害作用についても検討を行った。バイオフィル
ム形成は、17β - es t rad io l の濃度依存的に阻害されており、その阻
害作用は 17β - es t r ad io l 0 .1 µg/m L から認められた (F i g . 16 )。ま
た、バイオフィルム形成阻害作用についても Ebp1 を介した作用
であるかを検討するため、Δebp1 を用いて菌糸形成試験と同様に
バイオフィルム形成への 17β - es t rad i o l の影響を評価した。培地
は GlcNA c 培地を使用した。その結果、菌糸形阻害試験の時と同
様に、17β - es t r ad io l によるバイオフィルム形成阻害作用は、野生
株および E BP1 再導入株と比較して Δebp1 において減弱が認め
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53
54
られた ( F i g . 17 )。また、 Δebp1 においては、 17β - es t rad io l 0 .1~ 1
µg/m L 添加時にバイオフィルム形成が増加する傾向がみられた。
Ⅲ.ミノサイクリンによるバイオフィルム形成阻害作用とその機序
の解析
1 ) 既承認抗細菌薬のバイオフィルム形成阻害作用スクリーニング
54 種類の抗細菌薬(ペニシリン系、セフェム系、β -ラクタマー
ゼ阻害剤、カルバペネム系、モノバクタム系、アミノグリコシド
系、マクロライド系、リンコマイシン系、テトラサイクリン系、
キノロン系)を用いて、バイオフィルム形成阻害作用を示す薬剤
のスクリーニングを行った (Tab le 6 )。薬剤濃度は全て 10 µg/m L
に統一した。その結果、テトラサイクリン系抗細菌薬であるミノ
サ イ ク リ ン に バ イ オ フ ィ ル ム 形 成 阻 害 作 用 が 認 め ら れ た (F i g .
18 )。そこで、ミノサイクリンを含むテトラサイクリン系抗細菌
薬に着目して、以降の実験を行った。
2 ) テトラサイクリン系抗細菌薬の二形性変換阻害作用
テトラサイクリン系抗細菌薬 5 種類(テトラサイクリン、ミノ
サイクリン、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメ
チルクロルサイクリン , F i g . 19)について、各薬剤 1 0 µg/m L に
おける菌糸形成阻害作用を評価した。菌糸誘導培地には、Spider,
GlcNA c, Lee 培地を使用した。供試した 5 種類のテトラサイクリ
ン系抗細菌薬の内、 10 μg/m L で菌糸形成を抑制したのはミノサ
イクリンのみであった。また、ミノサイクリンは、全ての菌糸誘
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Table 6 Anti-bacterial agents used in this study.
No. Anti-bacterial agents No. Anti-bacterial agents
Penicillins Chloramphenicol
1 Penicillin V 29 Chloramphenicol
2 Oxacillin Quinolones
3 Amoxicillin 30 Enoxacin
4 Ampicillin 31 Ofloxacin
5 Piperacillin 32 Pefloxacin mesylate dehydrate
Cephems 33 Clinafloxacin
6 Cefoperazone acid 34 Ciprofloxacin
7 Cefotaxime acid 35 Fleroxacin
8 Ceftazidime 36 Gatifloxacin
9 Cefepime 37 Levofloxacin
β-lactamase inhibitor 38 Lomefloxacin
10 Sulbactam 39 Nadifloxacin
Carbapenems 40 Norfloxacin
11 Imipenem 41 Moxifloxacin・HCl
12 Meropenem 42 Pazufloxacin
Monobactams 43 Sparfloxacin
13 Aztreonam 44 Tosufloxacin
Aminoglycosides 45 Rufloxacin
14 Gentamycin Antituberculosis agents
15 Neomycin 46 Isoniazid
16 Spectinomycin・2HCl 47 Rifampicin
17 Streptomycin 48 Rifamycin SV
18 Tobramycin (free) 49 4-Aminosalicylic acid
Macrolides 50 Prothionamide
19 Azithromycin Others
20 Clarithromycin 51 Novobiocin・Na
21 Roxithromycin 52 Puromycin
22 Troleandomycin 53 Sulfadiazine
Lincomycins 54 Sulfadimethoxine
23 Clindamycin 55 Trimethoprim
24 Clindamycin・HCl
25 Lincomycin
Tetracyclines
26 Doxycycline
27 Minocycline
28 Tetracycline
57
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導培地での培養条件下において菌糸形成阻害作用を示した。一
方、ミノサイクリン以外のテトラサイクリン系抗細菌薬は、全て
の菌糸誘導培地において二形性変換に影響を与えなかった ( F i g .
20 )。
3 ) ミノサイクリンの増殖に対する影響
ミノサイクリンによる菌糸形成抑制作用が、増殖抑制による
ものかどうかを調べるため、プレートカウント法により経時的
に生菌数 (C FU)を測定した。接種菌濃度は、通常の薬剤感受性試
験で用いる 10 3 ce l l s /m L と、上記の二形性変換阻害実験やバイオ
フィルム形成試験と同様の 10 6 ce l l s /m L の 2 種類について行っ
た。接種菌濃度が 10 3 ce l l s /m L の場合、ミノサイクリン濃度 16
µg/m L までは、増殖に影響を与えなかった。 64 µg/m L では、 24
時間培養時に、 CFU がミノサイクリン非添加コントロールと比
較して約 10 倍減少したが、48 時間培養後にはコントロールと同
等の増殖がみられた。128 µg/m L では、48 時間培養後の細胞数が
ミノサイクリン非添加コントロールより約 10 倍減少した ( F ig .
21A)。一方、接種濃度が 10 6 ce l l s /mL の場合、ミノサイクリン濃
度 128 µg/m L に暴露させても増殖に影響を与えなかった (F i g .
21B)。
4 ) ミノサイクリンのバイオフィルム形成阻害作用
二形性変換阻害作用を示したミノサイクリンについて、ミノ
サイクリン濃度を段階的に希釈してバイオフィルム形成阻害作
用を XTT- redu c t io n as sa y により評価した。その結果、ミノサイ
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クリンは濃度依存的なバイオフィルム阻害作用を示し、 5 µg/m L
においても有意な阻害作用が認められた (P< 0 .0 5 , F i g . 22 )。一
方、バイオフィルム形成後 (成熟バイオフィルム過程 )にミノサイ
クリンを添加した場合は、その阻害作用は低下し、50 0 µg/m L 以
上添加条件において有意な阻害作用が認められた (P< 0 .05 , F i g .
23 )。
5 ) 二形性変換関連遺伝子の発現変動
ミノサイクリンにより、二形性変換阻害作用およびバイオフ
ィルム形成阻害作用が認められたので、その機序について検討
を行った。ミノサイクリン添加および非添加条件で作製したバ
イオフィルムから RNA を抽出し、菌糸特異遺伝子、接着因子、
二形性変換関連遺伝子、バイオフィルム関連遺伝子の発現変動
を Real - Time PCR を用いて測定した。相対比較コントロールに
は、 rRN A を用いた。菌糸特異遺伝子 (H WP 1 , ECE1 )および接着
因子 (ALS3 )は、ミノサイクリン 10 µ g/m L 添加時に発現が低下し
た( H WP1 : 3 .0 倍 , ECE1 : 6 .0 倍 , ALS3 : 3 .9 倍)。 cAMP - PKA 経路
および MAPKinas e 経路において菌糸形成を正に制御する転写因
子である EFG1 , CPH1 や TEC1 の発現量にも、ミノサイクリン添
加条件において低下が認められた( EFG1 : 2 .9 倍 , CPH1 : 1 .6 倍 ,
TEC1 : 3 .8 倍)。菌糸形成を負に制御する転写因子である NRG1 ,
TUP1 は、ミノサイクリン添加による発現変動がほとんど見られ
なかった( NRG1 : 1 .1 倍 , TUP1 : 1 .1 倍)。一方、バイオフィルム
制御遺伝子である BCR1 の発現は、ミノサイクリン添加により発
現の低下が認められた (BCR1 : 1 .9 倍 , F i g . 24 )。
63
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6) 疎水性試験
Rea l - Time PCR の結果から、菌糸特異遺伝子(接着因子)の発
現 低 下 が 示 さ れ た が 、 今 回 遺 伝 子 発 現 変 動 を 測 定 し た Hwp1 ,
Ece1 , Al s3 以外にも接着因子は多数存在する。C. a lb i cans におい
ては細胞全体の疎水性と接着性が相関することが報告されてい
る。そこで、細胞全体の接着性を評価するため、水 -オクタン系
二層試験により疎水性の評価を行った。その結果、ミノサイクリ
ン非添加コントロールと比較して、ミノサイクリン 1 0 µg/m L 添
加時は、疎水性が約 9 倍低下した ( F i g . 25 )。ミノサイクリンは
濃度依存的に疎水性を低下させており、ミノサイクリンによる
細胞全体の接着能の低下が示唆された。
7 ) 細胞外マトリックス成分の測定
C. a lb i cans の細胞外マトリックスの主成分のひとつに β -1 , 3
g lu can がある。ミノサイクリンが細胞外マトリックスの産生に
対して影響を与えているかを検討するため、細胞外マトリック
スから上清中に溶出した可溶性 β -1 , 3 g lucan の測定を行った。
その結果、ミノサイクリン 10 µ g/m L 添加条件でバイオフィルム
を形成させた場合、ミノサイクリン非添加コントロールと比較
して細胞当たりの可溶性 β -1 , 3 g lucan 濃度が約 20 倍低下してい
た (F i g . 2 6 )。また、ミノサイクリンは濃度依存的に β - 1 , 3 g lucan
の産生を低下させた。
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考察
Ⅰ.バイオフィルム形成に関与する遺伝子の解析
C. a lb i cans は、酵母形から菌糸形への形態変換を行う二形性真菌
である。通常時は、酵母形で皮膚や膣粘膜に常在するが、感染時に
は菌糸形に変換し、組織に定着・播種し病原性を示す。 C. a lb i cans
の二形性変換はクオラムセンシングにより制御されており、クオラ
ムセンシング物質としては、セスキテルペンアルコールであるファ
ルネソールやフェノール系化合物であるタイロソール等が報告さ
れている 1 5 , 5 7 )。クオラムセンシングは病原性の制御システムのひ
とつとして考えられており、例えば、緑膿菌においてはクオラムセ
ンシング物質であるアシル化ホモセリンラクトンの菌内外の濃度
が高まることで、ピオシアニン・ピオベルジン等の色素やエラスタ
ーゼ、プロテアーゼ等の菌体外毒素の産生、また、バイオフィルム
形成が制御される 5 8 - 6 0 )。 C. a lb i cans においても、二形性変換の制
御を介してバイオフィルム形成が制御されていることが考えられ
る。これまでに、C. a lb i cans のバイオフィルム形成に関与する遺伝
子は多数報告されている。それらの遺伝子の多くは、細胞壁関連タ
ンパク質をコードしており、E ap1 (E nhanced adh er ence to po l ys t yr en e
1 )、Hw p1 (H yph a l wa l l p ro t e in 1 )、Al s1 (A gglu t in in - l i ke sequen ce 1 )、
Als3 等が挙げられる。これらのタンパク質は、バイオフィルム形成
において細胞間や細胞 -基質間の接着に関与しており、その発現は
多くの場合、菌糸形特異的である 1 1 )。つまり、酵母形から菌糸形へ
の二形性変換が、バイオフィルム形成に重要であることが理解でき
る。
70
本研究では、まず、バイオフィルム形成に関連する遺伝子を特定
するため、サブトラクション法を用いてバイオフィルム状態と浮遊
細胞状態における遺伝子発現変動を解析した。その結果、バイオフ
ィルム状態で発現亢進する遺伝子として、 PRA1 および ZRT 1 が抽
出された( Tab le 5)。 Pra1 は、細胞壁タンパク質で、フィブリノー
ゲンと結合することからヒト細胞との相互作用に関与すると考え
られている 6 1 - 6 3 )。 pra1 破壊株は、野生株と比較して菌糸形が短く
なることから、二形性変換にも関与していると考えられる 6 1 )。Pra1
には、細胞表面タンパク質と分泌タンパク質の 2 種類の発現形態が
ある。ヒト好中球は、細胞表面に発現している Pr a1 を認識するこ
とで、遊走や付着能を増強させる。一方、分泌性 Pra1 は好中球の
活性を低下させる。結果として、pra 1 破壊株は、好中球により殺菌
されやすくなることから、Pra1 は宿主の免疫システムから回避する
役割を担うタンパク質と推測されている 6 4 , 6 5 )。また、 Pra1 は亜鉛
結合モチーフを有しており、亜鉛獲得システムに関与するタンパク
質とも考えられている 3 3 )。分泌された Pra1 は宿主細胞内の亜鉛と
結合し、細胞表面に発現している Zr t1 の元へ亜鉛を運ぶ。 Zr t1 は
亜鉛トランスポーターであり、二形性変換にも関与することが知ら
れている。C. a lb i cans において、亜鉛は増殖、形態、病原性に関与
することが報告されていることもあり 6 6 , 6 7 )、亜鉛の恒常性はバイ
オフィルムの形成においても重要な因子ではないかと推測された。
ノーザン・ブロット法により PR A1 および ZRT 1 の遺伝子発現変
動を確認した結果、両遺伝子ともバイオフィルム状態で浮遊細胞状
態と比較して、発現が亢進していた (F i g . 8 )。この結果は、 Nobi l e
らが報告した RN A-sequ ence の結果とも一致している 6 8 )。そこで、
71
両遺伝子の破壊株をそれぞれ作製し、バイオフィルム形成能を評価
したところ、野生株と比較してバイオフィルム形成が抑制された
(F i g . 9A )。これらの結果から、PRA 1 および ZRT 1 は、バイオフィル
ム形成に関与する遺伝子と考えられた。 Pra1 , Zr t1 は、亜鉛の獲得
に関与することから、亜鉛添加時のバイオフィルム形成を評価した
と こ ろ 、 亜 鉛 の 添 加 に よ っ て バ イ オ フ ィ ル ム 形 成 は 増 強 さ れ た
(F i g . 11 )。以上より、亜鉛の恒常性は、 C. a lb i can s のバイオフィル
ム形成に必須の因子であると考えられた。
亜鉛の恒常性を制御する遺伝子として、Zap1 が挙げられる。Zap1
はバイオフィルムの重要な構成成分である細胞外マトリックスの
産生を負に制御する 3 1 )。 Zap 1 は亜鉛制限環境下で活性化し、 Pra1
や Zr t1 を正に制御する。このことは、亜鉛添加によりバイオフィ
ルム形成が増加した結果と矛盾しているようにも考えられる。しか
しながら、Zap1 は細胞外マトリックスの他にも二形性変換等、様々
な因子をコントロールしており、 Zap1 の下流にはバイオフィルム
形成を正に制御する因子と負に制御する因子がどちらも存在して
おり、バイオフィルムの形成と崩壊のバランスを制御していると推
測する。実際、Zap 1 は二形性変換において、菌糸形を抑制する作用
のあるファルネソールの産生 ( DPP1 が関与 )と酵母形を阻害する何
らかの物質の産生 ( ZRT2 が関与 )をどちらも制御している 6 9 )。つま
り、バイオフィルム形成における酵母形と菌糸形のバランスをコン
トロールしていると考えられる。同様の現象は他にも報告されてい
る。 Zcf3 2 は、菌糸形成の抑制によりバイオフィルム形成を負に制
御する転写因子であるが、Pra1 , Zr t1 の発現を正に制御している 7 0 )。
pra1 , z r t1 の破壊株は、細胞内の亜鉛恒常性が障害されることで、
72
バイオフィルム形成の低下を示したのではないかと推測された。
以上より、第一章では、PRA1 および ZRT 1 がバイオフィルム形成
に関与する遺伝子であることを見出した。また、両遺伝子は亜鉛の
恒常性を介してバイオフィルム形成を制御していると考えられた。
Ⅱ.ステロイド薬による二形性変換阻害作用と新規二形性変換経路
二形性変換は様々な刺激によって誘導され、誘導条件により異な
るシグナル経路を介して菌糸形への形態変換を行う。最も代表的な
経路は、Ras1 から分岐する MAPKinase 経路と cAMP -P KA 経路であ
る。これらの経路を介して菌糸形成が誘導されると H WP 1 等の菌糸
特異遺伝子が発現し、付着能を高めることで病原性に関与している。
本研究では、ステロイド薬である 1 7β - es t r ad io l に Spider および
GlcNA c 培地により誘導される菌糸形抑制作用が認められた ( F i g .
12 )。 17β - es t rad io l 添加条件における H WP1 の発現変動を測定した
ところ、10 μg/m L の 17β - es t rad io l は H WP1 の発現を低下させた ( F i g .
14 )。本実験では培養 3 時間後の菌体から抽出した RN A で発現を測
定していることから、 17β - es t rad io l は、二形性変換を初期段階から
抑制していると考えられた。Zhan g らの実験では、17 β - es t r ad io l (10 -
9 M)が細胞内の h ea t shock p ro t e in 90 (Hsp90 )レベルを上昇させるこ
とが報告されている 7 1 )。 Hsp90 は Ras1 を抑制するため 7 2 )、 17β -
es t rad io l の二形性変換抑制作用はこの経路を介している可能性が
推測された。
17β - es t r ad io l は、 C18 ステロイドホルモンであり、ヒトを含む哺
乳類において最も強いエストロゲン活性を持つ 7 3 )。17 β - es t r ad io l は、
73
卵胞から分泌されるホルモンであり、ヒトにおいては、エストロゲ
ン受容体 (ERα, E Rβ)に結合することで、細胞の分化や増殖に影響
を与える 7 4 )。 C. a lb i cans はエストロゲン結合タンパク質 (Ebp1 )を
有しており、 17β - es t rad io l に高親和性であること、液胞に局在する
ことが報告されている 7 5 )。17β - es t r ad io l による二形性変換抑制作用
が、 Ebp1 を介して行われているのではないかと考え、 ebp1 破壊株
を作製し試験したところ、ebp1 破壊株においては、17 β - es t r ad io l に
よる菌糸抑制作用が減弱した ( F i g . 15 )。この結果から、17β - es t rad io l
の菌糸抑制作用は Ebp1 を介していること、また、新たな二形性変
換経路の存在が示唆された。
膣カンジダ症は、全女性の 75 %が生涯のうち 1 度は罹患する感
染症であるが、特に妊娠時や黄体期といったエストロゲン濃度が高
ま る 時 期 に 発 症 し や す い 7 6 )。 エ ス ト ロ ゲ ン 濃 度 が 高 ま る と C.
a lb i cans の菌糸形成が誘導され、膣カンジダ症の発症につながると
考えられている 7 7 )。このことは、本研究の結果と相反するように見
える。しかしながら、通常の血中エストラジオール濃度は 10~ 350
pg/m L であり、妊娠時においても 5 0 ng/m L 程度である 7 8 )。本研究
では、生理学的濃度より高い濃度による影響を試験しているため、
これまでの知見と逆の結果が得られていると考えられる。
Chen g らは、 17β - e s t rad io l (10 - 5 M)が RPM I- f r ee 培地や SC 培地で
の培養条件下で、発芽管形成を促進する作用を有し、 17α - es t rad io l
や es t r io l のような類似のエストロゲン活性を持つ化合物には、そ
の作用がないことを報告している 4 7 )。それぞれの化合物において
17β - es t r ad io l と異なる部分は、 17 α - es t rad io l は、 17 位の水酸基が α
配位している点、 es t r io l は 16 位にも水酸基が付加されている点で
74
ある。 Ebp1 が結合するフェノール構造は、どの化合物においても
保存されている。Ebp1 の基質特異性は低いため、1 7 β - es t r ad io l によ
る発芽管形成 の 促進作用が、 Ebp 1 を介してい る とすれば、 17 α -
es t rad io l や es t r io l も同様の作用を示すことが推測される。つまり、
Chen g らの実験において示された 17 β - es t r ad io l による発芽管形成促
進作用は、 Ebp 1 とは別の経路を介した現象であると思われた。本
研究の結果との不一致は、菌糸誘導培地の違いによるものではない
かと考える。ヒトにおいても、 17β - es t rad io l は、エストロゲンレセ
プターを介した場合と介さない場合で、異なる作用をもたらすこと
が知られており 7 9 )、 C. a lb i can s においても多面的な作用を有して
いるのではないかと考えられた。
S . cerev i s iae の O YE と同様に、 Eb p 1 は NADPH オキシドレダク
ターゼ活性を持ち、17β - es t rad io l が結合することでその活性は阻害
される 4 4 )。C. a lb i cans において、N ADH デヒドロゲナーゼは菌糸形
成に関与することが知られている 8 0 )。 NAD H デヒドロゲナーゼコ
ンプレックスⅠのサブユニットをコードする NDH51 の破壊株は、
菌糸形を形成しない。 NADPH オキシドレダクターゼ活性を持つ
Ebp1 も、このような経路で二形性変換に関与しているのかもしれ
ない。 Ebp1 の機能的な役割を明らかにするためには、今後更なる
検討が必要である。
第二章では、17β - e s t rad io l に二形性変換抑制作用があることを見
出し、その作用は Ebp1 を介したものであることを明らかにした。
つまり、 Ebp1 を介する新規二形性変換経路の存在が示唆された。
Ebp1 が病原性に関与しているかどうかについては、今後の検討が
求められる。
75
Ⅲ.ミノサイクリンによるバイオフィルム形成阻害作用とその機序
の解析
C. a lb i cans のバイオフィルム形成は、他の多くの微生物と同様に、
治療薬に対する耐性化による難治化が問題となっている。バイオフ
ィルム形成時には、浮遊細胞の状態と比較してアゾール系抗真菌薬
への感受性が 256~ 512 倍以上低下することが報告されている 8 1 )。
本研究では、抗真菌薬に比較して種類が豊富で、潜在的な機序が類
似している抗細菌薬を対象として、C. a lb i cans のバイオフィルム形
成阻害作用についてリプロファイリングを行った。その結果、テト
ラサイクリン系抗生物質であるミノサイクリンにバイオフィルム
形成阻害作用を見出した。ミノサイクリンがアゾール系抗真菌薬フ
ルコナゾールと併用することで、バイオフィルム形成を抑制するこ
とは報告されているが 8 2 , 8 3 )、単剤での報告はこれが初めてである。
ミノサイクリンとフルコナゾールの併用効果の機序は、細胞内カル
シウム濃度の上昇によるものと考えられている。
ミノサイクリンを含む 5 種類のテトラサイクリン系抗生物質の
二形性変換に対する影響を検討したところ (10 μ g/m L)、ミノサイク
リンのみが菌糸抑制作用を示した ( F i g . 20 )。 また、ミノサイクリ
ンには、二形性変換抑制作用だけでなく濃度依存的なバイオフィル
ム形成阻害作用も認められたため (F i g . 22 )、次にその機序につい
て検討を行った。まず、増殖への影響を検討した結果、高濃度のミ
ノサイクリンには潜在的な増殖抑制作用が認められた (F i g . 21A)。
このことは、Water wor th の報告と一致している 8 4 )。しかしながら、
バイオフィルム形成試験で用いた菌濃度では、増殖抑制作用は認め
られなかった (F i g . 21B)。以上の結果から、本研究におけるミノサ
76
イクリンのバイオフィルム形成阻害作用は、増殖抑制に起因する現
象ではないと考えられた。
C. a lb i cans の二形性変換は、複数のシグナル経路によりコントロ
ールされている。菌糸特異遺伝子、接着因子、菌糸関連転写因子、
バイオフィルム関連遺伝子について、ミノサイクリンの添加・非添
加条件での発現変動を測定した。その結果、菌糸特異遺伝子 (H WP1 ,
ECE1 )、接着因子 (ALS3 )、菌糸形成に対して正に制御する転写因子
(EFG1 , CP H1 , TE C1 )およびバイオフィルム関連遺伝子 (BCR1 )は、
ミノサイクリン添加条件で発現の低下が認められた。一方、菌糸形
成を負に制御する転写因子には、発現の変動はほとんど認められな
かった ( F i g . 24 )。 BCR1 は、バイオフィルム形成の初期段階を制御
しており、菌糸形形成時に発現が増加することが報告されている 2 8 ,
8 5 )。しかしながら、本タンパク質はバイオフィルム形成には必須で
あるが、菌糸形成には必須ではない。 H WP1 , ALS3 , E CE1 を過剰発
現させると b cr1 破壊株のバイオフィルム形成がリカバーされるこ
とが示されている 2 8 , 8 6 ) 。 H WP1 , ECE1 , ALS3 , BCR1 の発現低下か
ら、ミノサイクリンによりバイオフィルム形成の初期段階が抑制さ
れていることが推測された。また、 EFG1 , CPH1 , TEC1 の発現低下
により、二形性変換のシグナル経路を介して、バイオフィルム形成
を阻害していることが考えられた。
接着因子 ALS3 の発現はミノサイクリンによって低下することが
示されたが、その他にも接着因子は存在し、相補的な作用を示して
いる。例えば、 hw p1 破壊株と a l s1 /a l s3 破壊株は、それぞれバイオ
フィルム形成ができない株であるが、これら 2 種類の株を混合して
接種した場合、野生株と同等のバイオフィルムを形成する 2 9 )。つま
77
り、 hwp1 と a l s1 , a l s3 は接着において相補的に働いている。 C.
a lb i cans の細胞接着性と疎水性には相関があることから 8 7 , 8 8 )、細
胞全体の接着能を評価するため、疎水性評価を行った。ミノサイク
リンの添加により、疎水性は低下した (F i g . 25 )。この結果から、ミ
ノサイクリンのバイオフィルム形成阻害作用の一因として、接着能
の低下が考えられた。
バイオフィルム形成および維持において、マトリックスの産生は
重要である 8 9 )。ミノサイクリンがマトリックスに影響を与えてい
るかどうか調べるため、マトリックスの主要成分である多糖の中の
ひとつである β -1 , 3 g lucan についてバイオフィルム上清中の量を
測定した。上清中の可溶性 β -1 , 3 g lu can は、ミノサイクリン添加に
より減少したため (F i g . 26 )、ミノサイクリンはマトリックスの産
生を抑制する作用もあると考えられた。
本研究においては、テトラサイクリン系抗生物質の中でミノサイ
クリンにのみ二形性変換阻害作用およびバイオフィルム形成阻害
作用が認められた。テトラサイクリン系抗生物質基本骨格は、4つ
の環構造が連なった構造をしており (A~ D 環 )、A 環が平面状の B,
C , D 環に L 字型に付加している ( F i g . 19 ) 9 0 )。テトラサイクリン系
抗生物質は、リボソームの 30S サブユニットに結合しタンパク質の
合成阻害により抗菌効果を発揮する。本作用には、 1 位および 10 -
12a 位における極性官能基、 2 位におけるカルバモイル基とマグネ
シウムイオンの存在が必要である。一方、5-9 位は化学的修飾後も、
基本的な抗生物質としての活性は維持されることから、耐性菌克服
のために様々な誘導体が開発された。ミノサイクリンは、テトラサ
イクリンの 7 位をジメチルアミノ基で置換した誘導体である。ジメ
78
チルアミノ基は、嵩高い官能基で疎水基としても親水基としても機
能し、抗菌作用の発揮において、重要な官能基と考えられている。
本研究で示された二形性変換抑制作用についても、この部分が重要
な役割をしていると考えられたが、どのように二形成変換に関与し
ているかは不明である。Gr a ld らは、buh yt r inA, ETYA, CGP -37157 に
C. a lb i cans の二形性変換およびバイオフィルム形成を抑制する作
用があることを報告している 9 1 )。しかしながら、これらの化合物に
構造活性相関は見られず、また、ミノサイクリンとも構造に類似性
は認められない。テトラサイクリン系抗生物質は、真核細胞のミト
コンドリアリボソームにも影響することが報告されているが 9 2 )、
二形性変換やバイオフィルム形成の阻害作用は、ミノサイクリンの
みが有していることから、本作用のターゲットではないと考えられ
た。クオラムセンシング分子であるファルネソールは、二形性変換
およびバイオフィルム形成を抑制する作用を持っている。Shchep in
らは、ファルネソール誘導体を 40 種類作製し、その二形性変換抑
制作用を評価した 9 3 )。しかしながら、ファルネソール誘導体にファ
ルネソールと同等の菌糸形成抑制作用を示すものはなかった。この
結果から、著者らはファルネソール特異的なレセプターの存在を示
唆している。ミノサイクリンの場合においても、他のテトラサイク
リン系抗生物質に二形性変換およびバイオフィルム形成の阻害に
おいて同等の作用が認められないことから、そのようなレセプター
が存在する可能性が推測された。
本研究でのバイオフィルム形成抑制作用は、 5 μg/m L 以上で認め
られた。臨床的には、ミノサイクリンの最高血中濃度は 4 .4 μg/m L
である (200 m g を 2 時間かけて単回点滴静注した場合 )ため 9 4 )、現
79
在使用されている濃度においては、バイオフィルム形成阻害作用を
期待するのは難しい。海外の臨床現場においては、中心静脈栄養中
の感染症対策として抗菌薬を含浸させたカテーテルが使用されて
いる 9 5 - 9 7 )。本邦においても、 201 5 年にミノサイクリン+リファン
ピシン含浸中心静脈カテーテルキットが承認された 9 8 )。本カテー
テルは、細菌感染を防止する目的で使用されているものであるが、
C. a lb i cans の感染対策にも有効である可能性がある。
以上より、第三章においては、抗細菌薬であるミノサイクリンに
C. a lb i cans のバイオフィルム形成阻害作用を見出した。また、その
作用は、菌糸形成の抑制、接着能の低下、マトリックス産生の減少
を介したものであると推測された。
以上、本研究では、基礎的な検討として、C. a lb i cans の亜鉛獲得
システムを担う P r a1 および Zr t1 が、バイオフィルム形成に関与す
る遺伝子であることを見出した。また、両遺伝子は亜鉛の恒常性を
介してバイオフィルム形成を制御していると考えられた( Fi g . 27)。
更に、 17β - es t rad io l に二形性変換抑制作用があることを見出し、そ
の作用はエストロゲン結合タンパク質 Ebp1 を介したものであるこ
とを明らかにした。同時に、 Ebp 1 を介する新規二形性変換経路の
存在が示唆された( Fi g . 27)。実践的な検討においては、抗細菌薬
であるミノサイクリンに C. a lb i can s のバイオフィルム形成阻害作
用を見出した。また、その作用は、菌糸形成の抑制、接着能の低下、
マトリックス産生の減少を機序として発現されたものであると推
測された( Fi g . 27)。
本研究の結果から、C. a lb i cans のバイオフィルム形成に関与する
80
いくつかの因子の存在を明らかにした。バイオフィルムは複数の因
子による複雑なネットワークの上に形成されており、これまでにも
多くの関連因子が報告されている。今回明らかにしたものは、その
中の一つと考えられる。今後、本因子の詳細な機序や他の因子との
関連性を解析することによって、難治なバイオフィルム感染症の制
御に資することを目指したい。
81
82
病原性真菌 Candid a a lb i cans の
バイオフィルム形成機序の解析および形成阻害薬の探索
B io f i lm Form at ion Mech an i sm s o f P a t hogen ic Fun gus Ca ndida a lb i cans
and Scr een in g o f B io f i lm Inh ib i to r s
平成 29 年度 論文博士申請者 倉門 早苗( Ku rak ad o , Sanae)
指導教員 杉田 隆
我が国では、医療技術が進歩する一方、易感染性宿主の増加に伴
い、日和見感染症である深在性真菌症の発症も増加の一途を辿って
いる。剖検例における原因菌別の発生頻度では、カンジダ症および
アスペルギルス症の発生頻度が高く、臨床上問題となっている( Fi g .
1)。カンジダ血症は Candida a lb i cans を主要起因菌として発症し、
その致死率は 4 0 %以上に及ぶ予後不良の感染症である。発症のリ
スクファクターとしては、中心静脈カテーテル等の体内留置物が挙
げられる。C. a lb i cans は、カテーテル等の基質上にバイオフィルム
を形成し、抗真菌薬に対して耐性化することで難治化し、バイオフ
ィルムの一部が播種することによってカンジダ血症を引き起こす。
従って、バイオフィルムを原因とするカテーテル関連血流感染症の
制御は、我が国において重要な課題の一つである。
C. a lb i cans のバイオフィルムは、酵母形および菌糸形で形成され
る高次構造体であり、その周囲を多糖・タンパク質・核酸等を成分
とする細胞外マトリックスが覆っている。酵母形から菌糸形への二
形性変換は、C. a l b i cans の病原因子として考えられており、バイオ
83
フィルム形成においても重要な因子の一つである。本研究では、Ⅰ .
C. a lb i cans のバイオフィルム形成に関与する因子を明らかにする
ために、バイオフィルム状態で発現亢進している遺伝子を抽出し、
遺伝子破壊株を用いて、当該遺伝子のバイオフィルム形成への影響
を評価した。次に、二形性変
換を抑制する化合物として、
Ⅱ . 17β - es t r ad io l の作用機序
について検討した。また、Ⅲ .
バ イ オ フ ィ ル ム 感 染 症 の 克
服を目指し、C. a l b i cans のバ
イ オ フ ィ ル ム 形 成 を 阻 害 す る
薬剤を探索した。
Ⅰ.バイオフィルム形成に関与する遺伝子の解析
サブトラクション法によるトランスクリプトーム解析の結果、バ
イオフィルム状態では、亜鉛獲得システムを担う P RA 1 および ZRT1
の発現が亢進していた。Pra1 は、亜鉛結合モチーフを有し、菌体か
ら分泌された後、宿主の亜鉛と結合する。その後、亜鉛トランスポ
ーターである Zr t 1 の元へ亜鉛を運ぶ Zin cophor e システムとして機
能する可能性が報告されている。そこで、両遺伝子の破壊株 (Δpra1 ,
Δzr t1 )を作製し、バイオフィルム形成能を野生株と比較した結果、
Δpra1 , Δzr t1 は、野生株と比較して強固なバイオフィルムを形成す
ることができず、バイオフィルム形成率は野生株の 5 0 %程度まで
減少した ( F i g . 2 )。また、 Δpra1 , Δzr t1 は菌糸誘導条件下において、
野生株と比較して短い菌糸を形成した。 Pra1 および Z r t1 は、亜鉛
F i g . 1 C h a n g e s i n t h e r a t e o f m y c o s e s a m o n g
t o t a l a u t o p s y c a s e s a n d c a u s a t i v e a g e n t s d u e
t o m o n o p a t h o g e n i c i n f e c t i o n f r o m 1 9 6 9 t o
2 0 11 i n J a p a n .
84
獲得システムに関与するタンパク質であるため、細胞内の亜鉛恒常
性がバイオフィルム形成に影響を与えていることが考えられた。亜
鉛 添 加 条 件 で の バ イ
オ フ ィ ル ム 形 成 能 を
評価した結果、亜鉛非
添加条件と比較して、
バ イ オ フ ィ ル ム 形 成
の増加が認められた。
Ⅱ.ステロイド薬による二形性変換阻害作用と新規二形性変換経路
本研究室におけるこれまでの検討において、ステロイド薬が二形
性変換阻害作用を有する知見が得られている。エストロゲンは、
es t rone , e s t rad io l , e s t r i o l を主要成分とする
ステロイドホルモンである。その中でも、最
もエストロゲン活性の高い 17β - es t r ad io l の
菌糸形成への影響を評価した。その結果、
17β - es t r ad io l は、N - ace t yl g lucos amin e 培地お
よび Spide r 培地によって誘導された菌糸形
成を阻害した。また、17β - es t rad io l 添加条件
では、菌糸特異遺伝子である H WP 1 の発
現が低下した ( F i g . 3 )。
二形性変換は、様々な刺激により誘導され、それぞれ異なるシグ
ナル経路を介して菌糸形を誘導する (F i g . 4 )。エストロゲンは、ヒト
ではエストロゲンレセプターを介して生殖細胞の分化等を制御す
る。C. a lb i cans においては、エストロゲン結合タンパク質 (Ebp1 )を
F i g . 2 B i o f i l m f o r m a t i o n s o f ⊿ p r a 1 a n d ⊿ z r t 1
m u t a n t s t r a i n s . * P< 0 . 0 5
F i g . 3 H W P 1 e x p r e s s i o n l e v e l s
o f C a n d i d a a l b i c a n s g r o w n
w i t h 1 7 β - e s t r a d i o l . * P< 0 . 0 5
85
有 す る こ と が 知 ら れ て お り 、 17 β -
es t rad io l に よる 二形 性変 換阻 害 作用
が Ebp1 を介しているかどうかを検証
するため、 ebp 1 破壊株 (Δebp1 )を作製
し、機能の解析を行った。その結果、
Δebp1 に対する 17 β - es t r ad io l の菌糸形
成阻害作用は、野生株および EBP 1 再
導入 株に 対 する 場合 と比 較 して 減弱
が認められた ( F i g . 5 )。17β - es t r ad io l に二形性変換阻害作用が認めら
れたため、バイオフィルム形成に対する作用も併せて評価したとこ
ろ、 17β - es t rad io l はバイオフィルム形成も阻害した。また、二形性
変換に対する作用
と同様に、Δebp1 に
対 す る 17β -
es t rad io l のバイオ
フィルム形成阻害
作用にも減弱が認
められた。
Ⅲ.ミノサイクリンによるバイオフィルム形成阻害作用とその機序
の解析
抗細菌薬について、C. a lb i cans のバイオフィルム形成阻害作用を
探索したところ、ミノサイクリンにバイオフィルム形成阻害作用が
認められた。また、ミノサイクリンは二形性変換阻害作用も示した
(F i g . 6 )。ミノサイクリン添加条件における、二形性変換関連遺伝子
F i g . 5 L o s s o f I n h i b i t o r y e f f e c t o f 1 7 β - e s t r a d i o l o n
h y p h a l f o r m a t i o n a g a i n s t ⊿ e b p 1 m u t a n t s t r a i n s .
F i g . 4 Ye a s t - t o - h y p h a e t r a n s i t i o n
p a t h w a y i n C a n d i d a a l b i c a n s .
86
の発現変動を測定した結果、菌糸特異遺伝子である H WP1 , ECE1 ,
ALS3 に発現の低下が認められた。二形性変換を正に制御する転写
因子 EFG1 , CPH1 , TEC1 およびバイオフィルム制御遺伝子 BCR1 の
発現もミノサイクリン存在下で減少した。また、ミノサイクリン添
加条件では、細胞の接着性の指標である疎水性も低下した。バイオ
フィルムを覆う細胞外マトリックスの構成成分である β1 , 3 -g lu can
の上清中の濃度を測定したところ、ミノサイクリン添加条件では非
添加条件と比較して低下しており、マトリックスの産生量にも影響
していると考えられた。本研究でバイオフィルム形成阻害作用が認
められた 5 μg/m L は、通常のミノサイクリンの点滴静注(血中濃度
約 4 μg/m L)では
達 成 で き な い 。
薬 剤 含 有 カ テ ー
テ ル の 積 極 的 な
使 用 が 、 バ イ オ
フ ィ ル ム 感 染 症
の 克 服 に つ な が
る 可 能 性 が あ る
と考えられた。
以上、本研究では、PRA1 および ZRT 1 がバイオフィルム形成に関
与する遺伝子であることを見出した。また、両遺伝子は亜鉛の恒常
性を介してバイオフィルム形成を制御していると考えられた( Fi g .
7)。更に、17β - es t rad io l に二形性変換抑制作用があることを見出し、
その作用は Ebp1 を介したものであることを明らかにした。これに
F i g . 6 E f f e c t s o f m i n o c y c l i n e a n d t e t r a c y c l i n e o n h y p h a l
f o r m a t i o n i n C a n d i d a a l b i c a n s .
87
より、Ebp1 を介する新規二形性変換経路の存在が示唆された( Fi g .
7)。また、抗細菌薬であるミノサイクリンに C. a lb i ca ns のバイオフ
ィルム形成阻害作用を見出した。その作用は、菌糸形成の抑制、接
着能の低下、マトリックス産生
の減 少を 介し た もの であ ると
推測された( Fi g . 7)。
本 研 究 の 結 果 か ら 、 C.
a lb i cans の バ イ オ フ ィ ル ム 形
成に 関与 する い くつ かの 因子
の存在を明らかにした。今後、
難 治 な バ イ オ フィ ル ム 感 染 症
の制御法開発を目指したい。
≪参考文献≫
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*
F i g . 7 D i a g r a m o f s p e c u l a t e d p a t h w a y
r e l a t e d t o b i o f i l m f o r m a t i o n o f C a n d i d a
a l b i c a n s .
88
謝辞
本研究の遂行ならびに本論文の作成にあたり、終始ご指導および
ご激励を賜りました本学微生物学研究室 杉田 隆 教授に謹んで拝
謝いたします。卒業研究生として配属した頃より、叱咤激励しなが
ら辛抱強くご指導頂き、博士論文の作成までお導き頂いたことに厚
く御礼申し上げます。
本論文の作成にあたり、貴重なご助言、ご指摘を賜りました本学
感染制御学研究室 池田 玲子 教授、ならびに本学生体分子学研究
室 長浜 正巳 教授に拝謝いたします。
遺伝子破壊実験用の菌株およびプラスミドをご提供くださいま
した元・国立感染症研究所生物活性物質部第一室 新見 昌一室長に
深く感謝いたします。
ミノサイクリンによるバイオフィルム形成阻害作用の研究にお
いて、テトラサイクリン系抗菌薬の構造相関についてご懇切なるご
教授を頂きました本学医薬分子設計学研究室 高取 和彦 准教授に
深謝いたします。
本研究を進めるにあたり、多くの示唆を頂きました本学感染制御
学研究室 市川 智恵 講師、ならびに本学微生物学研究室 張 音実
博士に心より感謝いたします。
本研究遂行にご協力を頂きました本学微生物学研究室 大学院生
ならびに卒業研究生の皆様に感謝いたします。
89
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