+ All Categories
Home > Documents > メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta...

メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta...

Date post: 21-Jan-2021
Category:
Upload: others
View: 3 times
Download: 0 times
Share this document with a friend
10
メディカルマテリアルとしてのシルク 誌名 誌名 蚕糸・昆虫バイオテック = Sanshi-konchu biotec ISSN ISSN 18810551 著者 著者 玉田, 靖 巻/号 巻/号 86巻1号 掲載ページ 掲載ページ p. 3-11 発行年月 発行年月 2017年4月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
Transcript
Page 1: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

メディカルマテリアルとしてのシルク

誌名誌名 蚕糸・昆虫バイオテック = Sanshi-konchu biotec

ISSNISSN 18810551

著者著者 玉田, 靖

巻/号巻/号 86巻1号

掲載ページ掲載ページ p. 3-11

発行年月発行年月 2017年4月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

蚕糸昆虫バイオテック 86(1)、3-11(2017) SANSHI-KONCHU BIOTEC

―特集「マテリアルとしてのシルク研究最前線」 I

メディカルマテリアルとしてのシルク玉田靖*

国立大学法人信州大学繊維学部,国際ファイバー工学研究所

1. はじめに

最近,中国江南省にある新石器時代の遺跡である買湖

遺跡の 3つの募から採取された土を LC-MS/MSより分

析したところ,シルクフィブロインタンパク質に由来す

る分子が見出されたことが報告された (Gong,et al.,

2016)。遺骨の骨盤下から採取された土であることや,

織り道具や骨製の縫い針も発見されていることから,遺

骨を包む衣類としてシルクを使用していたと推察されて

いる。すなわち, 8500年以上前からシルクは衣料用繊

維として利用されていたことを意味している。一方,

2500年前のイン ドの外科魯 (SushrutaSamhita) には,

樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

縫う縫合糸として使用されたことが記述されていること

が報告されている (Pillai,et al. 2010)。それから現代に

至る長い間,縫合糸としてはシルクやコラーゲン繊維(羊

などの腸線, catgut)が中心に使用され,合成高分子が

発明された後はナイロンやポリプロピレン等の合成繊

維,さらにポリ乳酸やポリグリコール酸等の生体分解吸

収性高分子の縫合糸が主要な縫合糸として使用されるよ

うになってきた。このような多様な縫合糸が使用される

なかでも,シルクは依然縫合糸として使用されており,

日本における縫合糸生産額でも非吸収性縫合糸の 4割弱

を占めている(玉田, 2014)。このようにシルクは,生

体組織に接触する素材として長い実績を有する希有なメ

*〒386-8567 長野県上田市常田 3丁目 15-1

国立大学法人信州大学繊維学部,国際ファイバー工学研究所E-mail: [email protected]

Tel: 0268-21-5359 Fax: 0268-21-5331

ディカルマテリアルであると言える。この事実は,シル

クの生体安全性が高く,メディカル用途用素材としての

リスクが少ないマテリアルであることを示している。そ

のため,医療用途を目的としたシルクの研究報告は,こ

の 10年間公表論文数で年平均 15.5%(Silk and Biomate-

rials)~23.7% (Silk and Tissue Engineering)の高い伸び

を示しており,世界的に研究が活発化していることを示

している(表 1)。本稿においては,メディカルマテ リ

アルの観点からマテリアルとしてのシルクの生体親和

性,加工性,そして利用例としての軟骨再生用材料開発

について概説するとともに,メディカルマテリアルとし

て期待される特異性について述べる。

2. シルクの生体安全性

2.1. 異物に対する生体反応

シルクのような異物が生体に接触することで,生体側

は多様な生体防御反応を駆使して異物を排除しようとす

る (Anderson,et al., 2008)。バイオマテリアル(医療用

材料)を生体内に接触や埋植すると,多かれ少なかれ組

織を損傷させ,生体にとっての異物を入れることになる

ため,創傷や病原体等の異物侵入に対する生体防御反応

が関与することになる。生体防御反応では,自然免疫と

獲得免疫系が協働して,創傷の治癒や異物の排除を行う

ことになる。異物を体内に埋植すると,組織の損傷によ

り放出されるケモカインにより,周辺のマクロファージ

や単球が埋植部位に誘引され,異物に付着したマクロ

ファージやマスト細胞(顆粒細胞)の活性化によりヒス

タミンや platelet-derivedgrowth factor (PDGF)などの炎

症系のケモカインやサイトカインが放出されることで,

さらにマクロファージ,単球多形核白血球が異物周辺

曲氷•隅田jでf斗7,y7Vol.86

No.1

3

Page 3: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

SANSHI-KONCHU BIOTEC Vol.86 No.I

表1. メデイカルマテリアルを指向した公表論文の年平均増加率(%)*

Biomaterials Tissue Engineering

Silk 15.7 23.7

Collagen -0.5 7.3

Chitin 4.6 6.7

PLA 6.6 21.3

*PubMedデータベースでそれぞれのキーワードから過去 10年間の論文数を抽出し,その年次推移の平均として算出した。

に誘導される(急性炎症)。細菌等の排除のためにマク

ロファージは細菌リポポリサッカロイドやインターフェ

ロン-y(IF-y) で誘導される古典的活性化 (classically

activated macrophage)により炎症系サイトカインや活性

酸素の産生により炎症反応を惹起する (Mosser,et al.,

2003)。一方,マテリアルに付塙したマクロファージは,

T細胞やマスト細胞が産生する IL-4やIL-13等の刺激に

より,炎症性サイトカインの阻害や抗炎症性サイトカイ

ンの産生,組織再生に関わる因子の増強等の抗炎症性作

用を持つマクロフ ァーンとなる (alternativelyactivated

macrophage) (Gordon, 2003) とともに,お互いが融合す

ることで異物巨細胞 (foreignbody giant cell, FBGC) と

なる(慢性炎症)。急性炎症は 2週間ほどで終焉する反

応であるが,継続的な異物刺激により数週間に渡り炎症

反応が継続し,炎症部位での不可逆的な線維化や搬痕組

織形成に至り病的な状態となる。そのため,マテリアル

の生体親和性の評価としてマクロファージの活性化や

FBGCの出現あるいは炎症系サイトカインの定量が行

われている (Anderson,et al., 2011)。

2.2. シルクに対する生体反応

先にシルクは縫合糸として使用されていると述べた

が,シルク縫合糸に起因するとされる生体反応が生じる

ことが報告されている (Javedet al., 2012)。また,種々

の素材の縫合糸についての生体反応の調査では,シルク

縫合糸については強くはないが FBGRの出現等の異物

反応が惹起されることが示されている (Altman,et al.,

2003)。一方で, invitroにおける培餐マクロファージで

の評価では,シルクマテリアル表面では,マクロファー

ジの活性化は生じないことが報告されている (Panilaitis,

et al., 2003)。また,シルクフィブロイン(フィブロイン)

により培養した白血球系細胞である HL60やヒト単核球

による IL-1~ の産生量は,合成高分子フィルムの場合よ

りも少なく生体親和性の高いコラーゲンと同等であるこ

とが確認されている (Santin,et al., 1999; 玉田,未発表)。

さらに,骨髄由来の間菓系幹細胞をフィブロイン上で培

養した時に,炎症系サイトカインである COX-2 や IL-1~

の遺伝子発現は,コラーゲン上の細胞と同等であること

も報告されている (Meinel,et al., 2005)。シルク編み糸

ヘ末梢血白血球を接触させ, IL-1~ やIF-yの産生をポリ

グリコール酸と比較したところ,それらの炎症系サイト

カインの産生はシルクでは低いことが報告された (Seo,

et al., 2009)。一方,シルク材料を動物体内に埋植する in

vivoにおいては,多かれ少なかれFBGCの浸潤等の異物

反応が生じることが報告されている (Thurberet al.,

2015)。マウス脳内にフィブロインゲルをインジェクト

して脳内での炎症が検討されているが,インジェクト後

72時闇では炎症が見られるものの,その程度は軽く 4週

間後には炎症が消失した (Fernandez-Garcia,et al., 2016)。

また,マウス皮内にフィブロインマイクロスフェアを埋

植した場合,埋植 3日後までは炎症反応が見られるが,

その後は消失することも報告されている (Arkhipova,et

al., 2016)。先にも述べたが,炎症反応は創傷治癒過程で

あることと,シルク材料を体内に入れるためには創傷が

伴うことを考えると, invivoにおけるフィブロイン材料

に対する初期の炎症反応は正常な創傷治癒,組織再生の

プロセスであると考えられる。長期にわたる重篤な炎症

が無いことや, invitroでの炎症反応が低いことを合わ

せると,フィブロインは生体親和性が高いマテリアルで

あると判断しても良さそうである。

シルクセリシン(セリシン)は,精製が不十分なシル

ク縫合糸における炎症反応や免疫反応を惹起する原因物

質である可能性が高いとされていた。しかし,セリシン

層には低分子物質を含む種々の物質が含まれるため,セ

リシン以外のこれらの物質が生体反応を惹起する可能性

も高い。実際に,シルク縫合糸からの溶出物は炎症反応

を起こすことが報告されている (Uff,et al., 1995)。最近,

セリシン自体は強い生体反応を惹起することはなく,

フィブロインとの複合により炎症反応を起こすことが示

された (Lamboni,et al., 2015; Aramwit, et al., 2009; Zhang,

et al., 2006)。

2.3. 補体活性化

生体防御における重要な初期反応に補体活性化反応が

ある。補体活性化には古典活性化経路,脂質活性化経路,

そして第二活性化経路の 3つが知られている。このなか

で,バイオマテリアルに対しては,第二活性化経路が中

心に関与する (Nilsson,et al., 2007)。血中で産生される

補体 C3bが異物表面に結合することで,炎症系プロセ

スを活性化する因子を産生しながら,最終的に細胞膜破

壊を行う複合体の生成につながる。 C3bの異物表面への

4

Page 4: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

結合には,異物表面の水酸基が大きく関与している

(Chenowes, 1987)。末端に水酸基を持つアルカンチオー

ルの自己組織化を利用して,表面の水酸基密度を変えた

材料上での C3bの結合を検討した結果,高密度の水酸

基により顕著に C3bの結合が増加することが示された

(Hirata, et al., 2003)。一方,高密度の水酸基を分子中に

もつポリビニルアルコール (PVA)に対する C3bの結合

を評価したところ,溶液状態での PVAは補体を活性化

しない反面基板上にフィルム化した PVAでは, C3bの

結合が増加して補体活性化が惹起されることが確認され

た (Arima,et al., 2010)。すなわち,固相に高密度に固定

化された水酸基は,補体を活性化することを意味してい

る。従って,高密度に水酸基を有するセリシンは,セリ

シン分子自身は補体活性化を惹起させないものの,フィ

ブロイン繊維に固定化されたセリシンは補体を活性化す

る可能性が高いことを意味している。フィブロイン分子

にも水酸基は存在するが,その密度は補体活性化を惹起

するまで高くないために補体を活性化しないと思われ

る。

2.4. 安全性評価

メディカルマテリアルを実用的製品とするためには,

安全性等について厚生労働省の認可や承認が必要であ

り,基準に定められた評価を行い製品の安全性等を判断

する。後述するフィブロインスポンジの安全性評価を,

「医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方」に準

拠して行った。皮膚に接触するマテリアルとしての評価

を行い,モルモット皮膚での maximizationtestによる皮

膚感作性試験,ウサギ皮膚による皮膚一次刺激性試験や

皮内反応試験, 4種の細菌を用いた復帰突然変異試験

(ames test)による遺伝毒性試験,そして日本人 52名に

よるヒトパッチテストによるヒトに対するアレルギー反

応と累積刺激性を評価した(玉田ら, 2015)。これらの

試験の結果は,すべて陰性の判断となり,フィブロイン

スポンジの安全性が確認されたことになる。しかし,マ

テリアルに要求される安全性は,そのマテリアルがどの

様に生体と関わるのか,例えば,体内組織に埋植するの

か,血液と触れるのか,皮膚表面のみなのか,生体との

接触期間はどれくらいなのか,あるいは,生体内で分解

するのかどうか,によって異なる。フィブロインマテリ

アルは基本的に安全性が高いことは確かであるが,どの

ように生体に対して使用するのか, どのような形状で使

用するのか,あるいはどのような加工プロセスにより作

製されたかにより,生体反応性は異なるため,その安全

性を議論する場合は十分に考慮する必要がある。

3. メデイカル用途のためのシルク加工

3.1. フィブロインスポンジ

産業用資材とは異なり,メディカルマテリアルには生

体安全性が必須の要求物性となり,そのためマテリアル

自身の安全性に加えてその加工プロセスにおける安全性

の担保も必要である。フィブロンは前項に述べたように

マテリアルとしての高い安全性を有しており,また,一

旦水溶液にすることで,架橋剤等の化学物質を使用する

ことなく,フィルム,ゲル,パウダー,スポンジ,樹脂,

繊維に加工することが可能となる。(図 I) これらの加

工は,基本的に生体に安全な水を溶媒として使用するた

めに,生体安全性の担保された加工プロセスとなる。

再生医療において組織形成のためには,細胞のみでな

く,細胞の生育や増殖あるいは分化や組織形成を支える

細胞足場材料が必要な場合がある。細胞足場材料には,

多孔質構造や微細繊維構造が有効であるとされており

(Kim, et al., 2012), シルクに関しても,スポンジ構造体

やナノファイバー不織布での細胞足場材料開発が多く報

告されている (Zhang,et al., 2009; Jao, et al., 2016)。

シルクフィブロインスポンジは,水溶液をそのまま凍

結乾燥することでその構造を形成することは可能である

が,そのままでは水に溶解するためにメタノール水溶液

への浸漬等による不溶化処理を行う必要がある。あるい

は,凍結乾燥したフィブロインをヘキサフルオロイソプ

ロパノール (HFIP) に高濃度に溶解し,塩粒子や糖粒

子を添加したのち HFIPを蒸発させ,さらに水中で塩や

糖粒子を溶解除去することで,多孔質構造体を形成させ

る手法が考案されている (Nazarov,et al., 2004)。これら

のプロセスは多量の有機溶媒を使用するために,その生

体安全性に留意する必要がある。実際に, HFIP法で作

製したフィブロイン材料は,水から加工したフィブロイ

ン材料に比較して異物反応性が高いことが報告されてい

る (Kuboyama,et al., 2012; Wang, et al., 2008)。われわれ

は,フィブロイン水溶液に少量のエタノールやジメチル

スルホキシド (DMSO)等の水溶性有機溶媒を添加した

溶液を一定時間凍結し融解するのみで,凍結乾燥プロセ

スを経ることなく,力学的物性に優れたフィブロインス

ポンジを作製する技術を開発した (Tamada,2005)。凍結

による氷晶の生成と,それに伴うフィブロイン分子と溶

媒の濃縮により凍結状態でのフィブロイン分子の結晶化

が進行することで,多孔質構造体が形成されることが確

認されている (Kameda,et al., 2011)。スポンジの弾性率,

多孔質構造孔径は,フィブロイン濃度や凍結プロセス

のエ夫で簡便に制御できる。前述したように,このスポ

圃氷.躙旧j

で(斗中’)7Vol.86

No.1

5

Page 5: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

SANSHI-KONCHU BIOTEC Vol.86 No.I

図 1. フィブロインの多様なマテリアル形態

ンジの生体安全性は高く,後述するように現在軟骨再生

用材料として検討を進めている。

3.2. シルクナノファイバー不織布

ナノファイバー不織布は,生体組織構造に類似する構

造を提供できることから,再生医療での細胞足場材料と

しての利用が,ポリ乳酸やポリグリコール酸等の生体分

解吸収性高分子を中心に検討されている (Rezvani,et al.,

2016)。シルクタンパク質のナノファイバー不織布は,

エレクトロスピニング手法により検討されている。

Zarkoobらが,初めてフィブロインの HFIP溶液からエ

レクトロスピニング法によりシルクナノファイバー不織

布が形成できることを報告し,詳細な紡糸条件が検討さ

れた (Sukigara,et al., 2003)。しかし,それらの多くは,

HFIP (Zarkoob, et al., 2004), ヘキサフルオロ酢酸 (HFA)

(Ohgo, et al., 2003), ギ酸 (Zhang,et al., 2012)を溶媒と

しており,メディカルマテリアルとしては好ましくない。

われわれも,フィブロインのギ酸溶液からエレクトロス

ピニング法によりシルクナノファイバー不織布を作製し

たが,洗浄のみではギ酸を除去することが不可能であり,

また残存したギ酸が細胞付着性に影響を与えることを確

認している (Kishimoto,et al., 投稿中)。一方で,フィブ

ロイン水溶液からのエレクトロスピニングによるシルク

ナノファイバー不織布の作製も報告 (Wang,et al., 2005;

Chen, et al., 2006) されているが,紡糸液として高濃度

のフィブロイン水溶液が必要であることから,製造時の

原料フィブロイン水溶液の不安定性や,高濃度水溶液を

作製するためにフィブロイン分子の分子量低下があり,

得られた不織布の機械的物性に課題が残っている。また,

ポリエチレンオキサイド (PEO)のような水溶性高分子

をシルクフィブロイン水溶液に混合した紡糸液よりエレ

クトロスピニングによるナノファイバー不織布の製造も

報告されている (Jin,et al., 2002)。低濃度のフィブロイ

ン水溶液から安定したシルクナノファイバー不織布の製

造が出来るものの, PEOの洗浄除去が必要であり,ま

た残存 PEOが細胞生育に対して影響を与えることが報

告されている (Jin,et al., 2004)。

われわれは,最近, 5wt¾ 程度の低濃度フィブロイン

水溶液のみからエレクトロスピニング法により,シルク

ナノファイバー不織布の作製が可能であることを報告し

た (Kishimoto,et al., 2017) (図 2)。フィブロイン水溶液

のpH変化による紡糸挙動を検討したところ,紡糸液を

pH 10.5以上にすることで紡糸が可能になることを見出

した。紡糸の可否は,紡糸液の粘度に影響されるが,

pH 7とpH10.5では,フィブロイン水溶液の粘度に大き

な差はなく,紡糸液の pHが紡糸に影響することが確認

された。フィブロインはタンパク質であるために,溶液

のpHにより分子内の荷電状態が変化し,フィブロイン

溶液ジェット形成場での表面張力と電場のバランスを適

正化されたためと推定している。低濃度水溶液のみから

6

Page 6: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

フィブロイン水溶液

シルク不織布

図2.フィプロイン水溶液を紡糸液とするエレクトロスピニングによるナノファイバー不織布の作製右図は作成したシルク不織布の外観と走査型電子顕微鏡写真

ナノファイバー不織布を紡糸できるため,生体のみなら

ず環境にも優しい製造プロセスであり,メディカルマテ

リアルとしての製造には有効な技術であると考えてい

る。

3.3. フィプロンフィルムの表面物性

メディアカルマテリアルが生体と接触する場所は表面

であるため,マテリアルの機能性を論じる時には,その

表面物性の理解が重要となる。フィブロイン水溶液を平

板上にキャス トして乾燥するこ とでフィルムが形成でき

る。乾燥温度とフィブロイ ンフィルム表面の構造や物性

についての検討が行われている (Tretinnikovand Tamada,

2005)。フィルムバルク構造は,乾燥温度が高くなると

ともに pシート構造が増加して結晶化が進むことが観察

されたが,表面構造は乾燥温度が 50°Cまではバルクと

同じく p化が進むが,さらに乾燥温度を上げることで p化が低下することが見出された。フィブロイン分子間の

分子間力がバルク内に比較して表面では低下しているた

めと推察される。フィブロインフィルムの表面自由エネ

ルギーも乾燥温度とともに変化することも確認されてい

る。細胞接着性,増殖性,あるいは基質産生は,基材の

表面エネルギーや表面電荷に依存する (Tamadaand

lkada, 1986, 1994)。シルクをメディカルマテリアルとし

て考える場合には,バルク構造や物性のみならず,表面

にも目を向けるべきであることを示唆している。

フィブロイン水溶液を平板上で乾燥して作製したフィ

ルムは,そのままでは結晶化が十分でなく水に溶解する。

そのため,通常はメタノール等のアルコール水溶液への

浸漬や,水蒸気中でアニーリ ングにより結晶化を進めて

水不溶性とする (Hu,et al., 2011)。最近,このアルコー

ル処理の条件によりフィブロインフィルム表面の物性が

変化することが見出された (Terada,et al., 2016)。作製

したフィブロインフィルムを濃度を変化させたエタノー

ル水溶液で処理すると, 85%以下の濃度での処理とそ

れ以上の濃度での処理では,処理後の表面状態が異なり,

低濃度のエタノール処理では,最外層表面は含水性の高

い散漫層が存在し, 高濃度エタノール処理では疎水性の

高い堅固な表面となることが示唆された。これらは, 水

中での原子間力顕微鏡観察によっても確認されている。

柔らかい表面で培養した幹細胞は神経細胞に硬い表面で

は骨に分化するというように,基材の表面弾性率は,細

胞の分化に影響を及ぼすことが報告されている (Engler,

et al., 2006)。多様な組織に対する再生医療用細胞足場材

料の開発にエタノール処理という簡便な処理のみでもシ

ルク材料は対応できる可能性を意味している。

脚氷.澗田j

でf

斗中’y7Vol.86

No.1

7

Page 7: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

SANSHI-KONCHU BIOTEC Vol.86 No.1

.. 〒こ

≪...

,'

...

#”ィ・・^.. ▲

◆●●

体十

▼●●

,'

... ジす

""3

ン出

さ、

... •••

・・`

ポり

ス取

r.`\

軟骨組織再生の完成

スポンジを足場として欠損部位で軟骨組織再生

図3. フィブロインスポンジを利用する「貼つて治す軟骨再生」治療システムの概略

4. シルクを利用する新しい軟骨再生利用システム

4.1. フィプロインスポンジによる軟骨再生

シルクを再生医療用の細胞足場材料として利用するこ

とを指向した研究が活発に進められている。ターゲット

の組織は,骨軟骨腱靱帯のように荷重組織が多い

(Kasoju and Bor, 2012)。これは,シルクのもつ優れた機

械的特性によるものであると思われる。われわれも前述

したフィブロインスポンジ材料を利用した軟骨再生治療

検討を進めている。フ ィブロインスポンジは 80%以上

の含水率を持ちながら強度を有するために,高い含水性

の荷重組織である関節軟骨組織のための細胞足場材料と

して適していると考えられる。当初は,従来の組織工学

的な考え方 (Vacantiand Langer, I 993, 2016)から,フィ

ブロインスポンジ内で軟骨細胞を培養して軟骨組織再生

を行うことを考えた。実際にフィブロインスポンジ内で

関節軟骨細胞を培養したところ,潤滑機能を有した良好

な軟骨組織が形成されることが確認され,軟骨再生材料

として有望であることが分かった (Aoki,et al., 2005)。

一方,軟骨細胞を培養したフィブロインスポンジを皮下

に埋植したところ,フィブロインスポンジの対面の皮下

組織部に軟骨組織が形成されることが発見された (Aoki,

et al., 未発表)。この結果は,フィブロイ ンスポンジが軟

骨細胞を保持し, 軟骨組織再生へ誘導することを示唆し

ている。この結果をもとに,フィブロインスポンジを用

いた新しい軟骨再生治療システムの開発へ展開する検討

が進められている。軟骨細胞,間葉系幹細胞,ES細胞,

あるいは iPS細胞等の細胞をフィブロインスポンジに播

種し,軟骨欠損部位に貼付することで細胞がフィブロイ

ンスポンジにより運ばれ,さらに軟骨組織再生に誘導さ

れた細胞によりフィブロインスポンジに対面した患部に

軟骨再生を促し,軟骨組織が形成された後にフィブロイ

ンスポンジは取り除くという再生治療システムである

(図 3)。再生医療用細胞足場材料は組織形成とともに分

解吸収されるという従来の考え方とは異なり ,フィブロ

インスポンジは本来の足場の意味である組織再生のため

の材料(細胞)と空間を提供し, 組織再生完成後は取り

除かれることになる。富田らは,本治療システムを「貼っ

て治す軟骨再生」と し,新しい軟骨再生治療のコンセプ

トとして提案している。この治療システムを実証するた

めに,うさぎ膝蓋骨軟骨全面欠損モデルを使用して,治

療効果を検証した (Hirakata,et al., 2016)。軟骨欠損面に

うさぎ軟骨細胞を播種したフィブロインスポンジを貼

付,縫合し6週間飼育後,組織学的な評価を実施した。

8

Page 8: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

未処理群では軟骨再生が見られなかったが,フィブロイ

ンスポンジ適用群では,欠損面全面にわたり良好な軟骨

組織形成が確認された。広範囲の軟骨欠損に対して軟骨

組織再生が達成されたことは,従来にない結果である。

また,欠損部の対面の正常軟骨組織は,未処理群では損

傷を受けていたのに対し,フィブロインスポンジ貼付群

では正常な組織像を示していたことから,創傷保護の面

でもフィブロインスポンジが有効であることを示してい

る。緑色蛍光タンパク質を発現する組換えうさぎによる

検討から,再生軟骨組織に存在する軟骨細胞は,約半数

が宿主由来で残りはフィブロインスポンジからの由来で

あることが確認された (Hirakata,et al., 2016)。この結果

から,フィブロインスポンジに軟骨細胞の運搬とともに

軟骨組織再生を誘導する機能があることが推察される。

4.2. 再生医療用足場としてのフィブロイン

フィブロインフィルム上で培簑した繊維芽細胞の移動

性が他の基材に比較して顕著に高いことが発見された

(Hashimoto, et al., 2013)。ガラスやコラーゲン基材で培

養した細胞に比較して,フィブロイン上で培養した細胞

は培養初期 24時間で 2倍近く高い移動性を示した。そ

の移動性とともに,細胞外マトリックス (ECM)関連

の遺伝子発現が顕著に増加していることも確認された。

このフィブロイン上での高い細胞移動性は,繊維芽細胞

のみでなく軟骨細胞においても同様の結果が得られ,ま

た細胞の凝集塊を形成する傾向が高いことが観察され

た。ボロノイ分割を利用する数理統計学的な手法により,

軟骨細胞におけるこの凝集過程が定量的に分析されてい

る (Otaka,et al., 2013, 2015)。フィブロイン表面上で培

養した軟骨細胞は,細胞接着性の表面に比較してより凝

集を生成する傾向があることが解析された。一般に,細

胞が凝集状態にあるときに細胞が分化状態になることが

知られているので,フィブロイン表面上の細胞は,分化

方向に誘導される可能性が高いことが推察できる。フィ

ブロイン上で培養した皮膚角化細胞も,基底状態から角

化への代謝を誘導する傾向があることが確認されている

(Hashimoto, et al., 準備中)。これらの結果は,フィブロ

イン材料が,細胞を成熟や分化に誘導する環境を提供し

ている可能性を示唆している。よって,フィブロインス

ポンジ内での軟骨細胞は,分化や組織再生へ誘導されて

軟骨組織再生に繋がったと考えている。これらの特徴は,

他の材料にはないシルク材料の特異的な性質と考えら

れ,再生医療分野への新しい素材の提供となると期待し

ている。残念ながら現時点では,フィブロインマテリア

ルのこの特異性発現のメカニズムは明らかとなっていな

い。このメカニズムが理解できれば,シルクのメディカ

ルマテリアルとしての展開がより加速できると期待して

いる。

5. おわリに

本稿では,メディカルマテリアルとしての観点からシ

ルクの特徴を概説した。本稿では述べなかったが,シル

クタンパク質を修飾することでシルクに種々の機能性を

付与することができる。従来の化学的修飾法とともに,

本特集で紹介された新しい修飾手法である,他材料との

複合化(市田ら, 2017),非天然アミノ酸導入によるクリッ

ク反応による修飾(寺本, 2017)あるいはシルクの構造

転移の特徴を生かした修飾(橋本ら, 2017)により,機

能性を有したシルクメディカルマテリアルの開発も可能

であろう。また,遺伝子組換えカイコ技術の成熟ととも

に,遺伝子組換えシルクによる新しいシルク材料の創出

も可能になっている(小島・多賀, 2017)。特に細胞増

殖因子を融合した組換えフィブロイン (Kambeet al.,

2016)は,再生医療のみならず臨床における様々な場面

での創傷治療でも活用できる材料として有望であると思

われる。シルクは基本的に生体安全性が高い材料である

と考えられるが,加工プロセスや化学的あるいは遺伝子

組換えによる修飾を経るシルクの改変は,その生体安全

性が担保されるものではないことを,メデイカルマテリ

アルとしてシルクを利用する場合には常に念頭に個かな

ければならない。

古代からの材料であるシルクは,多様な分野で新素材

として活用できる先端材料として研究が進められている

(Omenetto and Kaplan, 2010)。衣料用素材としてのシル

クから少し見方を変えると,マテリアルとしてまだ未知

の機能性や利用用途が見出される可能性が高い。本特集

においても新しい観点からのカイコのシルク紡糸に関す

る考察が紹介(河原, 2017)されているが,マテリアル

としてのシルクの新しい加工プロセスヘの発展へ繋がる

であろう。現在,臨床的に実際に使用されているシルク

は縫合糸のみであるが,最近,乳がん切除後の乳房再建

の補助材としてシルクメッシュ製再生医療材料製品

(SERI, Allergan, Inc.)が使用された症例が報告され,問

題ない成績であったことが示された (Vita,et al., 2014)。

メディカルマテリアルとしてのシルクが,新たなシルク

産業創出に寄与できることを期待させる。

引 用 文 献

Akhipova AY, Nosenko MA, Malyuchenko NV, Zvartsev RV,

脚氷.躙旧j

4斗

7-y

、Vol.86

No.1

Page 9: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

SANSHI-KONCHU BIOTEC Vol.86 No.I

Moisenovich AM, Zhdanova AS, Vasil'eva TV, Gorshkova EA,

Agapov II, Drutskaya MS, Nedospasov SA, Moisenovich MM,

Effect offibroin microcarriers on inflammation and regeneration

of deep skin wounds in mice, Biochemistry (Moscow) 2016, 81,

1251-1260.

Altman GH, Diaz F, Jakuba C, Calabro T, Horan RL, Chen J,

Kaplan DL, Silk-based biomaterials, Biomaterials 2003, 24,

401-416.

Anderson JM, Rodriguez A, Chang DT, Foreign body reaction to

biomaterials, Semin Immunol 2008, 20, 86-100.

Anderson JM, McNally AK, Biocompatibility of implants: lym-

phocyte/macrophage interactions, Semin Immunopath 2011, 33,

221-233.

Aoki H, Tomita N, Morita Y, Hattori K, Harada Y, Sonobe M,

Wakitani S, Tamada Y, Culture of chondrocytes in fibroin hydro-

gel-sponge, Bio-Med Mater Eng 2003, 13, 309-316.

Aramwit P, Kanokpanont S, De-Eknamkul W, Srichana T, Monitor-

ing of inflammatory mediators induced by silk sericin, J Biosci

Bioeng 2009, 107, 556-561.

Arima Y, Kawagoe M, Furuta M, Toda M, Iwata H, Effect of swell-

ing of poly(vinyl alcohol) layers on complement activation, Bio-

materials 2010, 31, 6926-6933.

Chen C, Chuanbao C, Xilan M, Yin T, Hesun Z, Preparation of

non-woven mats from all-aqueous silk fibroin solution with elec-

trospinning method, Polymer 2006, 47, 6322-6327.

Chenoweth DE, Complement activation in extracorporeal circuit,

Ann NY Acad Sci 1987, 516, 306-313.

Engler AJ, Sen S, Sweeney HL, Discher DE, Matrix elasticity di-

rects stem cell lineage specification, Cell 2006, 126, 677-689.

Fernandez-Garcia L, Mai-Buye N, Barios JA, Madurga R, Elices

M, Perez-Rigueiro J, Ramos M, Guinea GV, Gonzalez-Nieto D,

Safety and tolerability of silk fibroin hydrogels implanted into

the mouse brain, Acta Biomater 2016, 45, 262-275.

Gong Y, Li L, Gong D, Yin H, Zhang J, Biomolecular evidence of

silk from 8,500 years ago, PLoS ONE 2016, 11, e0168042.

Gordon S, Alternative activation of macrophages, Nat Rev Immu-

nol 2003, 3, 23-35.

Hahimoto T, Kojima K, OtakaA, Takeda YS, Tomita N, Tamada Y,

Quantitative evaluation of fibroblast migration on a silk fibroin

surface and TGFBI gene expression, J Biomater Sci Polym Eds

2013, 24, 158-169.

橋本朋子,黒子弘道,亀田恒徳,玉田靖,シルクの新しい修

飾技術,蚕糸・昆虫バイオテック 2017, 86, 13-17.

Hirakada E, Tomita N, Tamada Y, Suguro T, Nakajima M, Kambe

Y, Yamada K, Yamamoto K, Kawakami M, Otaka A, Okumura

H, Suzuki S, Early . tissue format10n on whole-area osteochondral

defect of rabbit patella by covering with fibroin sponge, J

Biomed Mater Res B 2016, 104, 1474-1482

Hirata I, Hioki Y, Toda M, Kitagawa T, Murakami Y, Kitano E,

Kitamura H, Ikada Y, Iwata H, Deposition of complement pro-

tein C3b on mixed self-assembled monolayers carrying surface

hydroxyl and methyl groups studied by surface plasmon reso-

nance, J Biomed Mater Res 2003, 66A, 669-676.

Hu X, Shmelev K, Sun L, Gil ES, P SH, Cebe P, Kaplan DL, Regu-

lation of silk material structure by temperature controlled water

vapor annealing, Biomacromolocules 2011, 12, 1686-1696.

市田雄也,中澤千香子,浅野敦志,中澤靖元,シルク複合材

JO

料の技術と利用,蚕糸・昆虫バイオテック 2017, 86, 19-

24.

Jao D, Mou X, Hu X, Tissue regeneration: A silk road, J Funct Bio-

mater 2016, 7, 22.

Javed F, Al-Askar M, Almas K, Romanos GE, Al-Hezaimi K, Tis-

sue reactions to various suture materials used in oral surgical in-

terventions, ISRN Dentistry 2012, ID 762095.

Jin HJ, Chen J, karageorgiou V, Altman GH, Kaplan DL, Human

bone marrow stromal cell responses on electrospun silk fibroin

mats, Biomaterials 2004, 25, 1039-1047.

Jin HJ, Fridrikh SV, Ruttedge GC, Kaplan DL, Electrospinning

Bombyx mori silk with poly(ethylene oxide), Biomacromoloc-

ules 2002, 3, 1233-1239.

Kambe Y, Kojima K, Tamada Y, Tomita N, Kameda T, Silk fibroin

sponges with cell growth-promoting activity induced by geneti-

cally fused basic fibroblast growth factor, J Biomed Mater Res A

2016, 104, 82-93.

Kameda T, Hashimoto T, Tamada Y, Effects of supercooling and

organic solvent on the formation of a silk sponge with porous

3-D structure, and its dynamical and structural characterization

using solid-state NMR, J Mater Sci 2011, 46, 7923-7930.

Kasoju N, Bora U, Silk fibroin in tissue engineering, J Funct Bio-

mater 2012, 1, 393-412.

河原豊,カイコの糸作りに関する総合考察 アロメトリー

解析,強制紡糸,セリシンの作用,蚕糸・昆虫バイオテッ

ク2017, 86, 47-54.

Kim TG, Shin H, Lim DW, Biomimetic scaffolds for tissue engi-

neering, Adv Funct Mater 2012, 22, 2446-2468.

Kishimoto Y, Morikawa H, Yamanaka S, Tamada Y, Electrospin-

ning of silk finroin from all aqueous solution at low concentra-

tion, Mater Sci Eng C 2017, 73, 498-506.

小島桂伊賀正年,機能性・カ学物性改変シルク,蚕糸・

毘虫バイオテック 2017, 86, 39-45.

Kuboyama N, Kiba H, Arai K, Uchida R, Tanimoto Y, Bhawal UK,

Abiko Y, Miyamoto S, Knight D, Asakura T, Silk fibroin -based

scaffolds for bone regeneration, J Biomed Mater Res PartB

2012, 101B, 295-302.

Lamboni L, Gauthier M, Yang G, Wang Q, Silk sericin: A versatile

material for tissue engineering and drug delivery, Biotech Adv

2015, 33, 1855-1867.

Langer R, Vacanti J, Tissue engineering, Science 1993, 260, 920-

926.

Langer R, Vacanti, J, Advances in tissue engineering, J Pediatr

Surg 2016, 51, 8-12.

Meinel L, Hofmann S, Karageorgiou V, Kirker-Head C, McCool

J, Gronowicz G, Zichner L, Langer R, Vunjak-Novakovic G,

Kaplan DL, The inflammatory responses to silk films in vitro

and in vivo, Biomaterials 2005, 26, 147-155.

Mosser DM, Edwards JP, Eploring the full spectrum of macro-

phage activation, Nat Rev Immunol 2008, 8, 958-969.

Nazarov R, Jin HJ, Kaplan DL, Porous 3-D scaffolds from regener-

ated silk fibroin, Biomacromolecules 2004, 5, 718-726.

Nioson B, Ekdahl KN, Mollnes TE, Lambis JD, The role of com-

plement in biomaterial-induced inflammation, Mol Immunol

2007, 44, 82-94.

Ohgo K, Zhao C, Kobayashi M, Asakura T, Preparation of non-

woven nanofibers of bombyx mori silk, Samia cynthia ricini silk

Page 10: メディカルマテリアルとしてのシルク2500年前のインドの外科魯(Sushruta Samhita) には,樹皮,腱(コラーゲン繊維),毛とともにシルクが傷を

and recombinant hybrid silk with electrospinning method, Poly-

mer 2003, 44, 841-846.

Omenetto FG, Kaplan DL, New opportunities for an ancient mate-

rial, Science 2010, 329, 528-531.

Otaka A, Kachi ND, Hatano N, Kuwana Y, Tamada Y, Tomita N,

Observation and quantification of chondrocyte aggregation be-

havior on fibroin surfaces using Voronoi partition, Tissue Eng

PartC 2013, 19, 396-404.

Otaka A, Takahashi K, Takeda YS, Kambe Y, Kuwana Y, Tamada Y,

Tomita N, Quantification of cell co-migration occurrences dur-

ing cell aggregation on fibroin substrates, Tissue Eng Part C

2014, 20, 671-680.

Panilaitis B, Altman H, Chen J, Jin HJ, karageorgiou V, Kaplan

DL, Macrophage responses to silk, Biomaterials 2003, 24, 3079-

3085.

Pillai CKS, Sharma CP, Absorbable polymeric surgical suture:

Chemistry, production properties, biodegradability, and perfor-

mance, J Biomater Appl 2010, 25, 291-366.

Rezvani Z, Venugopal JR, Urbaska AM, Mills DK, Ramakrishna S,

Mozafari M, A bird's eye view on the use of electrospun nanofi-

brous scaffolds for bone tissue engineerin, Nanomedicine 2016,

12, 2180-2200.

Santin M, Motta A, Freddi G, Cannas M, In vitro evaluation of the

inflammatory potential of the silk fibroin, J Biomed Mater Res

1999, 46, 382-389.

Seo YK, Yoon HH, Park YS, Song KY, Lee WS, Park JK, Correla-

tion between scaffold in vivo biocompatibility and in vitro cell

compatibility using mesenchymal and mononuclear cell cultures,

Cell Biol Toxicol 2009, 25, 513-522.

Sukigara S, Gandhi M, Ayutsede J, Micklus M, Ko F, Regeneration

of Bombyx mori silk by electrospinning -partl: processing pa-

rameters and geometricproperties, Polymer 2003, 44, 5721-

5727.

Tamada Y, Ikada Y, Cell attachment to various polymer surfaces,

Polymer in Medicine II, Plenum Publishing Co., 1986, 101-115.

Tamada Y, Ikada Y, Fibroblast growth on polymer surfaces and bio-

synthesis of collagen, J Biomed Mater Res 1994, 28, 783-789.

Tamada Y, New process of from a silk fibroin porous 3-D structure,

Biomacromolecules 2005, 6, 3100-3106.

玉田靖,メディカル領域の繊維素材,高機能性繊維の最前線,

シーエムシー出版, 2014, 95-102.

玉田靖,角直祐,小林一稔,フィブロインスポンジの安全性

評価―第 1報一,日本シルク学会誌 2015, 23, 71-73.

Terada D, Yokoyama Y, Hattori S, Kobayashi H, Tamada Y, The

outermost surface properties of silk fibroin films refrect ethanol-

treatment conditions used in biomaterial preparation, Mater Sci

Eng C 2016, 58, 119-126.

寺本英敏,非天然型アミノ酸の導入によるシルクの改変:ク

リッカブルシルクの創製蚕糸・昆虫バイオテック 2017,

86, 25-38.

Thurber AE, Omenetto FG, Kaplan DL, In vivo bioresponses to

silk proteins, Biomaterials 2015, 71, 145-157.

Treinnikov ON, Tamada Y, Influence of casting temperature on the

near-surface structure and wettability of cast silk fibroin films,

Langmuir 2001, 17, 7406-7413.

Uff CR, Scott SD, Pockley G, Phillips RKS, Influence of soluble

suture factors on in vitro macrophage function, Biomaterials

1995, 16, 355-360.

Vita RD, Buccheri EM, Pozzi M, Zoccali G, Direct to implant

breast reconstruction by using SERI, preliminary report, J Exp

Clin Cancer Res 2014, 33, 78-84.

Wang H, Zhang Y, Shao H, Hu X, Electrospun ultra-fine silk fibroin

fibers from aqueous solutions, J Mater Sci, 2005, 40, 5359-5363.

Wang Y, Rudym DD, Walsh A, Abrahamsen L, Kim HJ, Kim HS,

Kirker-Head C, Kaplan DL, In vivo degradation ofthree-dimen-

sional silk fibroin scaffolds, Biomaterials 2008, 29, 3415-3428.

Zarkoob S, Reneker DH, Hudson SD, Ertley D, Adams WW, Struc-

ture and morphology of electrospun silk nanofibers, Polymer

2004, 45, 3973-3977.

Zhang F, Zuo B, Fan Z, Xie Z, Lu Q, Zhang X, Kaplan DL, Mech-

anisms and control of silk-based electrospinning, Biomacromol-

ecules 2012, 13, 798-804.

Zhang X, Reagan MR, Kaplan DL, Electrospun silk biomaterial

scaffolds for regenerative medicine, Adv Drug Deliv Rev 2009,

61, 988-1006.

Zhang YQ, Ma Y, Xia YY, Shen WD, Mao JP, Xue RY, Silk sericin-

insulin bioconjugates: Synthesis, characterization and biological

activity, J Control Release 2006, 115, 307-315.

繭氷.澗旧j

で(斗中’y7Vol.86

No.1

II


Recommended