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Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types ...

Date post: 25-Dec-2021
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Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types Based on the Frequency of O2O Behaviors, and Suggestions to Motivate Consumers from Online to Offline Shopping Kazuo WATABE †1 Abstract The objectives of this research are to compare and analyze the consciousness and behaviors of two consumer types: Online-to-Offline (O2O)-type consumers who research goods and services online but make purchases offline (i.e., at physical stores) and N2N- type consumers who both research and make purchases online (i.e., at online shops). Thereafter, suggestions are made for inducing consumers to offline shopping. To achieve these objectives, six hypotheses on the differences between the two consumer types were proposed and a consumer research was undertaken to test these hypotheses. Sample data of 600 participants were taken with an even dispersion in age and gender. From the test results, the authors found that O2O-type consumers are more interested in goods and services, collect information on goods and services, and send information more often than N2N-type consumers. The authors also found that the O2O-type consumer uses a smart phone or a mobile phone for shopping information research more frequently. Furthermore, by constructing a purchasing process model using structural equation modeling (SEM), the authors found that the model proceeds as interest, attention, search, action and share (IASAS), with a stronger impact of smart phones on consumers who purchase goods and services offline. Lastly, based on the test results of the hypotheses and the SEM model, some helpful suggestions are offered to motivate consumers away from online shopping to offline shopping; for example, by making it possible to have in-store comparisons of similar items or by having a large stock for consumers who would like to take and test them at home. Key words: Online-to-Offline (O2O), electronic commerce, shopping, statistical analysis, purchase process model †1 Tokyo City University Received: May 25, 2017 Accepted: May 1, 2018 61 Vol. 69 No. 22018J Jpn Ind Manage Assoc 69, 6176, 2018 Original Paper
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Page 1: Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types ...

Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types

Based on the Frequency of O2O Behaviors,

and Suggestions to Motivate Consumers from Online to Offline Shopping

Kazuo WATABE †1

Abstract

The objectives of this research are to compare and analyze the consciousness and behaviors of two consumer types: Online-to-Offline (O2O)-type consumers who research goods and services online but make purchases offline (i.e., at physical stores) and N2N-type consumers who both research and make purchases online (i.e., at online shops). Thereafter, suggestions are made for inducing consumers to offline shopping. To achieve these objectives, six hypotheses on the differences between the two consumer types were proposed and a consumer research was undertaken to test these hypotheses. Sample data of 600 participants were taken with an even dispersion in age and gender. From the test results, the authors found that O2O-type consumers are more interested in goods and services, collect information on goods and services, and send information more often than N2N-type consumers. The authors also found that the O2O-type consumer uses a smart phone or a mobile phone for shopping information research more frequently. Furthermore, by constructing a purchasing process model using structural equation modeling (SEM), the authors found that the model proceeds as interest, attention, search, action and share (IASAS), with a stronger impact of smart phones on consumers who purchase goods and services offline. Lastly, based on the test results of the hypotheses and the SEM model, some helpful suggestions are offered to motivate consumers away from online shopping to offline shopping; for example, by making it possible to have in-store comparisons of similar items or by having a large stock for consumers who would like to take and test them at home.

Key words: Online-to-Offline (O2O), electronic commerce, shopping, statistical analysis, purchase process model

†1 Tokyo City University Received: May 25, 2017 Accepted: May 1, 2018

61Vol. 69 No. 2(2018)

J Jpn Ind Manage Assoc 69, 61─76, 2018Original Paper

Page 2: Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types ...

O2O行動にもとづいた 2つの消費者タイプの比較分析とモデル化, および実店舗への誘導策の実証的提案

渡部 和雄†1

本研究はネットで情報を得てから主に実店舗で購入する O2O(Online to Offline)型消費者と,ネットで情報を得てから主にネットで購入する N2N 型消費者の,意識や行動の差異を明らかにし,消費者をネットから実店舗に誘導する方策を実証的に提案することを目的とする.そのため,6つの仮説を提起し,消費者調査を行い,仮説を検証した.さらに消費者の購買プロセスを構造方

程式モデリングによりモデル化した.その結果,O2O型消費者は N2N型消費者よりも,様々な商品・サービスに関心が高く,情報収集・発信の頻度が高く,買い物にスマートフォンなどを活用

していることが明らかになった.最後に仮説検証結果と構築したモデルから実証的に,企業が消

費者を実店舗に誘導する方策を提案した.

キーワード: O2O(Online to Offline),電子商取引,ショッピング,統計分析,購買プロセスモデル

1 は じ め に

O2O (Online to Offline)とは,消費者がインターネットを利用して商品・サービスに関する情報を収集

し,実店舗で購入する行動である.野村総研によれ

ば,O2Oの国内市場規模は2011年度以降年率10%以上の成長を続け,2017年度には50兆円を超えたものと推測される非常に重要な市場である[1].O2Oを促進してより多くの消費者をネットから実店舗に誘導

することにより,実店舗の活性化と売上増大が期待

される.また,ネットショップと実店舗の相乗効果

を期待できる.例えば,衣類などファッション関連

商品を製造・販売するユナイテッドアローズでは,

ネットと実店舗を併用する顧客の年間平均購入金額

は,実店舗だけを利用する顧客の2.9倍に達すると報告されている[2, p.147].そのため,実店舗を持つ企業にとっては,ネットを利用する消費者を自社の店

舗に誘導し,購入してもらうことは売上や利益の増

大のための重要な戦略の一つとなる.

一般に,消費者が情報を得るメディアは大きく分

けて,テレビや新聞,雑誌,クチコミ,実店舗など

実社会(ネット以外)での情報伝達媒体であるリア

ルメディアと,検索エンジンやWebページ,メールマガジン,SNS,価格比較サイトなどネットを利用した情報伝達媒体であるネットメディアの2種類がある.消費者が商品・サービスを購入する場は大きく

分けて,実店舗と,ネット上に存在するネット店舗

(ネットショップやネットショッピングモール,ネ

ットオークションサイトなど)がある.

図1に消費者が買い物情報を収集するメディアや商品・サービスを購入する店舗との相互関係を示す.

この関係は次のように①から④に分類できる.

図1 情報収集メディアと購入店舗の関係([3]を元に作成)

①R2R(Real media to Retail store)(実店舗購入):消費者が前述のリアルメディアで商品情報を得て,

実店舗で購入すること.

②N2N(Network media to Network store)(ネット購入):消費者が前述のネットメディアで商品情報

を得て,ネット店舗で購入すること.

③R2N (Real media to Network store):消費者が主にリアルメディアで商品・サービスの存在を知ったり,

実店舗で商品・サービスを確かめたりしてから,

†1 東京都市大学 受付: 2017年 5月 25日,再受付(2回) 受理: 2018年 5月 1日

日本経営工学会論文誌62

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ネット店舗で購入すること. ④O2OまたはN2R(Network media to Retail store):消費者がネットメディアで商品情報を得たり,割引ク

ーポンやポイントを得たりして,実店舗で購入す

ること.なお,この行動は上記①~③の呼称方式

に従えばN2Rとするべきであろうが,本論文では一般に広まってきた用語であるO2Oを使う. 上記以外に,同じ商品を繰り返し購入する場合の

ように,さらに情報収集することなく購入すること

もあるが,本研究の主たる対象とはしない. 渡部ら[4]は,ネットメディアから商品・サービス

情報を得て実店舗で購入するO2O型消費者は,ネットからあまり商品・サービス情報を得ずに実店舗で

購入するR2R型消費者よりも,各種商品・サービスへの関心が高く,実店舗で購入する可能性が高く,

より頻繁に情報発信すると報告している. これを受けて筆者らはさらに,ネットから商品・

サービスに関する情報を得て,主にネットで購入す

るN2N型消費者と,同じようにネットから商品・サービスに関する情報を得ながらネットではなく実店

舗に行ってまでして購入するO2O型消費者とで,買い物に対する意識や行動の違いを調査,分析したい

と考えた.そして,O2O型消費者の特徴を明らかにすることにより,より多くのネットで情報収集する

消費者を,ネットと厳しい競争をしている実店舗に

誘導することもできるのではないかと考えた. そこで,本研究の目的は,まずO2O型消費者と

N2N型消費者の買い物に対する意識や行動の差異を明らかにし,次にO2O型消費者の購買プロセスモデルを構築する.そして,これらの分析から,企業が

ネットで情報収集する消費者を実店舗に誘導する方

策を実証的に提案することとする.

2 研 究 手 順

上記の研究目的を果たすため,次の手順で研究を

進める. ① 関連した先行研究や各種関連調査の結果について調べて,現状を把握する.

② 先行研究などを参考に,消費者のネットや実店舗での買い物や情報収集・発信などに対する意識や

行動についての仮説を設定する. ③ 仮説を検証するための質問項目を定めて,消費者調査を実施する.

④ 消費者調査から得られた結果を統計分析し,仮説を検証する.

⑤ さらに仮説を統合して,ネットでの情報収集などが実店舗での購入に結びついていく因果関係を明

らかにするために,構造方程式モデリングによる

モデルを構築する. ⑥ 仮説検証結果および構築したモデルから実証的に,ネットから情報を得る消費者を実店舗に誘導する

方策を提案する.

3 先 行 研 究 概 観

3.1 クリック&モルタルなどの実践的な研究 ネットから実店舗への顧客誘導について,実践面

では CDや DVDのレンタルや販売で知られるTSUTAYAは,登録者の携帯電話にメールマガジンやオンラインクーポンを送って実店舗に誘導する,ク

リック&モルタル戦略に早くから注目していた.そ

して,1999年にはネットで情報収集し,実店舗で購入する,ネットと実店舗の相乗効果を生み出すシス

テムを実用化した[5].Saeedら[6]は,ネットと実店舗の運営を連携させて相乗効果を狙ったクリック&

モルタル戦略は,顧客の利便性を向上させ,企業と

顧客の関係を醸成するとした.Chowdhury & Nosa-ka[7]はクリック&モルタルの成功要因を分析し,充実した情報,Webページの利便性,サービスの質,信頼性などを挙げた.伊沢[8]は早くからクリック&モルタルにおけるモバイルの重要性に着目し,携帯

電話の活用により優良顧客の囲い込みが可能になる

と述べた.平野[9]は企業がクリック&モルタル化するための課題を検討した.クリック&モルタル企業

は情報技術への依存度が高いことから,システムを

使いこなす組織能力の必要性を説いた.

3.2 消費者調査やモデル化にもとづくネット販売と実店舗販売の比較などの研究 消費者調査の結果にもとづいてネット販売と実店

舗販売の特徴を比較したり,販売促進方策を提案し

たりする研究も多い.ChiangとDholakia[10]は消費者調査により,消費者がネットショップを選ぶ理由は

主として利便性と商品タイプ(探索財か,経験財

か)であることを示した.また,消費者は実店舗で

の買い物が不便なほどネットで購入したくなり,ま

た,探索財の方が経験財よりもネットで購入したく

なることを示した.DijkとMinocha[11]は,消費者はよくオンラインとオフラインを並行して使い,頻繁

に行き来していることを示した.ZhangとWedel[12]は特定商品の購入経験がある消費者へはオンライン

の販売促進が利益を上げやすく,購入経験がない消

費者にはオフラインの販売促進が良いことを示した.

渡邉ら[13]は質問紙調査により店舗販売とネット販売はそれぞれのデメリットを補完し合う関係であるこ

63Vol. 69 No. 2(2018)

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とを明らかにし,クリック&モルタルの有効性を示

唆した.Pauwelsら[14]はWebページを高頻度で見る顧客は実店舗での売上が大きいこと,また渡邊らと

同様にネット販売と実店舗販売は補完関係にあるこ

とを示唆した. 消費者行動をモデル化して,そのモデルにもとづ

いて論じる研究もある.Browneら[15]は消費者がネット販売と実店舗販売のどちらを選ぶかについて,

モデルを作り,若年層の消費者を調査して検証した.

その結果,消費者はまずネットを使って商品情報を

得るなど,ネットは消費プロセスを変えたこと,ま

た,ネット販売は時間節約や無制限の在庫などの利

便性を付加価値として提供する必要があることを示

した.さらに,企業のネットショップは事前に品揃

えを確認したり,商品の仕様や価格を比較したりで

きるので,実店舗の販売に良い影響を与えているこ

とも示した.Jinら[16]はオフラインとオンラインでの買い物について消費者の満足度をモデル化した.

その結果,オフラインでの企業の評判と来店満足度

が,オンラインでの来店満足度に影響することを示

した.日本でも研究者や企業が比較的早くからネッ

トと実店舗の連携に注目していた.月ヶ瀬と黒須[17]は実店舗,カタログ通販,ネットショップにおける

消費者の購買行動パターンを分類し,客の購買行動

を観察して購買行動のモデル化を行った.

3.3 O2O(Online to Offline)の研究 スマートフォンの急速な利用者増加やビッグデー

タへの関心の高まりなどにより,クリック&モルタ

ルはSNSやGPS,ビッグデータなどを活用し,ネットと実店舗の連携を深めたO2Oへと変貌していく.日本では企業が市場においてO2Oの実験や実践を行う事例が多く,O2Oのノウハウが企業に蓄積されてきている.雨宮ら[18]は事業会社がO2Oを成功させるには,実店舗とWebページを結ぶ組織体制,データ分析とデータ活用を結びつける人材,誘導先の実店舗

を魅力的にする仕組みが必要であると報告した.此

本[19]は資生堂の事例を提示し,O2Oはネットと実店舗の双方を連携させて,大量に蓄積されるデータを

活用して,新しい顧客を生み出すビジネスモデル改

革であると指摘した.小林と原田[20]は商品を実店舗で見てからネットで購入する,いわゆるショールー

ミングに対抗して,実店舗で顧客と店員がECサイトを閲覧しながらコミュニケーションを取る,新しい

セールススタイルの実現法を述べた.坂田 [21]はFacebookを利用した企業によるマーケティング戦略を考察し,購買前,購買中,購買後に対応した戦略

を示し,2つ以上を同時に採用するマルチ戦略を提唱した. 消費者調査にもとづくO2Oによる販売促進の研究

も発表されている.Phangら[22]は中国市場においてのO2Oの鍵はネットと実店舗の両方で消費者の注意を引くことと購入を促すこととし,それはバナー広

告やデジタルクーポンの管理などITを使った販売促進によりなされるとしている.Linら[23]はTheory of Reasoned Action (TRA)にもとづいて,消費者のネットと実店舗での購入傾向を分析した.その結果,

O2Oにはネットでの情報入手の容易さ,ネットでの情報検索努力,実店舗購入の容易さの3つの要因が影響することを示した.橋口ら[24]はLINEの利用者を調査し,ポイントサービスやキャンペーンなどへの

関心が高い消費者は低い消費者よりも,実店舗につ

いての広告への関心が高くなることを示した.渡部

ら[4]は消費者調査と統計分析により,ネットで商品情報を閲覧して店舗で購入する消費者は店舗だけを

利用する消費者よりも,情報の受発信を頻繁に行い,

店舗で購入する可能性も高いことを示した. 上述のように,海外ではクリック&モルタルや

O2Oの効果,ネットショップや実店舗の選択理由,オンラインとオフラインでの販売促進効果や買い物

への満足度,O2Oが利用される要因などについての研究が見られる.国内ではクリック&モルタルと

O2Oについて,主として商品・サービスの供給者側の視点で研究と実践がなされてきた.しかし,海外

でも国内でも,消費者のO2Oに対する意識や行動を調査し,消費者特性により分類した上で分析とモデ

ル化を行い,消費者をネットから実店舗に誘導する

方策までも実証的に示す,本研究の狙いとする研究

はほとんどなされていない.

4 消 費 者 の 分 類 と 仮 説 提 起

4.1 消費者の分類 第1節で述べたように,消費者の消費の際の行動を

もとに,消費者をO2O型消費者とN2N型消費者の2種類に分類し,その意識や行動の差異を調査,分析す

る.ここで,本論文におけるO2O型消費者とN2N型消費者を次のように定義しておく. ・O2O型消費者 一定以上の頻度で,ネットの買い物情報などを調

べて実店舗で購入する行動(O2O型消費行動)を取る消費者.なお,O2O型消費行動の具体例は後ほど述べる. ・N2N型消費者 一定以上の頻度で,ネットの買い物情報などを調

日本経営工学会論文誌64

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べてネットで購入する行動(N2N型消費行動)を取る消費者.N2N型消費行動の具体例は後ほど述べる.

4.2 仮説提起 上述の両消費者タイプの特徴を明らかにして,実

店舗への誘導につなげたい.ここではAISAS購買プロセスを軸にして,両者を比較,分析するための仮

説を設定する.ここでAISAS購買プロセスとは,近年の情報ネットワーク時代に対応して提案された消

費者の購買プロセスである[2], [25], [26].このモデルによると消費者は,①まずネットなどで様々な情報

に接触して注意を引かれる(Attention)ことで,②商品・サービスに対する関心(Interest)が高まり,③商品・サービスに関する情報を収集し(Search),④実店舗に行って購入したり,ネットで購入したりして

(Action),⑤購入した商品・サービスについての印象などの情報を発信する(Share)とされている.

4.1項で示したO2O型消費者とN2N型消費者は共にネットで情報収集する.中でもO2O型消費者はネットと実店舗を行き来して,商品・サービスに関する

様々な情報を得て,高頻度で実店舗で購入する,活

発な消費者だと考えられる.一方,N2N型消費者はネットで買い物情報などを調べて,主にネット店舗

で購入する者である.両者にはネットを利用して情

報収集するという共通点があるが,主に実店舗で購

入するかネット店舗で購入するかという相違点があ

る.本論文ではより具体的に,両者の共通点と相違

点を明らかにしたい.そこで,上述のAISAS購買プロセスに沿って,次のように仮説1~4を提起する.ここで,機器とはパソコンやスマートフォン・携帯

電話を指し,ネットサービスとは検索エンジン,

Webページ,電子メール,SNSなどを指す.なお,AISAS購買プロセスのActionについてはO2O型消費者がN2N型消費者よりも高い頻度で実店舗で購入することは自明なので,仮説としない. 仮説1(Attention) O2O型消費者はN2N型消費者より

も,機器やネットサービスを利用して情報収集

する頻度が高い.

仮説2(Interest) O2O型消費者はN2N型消費者よりも,

商品・サービスへの関心が高い.

仮説3(Search) O2O型消費者はN2N型消費者よりも,

ネットサービスを利用して買い物情報を収集す

る頻度が高い.

仮説4(Share) O2O型消費者はN2N型消費者よりも,

機器やネットサービスを利用して情報発信する

頻度が高い.

従来は,特に仮説2で示すような多様な商品・サー

ビスに対する関心の違いや,仮説4で示す情報発信頻度の違いを調べた研究はほとんどないと考えている. さらに,AISAS購買プロセス以外にも,頻繁に実

店舗を訪れるO2O型消費者と,あまり訪れないN2N型消費者では,実店舗に対して抱いている意識や実

店舗で購入する理由が異なる可能性があるため,次

の仮説を設定する. 仮説5(実店舗の利点) O2O型消費者とN2N型消費者

とは,実店舗で購入する主な理由が異なる.

スマートフォンや携帯電話は,店頭で実際に商品

を見ながら情報検索したり,テレビや新聞,雑誌を

見ていて気になった商品・サービスがあればすぐに

調べてみたりするなど,気軽に商品情報を検索する

のに便利である.仮説2で提起したように,もしO2O

型消費者の方が商品・サービスへの関心が高いとし

たら,O2O型消費者はN2N型消費者よりもスマートフ

ォンや携帯電話を頻繁に買い物に利用するのではな

いかと考えた.そこで,仮説6を提起する.

仮説6(スマホ・携帯の用途) O2O型消費者はN2N型

消費者よりも,高い頻度でスマートフォンまた

は携帯電話を買い物に利用する.

5 消費者調査と本研究における消費者の分類

5.1 消費者調査の概要 第2節に述べた研究手順の第3ステップとして,消

費者調査を行った.4.2項で提起した仮説1~6を検証するための質問項目を用意し,インターネット調査

業者に調査を依頼した(注1).

表1 回答者の属性概要

サンプル数 比率(%)男性 300 50.0%女性 300 50.0%20歳代 120 20.0%30歳代 120 20.0%40歳代 120 20.0%50歳代 120 20.0%60歳代 120 20.0%東京都 209 34.8%神奈川県 149 24.8%

埼玉県,千葉県 181 30.2%北関東3県 61 10.2%

会社員・公務員 221 36.8%経営者・自営業 57 9.5%

パート・アルバイト 101 16.8%専業主婦・主夫 122 20.3%無職,学生 99 16.5%

職業

平均年齢 45.0

回答者全体

性別

年齢5層

居住地域

65Vol. 69 No. 2(2018)

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質問紙調査はまず,依頼した業者の抱える100万人ほどのパネルから関東地方に居住する20代から60代の男女,約7,000人をランダムに選び,回答を依頼する電子メールを送付した.次に,メールに埋め込ま

れたURLから質問が掲載されたWebページにアクセスし,回答してもらった.回収数は2,670(回収率約38%)だった.得られた回答からサンプル割付数(性別と年齢層5層の計10セルに対して均等に60ずつとした)に合うようにランダムにサンプル抽出を行

い,最終的に600サンプルを得た.調査実施時期は2016年2月である.表1に回答者の属性概要を示す.

5.2 質問項目の概要 主に以下のような質問を行い,回答を得た.なお,

対応する質問項目,回答などはそれぞれ表や図にま

とめる. (1)回答者の属性(5問)(表1) 性別,年齢(5層),居住地域(都県レベル),職業(5種),世帯年収(100万円未満から1500万円以上まで13段階)

(2)機器やネットサービス別情報収集頻度(7問)(表4),情報発信頻度(5問)(表6) パソコン,スマートフォンや携帯電話,検索エン

ジン,Webページ,電子メール,SNSなどでの(一般的な)情報収集頻度および情報発信頻度

(3)買い物情報の収集頻度(4問)(表5) ネットサービスを利用した商品・サービスなど買

い物に関する情報の収集頻度 (4)各種(20種)の商品・サービスに対する関心の高さ(20問)(図2)

(5)実店舗で購入する理由(6問)(表7),実店舗やネットでの購入頻度(2問)(表3)

(6)スマートフォンまたは携帯電話を買い物に利用する頻度(6問)(表8)

(7)5.3項で説明するO2O型消費行動やN2N型消費行動を取る頻度(10問)(5.3項①~⑩) 上記で,行動の頻度については回数ではなく,消

費者が回答しやすいように,1週間または1か月間に行うおおよその日数を尋ねた.その他の質問につい

ては,7非常に当てはまる~1まったく当てはまらない,あるいは,7非常にそう思う~1まったくそう思わない,から7件法で選択回答してもらった.

5.3 本研究における消費者の分類と定義 本研究では消費者を購買行動にもとづいて次のA~Cの3種類に分類する. (A) O2O型消費者

ネットで情報を見たり調べたりして,実店舗で購

入するO2O型消費行動を取る消費者である.本研究では次に示すO2O型消費行動(情報通信白書 [27, pp.187-194]などからO2O型消費行動の典型例と考えられる)①~⑤のいずれかを1か月に1日以上の頻度で取る消費者とする.ここで,「1か月に1日」を境界とした理由は,実店舗を持つ多くの企業の参考と

するために,なるべく多くの消費者を分析対象とし

たいこと,2つのグループを比較,分析するにはそれぞれある程度のサンプル数が必要なこと,頻度の分

布を見て切りの良い閾値を選んだことなどである. さらに,ある程度買い物する消費者を分析対象と

したいため,実店舗で週1日以上買い物する者(全体の80%)であることも分析対象とする条件とした. O2O型消費行動 ①ネットの広告を見て,実店舗へ行って購入する ②ネットで商品・サービスの情報を調べて,実店舗

へ行って購入する ③ネットでポイントを得て,そのポイントを実店舗

で利用する ④ネットで割引クーポンを得て,そのクーポンを実

店舗で利用する ⑤スマートフォンや携帯電話で情報を見て,実店舗

へ行って購入する (B) N2N型消費者 ネットで情報を見たり調べたりして,ネットで購

入するN2N型消費行動を取る消費者である.具体的には,次に示すN2N型消費行動(上述のO2O型消費行動と対応させた,N2N型消費行動の典型例と考える)⑥~⑩のいずれかを(上述のO2O型消費行動の頻度に合わせて)1か月に1日以上の頻度で取る消費者とする.「1か月に1日」を境界とした理由は前述の通りである. また,一般的に消費者がネットで購入する頻度は

実店舗より低いため,ネットでの購入頻度は週1日以上ではなく,月1日以上(全体の75%)を分析対象とする条件とした. N2N型消費行動 ⑥ネットの広告を見て,ネットで購入する ⑦ネットで商品・サービスの情報を調べて,ネット

で購入する ⑧ネットでポイントを得て,そのポイントをネット

で利用する ⑨ネットで割引クーポンを得て,そのクーポンをネ

ットで利用する ⑩スマートフォンや携帯電話で情報を見て,ネット

で購入する

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(C) 上記のいずれにも属さない消費者 O2O型消費行動,N2N型消費行動の頻度がいずれも1か月に1日未満と低い消費者である.本論文では分析対象とはしない.

5.1項に記述した消費者調査結果をもとに消費者を上の(A)~(C)に示したように3分類した結果,サンプル数と割合は表2のようになった.

O2O型消費者もN2N型消費者もネットで情報を見たり調べたりすることは共通だが,前者は実店舗で

購入頻度が高いことに対し,後者は実店舗での購入

頻度が相対的に低いことが両者の大きな相違点であ

る.本研究では,これらO2O型消費者とN2N型消費者の商品・サービス購入に対する意識,行動を比較,

分析することにより,まずはそれぞれのタイプの消

費者の特徴を抽出したいと考えた. なお,これらはいずれも比較,分析に十分なサン

プル数を有している.これらの消費者を合わせると,

調査した消費者の70%強を占めるので,両消費者タイプをターゲットとして実店舗への誘導策を提案す

ることは意義深いと考える. 表2 O2O行動,N2N行動による消費者の3分類 分類 消費者類型 サンプル数 割合

A O2O型消費者 270 45.0%B N2N型消費者 153 25.5%C いずれでもない 177 29.5%

合計 600 100.0%

5.4 O2O 型消費者と N2N 型消費者の属性などの比較 表3にO2O型消費者とN2N型消費者の属性などの比

較と,比率の差の検定(カイ2乗検定)や母平均の差の検定結果を示す.特徴として,O2O型消費者はN2N型消費者よりも平均年齢が4.5歳ほど低く,職業は会社員・公務員の比率が特に高い.O2O型消費者は世帯年収の中央値が若干高いが,5%水準で有意差はない.また,性別,居住地域にも5%水準で有意差は見られなかった. 分類法から自明であるが,表3下部に示すように,

O2O型消費者はN2N型消費者よりもかなり高い頻度でO2O型消費行動(表3には5.3項の①~⑤を各人が行う頻度を合計したものの平均値を示した)を取り,

実店舗で購入する(いずれも1%水準で有意差あり,p<0.01).なお,O2O型消費者は高い頻度でN2N型消費行動(表3には5.3項の⑥~⑩を各人が行う頻度を合計したものの平均値を示した)も取り(1%水準

で有意差あり),ネットでの購入頻度はN2N型消費者と同等である.

表3 O2O型消費者とN2N型消費者の属性などの差異

サンプル数

割合サンプル数

割合

男性 136 32.2% 78 18.4%女性 134 31.7% 75 17.7%20歳代 55 13.0% 25 5.9%30歳代 59 13.9% 22 5.2%40歳代 57 13.5% 29 6.9%50歳代 62 14.7% 33 7.8%60歳代 37 8.7% 44 10.4%

0.001東京都 94 22.2% 48 11.3%神奈川県 60 14.2% 45 10.6%

埼玉県,千葉県 86 20.3% 46 10.9%北関東 30 7.1% 14 3.3%

会社員・公務員 109 25.8% 48 11.3%経営者・自営業 24 5.7% 24 5.7%

パート・アルバイト 48 11.3% 18 4.3%専業主婦・主夫 53 12.5% 32 7.6%無職,学生 36 8.5% 31 7.3%

0.0570.0000.0000.0000.682

43.7 48.2

O2O型消費行動頻度(日/月)N2N型消費行動頻度(日/月)

7.87.7

1.14.7

実店舗での購入頻度(日/月) 14.92.8

9.92.7ネットでの購入頻度(日/月)

検定有意確率

0.904

世帯年収(中央値) 600~700万円 500~600万円

性別

O2O型消費者 N2N型消費者

職業 0.022

年齢5層

0.004

居住地域

0.417

平均年齢

注)検定有意確率で,性別,年齢5層,居住地域,職業は

カイ2乗検定,その他は母平均の差の検定による有意 確率を示す.

6 仮 説 検 証

6.1 仮説 1の検証 仮説1(Attention) O2O型消費者はN2N型消費者より

も,機器やネットサービスを利用して情報収集

する頻度が高い.

O2O型消費者とN2N型消費者で,情報収集するための主な機器(パソコン,スマートフォンなど)や

ネットサービス(検索エンジン,Webページ,電子メールなど)について,利用頻度の母平均の差の検

定を行った(表4)(注2). 情報収集頻度の平均値を見ると,両消費者タイプ

とも熱心にネットで情報収集している.しかし,ス

マートフォン・携帯電話やWebページ,SNSではO2O型消費者の平均利用頻度が1%水準で(p<0.01),検索エンジンでは5%水準で有意に高かった(p<0.05).一方で,パソコン,電子メール,ネットショップでは

5%水準で有意差がなかった(p>0.05).その結果,仮説1は,機器やネットサービスにより成り立つものも

67Vol. 69 No. 2(2018)

Page 8: Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types ...

あれば,成り立つとは言えないものもある.ただし,

両消費者タイプともパソコンや検索エンジンは非常

に利用頻度が高いこと,O2O型消費者を見るとスマートフォン・携帯電話,Webページ,電子メールなどの利用頻度も高いことが判明した.

表4 情報収集頻度についてO2O型消費者と N2N型消費者の母平均の差の検定結果

項目番号

情報収集機器,ネットサービス

消費者類型 度数 平均値標準偏差

平均値の差

t 値自由度

有意確率(両側)

O2O型消費者 270 21.9 10.1N2N型消費者 153 23.0 8.7O2O型消費者 270 16.5 12.2N2N型消費者 153 10.9 12.0O2O型消費者 270 22.2 8.5N2N型消費者 153 19.9 10.1O2O型消費者 270 17.9 10.5N2N型消費者 153 14.2 11.3O2O型消費者 270 15.8 12.4N2N型消費者 153 15.3 12.2O2O型消費者 270 11.2 9.4N2N型消費者 153 10.4 9.5O2O型消費者 270 11.1 12.2N2N型消費者 153 5.9 10.0

5

7

1

2

3

4

6

0.5

0.5

5.6

パソコン

検索エンジン

Webページ

ネットショップ

電子メール

SNS

スマートフォン・携帯電話

-1.0

2.3

3.7

0.8

0.000

4.545

355

275

299

421

421

369

421

-1.085

2.344

3.391

0.812

0.423

4.753

0.000

0.279

0.020

0.001

0.417

0.674

注)「平均値」は1か月あたりの情報収集日数の平均値

6.2 仮説 2の検証 仮説2(Interest) O2O型消費者はN2N型消費者よりも,

商品・サービスへの関心が高い.

消費者調査の回答者には20種類の商品・サービスそれぞれについて,関心の高さを「7非常に関心がある」から「1まったく関心がない」,までの7件法で尋ねた.なお,この20種類は情報通信白書[27, p189]より,実店舗やネットでよく購入される商品・サー

ビス14種類に,さらに多様化のために筆者らが旅行・レジャー,マンガ・アニメ・ゲーム,ブランド

バッグなど6種類を加えたものである. 商品・サービスごとに両消費者タイプの関心の高

さの平均値を散布図に表したものを図2に示す.調査した20種類すべての商品・サービスが縦軸・横軸の同値点を結んだ45度線より上に位置し,平均的に見て,O2O型消費者はN2N型消費者よりも商品・サービスに関心が高いことがわかる.ここで母平均の差

を検定した結果,一部(紙の書籍,パソコン)を除

いた18種類の商品・サービスについては5%水準で有意差が認められた.これにより,仮説2はおおむね成り立つと言えよう.

図2より,O2O型消費者は,食品や雑貨・日用品などの最寄品への関心が非常に高い.また,衣類,パ

ソコン,小型家電,スマートフォンなどの買回品へ

の関心も高い.

図2 O2O型消費者とN2N型消費者の各種商品・サー ビスに対する関心の高さ

注)**:1%水準で有意差あり,*:5%水準で有意差あり

6.3 仮説 3の検証 仮説3(Search) O2O型消費者はN2N型消費者よりも,

ネットサービスを利用して買い物情報を収集す

る頻度が高い.

買い物情報の収集頻度が比較的高い4つのネットサービスについて,両消費者タイプの利用頻度の母平

均の差を検定した結果を表5に示す.検索エンジンの買い物情報,価格比較サイトの買い物情報では5%水準で有意差が認められた(p<0.05)が,ネットショップの買い物情報,メールマガジンの買い物情報では5%水準で有意差が認められなかった(p>0.05).O2O型消費者はN2N型消費者よりも,検索エンジンや価格比較サイトのような,ネットショップなどよりも客観

性の高い情報を得られるサイトから買い物情報を収

集する頻度が有意に高いことがわかった.

表5 買い物情報の収集頻度についてO2O型消費者

とN2N型消費者の母平均の差の検定結果 項目番号

買い物情報収集のネットサービス

消費者類型 度数 平均値標準偏差

平均値の差

t 値自由度

有意確率(両側)

O2O型消費者 270 7.1 8.2N2N型消費者 153 5.4 7.1O2O型消費者 270 4.1 6.2N2N型消費者 153 2.8 4.7O2O型消費者 270 6.8 7.5N2N型消費者 153 5.8 6.4O2O型消費者 270 4.6 7.0N2N型消費者 153 4.1 7.1

354

358

388

421

検索エンジンの買い物情報(広告含む)

ネットショップの買い物情報(クチコミ含む)

価格比較サイトの買い物情報(クチコミ含む)

メールマガジンの買い物情報

1

3

2

4

0.025

0.173

0.019

0.441

1.7

0.9

1.3

0.6

2.250

1.365

2.359

0.771

注)「平均値」は1か月あたりの買い物情報の収集日数の 平均値

日本経営工学会論文誌68

Page 9: Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types ...

6.4 仮説 4の検証 仮説4(Share) O2O型消費者はN2N型消費者よりも,

機器やネットサービスを利用して情報発信する

頻度が高い.

消費者調査では10種類の情報発信機器・ネットサービスそれぞれについて,1か月に情報発信する頻度を尋ねた.そのうち,情報発信頻度が比較的高い5種類について,母平均の差の検定結果を表6に示す.項目番号1は家族,友人,知人などの間でのクチコミであり,最も頻度が高い.O2O型消費者はN2N型消費者よりも,パソコン,スマートフォン・携帯電話の

ような機器を利用しての情報発信も,電子メールや

SNSなどネットサービスを利用しての情報発信もすべて5%水準で有意に頻度が高い.O2O型消費者は他の消費者に対する影響力がより強いと考えられる.

主要な情報発信機器・ネットサービスについて5%水準で有意差があり,仮説4は成り立つと言える.

表6 情報発信頻度についてO2O型消費者と

N2N型消費者の母平均の差の検定結果 項目番号

情報発信機器,ネットサービス

消費者類型 度数 平均値標準偏差

平均値の差

t 値自由度

有意確率(両側)

O2O型消費者 270 8.8 10.0N2N型消費者 153 4.1 7.2O2O型消費者 270 4.6 8.8N2N型消費者 153 2.7 7.0O2O型消費者 270 4.9 8.7N2N型消費者 153 1.8 5.2O2O型消費者 270 4.6 8.8N2N型消費者 153 2.5 6.3O2O型消費者 270 4.5 8.7N2N型消費者 153 1.7 5.1

1

2

3

4

5

4.6

1.9

3.1

2.1

2.9

クチコミ

パソコン

スマートフォン・携帯電話

電子メール

SNS

397

375

419

397

420

5.507

2.467

4.651

2.839

4.267

0.000

0.014

0.000

0.005

0.000

注)「平均値」は1か月あたりの情報発信日数の平均値

6.5 仮説 5の検証 仮説5(実店舗の利点) O2O型消費者とN2N型消費者

とは,実店舗で購入する主な理由が異なる.

実店舗の強みは何か,どのように強みを発揮する

べきかを考える手がかりとして,両消費者タイプに

実店舗のどのような点が高く評価されているかを知

りたい.調査対象の消費者には情報通信白書 [27, p191]より実店舗で買い物する理由を6つ挙げて,それぞれ「7非常に当てはまる」から「1まったく当てはまらない」までの7件法で尋ねた.実店舗で買い物する理由について,両消費者タイプ間で母平均の差

の検定を行い,平均値の高い順に6項目を挙げた(表7).両消費者タイプで,項目1「実際の商品を見たいから」が平均値が最も高く,この項目のみ両者で

有意差が認められなかった(p>0.05).やはり商品を見て,触って,場合によっては試しに使ってみること

もできることが実店舗の最大の強みと言えよう.項

目2~項目6ではいずれもO2O型消費者の平均値が有意に高く(p<0.01),O2O型消費者はN2N型消費者よりも実店舗の利点を高く評価していると言える.

表7 実店舗で購入する理由の差の検定結果

項目番号

実店舗で購入する理由

消費者タイプ 度数 平均値 標準偏差

平均値の差

t 値 自由度

有意確率(両側)

O2O型消費者 270 6.0 1.1N2N型消費者 153 5.9 1.2O2O型消費者 270 5.7 1.1N2N型消費者 153 5.4 1.2O2O型消費者 270 5.1 1.1N2N型消費者 153 4.4 1.5O2O型消費者 270 4.8 1.3N2N型消費者 153 4.2 1.4O2O型消費者 270 4.8 1.4N2N型消費者 153 3.9 1.4O2O型消費者 270 4.7 1.3N2N型消費者 153 4.0 1.4

6

1

2

3

4

5

他の商品と比較したいから

0.2

0.6

0.8

0.3

0.7

実際の商品を見たいから

実店舗のほうが信頼できるからポイントがもらえるから

すぐに商品が欲しいから

1.519

4.908

5.837

2.864

5.258

421

421

421

421

256 0.000

0.130

0.000

0.000

0.004

他の店舗と比較したいから

0.6 4.801 421 0.000

注)「平均値」は「7 非常に当てはまる」から「1 まった く当てはまらない」,の7件法による回答の平均値

6.6 仮説 6の検証 仮説6(スマホ・携帯の用途) O2O型消費者はN2N型

消費者よりも,高い頻度でスマートフォンまた

は携帯電話を買い物に利用する.

調査対象者のうちスマートフォンないしは携帯電

話利用者(O2O型消費者261人,N2N型消費者145人)には,それらをどの程度の頻度で買い物関連の

情報検索や購入に利用しているか,6つの質問でそれぞれ,「7非常に当てはまる」から「1まったく当てはまらない」までの7件法で尋ねた.スマートフォンや携帯電話を買い物に利用する頻度について,両消

費者タイプ間で母平均の差の検定を行った結果を表8に示す.

表8 スマートフォンや携帯電話を買い物に利用する

頻度の差の検定結果 項目番号

質問項目 消費者タイプ 度数 平均値標準偏差

平均値の差

t 値自由度

有意確率(両側)

O2O型消費者 261 4.1 2.2N2N型消費者 145 3.2 2.1

O2O型消費者 261 3.8 2.1

N2N型消費者 145 2.7 2.0

O2O型消費者 261 3.7 2.0

N2N型消費者 145 2.5 1.8

O2O型消費者 261 3.7 2.1

N2N型消費者 145 2.8 2.0

O2O型消費者 261 3.6 2.0

N2N型消費者 145 2.6 1.9

O2O型消費者 261 3.3 2.0N2N型消費者 145 2.6 1.9

6

1

2

3

4

5

スマートフォンや携帯電話でよく商品やサービスについて検索する

スマートフォンや携帯電話でよくネットショップや価格比較サイトを見る

スマートフォンや携帯電話でよく商品やサービスを購入する

テレビを見て気になった商品・サービスや店舗を、よくスマートフォンや携帯電話で検索する

新聞や雑誌を見て気になった商品・サービスや店舗を、よくスマートフォンや携帯電話で検索する

店頭で商品を見ながら、よくスマートフォンや携帯電話で価格や商品情報を検索する

0.9

0.9

0.8

1.1

1.0

1.2

3.915

4.091

3.790

5.085

5.027

5.848

404

404

404

404

404

404

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

0.000

注)「平均値」は1か月あたりの利用日数の平均値 表8において,6つのすべての質問について1%水準

で有意差がある(p<0.01).これから,O2O型消費者は

69Vol. 69 No. 2(2018)

Page 10: Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types ...

N2N型消費者よりもスマートフォンや携帯電話を高い頻度で買い物に利用していることがわかった.

7 構造方程式モデリングによる因果関係の実証

仮説1~6で現れた各種の要因と実店舗での購入行動を統合して,構造方程式モデリング(共分散構造

分析)によるモデルを構築することにより,購入プ

ロセスの要因間の因果関係を明らかにしたい.

7.1 因子の抽出 構造方程式モデリングを行うために,まずは因子

(潜在変数)を抽出する.そのため,仮説1~仮説6の検証に利用した質問項目などで,回答の平均値が

比較的高いものを中心に選択して,さらに5.3項のO2O型消費行動の質問項目①~⑤(AISASのActionに相当)の一部を加えて,O2O型消費者について探索的因子分析を行った(注3).なお,スマートフォンないしは携帯電話の活用についての質問項目が

あるため,O2O型消費者のうちスマートフォンないしは携帯電話を利用している261人を対象とした. その結果,表9に示すように,解釈しやすい7つの因子が抽出できた.各因子内での質問に対する回答

の一貫性(内的整合性)を表すCronbachのアルファは因子7を除いて0.7以上と良い. 各因子に対応する質問項目の内容から,次のよう

に名前を付ける.第1因子はスマートフォン・携帯電話の活用(以下略して,「スマホ・携帯の活用」

とする),第2因子は「商品・サービスへの関心I」,第3因子は「買い物情報の収集S」,第4因子は「情報発信S」,第5因子は「実店舗で購入する理由」,第6因子は「情報収集A」,第7因子は「実店舗で購入A」と解釈できる.

7.2 確認的因子分析モデル 表9に示した質問項目(変数)が7因子構造となる

ことを確かめるために,O2O型消費者について確認的因子分析を行った.本モデルの構築にあたり,GFI, CFI, RMSEAの主要3種の適合度指標の向上を重視した.表9のすべての変数を使うと適合度指標が良くなかったため,原則として各因子に対応する変数から

因子負荷量の高い順に3つを選んで,モデルに組み込んだ.ただし,変数によっては適合度指標を悪化さ

せるものもあったため,試行錯誤により適合度指標

ができるだけ良くなるように変数を選んだことから,

必ずしも因子負荷量が高い順に3つとはならなかった.

表9 探索的因子分析の結果

注)因子抽出法:反復主因子法,回転法:プロマックス法. 各質問項目の右側の数(0.947, 0.915など)は因子負荷 量である.質問項目数が非常に多いため,因子負荷量 の絶対値の最大値が0.4未満の項目は削除した.また, 因子負荷量の絶対値が0.1未満の欄は表示を抑制して, 表ができるだけ見やすくなるようにした.

7つすべての因子間に共分散を仮定したモデルで分

析したところ,モデルの適合度指標はχ 2=236.692, df=168, p<0.001, GFI=0.920, CFI=0.967, RMSEA=0.040, AIC=362.692であった.5%水準で有意でなかった5つの共分散を0としたモデルで再度分析したところ,最終的に得られた確認的因子分析モデル(図3)で,適合度指標はχ2=244.903, df=173, p<0.001, GFI=0.918,

1 2 3 4 5 6 7

1-1店頭で商品を見ながら、よくスマートフォンや携帯電話で価格や商品情報を検索する

0.947

1-2スマートフォンや携帯電話でよくネットショップや価格比較サイトを見る

0.915

1-3スマートフォンや携帯電話でよく商品やサービスについて検索する

0.913

1-4テレビを見て気になった商品・サービスや店舗を、よくスマートフォンや携帯電話で検索する

0.888

1-5新聞や雑誌を見て気になった商品・サービスや店舗を、よくスマートフォンや携帯電話で検索する

0.887 -0.101

1-6スマートフォンや携帯電話でよく商品やサービスを購入する

0.806

2-1 関心 雑貨・日用品 0.857 -0.113 0.1222-2 関心 衣類 0.130 0.774 -0.1412-3 関心 小型家電 0.565 0.1832-4 関心 食品 -0.111 0.507 0.1072-5 関心 CD/DVD/BD類 0.460 0.1002-6 関心 紙の書籍 -0.164 0.405 0.267 -0.1433-1 ネットショップの買い物情報(クチコミ含む) 0.9263-2 検索エンジンの買い物情報(広告含む) 0.7863-3 価格比較サイトの買い物情報(クチコミ含む) 0.7443-4 メールマガジンの買い物情報 -0.195 0.462 0.150 0.170 0.1754-1 情報発信 スマートフォンや携帯電話 0.724 -0.1134-2 情報発信 パソコン 0.6754-3 情報発信 電子メール 0.671 0.1224-4 情報発信 SNS -0.101 0.137 0.5514-5 情報発信 クチコミ 0.466 -0.1295-1 実店舗購買理由 すぐに商品が欲しいから 0.793 -0.1125-2 実店舗購買理由 他の商品と比較したいから -0.150 0.147 0.681 -0.1195-3 実店舗購買理由 実際の商品を見たいから -0.112 0.605 0.2395-4 実店舗購買理由 ポイントがもらえるから 0.604 -0.1705-5 実店舗購買理由 実店舗のほうが信頼できるから 0.103 -0.144 0.479 0.1726-1 情報収集 Webページ 0.115 0.7136-2 情報収集 パソコン -0.151 0.6976-3 情報収集 電子メール 0.664 0.1476-4 情報収集 検索エンジン 0.254 -0.112 0.519 -0.119

7-1スマートフォンや携帯電話で情報を見て、実店舗へ行く

0.185 0.117 0.654

7-2 ネットの広告を見て、実店舗へ行って購入する 0.545

7-3ネットでポイントを得て、そのポイントを実店舗で利用する

0.101 0.411

6.89 4.29 2.73 2.08 1.77 1.64 1.2920.9 33.9 42.1 48.4 53.8 58.8 62.70.96 0.79 0.84 0.77 0.75 0.73 0.571 2 3 4 5 6 7

1 スマホ・携帯の活用 1.00 0.23 0.15 0.14 0.24 -0.09 0.232 商品・サービスへの関心I 1.00 0.41 0.35 0.24 0.27 0.163 買い物情報の収集S 1.00 0.17 0.30 0.38 0.344 情報発信S 1.00 0.14 0.10 0.275 実店舗で購入する理由 1.00 0.29 0.326 情報収集A 1.00 0.117 実店舗で購入A 1.00

項目番号

質問項目(変数)因子

因子相関行列

固有値分散の累積(%)Cronbachのアルファ

日本経営工学会論文誌70

Page 11: Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types ...

CFI=0.965, RMSEA=0.040, AIC=360.903となった.AICの値が減少しており,モデルがよりデータに適合している.

図3 確認的因子分析モデル

(n=261, χ2=244.903, df=173, p<0.001, GFI=0.918, CFI=0.965, RMSEA=0.040, AIC=360.903)

図3で,7つの楕円で表されているのは因子(潜在

変数)である.各潜在変数に対応したそれぞれ3つの長方形は観測変数で,その潜在変数の影響を受けて

いると考える.潜在変数と観測変数を結ぶ矢印(パ

ス)の上に表示されているパス係数は,その影響の

大きさを表す.最も左の小さな円(e1~e21)は誤差変数である.潜在変数同士を結ぶ両側矢印の曲線は

共分散を表す.数値はすべて標準化されている.本

モデルで,GFI, CFIはそれぞれデータの当てはまりが良いとされる0.9,0.95以上[28]であり,RMSEAもデータの当てはまりが良いとされる0.05以下[28]となり,本モデルの適合度は非常に良好である.なお,モデ

ル構築にはAmos 23.0を使用した.

7.3 構造方程式モデリングによるモデル構築 前項の確認的因子分析モデルをもとに,O2O型消

費者が主にネットで情報を収集して実店舗で購入す

る場合について,購買プロセスの因果関係を構造方

程式モデリングによりモデル化した(図4).

図4 構造方程式モデリングによるO2O型消費者の 購買プロセスモデル

(n=261,χ2=275.887, df=181, p<0.001, GFI=0.909, CFI=0.955, RMSEA=0.045, AIC=375.887) 注)単位の影響を受けないよう,すべての変数は平均0,

分散1になるように標準化されている.**は1%水準で, *は5%水準で有意なパスである.簡単のため誤差変数 は表示を省略した.また,因子間以外のパス係数の表 示を省略したが,すべて1%水準で有意である.

本モデルは7つの因子(潜在変数)から成り,潜在

変数間を結ぶパスのうち,1つ(「5実店舗で購入する理由」から「7実店舗で購入A」)は5%水準で有意,他はすべて1%水準で有意である.モデルの適合度指標であるGFI, CFI,RMSEAはいずれも非常に良好で,本モデルはデータの当てはまりが非常に良いと言え

る. 図4では「2商品・サービスへの関心I」から「4情

報発信S」に至る,連鎖した強い因果関係を示すルートが3通りある. (1)1つ目はI→A→S→A→Sとたどるルートである.図4ではまず,①消費者は普段から特定の商品・サービスに対して関心を持っており,②ニュースや

71Vol. 69 No. 2(2018)

Page 12: Comparative Analysis and Modeling of Two Consumer Types ...

趣味など関心を持っていることについて検索エン

ジンやWebページなどを利用して普段から情報収集している.そして,③関心のある商品・サービ

スに関してさらに踏み込んで,買い物情報(例え

ば仕様,品質,特徴,価格,販売している店舗な

ど)についてネットショップや価格比較サイトな

どを利用して収集する.そして,④その行動は実

店舗での購入を強める方向に影響し,⑤最後に,

購入した商品・サービスの印象や使い勝手などの

情報をスマートフォンやパソコンを使ってクチコ

ミや電子メール,SNSなどにより発信する,というプロセスをたどる. 図 4では AISAS購買プロセスとは最初の

A(Attention)とI(Interest)の順が入れ替わっている.AISAS購買プロセスではまず広告・宣伝などにより消費者の注意を引き,それに消費者が関心を持

つという順を想定している.本研究は質問紙調査

にもとづくため,消費者の動的な状況をたどるこ

とは難しく,消費者の意識や行動の静的な因果関

係を明らかにすることが目的の一つとなる.「2商品・サービスへの関心I」は消費者がある時に広告を見て関心を持ったというよりは,既に持って

いる商品・サービスへの関心である.そして,消

費者は本人が関心を持っている商品・サービスに

ついて情報収集すると考えた.そのため,図4の因果関係では消費者の「2商品・サービスへの関心I」が起点となり,そこから「6情報収集A」と「1スマホ・携帯の活用」へのパスが引かれている.本モデルのように消費者が既に関心を持って

いる事項がある場合は,AISASではなくIASASとなることが示された.

(2)連鎖した強い因果関係を示す3通りのルートの2つ目は,図4で「2商品・サービスへの関心I」から「1スマホ・携帯の活用」と「7実店舗で購入A」を経由して,「4情報発信S」へと至るルートである.O2O型消費者は移動中や実店舗周辺,場合によっては実店舗内で商品を見ながら,スマートフ

ォンないしは携帯電話を利用して,ネットショッ

プや価格比較サイトの情報を見たり,商品・サー

ビス情報を収集したりする.このような「1スマホ・携帯の活用」は「7実店舗で購入A」を強める方向に働いている.

(3)3通りのルートの3つ目は,図4で「2商品・サービスへの関心I」から「5実店舗で購入する理由」と「7実店舗で購入A」を経由して,「4情報発信S」へと至るルートである.実店舗で販売している商

品・サービスへの関心が高ければ,実店舗で実際

の商品を見たくなったり,他の商品と比較したり,

すぐに商品が欲しくなったりして,実店舗で購入

する理由も高まる.そして,実際に実店舗で購入

する可能性も高くなることは理解できよう.

8 仮説検証結果と構築モデルの考察と,消費者のネットから実店舗への誘導策

本研究における仮説検証結果および購買プロセス

のモデル化から,直接的,実証的に導かれる,ネッ

トから実店舗への消費者誘導策を提案していく.ま

た,参考のために実証結果に関連した実例を挙げて

いく. (1)仮説1の検証結果(6.1項および表4)から,O2O型消費者,N2N型消費者ともにパソコンを使って情報収集したり,検索エンジンで情報検索したり,

Webページ,電子メール,ネットショップの情報を見るなどの頻度が高いことがわかった. パソコンで情報を見る場合,スマートフォンや

携帯電話と比較して,大画面だったり,自宅や職

場などでより高速で安定した通信が行えたりする

ことが多い.情報提供する側はその特徴を活かし

て,大きな画面で表示すると見栄えが良い画像や

通信容量が大きくてもあまり問題がない(たとえ

ばテレビCMやYouTubeのような)動画などにより商品・サービス情報を提供することができる.ま

た,GoogleやYahoo!などを使った検索結果の表示画面に広告を出すこと(リスティング広告,検索

キーワード連動広告),ネットショップで提供す

る情報を充実することにより消費者と接触する機

会を増やし,まずは消費者に商品・サービスにつ

いて知ってもらうことが重要と考えられる. 先行研究でPauwelsら[14]はWebページを高頻度

で見る顧客は実店舗での売上が大きいとした.本

論文では仮説1の検証結果から,実店舗で購入する頻度が高いO2O型消費者はN2N型消費者よりも,スマートフォンや携帯電話を利用して頻繁に情報

収集しており,Webページだけでなく,検索エンジンやSNSもより高頻度に利用していることがわかった.これらはO2O型消費者に来店を促す有効な手段となることがわかった.実例として,コン

ビニのファミリーマートは「ファミマ」でWebページを検索すると,全国の店舗で利用できる割引

券を取得できる[29].また,ドミノ・ピザ,ローソン,NTTドコモ,マクドナルド,無印良品,ヤマダ電機など,スマートフォンでよく利用されて

いるSNSを使ってクーポンやポイントなどの特典を提供して,実店舗への来店を促す企業は多い.

日本経営工学会論文誌72

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なお,N2N型消費者も電子メール,ネットショップはO2O型消費者と同様に高頻度で利用しており,広告やクーポン提供などによる実店舗への誘

導は効果が期待できる. (2)仮説2の検証結果(6.2項および図2)から,O2O型消費者はN2N型消費者よりも,調査した20種類の商品・サービスのうち18種類で有意に関心が高いことがわかった.特に図2の右上に示されている食品や雑貨・日用品をはじめとした最寄品や,衣類,

小型家電,スマートフォン,大型家電など買回品

を扱う実店舗を持ち,消費者をネットから実店舗

に誘導したい企業は仮説1や仮説3の検証結果を利用して,スマートフォンやパソコン向けに検索エ

ンジンやWebページ,電子メール,ネットショップ,SNSなどに広告を出したり,検索エンジンや価格比較サイトで買い物情報を提供したりすると,

より効果的だと考えられる. 一方,N2N型消費者の紙の書籍とパソコンに対する関心の高さはO2O型消費者と有意差がなく(図2),他にも食品や雑貨・日用品,衣類,旅行・レジャーなどに対する関心は非常に高い.仮

説3の検証結果(表5)によると,両消費者タイプでネットショップの買い物情報やメールマガジン

の買い物情報の収集頻度に有意差がなく,N2N型消費者は検索エンジンを利用して買い物情報を収

集する頻度も比較的高い.これらを合わせて考え

ると,N2N型消費者には特に上記の商品・サービスについて,ネットショップやメールマガジン,

検索エンジンを利用して商品情報が届くようにす

ると比較的高い効果が期待できると言えよう. (3)仮説3の検証結果(6.3項および表5)から,特に買い物情報に限ると,両消費者タイプともに検索エ

ンジン,ネットショップ,メールマガジンは比較

的高い頻度で収集していることがわかった.また,

O2O型消費者は検索エンジンや価格比較サイトのようなより客観性の高い情報を得られるサイトで,

有意に高頻度で買い物情報を収集していることも

わかった. 企業側から見ると,これらのネットサービスは

買い物情報の提供手段として有効である.たとえ

ば,衣類や小物を販売するユナイテッドアローズ

や市街地立地型ホームセンターの東急ハンズでは,

ネットショップのWebページで店舗ごとの在庫数がわかるサービスを提供しており,できるだけ顧

客が来店して無駄足を踏むことがないようにして

いる[2],[29]. (4)仮説4の検証結果(6.4項および表6)から,O2O型

消費者はN2N型消費者よりも高頻度で情報発信することがわかった.企業はO2O型消費者に商品を買ってもらい(情報発信力の高い者には無償で提

供してでも),その商品に関する情報を発信して

もらえれば,クチコミや電子メール,SNSを通じて商品情報が拡散され,他の消費者の購入が期待

できる.そのため,クチコミ効果やレビューサイ

トの重要性が増していると指摘される[27]. 消費者の情報発信力を活かす実例として,飲食

店経営のジロー・レストランシステムはSNSにより会員に情報提供しているが,会員が得たクーポ

ンを友人と共有して,人から人へと情報が広がる

ケースが見られるという[30].また,共同購入サイトのグルーポンでは,購入希望者を一定数以上

集めれば割引率が上がっていくため,たとえばレ

ストランのディナーの購入希望者がSNSを利用して友人に購入を勧めることで購入希望者を増やし

てくれるという. (5)仮説5の検証結果(6.5項および表7)から,O2O型消費者はN2N型消費者よりも実店舗での購入に意欲的で,実店舗の利点をよりよく理解し,高く評

価していることがわかった.これから特にO2O型消費者には,実店舗が実際の商品を展示したり,

在庫を持って顧客がすぐに入手できるようにした

り,同種の他の商品も展示して比較できるように

するなど,実店舗の特長を活かして利便性を向上

させていくことが有効であると考えられる. 一方,N2N型消費者も表7の項目1「実際の商品

を見たいから」は平均値が最も高く,O2O型消費者と有意差がなかった.N2N型消費者に実店舗の良さを理解してもらうには,ネットでキャンペー

ンの告知をしたり割引クーポンなどを発行したり

して,まずは実店舗に来てもらい,実際の商品を

見てもらえるようにすることは有効だと考えられ

る. 店舗での購入に直結するサービスとして,たと

えば,リサイクルショップのハードオフでは顧客

が欲しい中古品がどの店舗にあるか検索でき,遠

方の店舗からでも近くの店舗に取り寄せできるサ

ービスを提供している[29].洋服の青山ではWebページから店舗での試着を予約できる[2].また,三省堂書店ではWebページから書籍を注文して,書店で受け取るサービスを提供している.料理レ

シピを多数掲載しているクックパッドでは近所の

スーパーの特売情報とお勧めレシピを提供してい

る[29]. (6)仮説6の検証結果(6.6項および表8)から,O2O型

73Vol. 69 No. 2(2018)

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消費者は店頭やテレビ,新聞や雑誌などで見た商

品・サービスに関する情報を,スマートフォンや

携帯電話で検索したり,ネットショップや価格比

較サイトで見たりするなどにより,購入に至る可

能性がより高い. スマートフォンなどのGPSを利用した事例として,アパレル販売のパルコでは専用アプリを提供

して,店舗近くでアプリを起動した顧客にキャン

ペーンでポイントやクーポンを提供するなどした.

その結果,アプリ利用者は非利用者よりも来店頻

度が74%高く,年間購買金額が94%高いことがわかった[30].同じくアパレル販売のGUは店舗内でアプリを起動するとクーポンが当たるサービスを,

NEXCO西日本では高速道路のサービスエリアでクーポンを配布してすぐに利用してもらえるように

している[29]. (7)構造方程式モデリングによるモデルの構築(7.3項および図4)により,O2O型消費者はまずは商品・サービスに高い関心を持っており,(一般的な)

情報を収集し,さらに特に買い物に関する情報を

収集し,実店舗で購入し,情報発信するという一

連の因子間に強い因果関係があることが明らかに

なった.また,スマートフォンや携帯電話の活用

も実店舗での購入に寄与していることがわかり,

先行研究で触れたTSUTAYAの取り組み[5]や伊沢[8]の主張の一部を裏付けることとなった. 本モデルから次のことがわかった.消費者の実

店舗への誘導や実店舗での購入を促進したい企業

は,特にO2O型消費者に対して自社の商品・サービスへの関心を高め,情報提供し,スマートフォ

ンなどからもアクセスしやすくすると高い効果が

期待できる.これにより,特にO2O型消費者に実店舗で購入してもらいやすくなり,顧客が商品・

サービスに関する情報を拡散してくれて,販売促

進にまで結びつく可能性が高まる.

9 まとめと今後の課題

本研究の目的は,ネットで情報を得て実店舗で購

入するO2O型消費者と,ネットで情報を得てネットで購入するN2N型消費者の,買い物に対する意識や行動の差異を明らかにし,消費者を実店舗に誘導す

る方策を提案することである.そのため,6つの仮説を提起し,消費者調査を行い,仮説を検証した.さ

らにO2O型消費者の購買プロセスを構造方程式モデリングによりモデル化した.これらにより,O2O型消費者はN2N型消費者よりも,多くの商品・サービスにおいて高い関心を持っており,高い頻度で一般

の情報収集や買い物情報の収集を行い,情報発信を

行うことが明らかになった.また,実店舗の利点を

よく理解し,スマートフォンなども活用しているこ

とがわかった.さらに商品・サービスへの関心から

情報収集,買い物情報の収集,実店舗での買い物,

そして情報発信に至る購買プロセス(因果関係)モ

デルが成り立つことも明らかとなった.最後に仮説

検証結果と構築したモデルから実証的に,実店舗を

持つ企業が消費者を実店舗に誘導する方策を提案し,

参考として実例を挙げた. 今後の課題として,次の2点を挙げる.

・消費者全般やN2N型消費者についても構造方程式モデリングによる購買プロセスモデルを構築し,実

店舗への誘導策を検討し,提案すること. ・O2O型消費行動やN2N型消費行動を取る消費者の意識や行動の特徴をさらに明確にすることが挙げら

れる.そのため,消費者を,①O2O型消費行動のみを頻繁に取る消費者,②N2N型消費行動のみを頻繁に取る消費者,③両消費行動共に頻繁に取る消費者

の3群に分類して,比較分析すること.

(1) 一般に,本調査のようなインターネットを利用した調査は回答者がインターネット利用者に限

定されるという限界がある.しかし,本論文の

消費者調査を行った(2016年2月)直前の2015年末時点で,国民のインターネット利用率は

83.0%[31]と高く,60歳~79歳のインターネット利用も上昇傾向にあり,インターネットは広く

利用されている.また,一般にインターネット

利用者は日常生活面では特有の大きな傾向はそ

れほどないとされる[32].さらに本調査では,年齢層別,性別にほぼ均等数を回収することによ

り,回答がインターネット利用者の多い20歳代~40歳代に偏ることを回避している.

(2) 二群の平均の差の検定(t検定)は母集団の正規性と二群の分散が等しいことが仮定されている.

前者については,t検定はサンプル数が(30以上と)大きければ母集団が正規分布でなくとも推

定する差の分布は正規分布に近づくから頑健で

ある[33].本研究における分析では全体のサンプルサイズは600で,O2O型消費者とN2N型消費者の二群に分けた場合は最小でも153サンプルであり,十分なサンプル数を確保している.後者に

ついては,二群の分散が異なる場合はWelchのt検定を行うことが良いとされている[33].そのため,本研究における分析ではWelchのt検定を採

日本経営工学会論文誌74

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用した. (3) 因子抽出法のうち,最尤法では変数に多変量正規性を前提としているが,反復主因子法および

最小二乗法では多変量正規性は前提としない[33].本研究では因子抽出法として反復主因子法を用

いた.また,因子分析の前提として変数は間隔

尺度以上であることが期待されている.しかし,

順序尺度の変数でも5件法以上なら実際上は連続変量として扱っても特に問題がないとされてい

る[34],[35].本研究の調査では7件法または9件法で回答を得ている.なお,因子抽出における回

転法は因子間に相関があることを想定したプロ

マックス法を用いた.

謝 辞

本論文における質問紙調査と統計分析について,

静岡県立大学の岩崎邦彦教授より有益な助言をいた

だきました.また,全般にわたって匿名の査読者ら

から多くの有益なご意見をいただき,改善できまし

た.感謝申し上げます.

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