メカトロエクス実験
オー トメーションなどで流体をエネルギや信号の伝達媒体として利用すること
が多い。ここでは流体伝送の基本的特性を知る。
く実験 1>
1 題 目 流 体抵抗
2 目 的
流体を伝送するとき流体の運動により圧力が低下する こ れは電気抵抗を流れる電
流の関係に似ている 管 内の流れにおいては流体抵抗は流量と圧力差の関係として定
義される 流 量抵抗は発生条件によって,圧 力差が流量に比例する層流抵抗と,流 量
の二乗に比例する乱流抵抗とがある こ の違いを実際に確認して理解することを目的
とする
3 実 験方法
実験のための器具の配置を図1に示す 圧 力調整弁を操作して圧力が加わらない状
態にして,圧 力計の零点を調整する 圧 力の設定は圧力調整弁のつまみを回転させて
おこなう 圧 力を高くするときはつまみを時計方向にまわす こ のとき,過 大な圧力
圧力調整弁
図 1
電子マノメータ
―-80-―
とならないよう注意深く操作する バ イパス弁のつまみをまわすと同様な操作が可能
である こ れらの操作により任意の圧力が設定できるようまず習熟すること 流 体抵
抗における圧力降下は抵抗前後の圧力差として指針式マノメータ (圧力計測器)に 表
示される マ ノメータの検出部は半導体式歪みゲージの一種で,mmH20(~万 分の一
気圧)の 精度で測定が出来る こ の検出部はこわれやすいので,指 針が振切ったら直
ちに圧力を下げるよう圧力調整弁を操作する (調整弁のつまみを反時計方向に回す)
流体抵抗の実験は,ま ず抵抗に流体 (今回は空気)を 流し抵抗の圧力降下を計演1し,
これが適当な圧力降下となったときの流量を流量計により測定する 流 量計は積算流
量計であるため,流 量計の針が 1回転する時間をス トップウォッチを用いて測定し,
積算流量 (抵抗を通過した空気の体積)と 時間の比から流量を計算する
抵抗は細管 (細くて長い管)と 円形絞り (急激に細くなる短い管)の 2種を用いる
4 測 定値とその整理
圧力は水柱mmの単位で 100, 150, 200, 250, 300に 調節 し,測 定中
は一定となるよう注意する 抵 抗による圧力降下と流量の関係は,層 流の場合
(1)兜一泌中
乱流の場合
守= 森
となる こ こに,△p:圧 力差,9:流 量,■ :粘度,
密度,払 t絞りの流路断面積,Ct流 量係数である
■-185x10・kgfs/m2,pョ0.122kgfs2/m4でぁる
(1),(2)式よりそれぞれ
( 2 )
と:管長さ,ど :管内径,p:流 体
20° C付 近では
3
4
ウ一2節伊)
一一
一
毛
阜
-81-
と表し,層 流抵抗化と乱流抵抗駒を定義する 地 とPがまそれぞれの測定結果 (圧力差
毎に5つの結果がある)を 平均して求める 損J定後,直 ■!【 力差と流量の測定結果,
およびこの関係を表す実線をグラフに記入する (図2)
なお, E力 の単位 は l IIlm口20・ 1 絶f/m2=9 8N/112=9 8Pボ志す`なオ)ち 100mmH20
=0,98kPaである 流 量についてはm3/sになるよう整理する
図2に測定結果のグラフの例を示す 層 流抵抗では圧力差と流量の関係は直線で表
され,乱 流では二次曲線で表される 流 量に 二乗した伊とΔrリグラフを作れば,乱
流抵抗の場合の測定値は直線上に並ぶはずである し たがって図は9と△え 伊とΔPの
2枚に分けて書き,そ れぞれ直線で近似できることを確認すること
mmH20
図 2
5 塚
(1)層流と乱流は流れの二つの状態を表す 流 れは通路の形状や流速などによ り,
層流から乱流へ,あ るいはその逆に移行することがある_流 れの中に部分的に層流と
乱流の両方が存在する場合,圧 力降下は層流による圧力降下化'9と
乱流による圧力降
のヽいE
△P
一-82-―
下Pメげの和として次式で表される
ウttF択と0+阜192
(5)
測定した抵抗の中にこのような流れがあるか,△Pとの 関係を(5)式に代入して考察せ
よ
(2)円管内の流れでは層流が乱流に移行する限界はレイノルズ数の値で約2000とされ
ている レ イノルズ数Relま
亀 コ望
■
で表される 実 験に用いた細管はこのような円管といえる 実 験におけるレイノルズ
数の最大値はいくらであったか
(3)細管の理論値と測定値を比較し, もし誤差があればその原因について考察せよ
(4)圧力差毎の抵抗値のばらつきを評価するため,地 ,駒それぞれの標準偏差を求め
る 測 定番号を主測定個数を,で表す 平 均値
五仏ョΣエ (7)
により標準偏差σnは
(8)
で表される た だし,異 なる大きさや単位を持つ抵抗に対しσ,の大小だけで,ば ら
つきの程度の比較はできない こ の場合σ,と輸の比を用いその値により比較をする
と良い こ の比を変動率と呼ぶ 変 動率の大きな抵抗がある場合,そ のばらつきの原
因についても考察しなさい
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<実 験 2>
1 題 目 気 体による信号伝達速度
2 目 的
断続する流れにも抵抗による圧力損失は発生するが,一 定流量が連続して流れる場
合と異なる現象が生じる そ れは,圧 力変化の伝達がおこなわれることであり, ここ
では空気の断続流れによる圧力変化の伝達速度を計測する
3 断 続流れと信号伝達
断続流れを生じさせるため,流 体素子を用いて構成した流体発振器を使う 流 体素
子は一種の自動スイッチであり,素 子内部の構を流れる空気噴流が壁の表面に沿って
流れる現象を利用したものである い ま図3の ように素子内部の流れが右端の壁に
沿って流れ,右 側の溝に流れ込んでいるとする 流 れが続く限りこの状態が維持され,
F l i p― F l o p
P,
図3
この流れが素子の出力日から出力される (論理では 1あ るいはハイレベルの状態)
このとき右側の入力口から信号が与えられると,流 れは右端の壁を剥がれ,左 端の壁
を沿うようになるため左側の溝に流れ出す こ の素子を模式化した図を同図の右に示
す
流体発振器および実験装置の概略を図4に示す 流 体素子から流れ出す信号を図の
-84-
ように入力に接続する 流 体素子,す なわち流体スイッチを切換えるのは,管 路で伝
達された流体素子からの信号である こ のとき左への流れと右への流れが交互に起こ
り,接 続管路の中では断続する流れが発生する
L l
図4
図4の A点 での圧力変化の周期は流体発振器の周期に等しい告であるから,流 体信
号の伝達速度カミー定であるものとすれば,管 路長さと周期との関係は,流 体素子内
部で切換わるのに必要な時間とを考慮して
『=2r十名十毛y
(9)
で表される こ こで,コま周期 (ms),と1と均は両側の管路長さ (m)である
4 実 験方法
図4において,合 計管路長さを11均を最大4血までで5組選び,所 定の場所に接続す
る 流 体発振器へ供給される空気の圧力を圧力調整弁により0 1kgf/cm2(10kPa)に
調整する.管 路を軽く握って発振していることを確認したら,同 期計測用カウンタの
表示部の値を記録する 周 期Rよ同じ条件について10回 の測定をおこない,そ の平
均値を適当な有効数字で整理して用いる 測 定後は速やかにグラフに管路長さと周期
の関係を記入する
管内の圧力変化
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5 信 号伝達速度と切換え時間の計算
誤差が含まれていると予測される測定値から,信 頼できうる値を求めるとき,最 小
二乗法がよく用いられる (9)式 のととを ,汗 と,r1/7と してと11こ2=ととおくと
2 1 + ちノ= r ( l o )
となる 測 定値をこの式に代入すると誤差のため
2労十モノーr=δ (11)
において残差δは一般に零にはならない こ こで,条 件の異なるn回の測定によるn
個の残差の合計δl+δ2+… ‖δnが 極小となるχとンを求める こ れが最小二乗法の
原理である す なわち
幸Σギ到,号Σげ封 Qめ
よりつぎの連立一次式が導かれる
2″I十】予ちノー】]T=0 ' 22'4メ+2,五'ノ…】】毛客=0 (13)
ンの逆数が信号伝達速度である な お,xと が 求まったとき,(10)式 に代入してこの
式を先ほど作成したグラフ上に記入する 値 (直線となる)が 測定結果と一致してい
れば,最 小二乗法の計算は正しくおこなわれていることになる
6 考 察
信号がつぎの二つの速度と関係があるかどうかを考える そ の一つはベルヌイ式を
用いて求める流速の計算である 流 体のエネルギ保存式は
-8い
名 十
号号
十 Z l まれ 十
号を
・ ろ ( 1 5 )
として表される.影 響の小さな項を省略し,さ らに両辺に空気の比重量γをかけると
Y名‐P=正 (16)
が成り立つ,こ のときの流通72が何を意味するか理解した上で,値 を求めよ な お,γ=1.2kgf/m3, gi9 8m/s2として計算しなさい一方,大 気中での音速aは
α=V伐 /Y ( 1 7 )
で表される 大 気圧ら=1 00kgf/cn12,な=1.4として計算しなさい
信号伝達速度を 流速均および音速aと比較して,断 続流れによる信号はどういう形
で伝わるか考察しなさい
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