機関
発信
情報
論文情報
の統合検索
引用関係
の表示
本文への
リンク:4,61
1誌,37
9万論文
論文情報:18
,500
誌,1,53
0万論
文論文情報
研究課題・成果情報
機関発信情報
図書・雑誌情報
専門学術情報
文部科学
省科学研究
費補助金の
採択課題・
研究成果を一括検索
採択課題67
万件
,実
績報
告78
万件
,
成果概要15
万件,研
究成
果報告書
等4.9万
件
複数
の学
術情
報資
源(データベース)を
一括検索
データベース29
種,22
3万件
日本
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術機
関リポジトリに蓄
積され
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万件
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●GeN
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検索
必要とする情報に近いものが「どこに」「ど
のような形で」「どれだけ」あるのか、的確
にナビゲート。
学術コンテンツの概要
GeNii
GeNii
図書館等との連携・協
力の下、学術コミュニティのニーズを踏まえ、大学等における教育・研
究に不可
欠な学術
コンテンツを形成・確
保・提
供するとともに、ポータル機能
の高
度化
などを進
めることにより、
学術コンテンツの整備・提
供を推進。
連想検索
機能
目次
・内
容情
報の
収録
所蔵図書
館情報の参
照
図書
・雑
誌等
3,43
0万件
- 57 -
特許
全文
はIP
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で参
照可
能
想定
利用
イメ
ージ
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飛行
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軽量
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気軽
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研究
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表示
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特許
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容類
似の
文献
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照可
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LOB
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L科学技術振興機構(JST)が
構築・運
営している科学技術情報に関する統合検索サイト。専門データ
ベースとの連携により、研究者、文献、特許、大学・研
究所等の基本情報を相互に関連づけた検索機
能を提供。
- 58 -
国立
国会
図書
館サ
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J-S
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概要
- 66 -
提言
学術誌問題の解決に向けて
― 「包括的学術誌コンソーシアム」の創設 ―
平成22年(2010年)8月2日
日 本 学 術 会 議
科学者委員会
学術誌問題検討分科会
- 67 -
この提言は、日本学術会議 科学者委員会 学術誌問題検討分科会 の審議結果を
取りまとめ公表するものである。
日本学術会議 科学者委員会 学術誌問題検討分科会
委員長 浅島 誠 (第二部会員) 独立行政法人産業技術総合研究所フェロー兼
幹細胞工学研究センター長
副委員長 山本 眞鳥 (第一部会員) 法政大学経済学部教授
幹事 玉尾 皓平 (第三部会員) 独立行政法人理化学研究所基幹研究所所長
鈴村 興太郎(第一部会員) 早稲田大学政治経済学術院教授
田口 紀子 (第一部会員) 京都大学大学院文学研究科教授
北島 政樹 (第二部会員) 国際医療福祉大学学長
山本 正幸 (第二部会員) 東京大学大学院理学系研究科教授
大垣 眞一郎(第三部会員) 独立行政法人国立環境研究所理事長
植田 憲一 (連携会員) 電気通信大学レーザー新世代研究センター
センター長・教授
尾城 孝一 (特任連携会員) 東京大学附属図書館情報管理課長
西郷 和彦 (特任連携会員) 高知工科大学環境理工学群教授
谷藤 幹子 (特任連携会員) 独立行政法人物質・材料研究機構科学情報室室長
永井 裕子 (特任連携会員) 社団法人日本動物学会事務局長
林 和弘 (特任連携会員) 社団法人日本化学会学術情報部課長
深澤 良彰 (連携会員) 早稲田大学理工学術院基幹理工学部教授
- 68 -
要 旨
学術誌は、堅実な議論の場を形成し、永久に保存可能な文書としての体裁をとりつ
つ意見交換を行うことで、議論をより緻密に展開していくことができる場となってい
る。ピア・レヴューによる査読制度は、論文の客観的完成度を高めるという重要な役
割を担い、独善的な議論を廃して、より深い考察と高い完成度をもたらす働きを担う。
それと同時に、論文を題材として通信や書評等でも議論が繰り広げられ、また時代を
先取りした論文の刺激を受けて他の研究活動や論理形成が啓発されることもしばしば
見られる。これらの事象は、学術活動というものが単に一人一人の学究が個別に行っ
た研究の集合体であるのではなく、互いの学術研究活動が相互作用の中で刺激を受け
つつ形成され、切磋琢磨されていくものであることを示している。すなわち学術誌は、
研究活動における学術コミュニティの存在意義を端的に示すものとなっている。その
意味において学術誌は、学術の相乗作用をもたらす重要な役割を担っており、学術に
おけるヴァーチャルな融合拠点としての役割を果たしている。他方、学術はグローバ
ルな活動であり、その成果については、知財としての権利は担保されるものの、知と
してグローバルに共有されるべきである。この視点から、学術誌は、国際的に開かれ
たものであることも求められている。このように学術誌は、研究人材の育成や研究開
発投資と共に、学術の質的飛躍の鍵を握るものである。 わが国ではこれまで、研究者育成や研究予算への重点的な投資などのさまざまな施
策を行ってきた。しかしながら、学術活動を支えるもう一つの大きな柱である学術誌
については、これまで殆ど注意が向けられることなく、予算削減の波に晒されてきた
と言わざるを得ない。他方、この学術誌による情報流通は海外の学術誌商業出版社へ
過度に依存しなければならない状況にあり、学術誌へのアクセスおよび学術誌による
発信の両面において明らかに機能不全に陥っている。例えば、長年に亘る学術誌の恒
常的な価格上昇により、学術誌に対するアクセスに不平等が生じている。また、わが
国からの学術誌による発信についても、優れた研究成果の多くは海外の学術誌に流出
し、いわゆる学術の空洞化現象が指摘されて久しい。このように、日本の優れた研究
成果を海外の学術誌商業出版社や大手学会出版に独占され、そこに掲載された学術情
報を入手するために多大な支出を強いられているというのが、今日のわが国の学術誌
を取り巻く状況である。 一方、学術活動によって得られた研究成果は、学術に携わる科学者のみの独占を許
すものではない。社会全体は、多くを公的資金に依存している学術研究機関が挙げた
研究成果について知る権利を有しており、その知る権利を行使することによって公的
投資を享受できるようになっているべきである。研究成果を掲載した学術誌へのアク
セスは、それぞれの立場のイノベーションを助け、産業の革新的展開・新産業の創出
に繋げられるよう担保されていることが必要である。しかし、学術誌に対するミニマ
ムアクセスすらも、急激に確保できなくなっているのがわが国の現状である。 学術情報の流通を担う学術誌が抱えるこれらの問題は、わが国の学術の幾何級数的
衰退を招きつつある。その結果として、近々わが国社会さらには国際社会に深刻な影
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響を及ぼすことが強く危惧される。それ故、わが国の学術活動を健全な姿にし、学術
を飛躍的に発展させるためには、学術誌を取り巻く問題を解決することが焦眉の急で
ある。わが国はこの喫緊の課題に真摯に取り組まなければならない。
このような認識に基づき、学術会議は以下を提言する。
1.科学者、学術団体、関係機関(政府・評価機関等)、図書館、学術情報流通の
専門家によって構成し、学術情報受発信の諸問題に対応する横断的統合組織、
包括的学術誌コンソーシアム(C2SPC、 Comprehensive Consortium on Scholarly
Publishing and Collection)を設置する。C2SPC の機能は以下の課題を中心と
して、各専門的な見地から議論をし、モデル化および具現化を支援する組織で
ある。
(1)学術誌へのアクセスに関する課題の解決 学術誌に対するミニマムアクセスを確保し、電子ジャーナルの網羅的・安
定的・継続的な供給を実現する。 電子ジャーナル(EJ)コンソーシアム間の連携を触媒し、EJ コンソーシ
アムと連携した商業出版社との交渉を支援する。 電子ジャーナル購読の新しい契約モデルを創出する。 学術資料等へのアクセスの利便性を一層高めるため、国立情報学研究所
(NII)、科学技術振興機構(JST)、国会図書館(NDL)や図書館など、既
に開発・試行されている技術や成果とも連携し、学術資料・著者名の同定
システム、資料間リンキングシステム、高度化統合検索システム、内容抽
出システム、自動要約作成システムなどの先導的なソフトウエア等を開発
する。
(2)学術誌による発信に関する課題の解決 学術活動の主体者である科学者を中心として、日本の学術情報受発信の必
須要件、学術流通チャンネルの多様性の認識を共有し、日本の優れた研究
活動を国内外に力強く発信し、かつ持続性と競争力をもった流通基盤を提
案、構築する。 国際的に通用するオンラインプラットフォームを構築し、リーディングジ
ャーナルを育成する。またその成果およびノウハウを国内学協会に提供し、
我が国の学協会全体の発信力強化と持続性のある出版事業につなげる。 日本の学術活動を多様な取り出し方で見えるようにする。例えば、日本発
の質の高いオープンアクセス論文を集めて掲載した統合サイトを構築し、
日本発の情報のプレゼンスを向上させる。 電子ペーパーやモバイル端末対応など、刻々と変化し続ける研究環境に応
える学術情報の受発信の姿をモデル化する。
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2.前項1の実現にあたって、学術誌へのアクセス確保と学術誌による発信の現
場で主導的な役割を果たす優秀な専門家(コーディネータ)を国の財政支援
によって雇用する。図書館や学術出版団体と連携しつつ、果たすべきミッシ
ョンは以下の通りとする。
既存の図書館(電子ジャーナル等)コンソーシアム間の全国的な連携
電子ジャーナルコンソーシアム代表者と協調した学術出版社との交渉
電子ジャーナルの新しい契約モデルの創出
学術誌の編集・企画、制作・公開、広報・営業に関する指導
学術情報流通に関する動向調査・解析
学術情報の受発信全般に関する指導およびコンサルテーション
学術情報流通専門家養成コースの学生の教育
3.国立情報学研究所 NII が運営している NII-REO 等への財政支援を拡大し、国
外電子ジャーナルのバックファイル、人文・社会科学系等の国外大型電子資
料コレクションを拡充することによって、過去の国外学術資料への平等なア
クセス(ワンサイトアクセス)を確保する。また、欧米やアジアの諸国で推
進している電子資料コレクション形成事業に推進し、グローバルな電子アー
カイヴ構築を担うことが可能となるように支援を行うことが必要である。 4.科学技術振興機構 JST と国会図書館 NDL それぞれが持っている学術誌閲覧提
供機能を統廃合し、それをもって海外の主要学術誌の「最後の拠り所」とし
てのアーカイヴを新たに構築することによって、誰もがアクセス可能な環境
を確保する。 5.日本からの受発信体制の一本化と強化を行う。
JST の J-STAGE および Journal@rchive と NII の NII-ELS を統合し、国内
学術誌アーカイヴに対するワンサイトの受発信体制を実現する。
JST の J-STAGE と NII の SPARC JAPAN などを統合し、国際的に通用する電
子ジャーナル総合プラットフォーム作りと更なる強化を推し進め、発信
力強化支援策と一体化した学術情報流通支援体制を構築する。 6.国内の然るべき大学に、学術情報流通専門家養成コースを含むダブルメジャ
ーコース(博士課程・修士課程(社会人を含む))を新設することによって 中長期的に学術情報流通分野で活躍できる人材を育成する。
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