背景・目的
医療機関からプロトコルの改善をするために!
ー Motivation の上がるプロトコルを目指して ー
近年複雑で煩雑なプロトコルが増加し、担当医師やCRCの負担が増える一方である。しかしながら、今まで医療機関から疑問や問題点を指摘しても、プロトコルや手順の変更は難しいことを多く経験して来た。国際共同治験であれば、なおさら変更は難しいことが多く苦労しているCRCも多い。現在実施している国際共同治験でプロトコルの変更の必要性を感じた一例を振り返り、医療機関からのより良いプロトコル作りへの関わり方について検討する。
希少疾患を対象とした国際共同治験において、原疾患の治療歴の記録を発症から用法・用量を含め全て求められた。疾患の特徴として再発と寛解を繰り返すため、患者により100種類以上もの治療を経て治験にエントリーしているケースもあり、治療歴を全て記載することは困難で、その意義も不明確であった。そのために、CRCから担当CROを通して、治療歴の収集期間の短縮を依頼者に提案するに至った。
CRCからの疑問と提案について依頼者に受け入れてもらえず、規制当局からの指示であるため変更は不可能であるとの返答であった。しかし、患者の前治療歴が治験薬の申請にそれほど意味はないのではないかと考え、依頼者の解釈に疑問を感じた。
当院が診療している希少疾患においては、治験依頼者の開発経験が少なく疾患の理解に乏しい場合も多い。そのため、有効性や安全性を適切に評価できるプロトコル作成や円滑な治験の実施には、臨床経験の豊富な医療機関の意見を依頼者に積極的に働き掛けることが重要であると実感した。しかしながら、今後は治験開始後に変更するのではなく、より積極的にプロトコル骨子作成段階で医療現場の意見を反映できるような場を作って行きたい。依頼者が専門医師への意見を聴取する場面に、CRCも立ち会う事が出来れば有効である。
事例の概要
再発と寛解を繰り返す難病であるため病状に合わせて細やかな治療をする必要がある
悪化
安定
病状
再発
寛解
患者によっては症例報告書で100種類以上の治療歴となるケースも!
この意義はあるのか?結果
考察
経口ステロイド25→20→15→10→5mg/day
※静脈注射ステロイド1000mg/day×3日間
※
医療機関の働きかけた内容
・依頼者の対応
この再発だけで9種類もの治療の記載が必要!
依頼者に医療現場の声を吸い上げてもらうことができたら、より良い関係を構築することができます。
依頼者に直接
メールで連絡
【CROより】
依頼者にも確認はしたのですが、やはりプロトコルに記載してある通りに実施してください。
プロトコル改訂!
【責任医師に相談】
当局の指示で全ての治療歴が必要と言われましたが本当に必要でしょうか?
当院の神経内科専門医である責任医師に相談したところ、規制当局の意図する本質と依頼者の解釈が異なることが判明した。その結果、国際共同治験のプロトコルが変更され、前治療歴の調査期間が大幅に短縮された。
治療
CRO 協議!
本演題発表に関連して開示すべきCOI関係にある企業等はありません
どのような治療歴の患者かは必要だが、簡潔にできないのか?
データの解析に意義のある事なら手間はおしまないけれど・・・
病歴:3年~20年発症
免疫抑制剤内服
【原疾患に対する治療】
No 薬剤名 使用理由 1回量 用法 投与経路
開始 終了 医師署名
1 Azanin 原疾患 50mg 1日 1回 PO 〇年〇月〇日 △年△月△日 □□□□
2 Solu-Medrol 再発 1000mg 1日 1回 IV 〇年〇月〇日 △年△月△日 □□□□
3 Predonine 再発 25mg 1日 1回 PO 〇年〇月〇日 △年△月△日 □□□□
4 Solu-Medrol 再発 1000mg 1日 1回 IV 〇年〇月〇日 △年△月△日 □□□□
5 Rinderon 再発 1.0mg 1日 1回 PO 〇年〇月〇日 △年△月△日 □□□□
〇塚本祥子1) 藤生江理子1) 吉安美和子1) 山岸美奈子1) 中村治雅1) 2) 住吉太幹2)
1) 国立精神・神経医療研究センター 病院 臨床研究推進部2) 国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター
原疾患の病状の一例
再発時の治療例
免疫抑制剤内服
再発
寛解
むさし君
良く考えられた
プロトコルであればCRCのMotivation も上がります!
本当に発症から全ての
前治療歴が必要ですか?
【責任医師より依頼者にメール】
「当局が求める本質とは解釈が異なるのではないでしょうか?」
当局からの指示であるため変更は
不可能です!
【依頼者より】
用法・用量の収集期間を「発症から全て」→「2年」に
短縮します。
【依頼者より】