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Date post: 19-May-2020
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はじめに 現在約800万人といわれる団塊の世代が、2025年には75歳(後期高齢者)約2,200万人に達し、 全人口の4人に1人は後期高齢者という超高齢社会となると予想されている。 このような超高齢社会を迎えるに当たり、厚生労働省では、2025年を目途に、高齢者の尊厳 の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを 人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括 ケアシステム)の構築を推進している 1) また、高齢者の約4人に1人が認知症の人又はその予備軍といわれ、高齢化の進展に伴い、 認知症の高齢者はさらに増加し、2012年の約7人に1人の462万人、2025年の約5人に1人の約 700万人と推測されている 2) 。今後認知症の対策が大きな課題になる中、高齢の120名の男女を ― 115 ― 地域包括ケアとウエルネスウォーキング 和歌山県九度山町における参加者の身体機能変化調査より Community-based integrated care and Wellness walking: Analysis from the survey of in Kudoyama-cho participants in Wakayama 西 キーワード:ウエルネスウォーキング、ノルディックウォーキング、 2本杖ウォーキング、下肢筋力、血圧 九度山町65歳以上の居住者で、2017年5月~2018年5月の全5回のウエルネスウォーキングプログ ラムに参加した女性26名(77.0±6.3歳)について、介入前後の変化について調査した。今回研究対象 の九度山町の年に5回だけのプログラムに対して、ノルディックポールを用いたウエルネスウォーキ ングは収縮期血圧を改善する効果があり、歩幅が少ない高齢者は、歩幅が大きくなり、下肢筋力の改 善が期待できることが確認できた。また、65歳~74歳の前期高齢者では、75歳以上の後期高齢者に比 べ、収縮期血圧が有意に改善されることが確認されたが、後期高齢者では、どの項目においても、有意 な改善が確認されなかった。血圧の改善を期待する場合、できるだけ、65歳~74歳の前期高齢者で始 めるべきであるかもしれない。 そして、もともと歩幅が大きい高齢者は、ノルディックウォーキングのポールに頼りすぎて、逆に 歩幅が減少することも確認された一方、もともと歩幅が小さい高齢者は歩幅が顕著に増加した。今後、 対象者の歩幅等の特性に合わせた、指導の細分化等がウォーキングプログラム開発には重要ではない かと思われる。 神戸山手大学紀要第20号(2018.12)
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はじめに現在約800万人といわれる団塊の世代が、2025年には75歳(後期高齢者)約2,200万人に達し、全人口の4人に1人は後期高齢者という超高齢社会となると予想されている。このような超高齢社会を迎えるに当たり、厚生労働省では、2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進している1)。また、高齢者の約4人に1人が認知症の人又はその予備軍といわれ、高齢化の進展に伴い、認知症の高齢者はさらに増加し、2012年の約7人に1人の462万人、2025年の約5人に1人の約700万人と推測されている2)。今後認知症の対策が大きな課題になる中、高齢の120名の男女を

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地域包括ケアとウエルネスウォーキング和歌山県九度山町における参加者の身体機能変化調査より

Community-based integrated care and Wellness walking: Analysisfrom the survey of in Kudoyama-cho participants in Wakayama

西 村 典 芳山 中 裕

キーワード:ウエルネスウォーキング、ノルディックウォーキング、2本杖ウォーキング、下肢筋力、血圧

要 旨九度山町65歳以上の居住者で、2017年5月~2018年5月の全5回のウエルネスウォーキングプログラムに参加した女性26名(77.0±6.3歳)について、介入前後の変化について調査した。今回研究対象の九度山町の年に5回だけのプログラムに対して、ノルディックポールを用いたウエルネスウォーキングは収縮期血圧を改善する効果があり、歩幅が少ない高齢者は、歩幅が大きくなり、下肢筋力の改善が期待できることが確認できた。また、65歳~74歳の前期高齢者では、75歳以上の後期高齢者に比べ、収縮期血圧が有意に改善されることが確認されたが、後期高齢者では、どの項目においても、有意な改善が確認されなかった。血圧の改善を期待する場合、できるだけ、65歳~74歳の前期高齢者で始めるべきであるかもしれない。そして、もともと歩幅が大きい高齢者は、ノルディックウォーキングのポールに頼りすぎて、逆に歩幅が減少することも確認された一方、もともと歩幅が小さい高齢者は歩幅が顕著に増加した。今後、対象者の歩幅等の特性に合わせた、指導の細分化等がウォーキングプログラム開発には重要ではないかと思われる。

神戸山手大学紀要第20号(2018.12)

ウォーキングプログラム(有酸素運動)とストレッチプログラムに分け、1年間の海馬の変化を比較した結果、ウォーキングプログラムは有意に海馬面積が増加し、ストレッチプログラムは有意に減少した3)という報告があり、認知症の対策に対しても、ウォーキングプログラムは期待される。今回、和歌山県九度山町の地域包括ケアの保健師が「特別講座」として2本杖ウォーキング教室を企画し、高齢者のノルディックウォーキングプログラムの開発及び実施依頼を受け、神戸山手大学西村研究室開発のウエルネスウォーキングを加味したプログラムの実施することになった。そこで、同町65歳以上の居住者の身体機能変化を調査し、そのプログラムの有用性を研究することにした。

ノルディックウォーキングとはノルディックウォーキングは、2本のポールを手に持って歩くウォーキング運動であり、もともとはクロスカントリー選手の夏季のトレーニングとして、1930年頃から北欧で始められ、1990年頃に日本に入ってきた4)。クロスカントリースキーの夏季トレーニング用のストック2本を歩行時にも使用することで、ウォーキングによる下半身の運動に加えて上半身も積極的に使うため、全身的な運動がでるため通常の歩行に比べエネルギー消費が23%増加し5)、有酸素運動を行いやすく、体力の維持向上に役立つ6)上に、ストックを突くことで着地の衝撃が分散するため、着地時の下肢への負担が軽減され7)、高齢者にも適した運動であると思われる。また、2014年の第6回ノルディック・ウォーキングフェスティバルの参加した愛好者の実感調査において、「生活や運動の習慣」「体力」「身体の疲労感」「痛み」不定愁訴(女性)」において、ノルディックウォーキングを始めてから改善していること8)が報告されており、日常生活における身体のコンディションを改善する効果も期待できると推察される。ノルディックウォーキングには、2つのスタイルがある。アグレッシブスタイル(ヨーロッパスタイル)とディフェンシブスタイル(ジャパニーズスタイル)である。ヨーロッパスタイルは、ポールは踏み出す踵付近を突くようにして、肩甲帯と体幹部の動きを使ってポールをできるだけ後方へ押し出すスキーウォークが特徴である。ジャパニーズスタイルは、ロコモティブシンドロームとメタボリックシンドローム対策にむけた新しい歩行スタイルで安藤邦彦らが2005年にノルディックウォークを参考に日本向けに開発した「ポールウォーキング」で前方にポールを突くのが特徴である。さらに、ポールを身体の前で使用することで足・ポールによって生まれる面積(支持基底面)が拡大することにより安定性が増し転倒予防にも繋がることもあり9)、今回は、ポールウォーキングのスタイルで指導した。ノルディックウォーキングはこのように様々な効果が期待されるが、これらの利点は日本ノルディックウォーキング協会 HP10)にまとめられているので、表1に示す。そのような背景を受けて、近年、ノルディックウォーキングのイベントが各地で開催されるようになってきた。埼玉県の志木市では、40歳以上の市民に対して健康ポイントの導入とあわ

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せて、2015年以降イベントを行っている。運動教室の参加者対して、ノルディックウォーキングを取り入れ、筋力アップトレーニングを6ケ月行った結果、下肢筋力(足指力、膝間力)が向上したとの報告があるが、40歳~64歳と65歳~74歳では、有意な改善が認められたが、75歳以上の後期高齢者には有意な改善が認められなかった11)。そのため、75歳以上の後期高齢者において、ノルディックウォーキングによる下肢筋力の改善効果のあるプログラムの開発が大きな課題と思われる。

ウエルネスウォーキングとは12)

ドイツでは、森林などの自然を活用した健康保養地づくりに取り組んでおり、ドイツ国内には、自然保養療養地が374箇所存在し、年間1,900万人が訪れている。その最大の理由は、社会健康保険が適用され、4年に1度3週間の保養を行うことが法的に認められていることである。これまでの医療一辺倒から、保養・ウエルネスが中心となったドイツの健康保養地の姿は、医科学的な根拠のある健康づくりが課題である日本にとって、手本としやすい事例ではないかと考える。

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表1:ノルデイックウォーキングの利点

90%の筋肉を使う全身運動

カラダ全体の90%の筋肉を動かし、1時間あたり約400kcal(通常のウォーキング/280kcalを燃焼する全身運動です。

膝の関節、脊髄への負担を軽減

ポール使用での腰の関節・脊髄へ負担を約5㎏/歩軽減。正しい歩行姿勢の場合は約8㎏/歩まで負担を軽減します。

手術後のリハビリに効果的

ウォーキング時の負担が軽いため関節やヒップ部分の手術後、また一般的なリハビリにも効果的なエクササイズになります。

年配の方々にもおすすめ

ポールがバランス維持をサポートし、転びにくい歩行へ。姿勢や呼吸も整えられ、血液循環システムを活発にします。

正しい歩行姿勢に

ポールを持って歩くことにより、歩行姿勢が正され、呼吸を整えます。

長時間の歩行もラクラク

足首、膝、腰、アキレス腱など下半身にかかる負担を軽減し、長い距離の歩行が可能になります。

腰痛防止にも効果を発揮

オフィスワークの多い方の腰痛防止に、街中でも、いつでもどこでもできるエクササイズとして最適です。

新しい理想的なスポーツへ

ジョギングや普通のウォーキングでは‥‥と考えている方々に、ノルディック・フィットネスウォーキングは理想的なスポーツです。

(出典:日本ノルディックウォーキンヴ協会 HPより)

神戸山手大学紀要第20号(2018.12)

ドイツの自然を活用した療法の中に、気候療法、クナイプ療法、横臥療法などがある。気候療法とは、日常生活と異なった気候環境に転地し、受動的な気候因子への曝露および能動的な気候因子の活用による疾病の治癒、健康増進である。クナイプ療法は、冷水浴に、温水浴を加え「温・冷」という刺激を交互に加えることで、体がそれに順応しようと生体反応を活用したものである。横臥療法は、軽度の寒冷に曝露しながら静かに横たわる療法で、直射日光や風から守られた屋外で実施することにより、持久力の向上および、身体のストレス解消と回復促進効果があるといわれている。それらの療法を活用し考案されたのが、ウエルネスウォーキングである。その特徴は、ドイツの健康保養地で治療としても実施されている気候療法などの手法を用いたウォーキングで、心拍数を管理しながらウォーキングをする。心拍数の目安は「160-年齢」の基準で、歩行の速さを調整する歩き方である。

日本ウエルネスウォーキング協会の設立13)

2013年から始まった六甲健康保養地研究会は、神戸市立森林植物園で「KOBE森林植物園ウエルネスウォーキング」を毎月開催している。2015年5月から2016年4月(9回)までウォーキング前後の血圧を検証した結果、距離及び高度差の影響で降圧効果があることもわかった。最近は、神戸市内の西区太山寺や垂水区なぎさ街道、西宮市の甲山森林公園などもコースを作成し開催している。また、2015年8月に開催された指導者養成講座を機に、兵庫県多可町や鳥取県倉吉市、三重県津市、岩手県盛岡市など広がりを見せている。兵庫県多可町では健康保養地推進計画を立ち上げ、多可町ウエルネルリーダー養成講座にて人材を養成し、「ウエルネスウォーキング(宿泊型)モニター」を実施し、実証実験を5週間実施した。以上のような取り組みが評価され、“太陽生命クアオルト健康ウオーキングアワード2016” を受賞した。さらに、2017年6月から本格的に「毎週木曜日ウォーキング」を始めている。そこで、ウエルネスウォ-キングの普及や指導者養成及びコースづくりのアドバイスを行うために「日本ウエルネスウォーキング協会」が2016年3月に立ち上った。それぞれのリ-ダーが、その地域のウォーキングコースを開発し、案内している。現在では40コースある。コースつくりのポイントは、そこに住んでいる人との暮らしぶりやその町に反映されている地域の歴史を直接体験することも意識している。人びとの季節の食材や暑さ寒さを防ぐ工夫や受け継がれてきた独特の風習などをじっくりと見聞することである。組織は、兵庫県神戸地区は「六甲健康保養地研究会」、兵庫県多可町は「多可町プロジェクト推進課」、岩手県は「もりおかタニタ食堂」、鳥取県は「NPO法人未来」が開催している。この秋から兵庫県朝来市、市川町でも事業がスタートする予定である。これからは、開催してる地域の人々が他の各地へ出かけて交流を図り、交流人口の拡大に繋がりその地域が活性化し、健康寿命延伸に寄与できることを期待している。

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図1:九度山町の位置 図2:九度山と全国の人口分布(2005年)総務省統計局国勢調査より

九度山町の概要九度山町は、和歌山県の北東部にあり、東と北は橋本市に、西はかつらぎ町に、南は高野町に接している。県内最大の河川である紀の川の左岸に開け、東西11.8㎞、南北8.5㎞、総面積44.12平方㎞で、紀伊山地の支脈によって覆われ、険しい急傾斜地が多く、総面積の約75%が森林地帯となっている。町内を流れる河川は、東部を流れる丹生川と、西部を流れる不動谷川があり、二つは町内中央部で合流し、紀の川にそそいでいる。近年、過疎化が進み、世帯数は年々減少してきており、2010年の国勢調査によると人口は4,963人、世帯数は1,741世帯、平均世帯人員は、2.85人となっている。2005年の年齢5歳階層別人口は、若年層が少なく50歳以上の年齢層が多くなっている。1995年で30歳未満の若い年齢層は減少しており、若い年代の家族の流出がうかがえる。特に65歳以上の高齢者人口は、2011年時点で1,825人、総人口に占める割合(高齢者人口比率)は35.5%で、国の23.1%(総務省人口推計:平成22年(2010年)10月1日現在)、県の26.4%を大きく上回っており、県内市町村で8位の高さとなっている。高齢者人口比率の推移をみると、年々高齢化が進行してきており、人口構成等から考えると今後ますます高くなっていくことが想定される14)。2005年の九度山町と全国平均の年齢別分布を図2に示す。また、和歌山県の介護予防事業に参画して、2009年度から自主活動グループができ、現在は11カ所で約257名の高齢者が活動をしている。2012年度ごろから自主活動参加者が10.4%となり、それを境にして徐々に介護認定率が低下している。現在、自主活動参加率は12.1%、介護認定率は22.5%と2012年度の26.2%に比べて2.9%の低下している。

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神戸山手大学紀要第20号(2018.12)

研究の目的ノルディックウォーキングを用いたウエルネスウォーキングプログラムを年5回行い、1年間の介入前後1年後の身体機能変化や血圧の改善効果を下記の視点より検証する。1.参加者全体での改善効果分析2.前期高齢者、後期高齢者別の改善効果分析3.身体機能別の改善効果分析

調査方法①対象者九度山町65歳以上の居住者で、2017年5月、8月、12月、2018年2月、5月の全5回のウエルネスウォーキングプログラム参加者

②調査項目年齢等基本データ調査、血圧、ロコモ度テスト(2ステップテスト)

③ウエルネスウォーキングプログラムの実施内容下記のようなプログラムを毎回、同様の手順で行った。1.受付2.血圧測定3.2ステップテスト4.健康教育(30分)5.ポールを使用したストレッチ6.2㎞ウォーキング7.クールダウン

調査結果①対象者と分析方法九度山町65歳以上の居住者で、2017年5月、8月、12月、平成30年2月、5月の全のウエルネスウォーキングプログラムに参加したのは、男性1名(83歳)、女性26名(77.0± SD 6.3歳)。男性と女性では、筋肉量等のベースデータが異なるので、今回の分析対象者は、女性26名とした(最年少67歳、最高齢91歳)。ウエルネスウォーキングプログラム実施日の天候等の状況を表2に示す。また、実施の風景を図3から図8に示す。

地域包括ケアとウエルネスウォーキング 和歌山県九度山町における参加者の身体機能変化調査より

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表2:ウエルネスウォーキングプログラム実施日の状況

5/23(火) 8/22(火) 11/21(火) 2/13(火) 5/22(火)天 候 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ

最高温度 25.7℃ 32.8℃ 12.7℃ 6.4℃ 25.3℃

参加者数 54名 57名 58名 43名 53名

図3:2ステップテスト実施風景

図5:ポールを使用したストレッチの風景

図7:心拍測定している様子

図4:健康教育の風景

図6:ウォーキング開始の風景

図8:真田庵の見学

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今回、全ウエルネスウォーキングプログラムに参加した女性26名に対して、2017年5月23日の1回目の測定値を介入前のデータとし、2018年5月22日測定の最終回の5回に測定値を介入後のデータとして比較検討した。検定はエクセル統計2012を用いて、すべて t 検定を用いて行った。有意確率95%以上を有意差ありとした。(99%以上を**、95%以上を*、有意差なしを n.s.として表記した。)

②参加者全体での改善効果分析結果分析結果を表3に示す。参加者全体で改善は、収縮期血圧に有意な改善結果が確認されたが、拡張血圧及び2ステップテストでは、改善は認められなかった。

③前期高齢者、後期高齢者別の改善効果分析結果女性26名(77.0± SD 6.3歳)に対して、65歳~74歳の前期高齢者は10名(70.8± SD 3.0歳)、74歳以上の後期高齢者は16名(80.9± SD 4.3歳)であり、前期高齢者は10名と後期高齢者は16名に分けて、改善効果を分析した。結果を表4及び表5に示す。前期高齢者では、収縮期血圧が有意に改善されることが確認されたが、後期高齢者では、どの項目においても、有意な改善が確認されなかった。

地域包括ケアとウエルネスウォーキング 和歌山県九度山町における参加者の身体機能変化調査より

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表3:参加者全体での改善効果分析結果 n=26(平均±SD)

収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg) 2ステップテスト(㎝)介入前 146.3±13.4 76.3±8.1 214.7±27.6

介入後 139.6±12.4 78.9±9.5 212.7±22.3

介入前後の有意差 P=0.006** P=0.169 n.s. P=0.671 n.s.

表4:前期高齢者での改善効果分析結果 n=10(平均±SD)

収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg) 2ステップテスト(㎝)介入前 147.7±14.4 78.5±6.3 223.5±15.0

介入後 132.6±14.0 80.9±9.3 220.1±19.0

介入前後の有意差 P=0.0002** P=0.325 n.s. P=0.537 n.s.

表5:後期高齢者での改善効果分析結果 n=16(平均±SD)

収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg) 2ステップテスト(㎝)介入前 145.4±13.1 75.0±9.0 209.1±32.5

介入後 144.0±9.3 77.6±9.7 208.1±23.6

介入前後の有意差 P=0.580 n.s. P=0.327 n.s. P=0.882 n.s.

④身体機能別の改善効果分析結果女性26名(77.0± SD 6.3歳)に対して、収縮期血圧、拡張期血圧と2ステップテストについて、介入前後の差の相関分析を行った結果、2ステップテストの介入前の測定値と、介入前後の値について r =-0.623(**)の有意な関係が確認されたので、2ステップテストの介入前の測定値を2分位にして分析した(表6)。その結果、歩幅大グループにおいては、歩幅が有意に減少することが確認されたが、2ステップテストの介入前の歩幅小グループおいて、有意に歩幅が改善されていたことが分かった。

考察ノルディックウォーキング介入を中高年の閉経後女性9名(平均66.8±7.2歳)に週3回以上実施し、通常歩行群と比較してノルディックウォーキング群では握力、歩幅が顕著に増加したが、生活習慣病指標と腰椎および大腿骨頸の骨密度値は両群間で有意差がなかった12)という報告もあり、歩幅の改善の報告は多い。同様に、ノルディックウォーキングを70歳以上の高齢者に、1回60分、週3回、計12週実施した研究では、ノルディックウォーキング群では、バランス、下肢筋力、脱力、抑鬱に関するスコアが有意に改善し、全身運動よりも効果的であることが示された13)。また、有料老人ホーム入居者の健康増進の取り組みとしてノルディックウォーキングを週1回、約50分実施を導入し、住宅型有料老人ホーム入居者14名(平均年齢88.7歳)に対して、1)身体活動量は導入前の1198kcalが導入後1283kcalに有意に増加した。2)体力測定の各項目では初回測定値100%に対して動作能力は102%、敏捷性は125%、筋力は114%と向上傾向が認められたが、柔軟性は90%、持久力は81%、バランスは97%と低下傾向が認められた。尚、介護度は改善が22%、維持が64%、悪化が18%であった14)との報告がある。これらの研究は、週1回以上実施されているプログラムであるのに対して、今回研究対象の九度山町のプログラムは、年に5回だけの実施である。しかしながら、年に5回だけのプログラムに対して、ノルディックウォーキングは収縮期血圧を改善する効果があり、歩幅が少ない高齢者は、歩幅が大きくなり、下肢筋力の改善が期待できることが確認できたことは、地域における実施の負担も考慮すれば、今後様々な高齢化地域における実施事例の参考になるプログラムではないかと推察される。

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表6:2ステップテスト歩幅小グループと歩幅大グループでの改善効果分析結果(平均±SD)

2ステップテスト歩幅小グループ(㎝) 2ステップテスト歩幅大グループ(㎝)介入前 192.1±54.1 237.2±49.4

介入後 202.6±58.2 222.8±45.6

介入前後の有意差 P=0.132 n.s P=0.003**

改善度 10.5±22.7 -14.4±17.1

2群間の改善度の有意差 P=0.0031**

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また、65歳~74歳の前期高齢者では、75歳以上の後期高齢者に比べ、収縮期血圧が有意に改善されることが確認されたが、後期高齢者では、どの項目においても、有意な改善が確認されなかった。血圧の改善を期待する場合、できるだけ、65歳~74歳の前期高齢者で始めるべきであるかもしれない。そして、もともと歩幅が大きい高齢者は、ノルディックウォーキングのポールに頼りすぎて、逆に歩幅が減少することも確認された一方、もともと歩幅が小さい高齢者は、他のノルディクウォーキングの報告通り12)、歩幅が顕著に増加した。今後、対象者の歩幅等の特性に合わせた、指導の細分化等がノルディックウォーキングプログラム開発には重要ではないかと思われる。今後は血圧と2ステップテストの指標に加え、認知症に対する予防効果も検証するため

MMSEやMoca-J等の指標も取り入れ、研究を進めて行きたいと思う。

謝辞今回の研究に協力いただいた、九度山町「2本杖ウォーキングプログラム」への参加者の皆様、その実施に協力頂いた九度山町の地域包括ケアの保健師及び関係のスタッフの皆様に感謝申し上げます。

引用文献1)厚生労働省,地域包括ケアシステムの実現へ向けて,

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/(accessed 2018/10/15)

2)厚生労働省(2014)「国民健康・栄養調査」3)Erikson, K, I al (2011) “Exercise training increases size of hippocampus and improves memory.” Proceedings of

the National Academy of Sciences U.S.A. Feburary 15: 108(7): 3017-224)松谷之義・中谷敏昭(2016)Dr. 松谷が教える「ノルディックウォーキング」でダイエット みずほ出版新社

5)Porcari j.p et al (1997) “The physiological responses to walk-ing with and without Power Poles on treadmillexercise” Res Q Exerc Sport 68: 161-166

6)Churcht, s, et al (2002) “Field testing of physiological responses associated with Nordic Walking” Res Q ExercSport 73: 296-300

7)Willson, J et al (2001) “Effects of walking poles on lower extremity gait mechanics” Med Sci Sports Exerc 33:142-147

8)大石徹・中野恵介(2016)「ノルデックオーキング愛好者の実感調査」帝京大学紀要12: 45-509)日本ポールウォーキング協会,http://polewalking.jp/(accessed 2018/10/15)10)日本ノルディックウォーキング協会 HP:http://www.jnwa.org/about(accessed 2018/8/8)11)清水裕子(2016)「市民力を生かした健康づくり 健康ポイント事業と,ノルディックウォーキング・ポールウォーキングを取り入れた運動教室を通して」保健師ジャーナル Vol.72 No.10: 852-859

12)西村典芳(2016)ヘルスツーリズムによる地方創生 健康長寿を目指して「お散歩でこの国を元気にする」カナリアコミュニケーションズ

13)九度山町第4次長期総合計画14)Iida, T et al (2017) “Effects of Nordic Walking-Based Intervention on the Physical Strength, Motor Ability,

Lifestyle-Related Disease Indices, and Bone Mineral Density Level: In Comparison with Normal Walking”International Medical Journal (1341-2051) 24(3): 284-287

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15)Lee Han Suk et al (2015) “Effects of Nordic walking on physical functions and depression in frail people aged 70years and above” Journal of Physical Therapy Science (0915-5287) vol.27(8): 2453-2456

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