+ All Categories
Home > Documents > 資料4 Collective Impact ·...

資料4 Collective Impact ·...

Date post: 23-Aug-2020
Category:
Upload: others
View: 0 times
Download: 0 times
Share this document with a friend
26
Collective Impact (集合的インパクト) とは何か 中央教育審議会 教育振興基本計画部会 2016.7.25 (独)大学改革支援・学位授与機構 教授 田中弥生 ©YayoiTanaka 無断転用禁 1 資料4
Transcript
Page 1: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

Collective Impact(集合的インパクト)

とは何か

中央教育審議会 教育振興基本計画部会

2016.7.25(独)大学改革支援・学位授与機構

教授 田中弥生

©YayoiTanaka 無断転用禁 1

資料4

Page 2: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

全体の構成1. 問題提起

・3つの悩み(エビデンス、効果のスケール、大学)

・ひとつの解としてのコレクティブ(集合的)・インパクト

2. コレクティブ・インパクトとは何か

・その特徴

・シンシナティの事例(原点)

3. モデル展開のための分析

・大学の重要な役割:データ分析、モデル汎用性の追求

・4つの柱

・実践者インタビューから

4. 日本への示唆

©YayoiTanaka 無断転用禁2

Page 3: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

1. 問題提起3つの悩み

エビデンス・ベースの意思決定というが、どのように実施・運営するのか?

個々の活動はあるが。。。効果をどうスケールアップさせたらよいのか?

大学の地域連携・貢献活動をどのように進めていったらよいのか?

©YayoiTanaka 無断転用禁 3

Page 4: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

1. 問題提起ひとつの解としてのコレクティブ・インパクト

• 2006年にオハイオ州、シンシナティで、地域の教育問題に、包括的に取り組むためにはじめられたアプローチ(方法・過程)につけられた名称。

• 先の3つの“悩み”にひとつの解を提供している。

©YayoiTanaka 無断転用禁4

「ゆりかごから就職まで」トータルで教育課題に取り組む

• 多様なメンバーによる緩やかなネットワーク

• 共有されたビジョン

• 共有された行動指針

• 共有された指標

• 共有された実行プラン

• 可視化されたデータに基づくコミュニケーション

• 効果のスケールアップへ

Page 5: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

2. Collective Impact(CI)とは何か

「めざましい効果」

• シンシナティおよびケンタッキー北部の91%の生徒の学業指標が向上した。

• 75%の就学前児童の状態(就学に向けた準備状況)が13ポイント向上した。

• シンシナティの4年生の76%の国語力が21ポイント向上した。

出典:http://www.strivetogether.org/results

©YayoiTanaka 無断転用禁5

Page 6: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

全米への広がり

10年後には、32州に広がり、9600団体が従事

出典:StriveTogether HPより http://www.strivetogether.org/ 6

Page 7: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

2.コレクティブ・インパクトとは何か原点:シンシナティの事例 「Strive Together」

・オハイオ州第3の都市のひとつ・歴史ある都市・人口30万人

・210万人(3州15群生活圏)・P&Gなど大手企業7社

・大学、病院、文化施設、野球チーム等

・・シンシナティの公立学校の生徒たちの約半数がドロップアウトしている(2010年)。

・就学前児童のReadinessのレベルが50以下。

・公立学校の数学、国語のスコアが全米平均以下。

・カレッジの卒業率が全米平均以下。

・シンシナティの学生たちは、十分な準備が整わないままに大学に入学し、就職している。

深刻化する教育問題

©YayoiTanaka 無断転用禁

7

Page 8: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

緩やかなネットワーク「Strive Together」

8

シンシナティ教職員連合

シンシナティ小児科中央病院

シンシナティ商工会議所

シンシナティ公立学校連絡会 シンシナティ

州立大学

コヴィントン独立公立学校

ヘイリーUSバンク財団

シンシナティYMCA

JPモルガンチェース(金融機関)

P&G(製造業)

ユナイテッド・ウェイシンシナティ

シンシナティ大学 ★データ管理

ソフトを開発出典:田辺大「ハーバード社会起業大会スタディプログラム2016帰国後勉強会」資料より

Page 9: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

シンシナティ「Strive Together]各アクターの役割

9

「行動指針」(Theory of

Action)

共有された指標と測定(Shared Measurement)

相互関係を強化する活動(Mutually Reinforcing

Activity)

持続的なコミュニケーション(Continuous

Communication)

共有された目的(Vision Goal)

共有された問題(Shared Agenda)

コンサルタント専門スタッフ

NPO,学校、自治体、企業、大学等

企業・大学

NPO,学校、自治体、企業等

出典:田辺大「ハーバード社会起業大会スタディプログラム2016帰国後勉強会」資料より 筆者作成

綜合マネジメント・分析・コミュニケーション・調整部隊(Backbone Organizations)

Page 10: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

3. モデル展開のための分析

・大学の重要な役割~分析と汎用性の追求~

©YayoiTanaka 無断転用禁 10

Page 11: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

3-2 コレクティブ(集合的)インパクト汎用性の検証

• コレクティブ(集合的)インパクトが全米で注目された背景には、それが特定地域の、一過性の成功ではなく、モデルとして汎用性をもたせるように、当初から大学による調査がビルトインされていた点にある。

• 大学地域連合が協働し、シンシナティ・シティの成功モデルをポートランド、リッチモンド、シアトル、ヒューストンで実施。

• モデルの汎用性を検証。11

©YayoiTanaka 無断転用禁

Page 12: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

3-2. コレクティブ(集合的)インパクトの枠組み柱1:コミュニティのビジョンを共有する

(Shared Community Vision)ビジョンの共有

複数のセクター(教育、非営利、財団、ビジネス、自治体)がビジョン「ゆりかごから就職まで」を共有し、責任を持つ。

幼児教育から就職まで教育をトータルで

「ゆりかごから就職まで」トータルで。

行動指針の共有(Theory of Action)共通のビジョン「ゆりかごから就職まで」をもとに、それを達成するための行動を議論した上で、それを可視化し、共通のテンプレートに示し、共有し、プロジェクトに参加する者の行動指針としている。

多角的・戦略的コミュニケーション

コミュニティ全体でこのビジョンを共有するために、戦略的に多角的なコミュニケーションを展開(親委員会、WGの多用な構成員)

12©YayoiTanaka 無断転用禁出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆

Page 13: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

柱2:エビデンスに基づく意思決定Evidence –Based Decision Making

コミュニティ・レベルのアウトカム目標と指標

・多様な人々が集まりアウトカム目標と指標について議論(連続討議)して、リストアップ(100-150個)。

・この中から8-10個のアウトカム目標を選定(選定基準に基づき最も重要な目標を選定)

データ収集と共有

・現場データの収集;教員の負荷が軽減されるよう工夫(地域のソーシャルワーカーへの電話報告を止めて、オンライン報告へ。データは電子化へ)

データ分析能力の確保

・データシステムの開発;個々の生徒のデータを収集し、そこから地区単位の効果を測定するためにシステムを

・ばらばらに記述されたデータの入力負荷と工夫(P&G、マイクロソフト)

・分析結果を可視化し、互いに比較しやすくするためにダッシュボード(主体別にカスタマイズ)の共有

13©YayoiTanaka 無断転用禁

出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆

Page 14: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

柱3:協働のためのアクションCollaborative Action

アウトカム目標と指標達成のための実行プラン

• 柱2で選定されたアウトカムをより詳細で、達成可能な指標に分解し、戦略を策定(ベースラインデータ、成功プログラム、関係者情報等から)

• 指標はコミュニティのニーズから選定(選定基準:緊急性、それを担える主体があるか、データがあるか、資金調達ができるか)

親委員会と実務家中心のWG• ネットワークは実践者を中心に、具体的な目的のもとに構成(ビジネスや地元関係

者も参加)

• 親委員会、WGと目的別に複数委員会を形成

継続的な改善を可能にする仕組み

• 根拠データをもとにした継続的改善を実践(企業関係者が6シグマを提唱)

• アクションプランを作成し毎年進捗をチェックし共有。

14©YayoiTanaka 無断転用禁

出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆

Page 15: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

柱4:投資と持続可能性の担保Investment & Sustainability

パートナーシップを持続させるための工夫とケア

• Strive Togetherを軌道にのせ、効果が見えるようになるまで、少なくとも5年は必要。中長期のコミットをいかに獲得するか(企業等)

• 資金源を多様化し、資金提供者を応援団にする。非資金の資源が新たな資金源の開拓につながることもある。

アンカー役:バックボーン・スタッフ

Strivie Togetherはネットワークであり、本社が存在し、上位下達で、メン

バーを管理するような形態ではない。バックボーンと呼ばれるスタッフが複数雇用。その役割は多岐にわたる(例・関係団体との頻繁なコミュニケーション、・プロジェクトマネジメント、・データ分析、・政策分析、資金調達)

15©YayoiTanaka 無断転用禁

出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆

Page 16: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

柱4:投資と持続可能性の担保Investment & Sustainability政策に反映する

・政府関係者が意思決定する際に、必要なデータを示す(政策決定者は確固た

るエビデンスが示されるまでなかなか動かなかったが、最終的に、市当局は5年

間で30万ドルをコミット)

大学の役割

・大学は地域の教育問題において鍵となる関係者であることを認識(教師の輩出、高校卒

業生の受け入れ)

・都市大学連合との協働

・メンバーの大学は教育改革、コミュニティ改革にコミットすべく、データ分析、事例分析とモ

デル普及などの役割を果たしている。

16©YayoiTanaka 無断転用禁

出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆

Page 17: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

3-3 実践者インタビューから• アーカンソー州の教育プログラムのコーディネーター

(バックボーン)として従事。

•多くの人々の参加とエネルギー

・親委員会(7回)・WG(100時間以上)・48のフォーカスグループ(550人)・教育者調査(6000人以上が回答)・地域関係者調査(2000人以上が回答)

丁寧なコミュニケーション

・毎週現地に赴いていた(月4日ほど滞在)・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応)・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り・全員参加、全員が納得ゆく合意形成・追加メンバーの推薦があれば受け入れる・議論プロセスの透明性

©YayoiTanaka 無断転用禁 17

Page 18: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

4. 日本への示唆共通点と適用可能性

共通する課題

18©YayoiTanaka 無断転用禁

Page 19: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

4. 日本への示唆共通点と適用可能性

• モデルの可能性• 安易に米国モデルを輸入してはいけないが

• もし教育・福祉問題を扱うのなら

• 調査を行い、より詳細の情報収集・分析の上、日本への適用性を議論する必要あり

• 小事例からスタートする

・わかりやすく、多くの人々が必要と感じている課題を選択

・トータルな課題解決を念頭に入れながらも段階的に着手する(パイロット)

・日本の事情に応じたアクターを集める

・アクターは課題解決によって間接・直接のベネフィットを受ける

・大学(研究者によるデータ分析のみならず、学生ボランティア等も)

・情報開示とデータ提供・収集はオープンに

・バックボーン役は合意形成だけでなく利害のバランスもとる

©YayoiTanaka 無断転用禁19

Page 20: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

補足資料

©YayoiTanaka 無断転用禁 20

Page 21: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

共有されたビジョン~包括的教育アプローチとビジョン~

21

Page 22: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

共有された行動指針(Theory of Action)

22出典:http://www.strivetogether.org/sites/default/files/StriveTogether_Theory_of_Action_v3_06.2016.pdf

進捗段階立ち上げ段階

(模索)継続段階

システム変化(インパクト)

Page 23: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

共有された指標とデータゴール・指標の選定・測定と共有

• ゴール別、地域別に経年変化を測定

• 可視化と比較

• 活動のマッピングと成功事例

• 毎年3地域データを

• まとめて全体の進捗を可視化

• ゴール別にフォーカスグループ(50団体ほど)

• 指標の選定

• 例:ゴール2(学校、地域、家族で30指標)

• 行動指針に基づき5つのゴール

• 初年度はベースライン年⇒毎年進捗を測定

©YayoiTanaka 無断転用禁23

Page 24: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

共有された実行プラン実行プラン・進捗と効果・向上のための継続的コ

ミュニケーション

実行プラン策定と共有

(グループ単位)

進捗確認(可視化データ)と共有

(6σ手法)

効果共有・改善・向上

へ議論バックボーン

出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2015)Strive Together, SUNYより筆者作成

©YayoiTanaka 無断転用禁

24

Page 25: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

可視化されたデータに基づくコミュニケーション

進捗レポート

出典:StriveTogether HPより http://www.strivetogether.org/ ©YayoiTanaka 無断転用禁

25

Page 26: 資料4 Collective Impact · ・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応) ・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り ・全員参加、全員が納得ゆく合意形成

26

シンシナティの全公立学校

初等教育への準備

小学4年生の読解力

高校卒業

大学等入学

(効果のスケールアップへ ~10年目の効果~

8年生[中学生]の数学力

出典:田辺大「ハーバード社会起業大会スタディプログラム2016帰国後勉強会」資料より


Recommended