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模擬患者 (Simulated Patient: SP) 参加型授業の …模擬患者(Simulated Patient:...

Date post: 24-Aug-2020
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刑 部 万寿美 原 田 千代子 吉 田 千鶴子 Bulletin of Toyohashi Sozo University 2012, No. 16, 115 –123 SP の導入により,学生はペーパー上の患者では体験できない実際のコミュニケーションの 中から事実を捉え,「今の患者さんの状態や気持ちを理解することによって支援を考えること が必要」,「会話の中での小さな糸口を見つける気づきがなければいけない」 などの 【セッショ ンとの関連が明確な結論】を示していた.これらの学生は患者とのコミュニケーションを通 して事実を捉えることやそれを情報として活用することに気づいていた. また,この内容は黒田の示している質の高い情報を得るための内容をほぼ満たしており授 業の効果はあった. 一方,【セッションとの関連が不明な結論】を示していた一部の学生はSPとの関係性の中 で生じた事実を提示せずに,コミュニケーションで重要な一般的内容をあげ,コミュニケー ションの知識を活用した方法を実施することなどに気づかず,一般的な知識としてコミュニ ケーションの重要性を確認するに留まっていた. キーワード:情報収集,コミュニケーション,SP 参加型授業 Ⅰ.はじめに 看護の対象は人間である.したがって看護を実践するうえで,コミュニケーション能力が 不可欠であることから,看護基礎教育において基礎看護学や人間関係論などの授業を通して コミュニケーションに関する内容が教授されている.本学でも,1年次において「基礎看護 学方法論Ⅰ」,「援助的人間関係論」 (必修) および「人間関係論」 (選択) を開講している. これらの授業により,学生はコミュニケーションの重要性については理解できるが,その 知識を活用し,トレーニングを重ねるためのコミュニケーションに特化した内容の授業を行う 時間は少ない現状がある.中でも,藤崎(2001) が「コミュニケーション能力がないと看護過 程の展開はできない」と述べているように,看護過程の授業 (演習)においてコミュニケー ション能力は出発点の情報収集の段階で必要な能力である. しかし,学内演習ではペーパーペイシェントによる演習の場合が多く,この段階が省かれ ている.臨地実習で学生は情報収集が困難な状況に戸惑い,さらに主観的データと客観的 データの区別に迷っていることが多く,看護過程の展開,ひいては臨地実習での学びに支障 が出る状況がある. 模擬患者 (Simulated Patient: SP) 参加型授業の 効果について
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Page 1: 模擬患者 (Simulated Patient: SP) 参加型授業の …模擬患者(Simulated Patient: SP)参加型授業の効果について 117 の学生を対象にもうひとりのSPが同じ内容で実施した.それぞれに代表学生1名とSPのセッ

115模擬患者(Simulated Patient: SP)参加型授業の効果について

刑 部 万寿美原 田 千代子吉 田 千鶴子

Bulletin of Toyohashi Sozo University2012, No. 16, 115 –123

 SPの導入により,学生はペーパー上の患者では体験できない実際のコミュニケーションの中から事実を捉え,「今の患者さんの状態や気持ちを理解することによって支援を考えることが必要」,「会話の中での小さな糸口を見つける気づきがなければいけない」 などの 【セッションとの関連が明確な結論】を示していた.これらの学生は患者とのコミュニケーションを通して事実を捉えることやそれを情報として活用することに気づいていた. また,この内容は黒田の示している質の高い情報を得るための内容をほぼ満たしており授業の効果はあった. 一方,【セッションとの関連が不明な結論】を示していた一部の学生はSPとの関係性の中で生じた事実を提示せずに,コミュニケーションで重要な一般的内容をあげ,コミュニケーションの知識を活用した方法を実施することなどに気づかず,一般的な知識としてコミュニケーションの重要性を確認するに留まっていた.

キーワード:情報収集,コミュニケーション,SP参加型授業

Ⅰ.はじめに

 看護の対象は人間である.したがって看護を実践するうえで,コミュニケーション能力が不可欠であることから,看護基礎教育において基礎看護学や人間関係論などの授業を通してコミュニケーションに関する内容が教授されている.本学でも,1年次において「基礎看護学方法論Ⅰ」,「援助的人間関係論」 (必修) および「人間関係論」 (選択) を開講している. これらの授業により,学生はコミュニケーションの重要性については理解できるが,その知識を活用し,トレーニングを重ねるためのコミュニケーションに特化した内容の授業を行う時間は少ない現状がある.中でも,藤崎 (2001) が「コミュニケーション能力がないと看護過程の展開はできない」と述べているように,看護過程の授業 (演習) においてコミュニケーション能力は出発点の情報収集の段階で必要な能力である. しかし,学内演習ではペーパーペイシェントによる演習の場合が多く,この段階が省かれている.臨地実習で学生は情報収集が困難な状況に戸惑い,さらに主観的データと客観的データの区別に迷っていることが多く,看護過程の展開,ひいては臨地実習での学びに支障が出る状況がある.

模擬患者 (Simulated Patient: SP) 参加型授業の効果について

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116 豊橋創造大学紀要 第16号

 このような状況の中で,近年,模擬患者(Simulated Patient: SP)を看護基礎教育に導入した,教育方法が行われるようになってきている.本田ら (2009) が1985年~ 2007年に看護基礎教育におけるSP参加の教育方法を主題としている29論文を対象に調査した報告によると,基礎看護学実習前の1,2年次に集中して実施され,演習への活用が最も多く,中でもコミュニケーション技術演習や看護過程の展開における情報収集場面やケアの実施場面で活用されている.また,教育効果について①「リアリティ」のある体験をすることができる,②「日常とは異なる」学習環境によって看護はやり直しのきかない1回性の営みであるという現実を実感することができ,主体的な学習姿勢を引き出すことができる,③「模擬」という状況によって,安全性,再現性,反復性を有する学習環境を意図的に作ることが可能となるなどの効果が認められている. 模擬患者の活用が広がっている中で,何をコミュニケーション技術の評価軸にするかという点が,課題となっていることを藤崎 (2001) は指摘し,従来の看護教育においては,患者の視点に立つ「心構え」や患者に対する「思い」は大変強調されてきたが,具体的な行動レベルでの評価についてコンセンサスは得られていないと述べている. 先行研究ではSP参加型の演習授業において対人技能及び対象理解,さらに学習・教育効果などについての報告が多く,事実と情報との関連を意識し,情報収集におけるコミュニケーション能力(意図的コミュニケーション・テクニックも含む)の向上について具体的に報告しているものは見られなかった. 今回,看護過程演習を実施するにあたり,看護過程の第一段階にあたる情報収集場面において捉えた事実状況を再現すること,事実を客観的データとして,さらにケアにつながる情報として活用することの必要性を理解することに焦点を当てたSP参加型授業の効果について検討する.

Ⅱ.目  的

 SP参加型の演習授業の学生の振返りの内容を通して,事実を客観的データとして捉え,さらにケアにつながる情報として活用することの必要性を理解するという演習授業の効果について検討する.

Ⅲ.方  法

1.データの収集方法

 対象は「援助的人間関係論」を履修し,さらにコミュニケーションの基本原理およびチェックポイントについて講義を事前に受けている「療養支援看護論演習Ⅱ」受講者77名のうち,研究に同意の得られた40名を対象に実施した.セッションは,当日の時間割の都合上,2名のSPの協力のもと3回実施した.1回目は77名 (16グループ) を対象に一人目のSPによって実施し,2回目は38名 (前半8グループ) の学生,3回目は残りの39名 (後半8グループ)

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117模擬患者(Simulated Patient: SP)参加型授業の効果について

の学生を対象にもうひとりのSPが同じ内容で実施した.それぞれに代表学生1名とSPのセッションの様子,及び,セッション終了後にグループで行った振返り内容の発表の様子を固定位置のDVDカメラにより撮影した.2回のセッションによりSPとの関わりを比較するため,授業は2コマ(180分)を実施した.

2.データの分析方法 

 DVDから学生のそれぞれのグループ (16グループ) の振返りの内容を逐語録に起こし,分析にはKJ法を用いた.その分析過程では研究者間で協議を重ね,信頼性を高めた.

3.倫理的配慮 

 豊橋創造大学生命倫理委員会の承認 (承認番号H2010023) を得た後,学生に研究の趣旨,参加の任意性と中断の自由,個人のプライバシーの保護,授業の一環であるが参加しない場合でも成績評価に影響しないことなどについて書面と口頭で説明し,40名の学生から同意を得た後に実施した.なお,同意の得られていない37名の学生は,前半,後半それぞれ4グループに分け,撮影では画面に入らない座席の配置をした.

Ⅳ.結  果

1.集計結果

 振返りの事実から演習の効果として捉えられる意味内容を68枚のラベルとして抽出し,グループ編成において8枚の[表札]に分けられた. [表札]のラベル内容とラベル数は次のとおりである.【セッションとの関連が明確な結論】が19枚と一番多く,続いて【知るべき情報】12枚,【事例に添った具体的方法の提示】9枚,

【セッションと関連が不明な結論】9枚,【情報の取り方】7枚,【看護師の知識・技術・態度】5枚,【情報の使い方】3枚,【知識不足による解釈】4枚であった. 以下,【 】を最終的に集約された表札,《 》 を2段階目の表札,「 」を最初のラベルで示し,各表札の内容について述べる. 1)【情報の取り方】 この表札ではSPとのセッションという患者との関わりにおいてどのように情報を取ればよいのかという方法が三つ示されていた.一つ目は患者を理解するためには「患者の全体像を知るためには,本人以外の家族や仕事などのことを知ること」,「外食が多いというのはどんな職業とか,家族についてとかの背景について質問する」など 《背景を知る》 こと,二つ目は 《情報を広げる》 方法として,「お酒を飲むとはどれくらい飲むのか,そこからたばこは吸うのかに広げる」,「質問の時は患者の話したことを完全に受けて質問する」こと,そして最後の方法として「疾患について理解して,その何を聞きたいのかというのに焦点を絞って聞く」,「さりげなく自分たちの聞きたい情報に導いていく」という 《意図的に関わる》 という方法が示されていた.

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118 豊橋創造大学紀要 第16号

 2)【看護師の知識・技術・態度】 この表札では「糖尿病に関して食事療法などが必要なので食材の知識がいる」ことや「糖尿病について何を聞けばよいか,何に焦点を当てるのか考えることが大事」という疾患に関連した 《看護師の知識》 と「聞いてるという態度は親身になっているという態度で信頼感には欠かせないもの」という 《看護師の態度》,そして「『私は今こういう気持ちなんだよ』とか『食事は我慢できない』とかを引き出せる技術」や「患者さんからも質問してもらえるような雰囲気を作れるようにする」などの 《看護師の技術》 が患者との関わりにおいて看護師に求められるものであることを示していた. 3)【情報の使い方】 この表札では「家族などの周りを考えることでどういう教育が必要かということが明確になる」,「今の状態から今後を考えていかないといけない」,「周りや家族について考えることは入院中と退院してからの生活に関する計画を明確にする」など得られた情報をケアとして生かしていく方向性について述べられていた. 4)【知るべき情報】 この表札では「その患者さんが糖尿病についてどこまでの知識があるのかを確認する」という 《患者の知識》,「続けていきたいと思っても続けられなくて挫折した患者さんの気持ちを考える」や「難しい,できなくて恥ずかしいという患者さんの気持ちを考える」という 《患者の思い》,「仕事から,生活に影響が出ている理由を知る」,「患者さんの実際の生活がどうなっているのか」などの 《患者の生活》,疾患との関連から「外食はどのようなものを食べているのか」 《食事》 という四つの情報を得ることが患者を理解する上で必要な情報として捉えていた. 5)【事例に添った具体的方法の提示】 この表札の 《患者のことばを受けた方法の提示》 では「『続けていくのが難しい』という患者の気持ちを考えた支援が必要」と患者のことばから得られた情報を支援につなげること, 《食事・運動に関連する内容》 では「食べ物を変えるのではなく,意識を変えるように支援するという方法もある」,「家事の中で運動量や食材の使用方法など生活を少しでも変えていくように支援できる」という変容への支援の方法, 《コミュニケーションに関連した方法の提示》 では「握手などのタッチングをコミュニケーションの手段としてするといい」,

「看護師と患者の話すタイミングがかぶってしまってはいけない」など,この事例の患者との関係のなかで得られた情報に合わせた援助やコミュニケーションの方法をそれぞれ具体的に提示していた. 6)【セッションとの関連が明確な結論】 この表札は,四つの2段階目の[表札]が確認できた.はじめは「実際のコミュニケーションというのがとても大切だ」というペーパーペイシェントでは経験できない患者との関わりから実感した 《実際のコミュニケーションの重要性》,そして,「意図的に上手に関わったほうがよいが計画通りには行かない」ことや「患者さんの情報を聞き出すのは,看護師の話し方で,出せる情報と出せない情報がある」,「看護師の話し方というのをもっと考えていくべ

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119模擬患者(Simulated Patient: SP)参加型授業の効果について

きではないか」など,学生の現在の 《コミュニケーション能力》 を客観的に評価しているものであった. 《患者に添う方法》 では「患者の全体像を知るためには背景を知る必要がある」と患者の全体像を理解したうえで,「今の患者さんの状態や気持ちを理解することによって支援を考えていくことが必要」や「患者の事情を考慮したうえで方法を考えることが必要」であると患者に添う方法を考えることを学んでいた.最後に 《情報を得るための方法》 として

「会話をしている中での小さな糸口を見つける気づきがなければいけない」,「患者さんの話の流れを聞きながら質問をどんどん取り入れて情報収集する」,「患者さんの言った情報から,情報を広げて,患者さんの背景を知るということが大切」,「一方的に話すと,患者のことを分かったつもりでいるが実際何もわからない」など多くの場面の状況から得られた方法が提示されていた. さらに,これらの四つの表札ではSPとのセッションを通して捉えた事実を情報として得ることができ,それらをSP参加型授業から得られた学びの内容として結論づけて述べられていた. 7)【知識不足による解釈】 この表札では「栄養バランスは考えているというので食事療法はやめて患者さんの負担を減らす」,「8 kgも体重がなぜ減ったのか,ダイエットによるのか,自然に減ったのかもしれない」などの知識不足による誤った解釈が示されていた. 8)【セッションと関連が不明な結論】 この表札では「コミュニケーションや援助を通して信頼関係を築くことが大切」であるという 《信頼関係の重要さ》 と 《コミュニケーションの基本となる内容》 として「コミュニケーションには傾聴・共感・寄り添いが大切」であることや「不安や恐怖という気持ちを汲み取るためには相槌やオウム返しをする」ことなど,また 《不安への対応》 として「不安に思っていることを自発的に言ってもらえるように促す」,「信頼関係から不安を見つけることにつなげる」などが示されていた. この表札で示されていた内容は,SPとのセッションにおいて得られた事実との関連が明確ではなく,SP参加型授業から得られた学びの内容をコミュニケーションにおける一般的知識を用いて結論づけて述べていた.

2.表札間の関係性

 [表札]8枚の互いの表札との関係性やストーリー性を検討し,SP参加型授業の効果を図解化した(図1). なお,「セッションを通して事実を捉えることができた」ことによって繋がる関係を正の関係,「セッションを通して事実を捉えることが十分できない」ことによって繋がっている関係を負の関係とした. 【情報の取り方】の表札ではSPとの実際のセッションのことばや内容を基に質問し, 《情報を広げる》, 《背景を知る》, 《意図的にかかわる》 ことの必要性に気づいていた.この気づきは「今の状態から今後を考えていかないといけない」,とか「どういう教育が必要かとい

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120 豊橋創造大学紀要 第16号

図1 SP参加型授業の効果

セッションを通して事実を捉

えることが十分できない

・負の関

・正の関

セッションを通して事実を捉える

知識不足による解釈

食生

活を

変え

づら

いな

らば

運動

の面

から

見て

みよ

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ンス

は考

えて

いる

とい

うの

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事療

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やめ

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負担

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らす

のか

、自

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食事

を止

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きた

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に焦

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さり

げな

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分た

ちの

聞き

たい

情報

に導

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情報

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お酒

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むと

はど

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のか

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かに

広げ

質問

の時

は患

者の

話し

たこ

とを

完全

に受

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質問

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背景

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患者

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めに

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以外

の家

族や

仕事

など

を知

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家族

の状

況を

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こと

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図1 SP参

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の効

事例

に添

った具

体的

な方

法の

提示

食事・運動に関連する内容

家事で、こういう食材

を使ったら

ないか

いう知識をこ

ちら側から与える

食べ物を変えるのでは

なく、意識を変えるよ

うに支援する

いう方

法もある

家事の中で運動量や食

材の使用方法など生活

を少しでも変えていく

ように支援できる

コミュニケーションに関連した方法の提示

看護師と患者の話すタ

イミングがかぶってし

まってはいけない

握手などのタッチング

をコミュニケーション

の手段としてするとい

不安はすぐに出てこな

いので、いつでも話せ

る場を設けることが大

何でもいってください

ということばは入院し

て不安に思っている気

持ちを軽減する

患者のことばを受けた方法の提示

「続けていくのが難し

い」という患者の気持

ちを考えた支援が必要

「早く退院したい」と

いう思いに対して少し

でも短い入院にできる

ようにする

事例

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家事で、こういう食材

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食べ物を変えるのでは

なく、意識を変えるよ

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家事の中で運動量や食

材の使用方法など生活

を少しでも変えていく

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コミュニケーションに関連した方法の提示

看護師と患者の話すタ

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不安はすぐに出てこな

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何でもいってください

ということばは入院し

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患者のことばを受けた方法の提示

「続けていくのが難し

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「早く退院したい」と

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ようにする

看護師の知識・技術・態度

看護

師の

態度

聞い

てる

とい

う態

度は

親身

にな

って

いる

とい

う態

度で

信頼

感に

は欠

かせ

ない

もの 看

護師

の知

糖尿

病に

関し

ては

食事

療法

など

が必

要な

ので

食材

の知

識が

いる

糖尿

病に

ついて何を聞

けば

よい

か、何に焦点

を当

てる

のかを考える

こと

が大

看護

師の

技術

「私

は今

こう

いう

気持

ちな

んだ

よ」

とか

「食

事は

我慢

でき

ない

」と

かを

引き

出せ

る技

患者さんからも質問し

てもらえるような雰囲

気を作れるようする

看護師の知識・技術・態度

看護

師の

態度

聞い

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親身

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情報の使い方

家族などの周りを考え

ることでどういう教育

が必要かということが

明確になる

今の状態から今後を考

えていかないといけな

周りや家族について考

えることは入院中と退

院してからの生活に関

する計画を明確する

情報の使い方

家族などの周りを考え

ることでどういう教育

が必要かということが

明確になる

今の状態から今後を考

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周りや家族について考

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知るべ

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患者

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状況

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考え

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病院

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患者

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どこ

まで

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のか

を確

認す

セッションとの

関連

が明

確な結

情報を得るための方法

会話をしている中での

小さな糸口を見つける

気づきがなければいけ

ない

患者さんの話の流れを

聞きながら質問をどん

どん取り入れて情報収

集する

流れを途切れてしまわ

ないようにすることが

大切

患者さんの言った情報

から、情報を広げて、

患者さんの背景を知る

一方的に話すと、患者

のことを分かったつも

りでいるが実際何も

わからない

理由を理解した上でい

ろいろな視点(考え方

)をもつことが必要

話を関連付けて、コミ

ュニケーションをとっ

て情報収集するのが大

なんかひとつのことを

聞いて、次はこういう

を聞いて、最終的

に食生活を知る

患者に添う方法

患者の事情を考慮した

うえで方法を考えるこ

とが必要

質問をするときには患

者の話したことを完全

に受けて質問すること

が必要

今の患者さんの状態や

気持ちを理解すること

によって支援を考えて

いくことが必要

患者の全体像を知るた

めには、本人以外の家

族歴などを知ること

患者の全体像を知るた

めには背景を知る必要

がある

コミュニケーション能力

意図的に上手に関わっ

たほうがよいが計画通

りには行かない

看護師の話し方という

のをもっと考えていく

べきではないか

決め付けた言い方をし

てしまうと本当の気持

は出せない

患者さんの情報を聞き

出すのは、看護師の話

し方で、出せる情報と

出せない情報がある

看護師が話す場面でも

患者さんが口を挟める、

ここだったら入れる場

を作る

実際のコミュニケ-ションの

重要性

実際のコミュニケーシ

ョンというのが

大切だ

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情報を得るための方法

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看護師の話し方という

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てしまうと本当の気持

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看護師が話す場面でも

患者さんが口を挟める、

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セッションとの関連

が不明な結論

コミュニケー

ションの

基本

となる内

患者

に分

かり

やす

いこ

とば

で、

説明

した

りす

る必

要が

ある

私は

聞い

てい

ます

よい 傾

聴し

てい

くこ

と事

不安

や恐

怖と

いう

気持

ちを

汲み

取る

ため

には

相槌

やオ

ウム

返し

をす

コミ

ュニ

ケー

ショ

ンに

は傾

聴・

共感

・寄

り添

いが

大切

不安

への

対応

不安

を引

き出

す、

不安

を気

づい

てあ

げる

不安

に思

って

いる

こと

を自

発的

に言

って

もら

える

よう

に促

信頼

関係

から

不安

を見

つけ

るこ

とに

つな

信頼

関係

の重

要さ

コミ

ュニ

ケー

ショ

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援助

を通

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121模擬患者(Simulated Patient: SP)参加型授業の効果について

うことが明確になる」など【情報の使い方】に繋がっていた.また,この表札【情報の取り方】は 《患者の思い》, 《患者の生活》 などの【知るべき情報】を明らかにし,【事例に添った具体的方法の提示】として 《患者のことばを受けた方法の提示》, 《食事・運動に関する内容》 や 《コミュニケーションに関連した方法の提示》 をしていた.さらにこの【情報の取り方】は関わりの中での【看護師の知識・技術・態度】に影響されることを示していた. これらの【情報の取り方】,【知るべき情報】,【事例に添った具体的方法の提示】は 《患者に添う方法》, 《コミュニケーション能力》, 《情報を得るための方法》, 《実際のコミュニケーションの重要性》 などSPとのセッションの事実を通して得た学びの内容について述べ【セッションとの関連が明確な結論】を示していた. しかし,【セッションと関連が不明な結論】ではそれらの提示はなく, 《コミュニケーションの基本となる内容》 をはじめとして, 《信頼関係の重要さ》 や 《不安への対応》 など既存の知識として得ていた内容からコミュニケーションの重要性を確認し,結論としてまとめていた. 【知識不足による解釈】では疾患の知識がないことによる不適切な解釈が明らかになった.

Ⅴ.考  察

 黒田 (2001) は情報とは事実 (fact) を指して用い,誰が見ても客観的であるといえる事実であること,事実を文字として書いて表現することができることで第三者に伝えることができ,情報として意味あるものになると述べている. また,同氏が質の高い情報を得るために必要なこととして述べていることをまとめると,① 看護師自身が患者と実際に関係をもちながら情報を集めていること,② 看護的視点をもつ(何らかの健康障害の影響や反応を,患者の主観的体験として知る)こと,③ 正確な患者の事実状況(数値で表される事実も含む)を収集すること,④ 医学的知識を持って観察すべきポイントを押さえて観なければキャッチできない事実を収集すること,⑤ 患者のちょっとした表情や行動の変化を感じること (能力),⑥ 捉えた事実状況を再現できること (能力) があげられる. 以下,黒田 (2001) の述べている内容をグループ編成により得られた8枚の[表札]の内容と比較し,SP参加型授業の効果を検討する. 【情報の取り方】において抽出された 《情報を広げる》, 《意図的に関わる》 は看護師が実際に患者と関わらなくてはできない情報の取り方であるため,黒田の述べている① を示しているといえる.また 《背景を知る》 について学生は,患者だけではなく,背景からの影響について情報収集をすることの必要性に気づいていることから,同氏の② の看護的視点をもって情報収集することを理解しているといえる. 【看護師の知識・技術・態度】の内容である 《看護師の知識》 は糖尿病に関する知識についての気づきであることから④ 医学的知識を持って観察すべきポイントを押さえて観なければキャッチできない事実を収集することについては理解できていると考える.また, 《看護師の技術》 で示している内容は② の何らかの健康障害の影響や反応を,患者の主観的体験を

Page 8: 模擬患者 (Simulated Patient: SP) 参加型授業の …模擬患者(Simulated Patient: SP)参加型授業の効果について 117 の学生を対象にもうひとりのSPが同じ内容で実施した.それぞれに代表学生1名とSPのセッ

122 豊橋創造大学紀要 第16号

知る技術の必要性を述べていることから,学生は看護的視点をもって関わろうとしていることが理解できる. 【情報の使い方】の表札では教育的関わりや今後の計画の方向性などについて学生が考えていることから,ケアにつながる情報として活用することを理解し,情報収集の段階にとどまらず,看護を展開するプロセスを辿ろうとしていることが理解できた.この内容を黒田は示していないが,情報収集において看護師としてはぜひ持っていてほしい視点であると考える. 【知るべき情報】では 《患者の知識》, 《患者の思い》, 《患者の生活》, 《食事》,が抽出されていたが,これらは患者の健康障害の影響や反応を,患者の主観的体験として知ることや患者の実際の生活を知ることなどの必要性に学生が気づいていることが考えられ,② 看護的視点をもつことができていたといえる. 【事例に添った具体的方法の提示】では黒田の示した ① 看護師自身が患者と実際に関係をもちながら情報を集めていることを通して, 《患者のことばを受けた方法の提示》, 《食事・運動に関連する内容》, 《コミュニケーションに関連した方法の提示》 が行われていた. 【セッションとの関連が明確な結論】の表札では黒田の示している① 看護師自身が患者と実際に関係をもちながら情報を集めることについて学生は 《実際のコミュニケーションの重要性》 という明確な表現をしている.また, 《患者に添う方法》 では ③ 正確な患者の事実状況を知り,② 看護的視点をもつことについて「今の患者さんの状態や気持ちを理解することによって支援を考えていくことが必要」と表現していた.さらに「会話の中で小さな糸口を見つける気づきがなければいけない」と述べ,学生は ⑤ 患者のちょっとした表情や行動の変化を感じること(能力)を 《情報を得るための方法》 の中で気づいていた.反面, 《コミュニケーション能力》 という表現で学生は,コミュニケーション能力の不足を感じていた. 最後にこれらの内容はすべてセッションの内容を再現したうえで,振り返りとして述べられたものであることから,学生は ⑥ 捉えた事実状況を再現できる能力をもっているということが理解できた. 一方,【セッションとの関連が不明な結論】の表札では,一部の学生ではあったが,SPとの関係性の中で生じた事実を提示することなく,一般的にコミュニケーションで重要な内容である「コミュニケーションには傾聴・共感・寄り添いが大切」,「不安やその恐怖という気持ちをくみ取るためには相槌やオウム返しをする」などをあげていた.これらの学生は患者とのコミュニケーションを通して事実を捉えることやそれを情報として活用すること,コミュニケーションの知識を活用した方法を実施することなどに気づかず,一般的な知識としてコミュニケーションの重要性を確認するに留まっていたと考えられる. 以上の内容から,事実を捉えられた学生は,黒田の示した質の高い情報を得るために必要な内容を理解できていたと考えられ,事実を客観的データとして捉え,さらにケアにつながる情報として活用することの必要性を理解するというSP参加型授業の効果は認められた.

Page 9: 模擬患者 (Simulated Patient: SP) 参加型授業の …模擬患者(Simulated Patient: SP)参加型授業の効果について 117 の学生を対象にもうひとりのSPが同じ内容で実施した.それぞれに代表学生1名とSPのセッ

123模擬患者(Simulated Patient: SP)参加型授業の効果について

Ⅵ.研究の限界と今後の課題

 今回の授業において,一部の学生ではあるが,事実を情報として十分捉えられず,【セッションとの関連が不明な結論】として一般的なコミュニケーションの重要性を確認するに留まった学生がいた. また,SPとのセッションに参加した学生は,3名の学生であったことから,セッションを経験していない学生が存在する.これらの学生に対して,「事実を情報として捉え,ケアにつながる情報として活用することの必要性」について臨地実習という実践の場面を通して,再度理解を深める機会を提供していく必要があると考える.

Ⅶ.結  論

 事実を情報として捉え,【セッションとの関連が明確な結論】を得た学生は,ケアにつながる情報として活用することの必要性を理解していたことから,SP参加型授業の効果は認められた.しかし,事実を情報として十分捉えられず,【セッションとの関連が不明な結論】として一般的なコミュニケーションの重要性を確認するに留まった学生がいた.

謝辞 本研究にご協力くださいました学生の皆さま,模擬患者様としてご協力頂きました静岡医療コミュニケーション研究会代表 森田みつ子様,および扇美代子様に深く感謝いたします.

引用・参考文献

藤崎和彦(2001):模擬患者によるコミュニケーション教育,Quality Nursing, Vol.7 No.7, PP.4 –12.本田多美枝,上村朋子(2009):基礎教育における模擬患者参加型教育方法の実態に関する文献的考

察,日本赤十字九州国際看護大学IRR第7号,PP.67–76.黒田裕子(2001):わかりやすい看護過程(第1版)照林社,東京.藤崎 郁(2001):模擬患者を活用した心理社会的側面のフォーカスアセスメント能力養成プログラ

ムの開発,Quality Nursing, Vol.7 No.7, PP.13 –20.河合千恵子(2001):模擬患者を利用した教育が学生の態度に与えた影響,Quality Nursing, Vol.7

No.7, PP.33 –39.豊田久美子,任和子(2001):模擬患者を利用したリアリティある授業:患者教育プログラムの活用,

Quality Nursing, Vol.7 No.7, PP.40 – 48.豊田久美子,任和子(2001):模擬患者を利用した授業:学生の評価から,Quality Nursing, Vol.7

No.7, PP.49 – 53.小野田真弓,須田雅美,村田日出子(2011):専門学校における模擬患者導入の実際:派遣を受けて,

看護教育,Vol.52 No.8, PP.593 – 600.


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