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市会ジャーナル - Yokohama...2018/08/09  · 第1部 食育の考え方 2 1 育の考え...

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73
各種調査、アンケート結果から見える食の現状、課題 ~栄養面から見る食の状況、食生活・食習慣の変化、食に対する意識~ 学校における食育、朝食欠食率低下に向けた取組、地産地消の取組など <現地レポート> 農園を利用した食育の取組 (横浜市立山元小学校) 学校保健委員会における食育授業 (横浜市立根岸中学校) 食育セミナー、ハマ弁試食会 (横浜市立岩井原中学校) 企業と連携した給食の取組 (川崎市) 食の拠点機能充実事業 (京都市) (写真:横浜市立山元小学校の校内にある農園を利用した食育の取組(P41参照)) 市会ジャーナル 食をめぐる状況 161 平成 28 年度 Vol.12 食育の推進 <政策調査レポート> 横浜市会議会局 政策調横浜市の取組 他都市事例
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各種調査、アンケート結果から見える食の現状、課題

~栄養面から見る食の状況、食生活・食習慣の変化、食に対する意識~

学校における食育、朝食欠食率低下に向けた取組、地産地消の取組など

<現地レポート>

農園を利用した食育の取組 (横浜市立山元小学校)

学校保健委員会における食育授業 (横浜市立根岸中学校)

食育セミナー、ハマ弁試食会 (横浜市立岩井原中学校)

企業と連携した給食の取組 (川崎市)

食の拠点機能充実事業 (京都市)

(写真:横浜市立山元小学校の校内にある農園を利用した食育の取組(P41 参照))

市会ジャーナル

食をめぐる状況

第 161 号

平成 28 年度 Vol.12

食育の推進 <政策調査レポート>

横浜市会議会局 政策調査課

横浜市の取組

他都市事例

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食育の推進

はじめに … 1

第1部 食育の考え方 … 2

第2部 食をめぐる現状 … 3

(1)日本型食生活の変化 … 3

(2)若年層における食生活の乱れ … 6

(3)食の「外部化」の進展、定着 … 9

(4)低い食料自給率、多い食品ロス … 12

第3部 国の取組について … 16

(1)食育の背景、食育基本法制定の経緯 … 16

(2)食育基本法の概要 … 17

(1)食育基本法制定後の取組内容および評価 … 19

(2)第3次食育推進基本計画(平成28年度~平成32年度)の概要 … 20

第4部 横浜市の食育の現状、取組について … 24

(1)栄養バランスに配慮した食生活の状況 … 24

(2)朝食の摂取状況 … 25

(3)食に対する意識の状況 … 29

(4)食品ロスの状況 … 31

1 横浜市の現状 … 24

1 ⾷育の考え⽅の体系的な整理 … 2

1 国の調査結果に⾒る⾷の傾向、課題 … 3

2 ⾷育基本法制定後の取組内容、第3次⾷育推進基本計画 (平成28 年度〜平成32 年度)の概要 … 19

1 ⾷育基本法成⽴の背景と経緯 … 16

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(1)食育推進計画策定の経緯 … 32

(2)第2期横浜市食育推進計画の概要 … 32

(1)学校における食育推進 … 34

(2)小学校、中学校の取組事例 … 38

(3)保育所等における取組 … 48

(1)朝食の習慣化に向けた取組 … 54

(2)横浜市食育フォーラムとの連携 … 56

(3)各区における取組 … 57

(1)はまふぅどコンシェルジュの育成、活動支援 … 59

(2)横浜産野菜を活用した食育 … 59

(3)地元の農畜産物を使った「スーパー給食」 … 60

(4)横浜市中央卸売市場における取組 … 60

(5)食品ロス削減を学ぶ取組 … 61

第5部 他都市の食育の取組について … 65

(1)企業と連携した給食の取組(川崎市) … 65

(2)食の拠点機能充実事業(京都市)… 66

食文化の継承について … 67

子ども食堂の取組 … 51

日本の食料事情と食育の取組について … 62

農園を利用した食育(横浜市立山元小学校) … 41

学校保健委員会による食育授業(横浜市立根岸中学校) … 43

食育セミナー、ハマ弁試食会(横浜市立岩井原中学校) … 46

2 第2期横浜市⾷育推進計画の概要 … 32

3 学校、保育所等における⾷育 … 34

4 栄養バランスのよい⾷⽣活をめざした⾷育 … 54

現地レポート①

現地レポート②

現地レポート③

コラム①

コラム②

1 他都市の特⾊ある取組 … 65

コラム③

5 ⾷の循環や環境を意識した⾷育 … 59

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1

はじめに

わが国における「食育」は、 1990年代以降、特にその必要性が説かれるようになり、

食に関して子ども自身を教育することを主たる目的として、様々な個人や組織がそれぞ

れの考えに基づいて取り組んできました。

近年の食生活をめぐる環境の変化から、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊

かな人間性をはぐくむことができるようにするための食育を推進することが喫緊な課題

とされ、食育の基本理念を明らかにしてその方向性を示し、国、地方公共団体及び国民

の食育の推進に関する取組を総合的かつ計画的に推進することを目的として、平成17年

7月に食育基本法が施行されました。

食育基本法によると、食育は、「生きる上での基本であって、知育、徳育、体育の基礎

となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』

を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる」こととさ

れています。

食育はあらゆる世代に必要なものとされ、国や横浜市でも全世代に対する食育が推進

されていますが、食育基本法では「子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の

形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐ

くんでいく基礎となる」とあり、特に子ども世代における食育の重要性を指摘していま

す。

また、食生活に関する意識の低さや、栄養バランスや食習慣の乱れなど、若い世代は

他の世代に比べ課題が多いことが指摘されています。

このような状況において、子どもを含む若い世代に対する施策を中心に広がりを見せ

る食育の取組を紹介します。

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第1部 食育の考え方

2

1⾷育の考え⽅の体系的な整理

第1部 食育の考え方

「食育」の概念には、食生活における知識・選択力の習得を通じた単なる食生活の改

善にとどまらず、食を通じたコミュニケーションやマナー等の食に関する基本所作の実

践に加えて、自然の恩恵等に対する感謝の念と理解、優れた食文化の継承等食に関する

基礎の理解など、広範な内容が含まれます。

平成19年6月の食育推進有識者懇談会(食育担当大臣主催)において、こうした「食

育」の幅広い概念を理解するための参考となるよう、下記の表のとおり、「食育」の概念

が体系的に整理されました。

【出典】内閣府「平成27年版食育白書」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/h27_index.html

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第2部 食をめぐる現状

3

1 国の調査結果に⾒る⾷の傾向、課題

第2部 食をめぐる現状

(1)日本型食生活の変化

(栄養面から見る食生活の変化)

日本における食生活の変化を長期的に見ると、日本人1人1日あたりの総供給熱量

(カロリー)は若干増加しているだけですが、その内訳は大きく変化しています。顕

著な変化としては、米の消費減少と、肉や油脂類の消費増加が見られます。米の消費

量は昭和37年をピークに一貫して減少傾向であり、昭和30年代と比較して現在では

半分程度にまで減少しました。一方、急速な食の洋風化により、肉、乳製品、卵など

の畜産物や油脂類の消費が大幅に増加しています(表2‐1)。

昭和50年代頃に、栄養素の熱量バランスが平均的にみて

適切な、いわゆる「日本型食生活」が形成されました。日

本が世界有数の長寿国である理由は、こうした優れた食事

内容にあると国際的にも評価されていました。しかしなが

ら、米や野菜の消費減少等と、高脂肪・高カロリーな畜産

物や油脂類の摂取量の増加によって、近年では栄養のバラ

ンスが乱れ、脂質過剰となっています(表2‐2)。

PFC熱量⽐率の推移 (1980 年度=100、供給熱量ベース) 表2‐2

注:数値は1980年度のPFC比率(P:13.0%、F:25.5%、C:61.5%)を100とした時の指標

⽇本⼈1⼈1⽇あたりの⾷べ物の割合の変化(カロリーベース)

48.3%

畜産物

3.7%

油脂類

4.6%

⼩⻨

10.9%⿂介類

3.8%

その他

28.7%

22.1%

畜産物

16.8%油脂類

14.8%

⼩⻨

13.7%

⿂介類

4.2%

その他

28.4%

表2‐1

平成 27 年度 1⽇の総供給熱量 2,425Kcal

昭和 35 年度 1⽇の総供給熱量 2,290Kcal

日本型食生活の例

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第2部 食をめぐる現状

4

(食生活の変化が健康に及ぼす影響)

食生活近年の肥満、およびやせの割合の増加は、上に挙げたような栄養バランスの

崩れが大きな要因とされています。

肥満者は男性の30~60歳代で約3割を占め、いずれの年代も30年前に比べ1.5倍

程度増加しています。一方、女性は若年層において低体重の割合が高く、20代のやせ

の割合は、近年は2割程度で推移しています。(表2-3)。

肥満は糖尿病や高脂血症、高血圧等の生活習慣病のリスクを高めることが明らかに

なっています。特に2型糖尿病においては、BMIが1増えるごとに発症リスクが17%

上昇するとの追跡調査があります(表2-4)。このため、国をあげて食事や生活習慣

の改善による肥満の予防・改善に向けた取組が進められています。若い女性のやせは、

貧血や骨粗しょう症のリスクを高めるほか、低体重児の出産や不妊などの危険性も指

摘されています。また、肥満、やせのいずれでも、がんによる死亡リスクが高まると

肥満者(BMI≧25)の割合(男性)

やせの者(BMI<18.5)の割合(⼥性)

(参考)厚生労働省「健康日本21(第2次)」の目標

○適正体重を維持している者の増加(肥満(BMI25 以上)、やせ(BMI18.5 未満)の減少)

【目標値】 ・20~60 歳代男性の肥満者の割合 28%

・40~60 歳代女性の肥満者の割合 19%

・20 歳代女性のやせの者の割合 20%

表2‐3

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第2部 食をめぐる現状

5

いう研究結果もあります。(表2‐5)。

表2‐4

【出典・参考】

2-(1)農林水産省HP「日本型食生活のすすめ」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/style.html

《表2-1、2》※出典に記載の数値を基に筆者作成

農林水産省「食料需給表」 http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyukyu/

《表2‐3》厚生労働省「国民健康・栄養調査」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html

《表2‐4》財団法人 日本食肉消費総合センター

「肥満を科学する 疫学調査から見た肥満と疾病・死亡率」

http://www.jmi.or.jp/publication/publication_detail.php?id=154

《表2‐5》国立研究開発法人 国立がん研究センター

「多目的コホート研究の成果 2015年12月」

http://epi.ncc.go.jp/books/3821.html

やせ or 肥満のリスク 表2‐5

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第2部 食をめぐる現状

6

(2)若年層における食生活の乱れ

(高い朝食欠食率)

朝食の欠食率※を世代別に見ると、20~30歳代の欠食率が高く、特に20歳代男性は

37.0%、30歳代男性は29.3%が朝食を欠食しています。昭和55年の数値はそれぞれ

11.5%、6.7%であり、増加が著しいことが分かります。また、1~6歳では4.6%、7

~14 歳では 6.5%が朝食を欠食しており(表2‐6)、その割合は近年横ばいで推移

しています。

※朝食の欠食率 … 調査を実施した日(任意の1日)において朝食を欠食した者の割合

朝食欠食が健康に及ぼす影響については様々な報告がありますが、文部科学省の調

査結果より、朝食摂取の有無と学力や体力の間に、明らかな相関があることが分かっ

ています(表2‐7)。

朝⾷の⽋⾷率 表2‐6

朝⾷摂取と学⼒調査及び体⼒テスト結果との関係 表2‐7

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第2部 食をめぐる現状

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(保護者が子どもの食習慣に与える影響)

子どもの欠食率について、朝食を欠食している保護者の子どもと、朝食を必ず食べ

る保護者の子どもを比較すると、朝食を欠食している保護者の子どもの欠食率は4倍

近くにもなり(表2‐8)、子どもの食生活は保護者に大きく影響されることが分か

ります。また、小・中・高校生の頃に欠食が始まったと回答している割合は男性では

半数程度を占め(表2‐9)、子どもの頃の食習慣が、大人になってからの食生活に

も影響を及ぼしていると言えます。

朝⾷⽋⾷が始まった時期(20 歳以上) 表2‐9

保護者の朝⾷の摂取状況と⼦どもの摂取状況 表2‐8

※保護者

…普段の食事の用意をして

いる保護者を対象とする。

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第2部 食をめぐる現状

8

(栄養バランスに配慮した食生活の状況)

主食・主菜・副菜をそろえて食べることが1日2回以上ある頻度は若い世代ほど少

なく、20歳代においては、毎日実践できている割合は約4割に留まっています(表2

‐10)。

野菜の摂取量についても、男女ともに若い世代ほど摂取量が少なくなっており、20

歳代の 1 日の野菜摂取量は 238.1g と、1日の摂取目標量である 350g に対して 100g

以上不足しています(表2‐11)。

ここに挙げたデータからも明らかなとおり、若い世代はその他の世代と比較して、

健康的な食生活の実践においては課題が多く、男性はその傾向がより強くなっていま

す。

特に、20~30歳代を中心とする世代は、これから親になる世代でもあり、健康に配

主⾷・主菜・副菜をそろえて⾷べることが1⽇2回以上ある頻度 表2‐10

野菜摂取量の平均値(20 歳以上、年齢階級別) 表2‐11

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第2部 食をめぐる現状

9

慮した食生活を送るなど、より食に対する意識を高めるための取組を進める必要性が

指摘されています。

(3)食の「外部化」の進展、定着

(社会情勢の変化により外食、調理食品の需要が拡大)

食事を家庭内で調理するのではなく、外食や調理食品、加工食品を利用する、「食

の外部化」が進展し、現在では食料消費支出の44.0%を占めています。単身世帯の増

加や、女性の雇用者増、それに伴う共働き世帯の増加など、家庭を取り巻く社会情勢

の変化を背景に、外食だけでなく調理食品、加工食品の需要が拡大しています。(表

2‐12)

我が国の世帯数は、昭和 55 年以降、単身世帯、夫婦のみの世帯及びひとり親と子

の世帯を中心に増加しています。単身世帯は30%を超えており、平成47年には37.2%

【出典・参考】

《表2‐6》「平成28年厚生労働白書 資料編」

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16-2/

《表2-7、10、11》農林水産省「平成27年食育白書」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/h27_index.html

《表2-8》文部科学省「家庭で・地域で・学校でみんなで早寝早起き朝ごはん

-子どもの生活リズム向上ハンドブック-」

http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/08060902.htm

《表2‐9》 厚生労働省「平成21年度国民健康・栄養調査」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html

⾷料消費⽀出に占める外部化率の推移 表2‐12

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第2部 食をめぐる現状

10

まで増加すると推定されています(表2‐13)。

世帯別の食料消費支出を見ると、単身世帯の食事では、外食、加工食品、調理食品

が多くを占め、35歳未満の男性の単身世帯では特に、調理食品と外食の割合が食料消

費全体の72%を占めています(表2‐14)。

(若年層を中心に食の外部化が進む)

外食の利用頻度を見ると、男女ともに若い世代ほど利用頻度が高く、20 歳代、30

歳代の男性では約 18~19%が週に4回以上外食を利用しています。また、20~60 歳

家族類別にみた⼀般世帯の構成割合の推移 表2‐13

外食

世帯員1⼈1か⽉当たりの⾷料消費⽀出額と種類別割合(平成 24 年) 表2‐14

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第2部 食をめぐる現状

11

代の働く世代の半数近くが、弁当や総菜を週に1回以上利用していることが分かりま

す(表2‐15)。

外食や弁当・惣菜を定期的に(週2回以上)利用する人は、ほとんど利用しない人

と比較して主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の割合が低く、バランスが取りにく

い傾向にあることも明らかになっています(表2‐16)。

外⾷及び持ち帰りの弁当・惣菜の利⽤頻度別、 主⾷・主菜・副菜を組み合わせた⾷事の頻度

表2‐16

弁当・惣菜

※外食及び持ち帰りの弁当・惣菜を「定期的に利用している者」とは、外食又は持ち帰り弁当・

惣菜のいずれかの利用頻度が週2回以上の者、「ほとんど利用していない者」とは、外食及び持

ち帰り弁当・惣菜のいずれの利用頻度も週1回以下の者である。

外⾷及び持ち帰りの弁当・惣菜を利⽤している頻度 表2‐15

外食

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第2部 食をめぐる現状

12

(4)低い食料自給率、多い食品ロス

(日本の食料自給率は低水準で推移)

日本の食料自給率は、長期的に低下傾向で推移しています。カロリーベースの食料

自給率は昭和40年の73%から40%程度にまで低下し、近年は横ばいで推移していま

す。(表2‐17)

※注1:カロリーベース総合⾷料⾃給率

※注2:⽣産額ベース総合⾷料⾃給率

各品目の自給率の推移をみると、米の自給率が高い水準で推移している一方、大豆

や小麦の自給率は低くなっています。畜産物については、飼料の自給率が反映される

ため、飼料の多くを輸入に依存している肉類の自給率は低い水準で推移しています。

(表2‐18)

※注2 =

※注1

※国内消費仕向額: 1 年間に国内で消費に回された⾷料の量

【出典・参考】

《表2-12》農林水産省「我が国の食生活の現状と食育の推進について」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/

《表2-13、14》農林水産省「平成24年度 食料・農業・農村白書」

http://www.maff.go.jp/j/wpaper/

《表2‐15、16》 厚生労働省「平成27年度国民健康・栄養調査」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html

⾷料⾃給率の推移 表2‐17

品⽬別⾃給率の推移 表2‐18

1⼈・1⽇当たり国産供給熱量

1⼈・1⽇当たり総供給熱量

⾷料の国内消費仕向額※ ⾷料の国内⽣産額

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第2部 食をめぐる現状

13

世界的に見ると、カナダ、オーストラリア、フランス、アメリカなど輸出が多い国

では食料自給率が100%を超えていますが、日本の食料自給率は先進国中最低水準にな

っています(表2‐19)。

日本の自給率の低下は、長期的にみると、自給率の高い米の消費が減少したことと、

飼料や原料を海外に依存する畜産物や、同じく原料をほとんど輸入に頼る油脂類の消

費量が増えたことが主な要因となっています。

昭和 60 年代以降は、食料消費の拡大と消費の品目構成の変化に対し、国内生産で

は対応できなかった品目を中心に輸入が増大したことや、耕地面積・作付延べ面積の

減少、生産者の減少・高齢化、面積当たり収穫量の伸び悩みなど、国内農業の縮小が

自給率低下に大きく影響しているとの報告があります。

また、外食や調理・加工食品の大幅な増加といった食料消費の変化に伴い、食品産

業では原材料に対して「品質のばらつきが少ない」「季節や天候状態による価格変動

が少ない」「必要な数量を確実に提供できる」といったことが求められるようになり

ました。このようなニーズに国内生産が十分に対応しきれなかったことも、国内生産

縮小の要因と指摘されています。

食料の輸入依存は、国内の食料供給が海外の食料供給量や経済状況、環境変化等に

左右されることを意味し、将来にわたる安定的な食料供給のためには、食料自給力の

強化が重要です。

日本の食料自給力の維持向上に当たっては、生産者のみならず、消費者も国産の農

産物を選択するなど、積極的に消費拡大に向けて取り組むことが不可欠となっていま

す。

(先進国で多い消費段階の食品ロス)

一方、食料廃棄量の多さも世界的な課題となっています。FAO(国際連合食糧農

業機関)の研究報告によると、開発途上地域では消費の段階で捨てられる食料は非常

⽇本と諸外国の⾷料⾃給率 表2‐19

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第2部 食をめぐる現状

14

に少なく、先進国では消費段階において多くの食料が捨てられている状況であること

が分かります(表2‐20)。

農林水産省の調査によると、日本の食品ロス量(食品廃棄物のうち、可食部分と

考えられる量)は年間632万トンであり(表2‐21)、これは、世界全体の食料援助

量の約2倍に相当します。1人当たりにすると、1日に茶碗1杯分(136g)のご飯

の量の食料を、食べられるにも関わらず捨てている計算になります。

平成27年7月には食品リサイクル法に基づく新たな基本方針が策定され、食品廃

棄物の発生抑制、再生利用の促進、フードチェーン全体での食品ロス削減に向けた

取組みなどが進められることとなりました。

日本の食品ロスは、食品関連事業者からの発生量と一般家庭からの発生量がおよ

そ半々であり、今後は食品業界と消費者がそれぞれの立場で、食品ロス削減に向け

て取り組むことが期待されます。

表2‐21

各地域における消費及び消費前の段階での1⼈当たり⾷料のロス※と廃棄量 表2‐20

※表2-20において「食料のロス」は、人の消費に向けられる食料を特定的に扱う

サプライチェーンの各段階における食料の量的減少と定義されている。

⾷品ロス量 合計 632 万トン

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第2部 食をめぐる現状

15

【出典・参考】

国立国会図書館「調査と情報 第546号 食料自給率問題」

http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue2006.html

《表2-17、20》農林水産省「知ってる?日本の食料事情」

http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/panfu1.html

《表2-18》農林水産省「平成26年度 食料・農業・農村白書」

http://www.maff.go.jp/j/wpaper/

《表2-20》 FAO(国際連合食糧農業機関)「GLOBAL FOOD LOSSES AND FOOD WASTE」(2011)

http://www.jaicaf.or.jp/reference-room/publications/detail/article/94.html

《表2-21》農林水産省「食品ロスの削減とリサイクルの推進」

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html

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第3部 国の取組について

16

1 ⾷育基本法成⽴の背景と経緯

第3部 国の取組について

(1)食育の背景、食育基本法制定の経緯

食育を推進するため、食育基本法成立以前にも文部科学省、厚生労働省、農林水産

省などそれぞれが中心となっていろいろな取組を進めてきました。また、地方公共団

体や民間団体においても、食育への取り組みが自発的に行われてきました。

しかし、第2部で述べた通り、食事の栄養バランスの偏りや不規則な食事の増加、ま

たそれに伴う肥満や生活習慣病の増加、さらに平成 13 年に起きたBSE問題や食品の

虚偽表示問題等の「食」の安全上の問題の発生や、「食」の海外への依存など、食に関

する社会全体としての問題が顕在化しているとの認識が持たれました。

そのような状況を踏まえ、問題に対する抜本的な対策としての食育を強力に推進する

ため、平成17年6月に食育基本法が議員立法により制定されました。

同年7月の食育基本法の施行後は、各種の制度改正等により食育の推進体制が強化さ

れています。

(食育基本法制定の経緯)

平成12年3月 当時の文部省、厚生省、農林水産省で「食生活指針」を策定

平成14年11月 自民党により食育調査会設置

平成16年3月 食育基本法案提出

平成17年6月 食育基本法が国会で成立

平成17年7月 食育基本法施行

平成17年4月 栄養教諭制度の開始

平成17年6月 栄養バランスガイドの策定

平成18年3月 第1次食育推進基本計画策定

食育月間(6月)、食育の日(毎月19日)開始

早寝早起き朝ごはん国民運動開始

平成20年3月 小中学校の学習指導要領改正 「食育の推進」を明記

平成20年4月 保育所保育指針改定 「食育の推進」を明記

メタボ健診開始

平成21年4月 学校給食法改正 目的に「学校における食育の推進」を明記

平成23年3月 第2次食育推進基本計画策定

平成26年4月 スーパー食育スクール事業開始

平成28年3月 第3次食育推進基本計画策定

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第3部 国の取組について

17

(2)食育基本法の概要

食育基本法の前文においては、「食育は、生きる上での基本であって、知育、徳育、体

育の基礎となるべきものと位置付けられるとともに、様々な経験を通じて、『食』に関す

る知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育

てる」ものとして食育の推進が求められるとされています。

食育基本法・前文

二十一世紀における我が国の発展のためには、子どもたちが健全な心と身体を培い、

未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにするとともに、すべての国民が

心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすることが

大切である。 子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何より

も「食」が重要である。今、改めて、食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育

及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関

する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を

育てる食育を推進することが求められている。もとより、食育はあらゆる世代の国民に

必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな

影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基

礎となるものである。 一方、社会経済情勢がめまぐるしく変化し、日々忙しい生活を送る中で、人々は、毎

日の「食」の大切さを忘れがちである。国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則

な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の

安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会

に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、

自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然

の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日

本の「食」が失われる危機にある。 こうした「食」をめぐる環境の変化の中で、国民の「食」に関する考え方を育て、健

全な食生活を実現することが求められるとともに、都市と農山漁村の共生・対流を進め、

「食」に関する消費者と生産者との信頼関係を構築して、地域社会の活性化、豊かな食

文化の継承及び発展、環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進並びに食料自給率

の向上に寄与することが期待されている。 国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」に関わる人々

の様々な活動への感謝の念や理解を深めつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく

適切な判断を行う能力を身に付けることによって、心身の健康を増進する健全な食生活

を実践するために、今こそ、家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、

食育の推進に取り組んでいくことが、我々に課せられている課題である。さらに、食育

の推進に関する我が国の取組が、海外との交流等を通じて食育に関して国際的に貢献す

ることにつながることも期待される。 ここに、食育について、基本理念を明らかにしてその方向性を示し、国、地方公共団

体及び国民の食育の推進に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を

制定する。

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第3部 国の取組について

18

食育基本法の概要

1.目的

国民が健全な心身を培い、豊かな人間性を育む食育を推進するため、施策を総合的

かつ計画的に推進すること等を目的とする。

2.関係者の責務

(1)食育の推進について、国、地方公共団体、教育関係者、農林漁業関係者、

食品関連事業者、国民等の責務を定める。

(2)政府は、毎年、食育の推進に関して講じた施策に関し、国会に報告書を提出

する。

3.食育推進基本計画の作成

(1)食育推進会議は、以下の事項について食育推進基本計画を作成する。

①食育の推進に関する施策についての基本的な方針

②食育の推進の目標に関する事項

③国民等の行う自発的な食育推進活動等の総合的な促進に関する事項

④その他必要な事項

(2)都道府県は都道府県食育推進計画、市町村は市町村食育推進計画を作成する

よう努める。

4.基本的施策

(1)家庭における食育の推進

(2)学校、保育所等における食育の推進

(3)地域における食生活の改善のための取組の推進

(4)食育推進運動の展開

(5)生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等

(6)食文化の継承のための活動への支援等

(7)食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び

国際交流の推進

5.食育推進会議

(1)内閣府に食育推進会議を置き、会長(内閣総理大臣)及び委員

(食育担当大臣、関係大臣、有識者)25 名以内で組織する。

(2)都道府県に都道府県食育推進会議、市町村に市町村食育推進会議を置くこと

ができる。

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第3部 国の取組について

19

2 ⾷育基本法制定後の取組内容、 第3次⾷育推進基本計画(平成 28 年度〜平成 32 年度)の概要

(1)食育基本法制定後の取組内容および評価

平成17年6月に食育基本法が制定され、その後、同法に基づき、食育推進基本計画

(平成 18~22 年度)及び第2次食育推進基本計画(平成 23~27 年度)を作成し、国

は10年にわたり関係機関とともに食育を推進してきました。

その結果、「食育に関心を持っている国民の割合」や「朝食又は夕食を家族と一緒に

食べる『共食』の回数」、「栄養バランス等に配慮した食生活を送っている国民の割合」、

「農林漁業体験を経験した国民の割合」、「食品の安全性に関する基礎的な知識を持っ

ている国民の割合」、「推進計画を作成・実施している市町村の割合」が増加し、食育

は着実に推進されています。

しかしながら、特に若い世代では、健全な食生活を心がけている人が少なく、健康

や栄養に関する実践状況に課題が見受けられます。

また、近年、高齢者を始めとする単独世帯やひとり親世帯、貧困の状況にある子供

に対する支援が重要な課題になっています。

加えて、食料を海外に大きく依存する日本において、大量の食品廃棄物を発生させ、

環境への負荷を生じさせていることから、食の循環を意識し、食品ロスの削減等、環

境への配慮も必要です。

また、社会環境が変化する中にあっても、日本の大切な食文化が失われることがな

いよう、食文化の継承も重要な課題となっています。

食をめぐるこれらの課題を踏まえ、様々な関係者がそれぞれの特性を生かしながら、

多様に連携・協働し、国民が実践しやすい社会環境づくりにも取り組むことで、食を

めぐる諸課題の解決に資するように推進していくことが必要であるとし、これまでの

成果と諸課題を踏まえつつ、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進していくた

め、平成 28 年度から平成 32 年度までの5年間を期間とする第3次食育推進基本計画

が策定されました。

(第2次食育推進基本計画の取組結果の評価)

表3‐1

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第3部 国の取組について

20

第2次食育推進基本計画における11目標(13指標)のうち、目標を達成した指標は

2指標、作成時より改善している指標は4指標(目標達成指標は除く)、現状維持及び未

改善指標は7指標となりました。(表3‐1)

食育に「関心がある」(「関心がある」及び「どちらかといえば関心がある」の合計)

と回答した人の割合は75.0%で、計画策定時の調査結果(70.5%)と比べて4.5ポイン

ト増加しました。また、栄養バランス等に配慮した食生活を送るために指針等を参考に

していると回答した人の割合は63.4%で、計画策定時の調査結果(50.2%)と比べて13.2

ポイント増加し、目標を達成しました。農林漁業体験を経験した国民の割合、食品の安

全性に関する基礎的な知識を持っている国民の割合等も大幅に増加し、目標を達成して

います。

(2)第3次食育推進基本計画(平成28年度~平成32年度)の概要

第3次食育推進基本計画では、これまでの取組を踏まえた5つの重点課題を柱とし

ています。重点課題には、貧困の状況にある子どもに対する支援の推進や、食品ロス

の削減を目指した国民運動の開始、「和食」のユネスコ無形文化遺産への登録決定など、

食をめぐる状況の変化に対応した項目が新たに加えられました。

本計画においては、子どもから高齢者まで、生涯を通じた取組を推進すること、国、

地方公共団体、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティアなどが主体

的かつ多様に連携・協働しながら取組を推進することが取組の視点となっています。

(第3次食育推進基本計画の重点課題、具体的な目標値)

第3次食育推進基本計画は、平成 28 年度から平成 32 年度までの5年間を計画期間

とし、5つの重点課題を柱として 15 目標、21 指標が具体的な目標値として掲げられ

ています。

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第3部 国の取組について

21

重点課題1 若い世代を中心とした食育の推進

若い世代が自分自身で取り組む食育の推進、次世代に伝えつなげる食育の推進を

目指します。

<具体的な施策>

・子供・若者の育成支援における共食等の食育推進

・若い世代に対する食育推進

・「和食」の保護と次世代への継承のための産学官一体となった取組

重点課題4 食の循環や環境を意識した食育の推進(新)

生産から消費までの食べ物の循環を理解するとともに、食品ロスの削減等、環境へも

配慮した食育の推進を目指します。

<具体的な施策>

・学校給食の充実

・農林漁業者等による食育推進

・都市と農山漁村の共生・対流の促進

・地産地消の推進

重点課題5 食文化の伝承に向けた食育の推進(新)

郷土料理、伝統食材、食事の作法など、日本の伝統的な食文化への理解を深める食育の

推進を目指します。

<具体的な施策>

・学校給食での郷土料理等の積極的な導入や行事の活用

・「和食」の保護と次世代への継承のための産学官一体となった取組

・地域の食文化の魅力を再発見する取組

重点課題3 健康寿命の延伸につながる食育の推進

生活習慣病の発症・重症化予防や健康づくり等、健康寿命の延伸につながる食育の推進を

目指します。

<具体的な施策>

・健康寿命の延伸につながる食育推進

・歯科保健活動における食育推進

・高齢者に対する食育推進

重点課題2 多様な暮らしに対応した食育の推進(新)

子供や高齢者を含む全ての国民が健全で充実した食生活を実現できる食育の推進を

目指します。

<具体的な施策>

・妊産婦や乳幼児に関する栄養指導

・貧困の状況にある子供に対する食育推進

・高齢者に対する食育推進

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第3部 国の取組について

22

「第3次食育推進基本計画」の目標

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第3部 国の取組について

23

(食育の推進体制)

食育施策を行っている主体は、国の関係府省庁や地方公共団体、教育、保育、社

会福祉、医療及び保健の関係者、農林漁業の関係者、食品の製造、加工、流通、販

売、調理等の関係者、料理教室、その他の食に関わる活動等の関係者、更には様々

な民間団体やボランティア等に至るまで多様かつ多数です。

食育は幅広い分野にわたる取組が求められる上、家族状況や生活の多様化に対応

するため、きめ細やかに食育を推進しやすい社会環境づくりが重要になります。

第3次食育推進基本計画の中では、食育を国民運動として推進していくためには、

国、地方公共団体による取組とともに、学校、保育所等、農林漁業者、食品関連事

業者、ボランティア等の様々な立場の関係者の緊密な連携・協力が極めて重要であ

り、その強化に努めるとされています。

【出典・参考】

国立国会図書館「調査と情報 第457号

食育の背景と経緯-「食育基本法案」に関連して-」

http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/0457.pdf

農林水産省 第3次食育推進基本計画 参考資料集 関連資料「食育基本法に関する経緯」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/plan/refer.html

農林水産省 食育基本計画 参考資料「第2次食育推進基本計画の目標値と現状値」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kannrennhou.html

農林水産省 第3次食育推進基本計画

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9929094/www8.cao.go.jp/syokuiku/about/plan/

農林水産省 「我が国の食生活の状況と食育の推進について」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/

食育の推進体制

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

24

1 横浜市の現状

第4部 横浜市の食育の現状、取組について

(1)栄養バランスに配慮した食生活の状況

(野菜摂取の状況)

横浜市の 20 歳以上の野菜摂取量を見ると、20 歳代~40 歳代の若い世代で摂取量が

少なく、全国の摂取量の平均値と同じ傾向にあります。30~40 歳代および 70 歳以上

では、全国平均をやや下回っています。(表3‐1)

摂取量の分布を年代別に見ると、20~40歳代では野菜摂取量が210g未満である割合

が約半数を占めています。(表3‐2)

(肥満・やせの状況)

横浜市の男性の肥満、女性のやせの状況を全国平均と比較すると、男性は30歳代、

60歳代で肥満が全国平均より多く、女性は20歳代のやせの割合は全国平均と比較して

野菜摂取量の平均値(20歳以上) 表3‐1

野菜摂取量の分布(20歳以上、横浜市) 表3‐2

(H21〜23)

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

25

少なく、40~60歳代ではやや多いことが分かります。(表3‐3)

(2)朝食の摂取状況

横浜市民の朝食の摂取頻度を全国平均と比較すると、男性では20歳代で朝食頻度が

比較的高く、50~60 歳代で頻度が低めになっています。女性では 30~40 歳代で朝食

頻度が高く、50歳代で頻度が低くなっています。(表3‐4)

朝⾷の摂取状況(横浜市、全国) 表3‐4

やせの者(BMI<18.5)の割合(20歳以上)【⼥性】

肥満の者(BMI≧25)の割合(20歳以上)【男性】 表3‐3

【出典】

《表3‐1~3》平成21~23年国民健康・栄養調査 横浜市分集計結果

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/kenyoko21/plan/document.html

※誤差の影響を抑えるためには一定の対象者数が必要であることから、

横浜市分の結果は3年分を集計しています。

(H26)

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

26

横 浜

(H26)

(H26)

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

27

全国平均では男女とも20歳代で最も朝食頻度が低く、年代が上がると徐々に朝食頻

度が高くなるのに対し、横浜市では男性で20~50歳代と、女性の20歳代と50歳代で

朝食頻度が低く、週に1日以上欠食する割合は3割前後にのぼっています。男性の 20

歳~50 歳代では、「ほとんど食べない」と回答した割合が 15~20%程度と高い割合に

なっています。横浜市の年齢別の労働力率※と照らすと、男女ともに働いている割合の

多い年代において朝食頻度が低く(表3‐5)、食生活に課題があることが分かります。

朝⾷の摂取状況と労働⼒率(横浜市) 表3‐5

※労働力率…人口に占める労働力人口の割合

【出典】※出典に記載の数値を基に筆者作成

《表3‐4》横浜市「食育に関する意識調査 調査結果報告書 平成27年3月」

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shokuiku/dai1kisyokuikukeikaku.html

内閣府「食育に関する意識調査報告書 平成27年3月」集計表16 (Q6)朝食頻度

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9929094/www8.cao.go.jp/syokuiku/m

ore/research/h27/5.html

【出典】(出典に記載の数値を基に筆者作成)

《表3‐5》横浜市「食育に関する意識調査 調査結果報告書 平成27年3月」

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shokuiku/dai1kisyokuikukeikaku.html

平成22年国勢調査 産業等基本集計結果 第1-1表

労働力状態(8区分),年齢(5歳階級),男女別15歳以上人口

http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/stat/census/kokucho1010/02sangyo-kihon/

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

28

朝食を食べない理由として、主に「時間がない」「食欲がわかない」「食べる習慣が

ない」といったものが挙げられています(表3‐6)。

欠食率の高い世代に対しては、朝食を食べることの大切さの理解を深め、朝食の習

慣化につなげるような取組を行っていく必要があります。

「横浜市食育推進計画」の策定前(平成21年)と策定後(平成24年、26年)で20、

30歳代男性の欠食率を比較すると、20歳代では欠食率が減少していますが、30歳代で

は依然高い数値で推移しており(表3‐7)、欠食率低下にむけて引き続き啓発等の取

組が必要と考えられます。

20代、30代男性の朝⾷⽋⾷率

※朝食を食べない日が週に1日以上あると回答した者を対象とする

表3‐7

朝⾷を⾷べない理由(横浜市) 表3‐6

(H26)

【出典】

《表3‐6》横浜市「食育に関する意識調査 調査結果報告書 平成27年3月」

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shokuiku/dai1kisyokuikukeikaku.html

《表3‐7》第2期横浜市食育推進計画 参考資料

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shokuiku/page02.html

(参考)H22~27 横浜市食育推進計画

H28~32 第2期横浜市食育推進計画

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

29

(3)食に対する意識の状況

(「食育」の認知、関心)

「食育」の認知度(食育の言葉も意味も知っている人の割合)は、平成24年度調査

の38.8%から平成26年度調査では42.7%と、やや向上しています。(表3‐8)

一方、食育に「関心がある」「どちらかといえば関心がある」市民の割合は平成26

年度で64.2%となっており、第1期食育推進計画が策定される前の平成21年調査と比

較して9.5ポイント減少しています。(表3‐9)

⾷育の関⼼度(横浜市) 表3‐9

⾷育の認知度(横浜市) 表3‐8

【出典】

《表3‐8、3‐9》第2期横浜市食育推進計画 参考資料

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shokuiku/page02.html

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

30

(「地産地消」の認知、関心)

「地産地消」の認知度(「地産地消」の内容を知っている割合)は、平成 21 年度調

査と比較して14.3ポイント増加しています(表3‐10)。

また、地産地消の認知度が高いほど、市・県内産畜産物・水産物の購入意欲が高く

なる傾向にあります(表3‐11)。市・県内産農畜産物の普及啓発や農業体験の機会を

通して地産地消の認知度を高め、地産地消を推進していくことが期待されます。

「地産地消」の認知度(横浜市)

「地産地消」の認知度別 横浜市・神奈川県の農畜産物・⽔産物の購⼊意欲

表3‐10

表3‐11

【出典】

《表3‐10、3‐11》

第2期横浜市食育推進計画 参考資料

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shokuiku/page02.html

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

31

(4)食品ロスの状況

ヨコハマ3R夢プラン(横浜市一般廃棄物処理実施計画)では、3R※のなかでも環

境に最もやさしいリデュース(発生抑制)の取組を進めています。

横浜市における、家庭系燃やすごみに含まれる生ごみ量は約 20 万トンと推計され、

そのうち約2万トン前後が何も手を付けられずに廃棄されている「手つかず食品」で

す。(表3-12)

このような現状を受け、3R夢プランの目標の一つである「ごみと資源の総量の削

減」を達成するため、「食品ロス・生ごみの削減」を重点事業と位置づけて、取組を進

めています。

※3R…リデュース(発生抑制)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)の

3つのRの総称。

家庭系⽣ごみと⼿つかず⾷品の廃棄量の推移(横浜市)

※手つかず食品の廃棄量は、集積場所に出された「燃やすごみ」を採取して行う

組成調査により推計している。

※横浜市資源循環局の提供データをもとに筆者作成。

表3‐12

ヨコハマ3R夢プラン(平成23年1月策定、計画期間:平成22年度~平成37年度)

ヨコハマ3R夢プランでは、市民・事業者の皆様との協働のもと、「3R」の推進、と

りわけ環境に最もやさしい「リデュース(発生抑制)」の取組を進めるとともに、なお残

るごみを適正に処理することで、限りある資源・エネルギーの有効活用と確保に努め、

環境負荷の低減と健全な財政運営が両立した持続可能なまちを目指しています。

■「ヨコハマ3R夢プラン」の3つの目標

①ごみと資源の総量を平成37年度までに10%以上削減(平成21年度比)

②ごみの処理に伴い排出される温室効果ガスを平成37年度までに50%以上削減

(平成21年度比)

③収集・運搬、処理・処分のすべての段階で、安心と安全・安定を追求

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

32

2 第2期横浜市⾷育推進計画の概要 (1)食育推進計画策定の経緯

食育の推進に向けて、国では前述の通り「第3次食育推進基本計画(平成28~32年

度)」が策定されており、また、神奈川県においては「食が変わる 未来が変わる~い

のちが輝き、誰もが元気で長生きできる神奈川~」を基本理念として「第2次神奈川

県食育推進計画(平成25~29年度)」が策定され、食育が推進されています。

<参考>第2次神奈川県食育推進計画(平成25年度~平成29年度)重点目標

・家庭における共食及び学校給食を通じた子どもへの食育の推進

・若い世代に向けた食育の推進

・生活習慣病の予防につながる取組(未病を治す取組)の推進

横浜市においては、食育基本法第 18 条に基づく市町村の食育推進計画として、「横

浜市食育推進計画(平成 22~27 年度)」が策定され、食育の取組が推進されてきまし

た。この推進計画に基づく評価や課題を踏まえ、平成28年に「第2期横浜市食育推進

計画(平成28~32年度)」が策定され、取組が進められています。

(2)第2期横浜市食育推進計画の概要

<第2期横浜市食育推進計画の位置づけ>

横浜市の各分野別計画等に盛り込まれている食育関連事業を「第2期横浜市食育推

進計画」によって束ね、市民・地域・企業・団体が相互に連携を図ることを目指して

います。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

33

<第2期横浜市食育推進計画の構成>

「「食」を通して健康と豊かな人間性を育み、活力ある横浜を創る」を基本理念とし、

3つの基本目標を柱として、10の推進テーマが設けられ、施策が進められています。

「横浜市中期4か年計画 2014~2017」では、「健康づくりと健康危機管理などによる

市民の安心確保」を基本施策の一つとして位置づけ、「全市民で取り組む健康づくりの推

進」を主な取組として挙げ、「『第2期健康横浜21』などに基づいた食育の取組の推進を

行います。」としています。

また、基本施策「活力ある都市農業の展開」では、市民・企業等との連携や小学校の

給食メニュー等における地産地消の取組拡大が、基本施策「3Rが定着した夢のあるま

ち」では、手つかず食品等の削減等が、食育に関連する取組として挙げられています。

「食」を通して健康と豊かな人間性を育み、

活力ある横浜を創る

【出典・参考】

第2次神奈川県食育推進計画(食みらい かながわプラン2013)

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f6848/p632212.html

横浜市健康福祉局「第2期横浜市食育推進計画」

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shokuiku/page02.html

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

34

3 学校、保育所等における取組 (1)学校における食育推進

横浜市では、「学校における食に関する指導(教育)」を「食教育」と呼び、学校

において、食に関する教育が進められてきました。平成 15 年 11 月には「横浜市望

ましい学校給食のあり方検討委員会」が設置され、食に関する指導の基本的な考え

方等を検討してきました。その平成 17 年3月に行われた報告の中で、「食教育」に

ついて次のように定義しています。

平成 17 年7月に施行された「食育基本法」を受け、横浜市では平成 18 年に「食

教育推進計画」(平成 18~22 年度)が策定されました。

平成 20 年に告示された学習指導要領には「食育」という言葉が明記され、また

平成 22 年9月には「横浜市食育推進計画」が策定されたことを受けて、これまで

の「食教育」の考え方を継承しながら、学習指導要領に準じた「学校における食育」

という呼び方とし、平成 23 年4月に「学校における食育推進計画」(平成 23~平成

27 年度)が策定されました。

平成28年には、「第2期横浜市食育推進計画」、「第2期横浜市教育振興基本計画」

の下に、平成 28 年度から平成 32 年度を計画期間とする「第2期 学校における食

育推進指針」が策定されました。これは、教育委員会事務局および学校が、それぞ

れ主体性をもって学校における食育を推進していくための指針として策定され、現

在横浜市立の小・中・高・特別支援学校では、この指針を基に食育が推進されてい

ます。

<学校における食育の基本理念>

「食に関する適切な判断力を養い、生涯にわたって健全な食生活を実現することによ

り、心身の健康の増進と豊な人間形成に資すること」を基本理念としています。

「食教育」を

(食):食の知識、食体験、望ましい食習慣、食の楽しさ、食事のマナーなどを

(教):学校活動を通じて指導し、

(育):子どもたちの健康な育ちを支援すること

と整理した上で、横浜市における食教育の目標を以下のように設定しました。

・学校での活動を通じて、食の大切さを知り、食の自己管理ができる子どもを

育てます。また、子ども一人ひとりに必要な支援を行います。

・子どもを通じて、あるいは直接働きかけて、豊かな食体験を提供できるよう家庭・

地域との連携を図ります。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

35

<学校における食育推進指針の目標>

指針では、基本理念を実現するために、3つの目標を設定しています。

<食育推進目標および推進テーマに対する主な取組>

◆推進テーマ① 食の重要性の理解

主な取組

・食育月間・食育の日

・学校保健委員会の活用、児童会・生徒会活動

・給食週間の活用(小学校、特別支援学校)

・給食時間の計画的指導、交流給食、給食試食会・PTA 活動との連携(小学校)

◆推進テーマ② 食を通した健康な心身の育成

主な取組

・保健体育・家庭科・特別活動などの各教科での指導

推進テーマ

学校における

食育推進指針

《食育推進目標》

「第2期 横浜市

食育推進計画」

《基本目標》

食育推進目標1

食の重要性への理解を深め、心身の健康を培い、食品を選択する能力を育みます。

取組事例(横浜市立坂本小学校)

・毎日の給食時間における「ぱくぱくだより」を活用した指導の実施

・毎月 19 日の食育の日に、「食育タイム」を設け、バランスイ~ナカード

(食べ物の栄養についてや、教科等と関連する内容を盛り込んだカード)に

取り組む。

⑥地産地消の推進

④食文化の継承

①食の重要性の理解

⑤感謝の心と

社会性の育成

⑦食に関する豊かな

体験 食育推進目標3

学校における食育の環境

づくりを進めます。

食育推進目標2

食文化への理解を深めるとと

もに、感謝の心と社会性を育

みます。

②食を通した

健康な心身の育成

③食の安全の推進

⑧食育推進に向けた

環境づくりの推進

食育推進目標1

食の重要性への理解を深め、

心身の健康を培い、食品を選

択する能力を育みます。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

36

・体育健康プラン(1校1実践)との関わり(小・中学校)

・養護教諭との連携

◆推進テーマ③ 食の安全の推進

主な取組

・保健体育・家庭科・特別活動などの各教科での指導

・給食だより・保健だより・学校だよりでの啓発

◆推進テーマ④ 食文化の継承

主な取組

・基本献立・独自献立の活用、給食時間の計画的指導(小学校、特別支援学校)

・パクパクだよりの活用(小・中学校、特別支援学校)

・外国に関わる児童生徒やAET(英語活動講師)に関連する諸外国の食を

通した文化の理解

・修学旅行や研修旅行先での食を通した文化の理解交流(高校)

◆推進テーマ⑤ 感謝の心と社会性の育成

主な取組

・特別活動や道徳、給食・昼食時間での計画的かつ継続的な指導

・地域の方との交流給食(小学校、特別支援学校)

・提供(調理)する側への感謝(高校)

・家庭科・フードデザインの授業(高校)

食育推進目標2

食文化への理解を深めるとともに、感謝の心と社会性を育みます。

取組事例

・リオデジャネイロオリンピックの開催に合わせて、ブラジルの家庭料理

(カンジャ・デ・ガリーニャ、ピカジーニョ)を取り入れ、かつ横浜市内産

の白米を使用した給食を市内の小学校全校に提供。

取組事例(横浜市立いずみ野小学校)

・地元のシェフが献立を考え、地域の食材を使用した「スーパー給食」の

提供 ⇒「第4部 横浜市の食育の現状、取組について」5章(3)参照

・地元農家の方から田んぼを借り、地域の助けを借りながら毎年もち米を育

てている。収穫したもち米はもちにして地域の方々と一緒にいただき、収穫

を祝う行事を行っている。

取組事例(横浜市立東高等学校)

各教科における食育の取組

1年 保健体育科「食事と健康」:栄養バランス・食事のリズム・食事の楽しさ

2年 家庭科「私の食生活」:自分の食生活の問題点(糖度実験)・生活習慣病

3年 家庭科 選択授業 基本的な調理技術の習得 フードデザイン

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

37

◆推進テーマ⑥ 地産地消の推進

主な取組

・基準献立の活用(小学校、特別支援学校)

・はま菜ちゃん料理コンクール、お弁当コンクール(小学校)

⇒はま菜ちゃんコンクールの事例は

「第4部 横浜市の食育の現状、取組について」5章(1)参照

・JAや食育財団と連携した食材の一括調達(小学校)

・地産地消月間の活用

・家庭科調理実習での献立の活用(中学校、高校)

◆推進テーマ⑦ 食に関する豊かな体験

主な取組

・はま菜ちゃん料理コンクール、お弁当コンクール(小学校)

・JAや食育財団と連携した食材の一括調達(小学校)

・地産地消月間の活用

・食育出前講座の活用(中学校、高校)

◆推進テーマ⑧ 食育推進に向けた環境づくりの推進

主な取組

・PDCAサイクルによる全体計画及び年間指導計画の見直し

・食育推進のための組織の位置づけ

・小中一貫ブロックでの食育推進の情報共有(小・中学校、特別支援学校)

・栄養教諭によるネットワーク事業の推進(小・中学校、特別支援学校)

食育推進目標3

学校における食育の環境づくりを進めます。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

38

(2)小学校、中学校の取組事例

<スーパー食育スクールの取組>

文部科学省は、学校が大学や企業、生産者、関係機関等と連携し、栄養教諭を中

心に外部の専門家等を活用しながら食育のより一層の充実を図ることを目的とし

て、「スーパー食育スクール」を指定し、食育の取組を行っています。

横浜市立名瀬小学校(戸塚区)の取組

(平成27年度スーパー食育スクール事業指定校)

◆取組テーマ(中心となるテーマ:食と健康)

正しい食習慣を身につけ、自らの健康をつくる名瀬っ子の育成

~ デジタルデータを活用した食育の推進と

小・中学校を結ぶ食育モデルの構築を目指して ~

連携機関名 連携内容

横浜国立大学教育人間科学部 指導方法、評価方法、データ収集等の指導

十文字学園女子大学 食生活・食意識等の調査、評価分析

日本女子体育大学 骨量測定、評価集計、資料提供

株式会社タニタ 体組成等の測定、評価集計、資料提供

門倉農園 体験活動、食材提供

80*80(ハチマルハチマル:80km

圏内の食材を 80%以上用いた

食事を提供するレストラン)

献立づくりから調理を通じた食育指導

横浜市体育協会 出前授業「けがの予防と健康な体づくり」

横浜マリノス 出前授業「夢の実現と食の充実」

◆実践内容

1.各学年のカリキュラムに応じた食育授業

大豆を栽培し味噌作りを行う、ブルーベリーを

摘んでジャムにして食す、ゴーヤを栽培して給食

で食べる、田んぼをつくって稲作体験をし、収穫

祭を行うなど授業の中で食育の取組を行いました。

2.各種測定機器を活用した数値的な健康状態の

確認と特別授業

体組成計で測定した身長・体重・体脂肪率・筋肉

量、骨密度等の判定結果を自分の健康状態と関連し

て考えられるよう、「元気なからだをつくろう」と

いうタイトルで大学の先生や企業の方による出前

授業を実施しました。食事や運動の大切さを一人ひ

地域の谷戸で田植え

身体活動量の測定

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

39

とりが自分事として考える機会となりました。

3.「食」と共に「運動」の大切さを学ぶ

・学校保健委員会テーマ

「早寝 早起き 朝ごはん ~けがを防いでみんなで笑顔~」

4・5・6年生全員が参加して、横浜市体育協会の方々を講師に迎え、児童保健

委員会や養護教諭からけがの発生状況についての報告や、「けがをしにくい体」を

作ることについて話をうかがいました。また、体力チェックの実施や、体力つくり

の運動についても教えてもらいました。

・横浜 F・マリノス 齋藤 学選手

「夢の実現と食の充実」

横浜 F・マリノス 齋藤 学選手による講演を実

施しました。

齋藤選手からは、『夢に向かいながらも、何度

も挫折しました。たくさん練習するだけではライ

バルには勝てないと思い、小学校で教わった食事

は主食・主菜・副菜・汁物・乳製品をバランスよ

く食べると体の発達がよいということを小学校

の頃から実践しまた残さず食べることを意識し

ました。食事の好き嫌いがある選手もいますが、

選手たちは自分の力になると思って食べていま

す。みなさんも、楽しいと思うことは続けてほ

しいです。』とのお話がありました。

4.中学との関わり、自立へ向けた取組

・食に関する知識や調理技術を身につける

・・1食分の献立(家庭科)

・総合的な学習の時間 お弁当プロジェクト

(80*80 出前授業の活用)

「成長期であることを自覚し、主体的に

健康作りに取り組もうとする名瀬っ子6年」

6年生は家庭科や総合的な学習の時間で、様々な調理に取り組み、卒業前には、

自分でバランスを考えたお弁当をつくることができました。中学生の測定データ

を活用して、進学先中学校で栄養教諭が食育授業を実施しました。

◆成果

食事や運動をテーマに地域や企業、大学と連携した食育関連の学びをすすめ、体組

成や骨密度等のデータを各自に示すことによって、健康状態を数値的にとらえ、成長

期に必要なバランスよい生活スタイル(食事・運動・休養と睡眠の調和)の大切さを

理解し、自らの健康づくりに関心を示す児童が増加しました。

お弁当プロジェクト

横浜 F・マリノス選手の講演

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

40

《指標1》

朝食を「必ず食べる」児童の割合

92.5%→93.7%に微増

《指標2》

・好き嫌いなく、バランスよく食べ

ようとしている児童の割合

78.5%→82.2%に微増

・出されたものは残さず食べる割合

(いつも+時々)

90.3%→96.2%に増加

・夜食の摂取率 44%→15%に減少

《指標3》

・食生活に関する自己効力感の向上

(10 項目中 9 項目で向上)

・食品や栄養に関する知識理解度の向

上(33 項目中25 項目で正答率向上)

【出典・参考】

文部科学省「平成 27 年度スーパー食育スクール事業の内容について

横浜市教育委員会:横浜市立名瀬小学校」

http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1370001.htm

横浜市教育委員会 平成 26・27 年度食育実践推進校 名瀬小学校

平成 27 年度スーパー食育スクールリーフレット

http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/kyushoku/gakouniokerushokuiku.html

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

41

学校内にある農園の様子

現地レポート①

農園を利用した食育の取組

横浜市立山元小学校(中区)

横浜市立山元小学校は、学校の敷地内に「山元農園」と名付けられた 300 坪の農園

があり、農園での生産活動を柱とした食育を行っています。

児童が自然を愛する心情を深め、地域や保護者とのかかわりを大切にすることを目

標とし、農園活動が進められています。

山元農園では、夏と冬の2回野菜を収穫し、保護者や地域の方を招いて「収穫祭」

を開催しています。収穫祭では、野菜の収穫を祝うとともに、農園での活動を発表し、

地域の方へ感謝を伝えます。また、収穫した野菜を調理して、参加者全員での会食を

行います。

山元小学校の農園での活動を通じた食育の取組と、平成 28 年 12 月 17 日(土)に

開催された冬の「収穫祭」の様子をご紹介します。

山元農園では、児童が教職員や地域の方の指導や

サポートを受けながら野菜を栽培しています。クラ

スごとに区画が分けられ、各クラスで責任をもって

育てています。育てる野菜の種類も児童自らが決め、

全員が責任をもって育てています。

農園の作業は農園ボランティアが指導にあたり、

子どもたちは6年間の農園体験を通して野菜の知

識や育て方を1から学びます。虫よけには牛乳スプ

レーを使うなど、完全無農薬で育てており、無農薬

のため、虫がついたり、うまく育たなかったりする

こともあるそうですが、失敗から学んで次に生かす良い経験になっているようです。

また、野菜の栽培活動は教材化されており、農園での体験を各教科の学習とつなげ

ることによって、子どもの学ぶ意欲を高めることもねらいとしています。

(野菜の教材化の例)

ジャガイモ 光合成の学習(6年)

キャベツ モンシロチョウの観察(3年)

米 日本の農業(5年)

キュウリ 発芽~結実(5年)

ヘチマ 季節と生きもの(4年)

夏野菜・秋冬野菜 花や野菜を育てよう(生活科)

冬の収穫祭は「みんなで協力して作った野菜を自然に感謝しておいしく食べよう」

をテーマに、全校児童と保護者、野菜の栽培をサポートしている地域の農園ボランテ

ィアが参加して行われました。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

42

子どもが収穫した野菜を使って

調理

会食の様子

収穫祭の様子

最初に野菜をかたどった神輿とともに、子どもたち

が賑やかに入場し、会場が盛り上がります。

全校児童が揃い、1年生から6年生までの各クラ

スの取組発表が行われました。野菜の育て方の紹介

や、農園ボランティアに対する感謝の意などを、歌

と踊りで表現したり、ニュース番組風に紹介したり、

クラスごとに趣向を凝らした発表が行われており、

栽培活動を通した学習のまとめとなるとともに、

見る側にも楽しさが伝わる内容となっていました。

取組発表が終わると、いよいよ鍋会食の時間です。

子どもたちが栽培し、前日に収穫された野菜を保護

者が鍋にして、全員に振る舞いました。今回は白菜、

大根、小松菜、青梗菜、水菜、かぶ、ブロッコリー、

にんじんなど多様な冬野菜が収穫され、子ども、保

護者、地域の方、教職員など、みんなで冬の味覚を

味わいました。

野菜が苦手だった子どもも、自分で育てた野菜と

いうことでがんばって食べたり、普段の給食でも、

あまり残さずに食べたりするようになるそうです。

子どもが「作る側」として日常的に農業に関わるこ

とで、自然に食べ物の大切さを学んでいます。

また、農園での作業を通して子どもと地域の方と

のつながりが生まれ、食を通じた継続的な交流の機

会となっています。

収穫祭の会場には小学校の卒業生の姿もあり、小

学校での農業体験と、収穫した野菜をみんなで一緒

に食べる収穫祭を通して、「食の楽しさ」が子どもた

ちに深く浸透していました。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

43

現地レポート②

学校保健委員会における食育授業

横浜市立根岸中学校(磯子区)

横浜市立根岸中学校では、日常生活を見直し、自らの健康や食生活に関心をもつ生

徒を育成することを目標とし、ネットワークの小学校の栄養教諭と連携して「食育」

を充実させる取組を行っています。根岸中学校では、保健委員会の生徒が主体となっ

て、年に1回学校保健委員会の中で保健に関する提案発表を行っています。今年は栄

養教諭の指導を受けながら、「食生活の大切さ」をテーマとした授業が行われました

ので、その様子をご紹介します。

授業の様子

総合学習の時間に、栄養教諭の監修のもと、食生活の大切さを学び、見直す授業が

行われました。授業は生徒が主体となって進められ、保健委員による提案発表、栄養

教諭による食生活に関する講話、校長先生によるお話がありました。

<提案発表「食生活を見直そう!」>

保健委員の生徒によって、「食生活を見直そう!」

というテーマの提案劇が行われました。

主人公の中学生が好きなものだけ食べる生活を

していて太ってしまいましたが、学校の授業で食と

健康について学んで、家に帰ってから家族と一緒に

食事や生活について見直し、健康的な生活を取り戻

す、というストーリーです。

学校の授業の場面では、「脳に必要なエネルギー

は、食後何時間持続するでしょうか?」など、クイ

ズ形式で、見る側も楽しく参加できるよう工夫され

ていました。

また、この提案発表に当たって、事前に全生徒を

対象に食に関するアンケートが実施されていまし

た(結果は P45 参照)。劇の中では、このアンケー

トの結果を用いながら、根岸中学校の生徒の食生活

の現状と問題点が分かりやすく説明されていて、生

徒も興味深く聞いている様子でした。

<根岸小学校 栄養教諭による講話>

提案劇の後、根岸小学校の栄養教諭である藤田先生より講話がありました。提案劇

の内容を振り返りながら、劇を通して伝えたかったことについて、分かりやすい説明

がありました。

藤田先生は大きく2つのポイントについてお話しされていました。

提案劇の一場面

アンケート結果を交えながらの

発表

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

44

栄養教諭による講話の様子

・朝食をしっかり食べること

アンケートの結果から、朝食を食べていない人

の割合が高い。夕食をしっかり食べても、寝てい

る間にエネルギーは消費されている。起きて、体

が目覚めるスイッチを入れるために、 朝食が大

事。朝食を抜いてブドウ糖が不足すると、集中力

が低下する。

・食事の栄養バランスに気を付けること

中学生は、体を作る大切な時期である。5大

栄養素(炭水化物、たんぱく質、ビタミン・

ミネラル、脂質)のバランスのとれた食事を心がけてほしい。また、生活習慣病予

防のために、間食の取り方を考え、高カロリー、高脂質の食べ物は控えてほしい。

炭水化物を抜くなど、食事を抜くダイエットは禁物。バランスの良い食事がどんな

ものかは、小学校で食べた給食のメニューを思い出してほしい。

<阿部亮一校長先生のお話>

朝食をとること、バランスの良い食事をすることが大事だと分かったと思います。

まずしっかりと食事をとること、そして運動することも大事です。3年生は部活動

を引退し、これから運動をしないような環境になるかもしれません。激しい運動だ

けでなく、歩くことも運動です。いつでも日常的に運動することを忘れないでほし

いと思います。

そして、皆さんが日々食べている食品に、もう少し興味を持ってもらえるといい

と思います。食品には成分表示、賞味期限が書いてありますので、ぜひ興味を持っ

て見てみてください。自分の体にとっていいものは何かを考える機会になると思い

ます。

これから皆さんは 70 年、80 年と生きていきます。今、暴飲暴食をしたとしても

健康にすぐに影響はないと思いますが、これから 20 年後、30 年後に不摂生の影響

が出てきます。今、皆さんは体を作るとても大切な時期です。今日聞いた話は、し

っかりと胸に留めておいてほしいと思います。

食に関するアンケート結果

保健委員会では、今回の発表のために全校生徒に食に関するアンケートを実施し

ました。

アンケート結果を見ると、1、2年生は 92%が毎日朝食を食べ、炭水化物をしっ

かりとっている生徒が9割を超えています。

3年生になると、受験生ということもあり、12 時以降に寝ている生徒が 43%と

就寝時間が遅い生徒が多く、朝食欠食も多い傾向にあります。

また、3年生では、炭水化物をしっかりとっていない、もしくはしっかりとって

いるか分からない生徒は 38%にのぼり、受験を控えて生活習慣や食事が乱れがちに

なる傾向が見られます。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

45

栄養教諭による指導のもと、中学生に必要な正しい知識を学ぶのはもちろんのこと、

生徒が主体となって進める授業であり、生徒自身が食の大切さや、課題として捉える

べきことについて、真剣に考える機会となっています。

また、アンケートという形で生徒の食生活の実態を明らかにして、生徒がより実感

をもって食生活について考えることができる授業となっていました。

食に関するアンケート結果(横浜市立根岸中学校)

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

46

ハマ弁のメニュー例

主食:主菜:副菜=3:1:2と

なるよう、容器が工夫されている

管理栄養士によるセミナーの様子

現地レポート③

中学校における食育セミナー、ハマ弁試食会

(横浜市立岩井原中学校(保土ヶ谷区))

横浜市立の中学校の昼食では、これまで家庭弁当を基本としていましたが、これに

加え、栄養バランスに配慮した配達弁当「ハマ弁」が導入され、平成 28 年7月1日

から順次提供が始まりました。

ハマ弁は、

・教育委員会の栄養士の管理による栄養バランスに配慮した献立であること

・メインのおかずを2種類(肉か魚)から選べ、ご飯の量も選べること

・ご飯と汁物が温かい状態で提供されること

が特徴となっています。

ハマ弁の導入にあたって、希望のあった学校に対して、保護者・教職員向けのハマ

弁の試食会と、併せて食育セミナーが実施されました。

岩井原中学校において、平成 28 年 12 月 16 日(金)に食育セミナーと試食会が実

施されましたので、その様子をご紹介します。

食育セミナー

ハマ弁の献立を作成している株式会社わくわく広

場の管理栄養士により、食育とハマ弁に関するセミ

ナーが実施されました。

セミナーでは主に以下のようなお話がありました。

・子どもは親の背中を見て育つ

子どもの食生活は親の食生活に大きく影響さ

れる。自身のためにも、子どものためにも、食生

活を含め、親自身の生活習慣を見直してほしい。

・一食で必要な栄養を知る

中学生が1食で必要な栄養素の量を

知っておいてほしい。成長期の中学生は

筋肉のもととなるたんぱく質の必要量が

大人より多い。

・3:1:2 弁当法について

ハマ弁の献立は、栄養バランスが良い

とされる、主食:主菜:副菜を3:1:

2の割合にする「3:1:2弁当法」を基

に作られている。ハマ弁の容器は、この

割合で食材が詰められるようにできてい

る(右写真参照)。この方法は、家庭弁当で

も実践しやすく、是非参考にしてほしい。

主菜 1

副菜 2

主食 3

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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・早寝、早起き、朝ごはんの習慣をつける

寝坊、朝食抜きは生活リズムの乱れにつながる。早寝早起きをして、しっかり

朝食をとることで日中の集中力も維持できる。体を動かすことも大事。

また、ハマ弁の調理工場では調理から配達、受け渡しまでしっかりと衛生管理され

ており、工場の調理の様子や管理体制について、実際の写真を見せながら説明されて

いました。

ハマ弁試食会

セミナーに続き、ハマ弁の試食会が行われました。

ハマ弁は注文時に主菜を肉と魚から選択できます。ご飯の量は、180g、230g、250g

の3種類から選ぶことができ、価格は変わりません。

試食日の献立では、1食分に食塩が3gしか使わ

れていないとのことでしたが、食材のうまみを生か

した味付けで、味が薄いと感じさせないよう工夫さ

れていました。

副菜は3種類入っており、調理法にもバリエーシ

ョンがつけられていて、飽きずに食べられるよう考

えられています。

保護者の食に対する関心は高く、子どもの成長や

健康に直接影響するものであるということもあり、

参加者が熱心に耳を傾けている様子が印象的でし

た。

日々忙しく、食事に手間を掛けるのがなかなか難しい中で、改めて食事の栄養バラ

ンスや生活習慣の大切さを意識してもらい、時間を掛けず、かつ分かりやすくバラン

スの良い食事を実践できる方法を学ぶ良い機会となっています。

受け渡しまでしっかりと

衛生管理されている

◇試食日(12/16)の献立◇(魚メニュー)

【主菜】かれいの煮つけ

(※肉メニュー:鶏のみそ焼き)

【副菜】かぼちゃのそぼろあん、ツナと

いんげんの炒め物、白菜の塩昆布和え

【汁物】花麩と水菜のすまし汁

【牛乳】

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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(3)保育所等における取組

保育所等は、乳幼児が一日の生活時間の大半を過ごす場であり、保育所等での食

事の意味は非常に大きいものがあります。

食育は毎日の保育の一環として行うことが大切であり、毎日の給食や、栽培・収

穫、クッキング保育等を通して、楽しく食べる経験や、食への興味を持つこと、豊

かな人間性を育てることを目指して様々な取組が行われています。

食育に関する計画の策定率は市立保育所、民間保育所、幼保連携型認定こども園、

地域型保育事業においてもおおむね 90%を超えており、楽しく食べる食事環境づく

り、食事環境に関する配慮、マナーに関する意識づけなどの取組が、多くの施設で

実施されています。

また、子どもの食生活習慣は家庭の影響が大きいものであり、家庭の食生活の実

態把握や、「食の大切さ」に関するリーフレット配布など、保護者向けの食育の取

組も行っています。

(市立保育所での取組)

<子ども向け「ぱくぱくだより」>

「ぱくぱくだより」では、子どもにわかりやすく給食の献立を知らせるととも

に、「えいようしから おてがみ」として、食に関する興味が深まるよう、材料や

調理法を紹介しています。

<保護者向け「給食だより」>

「給食だより」では、献立と、食材から摂取できる栄養情報を提供しています。

毎日の献立の情報に加え、食習慣や栄養バランス、食の安全に関する知識など、

栄養士によるコラムを掲載しています。旬の食材に関する情報では、「今月のはま

菜ちゃん」として横浜ブランド農産物も紹介しています。

ぱくぱくだより

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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給食の内容と栄養情報のお知らせとともに、保護者に向けた食育啓発にもなっ

ています。

(民間保育所との取組)

<食育研修会>

民間保育所に勤務する栄養士が「食」に関することを現場目線で研修の企画・

運営することに重点をおき、児童への食育に繋げられるように職員の資質の向上

を図ることを目的としています。こども青少年局保育・教育人材課栄養士が事務

局となり、28 年度は、民間保育所に勤務する栄養士7人が、食育研修の企画・運

営を実施しました。

◆実施内容

・調理実習、献立交換

鉄の補給を目的とした主菜、副菜

(切り干し大根のサラダ、ツナと豆腐の煮物)

アレルギー対応のおやつ

(米粉の人参ケーキ)

調理実習メニュー

給食だより

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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・食育に関する研修会

講義「食育研修会~伝えつなげる食育の実践~」

食育に関するグループ討議

(保護者に対する情報提供)

保護者向けに、こども青少年局のホームページで、1~2歳児の食事の年齢別の

ポイントやおやつについて、また、離乳食の進め方のポイントや離乳食レシピを紹

介しています。

「こどもの大好きメニュー」として、保育所等で提供される人気メニューのレシ

ピも紹介しています。

「こどもの食事について 乳幼児期の基礎」

横浜市こども青少年ホームページより

URL:http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/jinzai/20150326175948.html

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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【コラム①】 こども食堂の取組

子どもの相対的貧困率※は 1990 年代半ば頃からおおむね上昇傾向にあり、平成

24 年には 16.3%となっています。また、子どもがいる現役世帯の相対的貧困率

は 15.1%であり、そのうち、ひとり親世帯の相対的貧困率は 54.6%と、大人1

人で子どもを養育している家庭が特に経済的に困窮している実態がうかがえま

す。

このような状況の中で、経済的な理由から、家で食事を取れない、あるいは必

要な栄養が不足している子どもの存在が社会問題として大きく取り上げられる

ようになりました。

満足に食事を取ることができない、あるいは家族と一緒に食事ができない環境

にある子どもたちに温かい食事を提供し、子どもの居場所を作り見守る取組とし

て、「子ども食堂」が注目されています。

「子ども食堂」は、子どもが1人で利用でき、無料あるいは少額で食事が提供

される場所です。「子ども食堂」の活動は、子どもの状況を把握しやすく、個々

の状況に基づき、制度等の枠を越えて弾力的な支援がしやすいということから、

主にNPO法人や市民団体等の団体や、個人のボランティアが主体となって草の

根的に行われています。

平成 27 年には、「こども食堂ネットワーク」という全国組織が発足し、民間ベ

ースの取り組みとして運営主体による交流・協力が始まっています。

国による子どもの貧困対策事業については、平成 26 年1月 17 日に「子どもの

貧困対策の推進に関する法律」が施行され、子どもの貧困対策が総合的に推進さ

れることとなりました。

平成 27 年 10 月に始動した官公民の連携・協働プロジェクトの「子供の未来応

援国民運動」の一環として、「子供の未来応援基金」が創設されました。寄付金

をはじめとする企業や個人等からの寄付を基金として、貧困の状況にある子ども

に対する支援事業を行うNPO等への助成をしており、子ども食堂の事業も対象

となっています。

また、自治体による実態把握やこうした活動に対する支援の動きもあり、民間

発の取組が自治体にも徐々に広がりつつあります。

地域社会で子どもの育ちを見守り支える取組として、重層的な支援という観点

からも、今後の活動の進展が期待されます。

※相対的貧困率…OECDの作成基準に基づき,等価可処分所得(世帯の可処分

所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世

帯員の割合を算出したものを用いて算出。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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<活動事例:要町あさやけ子ども食堂(東京都豊島区)>

「要町あさやけ子ども食堂」は、NPO法人豊島子ども WAKUWAKU ネッ

トワークが主催する事業で、平成 25 年3月から月に2回、一軒家を開放

して運営しています。

「子どもにワイワイがやがや賑やかに

食卓を囲んでもらいたい。日頃忙しいお母

さんに一食分でもゆっくりすごしてもらい

たい。」という思いで始まり、営業日には

子ども、親子連れ、ボランティア、見学者

が各回平均 40 名以上集い、地域の交流拠点

となっています。一食 300 円の参加費で、

子どもだけでも入ることができます。

旬の野菜を中心とし、昔ながらの製法を守った調味料でシンプルに味付

けするなど、野菜そのものの美味しさを味わえるメニューを提供していま

す。また、日本の食文化や風習を子どもたちに伝えるため、お正月や節分、

ひな祭りなどの季節の行事に合わせたメニューを取り入れています。

親の帰りが遅く夕食を一人だけで食べていた子や、不登校だった子、赤

ちゃん連れのシングルマザーなどが立ち寄り、みんなで同じご飯を一緒に

食べ、幼児から高校生の子までが一緒に遊びます。調理・配膳はスタッフ

のほか、地域住民や大学生等がボランティアで担当しています。子どもた

ちはもちろん、ボランティアにとっても、この食堂が居場所になっている

そうです。

「子供の未来応援基金」の全体像

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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【出典・参考】

内閣府「平成 27・28 年版 子供・若者白書」

http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hakusho.html

内閣府 子供の未来応援基金事業審査委員会(第2回)

参考資料「子供の未来応援基金について」

http://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/iinkai/ichiran.html

子供の未来応援国民運動

https://www.kodomohinkon.go.jp/fund/

こども食堂ネットワーク

http://kodomoshokudou-network.com/

NPO法人豊島子ども WAKUWAKU ネットワーク

http://toshimawakuwaku.com/

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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4 栄養バランスのよい⾷⽣活をめざした⾷育 (1)朝食の習慣化に向けた取組

<よこはま朝食キャンペーン>

朝食の大切さや食の楽しさをPRし、朝食

欠食率の改善や、共食の機会の増加につなげ

ることを目的とし、NPO法人横浜ガストロ

ノミ協議会※をはじめとする横浜市内飲食店

等の協力のもと、平成 28 年 10 月から 11 月

にかけて、「よこはま朝食キャンペーン」を

実施しました。キャンペーンでは、期間限定

で朝食メニューの販売(24 店舗)やプロの

シェフによる朝食料理教室(10 店舗)が開

催されました。

市内飲食店との協力によりキャンペーン

を展開することで、市民が身近な所で食の楽

しさを感じることができるとともに、市内飲

食店の利用促進にもつながる取組となって

います。

また、プロのシェフ考案の朝食レシピを

クックパッド横浜市公式キッチンで紹介し

ています。

※NPO法人横浜ガストロノミ協議会

…横浜を代表する和洋中のシェフ・パティシエ・ソムリエ・バーテンダー等の

「食」のプロフェッショナルが、横浜を世界に通用するグルメ都市にすると

いう構想のもと集い、2008 年に発足した団体です。フランスの食文化である

「ゆとりある食習慣」の啓蒙、啓発を推し進めるイベントの開催を始め、横

浜の食文化を探求し、更なる発展のために次世代の育成や食育活動を続ける

など、精力的に活動しています。

朝食料理教室の様子

キャンペーンパンフレット

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<ヨコハマ朝食マルシェ>

働く女性の朝食欠食率を減らすために、カルビー株式会

社と横浜市が連携し、通勤者の多い桜木町駅前広場で、帰

宅時間帯に合わせて朝食の大切さを呼びかけるイベントを

開催しました。

イベントでは、市内の女性農業者「よこはま・ゆめ・フ

ァーマー」が栽培した農産物とカルビーの商品「フルグラ」

を使った地産地消メニューが無料

で提供され、朝食の大切さを意識

するとともに、地元の農産物を進

んで食べてもらう啓発が行われま

した。

また、主旨に賛同した横浜ガスト

ロノミ協議会をはじめとする市内

レストラン、食品メーカーなどの

事業者も協力し、市内農産物や朝

食用食品の販売ブースも出店しま

した。

ヨコハマ朝食マルシェ イベント概要

【会場】 (朝食会場)桜木町駅前広場

(マルシェ会場)日本丸メモリアルパーク小アリーナ

【日時】 平成 28 年9月1日(木)、6日(火)、14 日(水)、28 日(水)

17:00~20:00(初日の 9/1 のみ 15:00~20:00)

【内容】 市内産ブルーベリー、コマツナ、トマトとカルビーの「フルグラ」を

使用した限定メニューの試食

市内レストラン等による朝食用食品の販売

横浜ガストロノミ協議会、市内飲食店、横浜産農産物等による

朝食用食品の販売ブースの出店

イベントで提供された朝食メニュー

ヨコハマ朝食マルシェの様子

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(2)横浜市食育フォーラムとの連携

「横浜市食育推進計画」の具体化の実現に向け、プロモーションを民と官で一体

となって進めるため、学識経験者、食育の関係団体、民間事業者等により構成され

る推進組織「横浜市食育フォーラム」が設置され、プロモーション活動に取り組ん

でいます。「横浜市食育フォーラム」では、委員それぞれが各分野で食育の取組を

推進するだけでなく、相互間の連携を図りながら、講演や料理教室などのイベント

を開催するなど、幅広く食育活動を行っています。

横浜市食育フォーラム委員

学識経験者、食育・料理専門家、横浜市食生活等改善推進員協議会、

横浜市消費者協会、横浜市食品衛生協会、横浜市場活性化協議会、

横浜市立小学校長会、横浜市私立保育園長会、横浜市医師会、

横浜市歯科医師会、神奈川県栄養士会、よこはま一万人子育てフォーラム、

はまふぅどコンシェルジュ、よこはま学校食育財団、

NPO法人横浜ガストロノミ協議会、JA横浜、東京ガス㈱、

横浜マリノス㈱、㈱崎陽軒、㈱ダイエー、㈱セブン-イレブン・ジャパン

<横浜市食育フォーラム参加企業・団体の取組事例>

◆公益社団法人神奈川県栄養士会

神奈川県栄養士会は、保健所、保健センター、学校、病院、診療所、保育所、高

齢者施設、事業所、防衛施設、地域等で活動している管理栄養士・栄養士の職能団

体です。

その専門知識と経験を活かして、関係機関・団体と連携し、市町村のイベントや

県民の健康づくり事業として、栄養相談や食育の推進、独自で市民公開講座を開催

するなどしています。

◆横浜マリノス株式会社

横浜市および横須賀市をホームタウンとするプロサッカークラブ横浜F・マリノ

ス(運営会社:横浜マリノス(株))では、過去に取り組んできた食育のノウハウを

活かし、行政や地域と連携をして食育の取組を行っています。学校でサッカーの巡

回指導を行う「サッカーキャラバン」に加え、横浜市内の小学校を訪問し、食の大

切さを伝える「サッカー食育キャラバン」を 2009 年より実施しています。

この活動は、サッカーを通して①身体を動かす楽しさを体験する、②サッカーの

楽しさを体験する、③体力・運動能力の向上を図ることと、コーチが一緒に給食を

食べ「食事の大切さ」を伝えることを目的としており、毎年度、多くの学校で実施

しています。

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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(3)各区における取組

各区においては、食生活等改善推進員(ヘルスメイト)による食育活動を始めと

して、より地域に密着した食育の取組を行っています。

◆食生活等改善推進員(ヘルスメイト)※による取組

各区で一般の区民から食生活等改善推進員(ヘルスメイト)を募集、養成し、

区内施設やイベントなどで幅広い世代の区民に向けて食育活動を行っています。

ヘルスメイトは、主に次のような活動を行っています。

・市民を対象とした、調理実演等の健康づくりの普及啓発

・妊婦とその家族を対象にした離乳食の講座開講

・男性を対象とした調理実習 等

◆地元のスーパーや商店街と連携した取組

地元の大型スーパーで、福祉保健センター、食育推進委員会がコラボレーション

した食育イベントを実施しています。また、商店街主催のイベントに食事相談や体

組成測定などを行う食育ブースを出展しています。

◆福祉保健センターにおける取組

各区の福祉保健センターにおいて、乳幼児食生活相談や、離乳食教室、赤ちゃん

教室など、乳幼児とその保護者の食をサポートする取組を行っています。

◆ウェブサイトを活用したレシピ等の情報発信

野菜摂取率の向上や、地産地消を目的として、各区のウェブサイトにて、地元で

とれる野菜を使った健康に役立つレシピを発信しています。

※食生活改善推進員(ヘルスメイト)

…地域に健康づくりの輪を広げるためのボランティア。

市町村で開催される全9回の養成講座を受け、修了すると

「食生活改善推進員」として活動することができる。

区民まつりでの活動 男性のための料理教室

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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ヘルスメイトのおすすめレシピや、市民から募集したレシピなどが紹介されてい

ます。

各区のウェブサイト

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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5 ⾷の循環や環境を意識した⾷育の取組

(1)はまふぅどコンシェルジュの育成、活動支援

横浜みどりアップ計画に基づき、地産地消を広げる人材として「はまふぅど※コ

ンシェルジュ」を育成し、その活動を支援する取組を平成 18 年度から実施してい

ます。平成 28 年度は 32 名を認定し、現在 326 名のコンシェルジュが登録されてい

ます。

認定後は、コンシェルジュが市民向けに実施する農作業体験教室やマルシェの開

催等の活動に支援を行い、食と農をつなぐ取組を進めています。

(2)横浜産野菜を活用した食育

市内の小学生を対象に、横浜ブランド農産物(28 年度はダイコンとコマツナ)を

使った学校給食のメニューを募集し、「はま菜ちゃん料理コンクール」を開催して

います。

当コンクールは平成 15 年度から実施しており、平成 28 年 11 月に開催された

第 14 回コンクールでは、過去最高となる 1,595 点もの応募がありました。

書類選考で選出された6組7名が、ホテルモントレ横浜の総料理長をはじめとす

るプロの審査員の前で実際に調理し、アイディアと腕を競いました。

育成講座での農地見学

コンクール本選出場者

※はまふぅど

…よこはまの『はま』と『風土』『Food』を組み合せた造語で、

横浜の地産地消を意味しています。

コンシェルジュによる

農作業体験教室の様子

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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(3)地元の農畜産物を使った「スーパー給食」

横浜市立小学校では、小学生や地元の生産者が作った農畜産物を主に使った

「スーパー給食」を実施しています。地産地消を推進するプロジェクト「濱の料理

人※」のメンバーが地場産物を利用したメニューを監修し、提供するとともに、料

理人による出前授業や、近隣農家の方との交流を行っています。

平成 28 年度のいずみ野小学校(泉区)の「スーパー給食」では、児童が考えた

メニューを参考に「濱の料理人」が給食を監修し、「やまゆりポークといずみ野

野菜のブランジェール」、「学び隊と三家野菜のマリネ~はまっこドレッシング

ぶぶあられがけ~」、「三家・なおひろさんのブルーベリー入りマフィン」の3品が

提供されました。

併せて、3年生以上に対して「濱の料理人」による出前授業が行われました。

<出前授業テーマ>

・3年生「食品の選び方」

・4年生「砂糖について」

・5年生「米のよさ」

・6年生「フランス料理のマナー」

(4)横浜市中央卸売市場本場における取組

横浜市中央卸売市場本場では、食の大切さや楽しさを実感してもらうために、ま

た市場への理解を深め、魚食の普及と消費促進を図ることを目的として、様々な取

組を行っています。

<小学校への食育出前授業>

市場から持ち込んだ様々な青果や魚を直接見て

触れてもらい、生鮮食材の正しい知識や流通の仕

組みなど、食に関する理解と関心を深めてもらう

ため、市場で働く青果や魚のプロが市内の小学校

へ出向いて出前授業を実施しています。

<お魚料理教室>

横浜魚市場卸協同組合の魚のプロや、横浜ガス

トロノミ協議会所属のシェフなどを講師に迎えて、

お魚料理教室を開催しています。魚の捌き方から

調理まで丁寧に教え、魚食の普及と県内の地魚

PRを進めています。

お魚料理教室

※濱の料理人

…料理人や市場関係者、生産者、管理栄養士などをメンバーに、横浜の地産地消を

進める目的で 2010 年に発足。「地産地消推進」のために様々な活動をしています。

小学校への食育出前授業

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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<シーフードコンテスト~浜の市場~>

本場水産物部の事業者で構成する「横浜市中央

卸売市場本場水産物消費促進委員会」が主催し、

年に 1 回「シーフードコンテスト~浜の市場~」

を開催しています。

今年は『Bento』をテーマに開催され、神奈川県

内にある大学や調理専門学校の学生ら8チームが

参加して、指定の魚介類で作ったお弁当で腕を競い

ました。

(5)食品ロス削減を学ぶ取組

<3R夢(スリム)農園(港北区岸根保育園)>

保育園の給食から出る野菜くずや食品残さを土に混ぜて、たい肥化することで

生ごみの減量をはかるとともに、その土を使った畑や花壇、プランターで花や野

菜を育てています。

園児たち自身が育て、収穫した野菜を給食に出すことにより、食べ物を大切に

する気持ちを育み、環境学習や食育につなげています。

<食材を無駄なく使い切る3R夢(スリム)クッキング講座など>

各区で食材の無駄をなくす調理のヒント等を学ぶ「3R夢(スリム)クッキン

グ講座」を実施しています。食材の使い切り方法や保存方法を、地産地消や食育

などの視点も交えて、講義や調理実習で学びます。

また、季節ごとに旬の食材をピックアップした使い切りレシピを資源循環局の

ウェブサイトに掲載しています。

横浜市資源循環局ウェブサイト「まるごと 旬野菜~使い切りレシピ~」

http://www.city.yokohama.lg.jp/shigen/sub-shimin/foodloss/tsukaikiri.html

シーフードコンテスト

岸根保育園の3R夢農園

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

62

【コラム②】 日本の食料事情と食育の取組について

日本は食料の約6割を海外に依存しており、食料自給率は先進国中最低水準で

すが、食料の安定供給のためには、自給力の維持向上が不可欠です。

自給率向上にむけて、農地等の最大限の活用や地域の農林水産業の更なる振興、

農地や農業就業者等の確保を働きかけるとともに、消費者においても、日本の食

料事情の理解と、国産農林水産物の積極的な消費が求められています。

一方、日本において、食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の量は 632

万トンと推計され、大切な食料が多く廃棄されている現状があります。

2015 年度の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェ

ンダ」の中で、2030 年までの食料の損失・廃棄の削減目標が設定されるなど、食

品ロス削減に対する課題意識は世界的に高まっています。日本でも、6月2日に

閣議決定された「日本再興戦略 2016」において食品ロスの削減やフードバンク活

動の推進について新たに記載され、削減に向けた取り組みの抜本的な強化が一層

進められることとなります。

食品ロスの削減は、フードチェーンや外食事業者と消費者が、それぞれの立場

でできることに取り組むことが大切であり、食品関連事業者の取組の推進ととも

に、消費者の意識改革に向けた運動が展開されています。

<農林漁業体験(教育ファーム):農林水産省>

農林漁業体験(教育ファーム)は、農家等

の生産者の指導のもと、田植えや稲刈り、き

のこや山菜等の採取、漁場での魚あげ等、一

連の作業を共同で行う体験活動です。継続的

な農業体験活動を通して自然の恩恵や生産の

苦労や喜び、食べ物の大切さを、実感をもっ

て知り、また食に関わる人々の様々な活動へ

の理解を深めることを目的としています。

教育ファームの取組は、子ども向けのみでなく企業でも取り入れられており、

農業の重要性を知ることはもちろん、社員育成やCSRの見地からも意義のある

取組であると認識されています。

この取組を通じて、「国産品を作っている人を信頼できる」(体験あり:47%、

体験なし:20%)「国産のものを応援したい」(体験あり:42%、体験なし:26%)

と回答した人の割合が増加し、生産現場への理解や信頼の醸成につながる取組と

なっています。

<米の消費拡大に向けた取組:農林水産省>

朝食欠食の改善や米を中心とした日本型食生

活の普及・啓発を図るため、食品関係企業、

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

63

団体等と連携し、官民挙げて「めざましごはんキャンペーン」を実施しています。

キャンペーン参加企業の米関連商品の販促活動とも連携し、米の消費拡大を推

進しています。

また、米飯学校給食実施回数の新たな目標を「週3回以上」とし米飯学校給食

の拡大に向けた取組への支援を行っています。

<地産地消コーディネーター派遣事業

:(一財)都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)>

学校給食・施設給食等の現場における地場

産物の利用拡大と定着に向け、地域からの申

請に基づき地場産物の供給体制づくりに詳し

い専門家(地産地消コーディネーター)の派遣

を行っています。

平成 28 年度は「学校給食・施設給食等にお

ける地場産物の利用拡大」をテーマに、 栄養

士、栄養教諭、地産地消の仕事人、生産者組

織関係者、給食事業関係者等が派遣されてい

ます。

<フード・アクション・ニッポンの展開 :農林水産省、地方自治体、学校、民間企業、団体、個人会員>

フード・アクション・ニッポンでは、食料自

給率の向上にむけた取組を行っています。 「国産たくさん週間」では、国産食材を買っ

て、食べて、学ぶ機会を創出し、国産農林水産

物の消費拡大を推進しています。また、米粉に

関する情報を発信し、米粉を通じて、新しい食

の可能性を広げ、日本の食料自給率を向上させることを目的とした活動を行って

います。

<「食材を無駄にしないレシピ」の紹介:消費者庁>

料理レシピサイトのクックパッド「消費者庁のキッチン」において、各地方公

共団体から寄せられた「食材を無駄にしないレシピ」を紹介しています。

野菜の皮や茎を活用したレシピや、余った料理のアレンジレシピなどの他、野

菜を無駄なくカットしたり食材を長持ちさせる方法など、「エコ料理」の実践ポ

イントも紹介しています。

(消費者庁のキッチン https://cookpad.com/kitchen/10421939 )

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第4部 横浜市の食育の現状、取組について

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【出典・参考】

農林水産省「食品ロスをめぐる事情」

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html

農林水産省「知ってる?日本の食料事情」

http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/panfu1.html

フード・アクション・ニッポン

「和食・米飯・米粉の学校給食に役立つ献立づくりのヒント集」

http://www.syokuryo.jp/support-activity/

フード・アクション・ニッポン「みんなではぐくむ にっぽんの食」

http://www.min-hagu.jp/

農林水産省「学校給食への地場農産物の利用拡大に向けて」

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gizyutu/tisan_tisyo/index.html#%EF%BC%92

農林水産省 「基礎から始める 教育ファーム運営の手引き」

「企業向け農林漁業体験導入マニュアル-教育ファームの活用-」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/s_edufarm/index3.html

農林水産省 「子どもが変わる地域が変わる ~教育ファーム事例集~」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/s_edufarm/zireisyu/

(一財)都市農山漁村交流活性化機構「まちむら交流きこうの地産地消の取組み」

http://kouryu.or.jp/service/chisanchisho.html

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第5部 他都市の食育の取組について

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1 他都市の特⾊ある取組 第5部 他都市の食育の取組について

(1)企業と連携した給食の取組(川崎市)

川崎市立中学校の全 52 校では、「健康給食@川崎プロデュース by TANITA」とし

て、平成 30 年5月から健康総合企業の株式会社タニタによる監修メニューを提供

します。

提供されるメニューは、野菜を豊富に使って栄養バランスを高めているほか、監

修にあたっては、タニタの管理栄養士と川崎市の栄養士とが検討を重ね、タニタ食

堂の特徴の一つである「食感」に着目しています。学校給食の調理規定を踏まえつ

つ、通常よりも大きくカットする調理法で満足感を高めたりする「タニタ食堂」の

メソッドを、給食向けにアレンジしており、大きくカットすることで咀嚼回数を増

やし、噛むことの重要性を学ぶねらいもあります。

季節ごとに異なる4メニューが用意され、食材には旬の野菜などを使用していま

す。5月は「タラのから揚げ野菜あんかけ給食」

(エネルギー789kcal、塩分 2.2g)、7月は「か

ぼちゃと豚肉のオイスターソース炒め給食」(エ

ネルギー792kcal、塩分 3.0g)が提供される予定

となっています。

また、給食提供日にあわせて、各校で食事と運

動のバランスに関する特別授業が実施されるほ

か、タニタと川崎市の共同で、中学生と保護者を

対象にした体組成計及び活動量計での計測と、調

理実習や健康セミナーなどを組み合わせたプロ

グラムの提供も予定されています。

(2)食の拠点機能充実事業(京都市)

京都市中央卸売市場第一市場は、昭和2年に全国最初の中央卸売市場として誕生

し、京の食文化の発展に貢献してきました。京都市では、京都市中央市場を「京の

食文化及び食育の拠点」と位置付け、季節や旬を重んじる京都の食文化の情報発信

や食育に積極的に取り組んでいます。

【出典・参考】

株式会社タニタ 2017 年 1 月 17 日プレスリリース

「タニタが川崎市の中学校給食メニューを監修」

http://www.tanita.co.jp/press/detail/2017/0117/

1月の提供予定メニュー

「とり肉のきのこソースかけ給食」

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第5部 他都市の食育の取組について

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<京の食文化ミュージアム・あじわい館>

伝統的かつ創造的な京の食文化の素晴らしさを実感し、また市場及び地域の活

性化を図るため、平成 25 年4月に中央市場内に「京の食文化ミュージアム・あじ

わい館」が開設されました。「京都の四季を五感で味わい、京都の食文化に親しむ!」

をコンセプトに、「みる、つくる、あじわう」の3つの機能を持たせた展示資料室、

調理実習室,試食室を備え、市場の食材を活かした料理教室や,食文化について

学ぶ講演会などの事業を行っています。

<小学生向け食育活動>

食の未来を担う小学生に向けて、「小学校出前板

さん教室」、「子ども市場見学会」を開催していま

す。市場見学会では、野菜や果物、魚のせり場な

どの見学のほか、せりを実際に体験していただく

「模擬せり体験」などを通し、市場のしくみや食

材について学びます。

<鍋まつり>

鍋料理を通して、京都市民に市場や食材の魅力

を知ってもらうための「鍋まつり」を平成 15 年度

から開催しています。

鍋まつりでは、市場の旬の食材をたっぷり使っ

た鍋料理の紹介や、市場の生鮮食品の販売などを

行っています。

<食の海援隊・陸援隊>

市場関係者らとともに、「食」の在り方を考える

会員制度「食の海援隊・陸援隊」を発足し、会員

向けに様々な事業を行っています。漁業や農業の

現場を訪れ、産地支援活動や生産者との交流や、

料理教室や食材選び方教室を行っています。

<大学との連携事業>

市場では京都女子大学、京都聖母女学院短期大学、平安女学院大学、京都府立

大学と包括連携協定を締結しており、連携事業として市場の旬の食材等を使用し

た食育イベントや料理教室などを開催しています。

子ども市場見学会

鍋まつり

食の海援隊

【出典・参考】京都市中央卸売市場第一市場

http://www.city.kyoto.lg.jp/menu2/category/33-0-0-0-0-0-0-0-0-0.html

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第5部 他都市の食育の取組について

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コラム③ 食文化の継承について

日本は、四季折々の食材に恵まれ、長い年月を経て地域の伝統的な行事や作

法と結び付いた食文化が形成されてきました。戦後は、この食文化を生かし和

食の基本形である一汁三菜の献立をベースに、畜産物や乳製品等も取り入れ、

主食・主菜・副菜のそろう栄養バランスに優れた「日本型食生活」が構築され、

国民の平均寿命の急上昇にもつながりました。しかしながら、経済成長に伴う

社会情勢やライフスタイルの変化により、栄養バランスに優れた日本型食生活

や、家庭や地域において継承されてきた特色ある食文化や豊かな味覚が失われ

つつあります。

平成 25 年 12 月に、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化

遺産に登録され、「和食」の保護・継承がより重要視されています。これを受

けて、国や自治体、民間団体において、和食文化を守り、継承し、広める、取

組が広がっています。

また、海外においても同様に、経済成長の後の自国の食文化の存続に対する

危機感が生まれており、独自の食文化の継承や普及のために、特色のある取組

が生まれています。

<日本における取組事例>

◆和食給食応援団の取組

農林水産大臣が給食で和食を普及する料理人(和食

給食応援団)を認定し、この料理人が全国の小中学校

関係者と連携して児童・生徒向けの新たな和食献立や

地産地消メニューを開発・普及しています。和食の料

理人が丁寧に給食をつくり、子どもたちがその魅力を

体験的に理解する点が評価され、2015 年度グッドデ

ザイン賞金賞を受賞しています。

◆「京の食文化」の継承・普及

京都には,長い歴史と四季折々の豊かな自然の中で洗練されてきた京料理や

旬の野菜などを使った家庭のおかずなど,さまざまな食文化が根付いており,

平成 25 年 10 月に「京の食文化」を京都市が独自に創設した“京都をつなぐ無

形文化遺産”に選定しました。食文化を伝える料理教室や講演会のほか、ホー

ムページ等による情報発信等を行っています。

<海外における取組事例>

◆フランスの食文化を守る取組

フランスは、国土の半分が農用地で、農業生産額はEU最大の地位を占める

農業国です。主要農産物の自給率はほとんどが 100%を超えており、ワイン、小

麦、チーズ等を輸出している国としても有名です。

和食給食応援団が提案する

春の和食給食

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第5部 他都市の食育の取組について

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フランスのよりおいしく食事をするための美食の慣習を「美食術(ガストロ

ノミー)」と称し、平成 22 年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

1980 年代からのEUの拡大発展を背景に、農産物流通の自由化、食品小売業

の大規模化が進展し、消費者の食生活は大きく変容しました。こうした変化に

よる「味覚の均質化」は「伝統的な味覚」の衰退をもたらすとの認識が広がり

ました。伝統的な味覚の衰退への危機感を契機として、1990 年から「味覚の一

週間(La Semaine du Goût)」が始まりました。

「味覚の一週間」は毎年10月に開催される国民的イベントとなっており、「味

覚の授業」を通じて、子どもたちの味覚を育てるための取り組みが行われるほ

か、「味覚のアトリエ(食と味覚に関する体験が出来るイベント)」、「味覚の食

卓(レストランにて多彩な味覚体験ができる特別メニューを安価に提供)」な

ど、食に関するイベントが全国各地で展開されます。

「味覚の授業」では、食に情熱を持つ職人(料理人、肉屋、チーズ製造者、

パン屋、農家など)が小学校に出向き、子どもたちに味覚や食品の味を教えて

います。授業では、4大味覚である甘味、塩味、辛味、苦味、かつこれら味覚

をミックスして出来上がる新しい味を発見させ、食べる喜びを感じさせ、発達

中の味蕾(みらい)が新しい感覚を感知できるよう教えています。

フランスでは、味の違いを判別し、味の感覚を表現する能力は、学び、培う

ものであると考えられ、味覚の発達においては学校での教育が重要な役割を担

っているとされています。学校ではこの「味覚の授業」や様々な活動を通して

味覚教育を行っています。

日本でも、フランス本国の事務局と連携して、平成 23 年より 10 月の第4週

目に「味覚の一週間」が開催されています。平成 28 年度は料理人・パティシ

エ・料理研究家の講師 227 名が参加し、全国 188 校(446 クラス)を対象に「味

覚の授業」が開催されました。

◆イタリアのスローフード運動

イタリアは、地形的に変化に富んだ国土と、温暖で乾燥した気候を生かした

地域色豊かな農産物の生産が行われています。

イタリアでは、1950 年代から 70 年代にかけて、農村、特に国土の 80%を占

める中山間地の過疎化が深刻化しました。その危機感から出発した農村文化の

再興の動きが、イタリア食文化保護の大きな動きにつながり、その一つとして

失われつつある質のよい食品、それを生産する生産者を守るためのスローフー

ド運動が立ち上がりました。

スローフードの取組みを中心的に進めているスローフード協会では、正しい

知識を持ち、食べることの喜び、楽しみを知るための食育を行っています。

スローフード協会が主催する、世界有数の食の見本市「サローネ・デル・グ

スト」では、イタリア各地の伝統的な食品や農産物、ワインなどが展示・即売

されるほか、食に関する多彩なワークショップが開かれ、イタリア独自の食文

化の理解を広めることにつながっています。

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第5部 他都市の食育の取組について

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また、スローフード協会では「学校菜園プロジェクト」として、学校(幼稚

園から高等専門学校まで)内に菜園を作り、子どもたちが菜園運営をして、生

産物が食卓にたどり着くまで体験を通して学ぶブログラムを実施しているほ

か、鮮魚市場にて実際に魚を買い、それを料理して試食する体験授業などを行

っています。

【出典・参考】

農林水産省「「和食」の保護・継承推進検討会報告書」

http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/index.html

農林水産省「第3次食育推進基本計画 参考資料」

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/plan/refer.html

フランス大使館「フランスの食育政策」

http://www.ambafrance-jp.org/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AE%E9%A3%9

F%E8%82%B2%E6%94%BF%E7%AD%96

農林水産省「日本食文化ナビ―食文化で地域を元気にする本―」

http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/vitalization/index.html

内閣府「諸外国における食育実践プログラムに関する調査報告書」

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10193682/www8.cao.go.jp/syokuiku/m

ore/research/foreign/h20-1/index.html

農林水産省 地域食文化活用マニュアル検討会

「海外取組事例の文献調査結果報告書」

http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_vision/manual/

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あとがき

「食」は、私たちの生命を支える、欠かすことのできない非常に大切なも

のですが、反面、時間に追われる日々の中では、つい疎かになりがちなもの

でもあります。

日本では、戦後の経済成長を経て、人々の食生活は飛躍的に豊かになり、

寿命も大幅に伸びました。しかし、生活習慣や家族構成の変化を背景に、食

においては、栄養の豊富なものより、手軽なものや個人の嗜好を強く反映し

たものがより選ばれるようになりました。その結果、日本人の食の栄養バラ

ンスは崩れ、生活習慣病も増加傾向にあります。

食に対する選択肢が多く、自由に選べる今の時代では、一人一人が食に対

する意識を高め、毎日の食を自ら正しく選択していくことが一層重要になっ

ています。

今回の執筆にあたって、食についての正しい知識を身に付けることはもち

ろん大切ですが、「みんなで食卓を囲んで食事をする」ことの楽しさはいつ

の時代も変わらず、何よりも食の大切さを教えてくれる経験であると感じま

した。このような食の「楽しさ」をベースとした食育の取組が、人々の食へ

の関心を高め、豊かな食生活の実践につながるのではないかと考えます。

本稿が、少しでも今後の政策立案の参考になれば幸いです。

(M.I.)


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