超分子とは何か！

　イメージ的には、第１図のように、２つ以上の有機化合物分子が共有結合無しに、立体的にはずれないように絡みあっている（結合している）ものです。

カテナンは鎖を意味し、ロタキサンは直鎖状に環状構造がつながり、長く複雑になり、我々の体を構成する糖質、たんぱく質や核酸のような巨大分子を作る可能性を持っています。　最も特徴的なことは、それぞれの構成分子が、第２図のようにダイナミックに動くということです。

　

ロタキサンを例に取れば、直鎖状２級アミンのアルキル基軸にクラウンエーテル環状の分子が貫通した構造をしています。直鎖状軸を固定すると、エーテル環は軸上を横に滑る運動と自転運動の２種類の運動をすることができます。　現在これらの応用は広い分野にまたがり研究されています。一例を挙げるとコンピューター素子です。環状分子が中央にある時と一方の端にある時では全体の立体構造が異なり、これをプラスやマイナスのシグナルとすれば、二進法の考え方と重なり、分子レベルの超極小のICが可能となります。　しかし、医薬品分野ではこの超分子化合物を利用することは未だ皆無です。　当研究所では、この構造的機能性を医薬品として応用できないかと研究をしています。

　近年最も力を入れているのは、［2］ロタキサン（通称:TRO A-0001）（図3）です。In vitroの実験ですが、各種ヒトがん細胞増殖をnMオーダーで抑制し、既存の5-FUやイリノテカ

図2. 超分子化合物ロタキサンの分子運動のイメージ

左からロタキサン、カテナン、トリフォイルノット、ボロミアンリング図1. 超分子の種類

ン等と同等の強さを認めています。現在このがん細胞増殖抑制がミトコンドリアを介するカスパーゼ系に働き、アポトーシスの可能性を調べています。また、がん細胞腫では、ヒトの大腸がん、肺がん、乳がん細胞ならびにメラノーマ、急性リンパ芽球性白血球細胞、急性骨髄芽球性白血病にも強い作用を示すことを確認しています。歴史上初めて超分子化合物の医薬品としての可能性を発見しました。（当ホームページ「研究紹介」の 1-1ならびに「学術論文」参照）

（左）[2]Rotaxane：化学名；[2][bis(2-(3,5-dimethylphenylcarbonyloxy) ethyl)ammonium trifluoromethanesulfonate]-[dibenzo-24-crown-8]rotaxane，略名；TRO-A0001（右）[2]Catenane：化学名；3,11,18,26-Tetraazapentacyclo[hexatriaconta-5,7,9(36),13,15,20,22,24(33),28,30,34-dodecaene-4,10,19,25-tetrone]，略名；TCO-A0001

図3. ロタキサンならびに カテナンの化学構造式