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n-butyl-2-cianoacrylate(NBCA)...2021/01/22  · ォローを行い、術後26日目の採血ではHb...

Date post: 27-Jan-2021
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17
1) 論文種類 症例報告 2) 論文タイトル ガイディングシース誘導時に生じた腎動脈 損傷に対して n-butyl-2-cianoacrylate(NBCA) による経動脈的 塞栓術を行った 1例 3) 全員の著者名 西山 弘一、松本 博之、井澤 大輔、土 尚嗣 4) 著者全員の所属施設・部署 岸和田徳洲会病院脳神経外科 5) 連絡著者の指名 西山 弘一 連絡先:岸和田徳洲会病院 脳神経外科 住所:〒596-8522 岸和田市加守町 4丁目 27-1 電話番号:072-445-9915 メ ー ル ア ド レ ス : [email protected] 6) Key words: renal artery, vessel injury, NBCA, TAE 7) 、日 JNET Journal of Neuroendovascular Therapyに投稿するにあたり、筆頭著 者、共著者によって、国内外の他雑誌に掲載ないし投稿されて いないことを誓約致します
Transcript
  • 1) 論 文 種 類 症 例 報 告

    2) 論 文 タ イ ト ル ガ イ デ ィ ン グ シ ー ス 誘 導 時 に 生 じ た 腎 動 脈

    損 傷 に 対 し て n - b u t y l - 2 - c i a n o a c r y l a t e ( N B C A ) に よ る 経 動 脈 的

    塞 栓 術 を 行 っ た 1 例

    3) 全 員 の 著 者 名 西 山 弘 一 、 松 本 博 之 、 井 澤 大 輔 、 土

    岐 尚 嗣

    4) 著 者 全 員 の 所 属 施 設 ・ 部 署 岸 和 田 徳 洲 会 病 院 脳 神 経 外 科

    5) 連 絡 著 者 の 指 名 西 山 弘 一

    連 絡 先 : 岸 和 田 徳 洲 会 病 院 脳 神 経 外 科

    住 所 : 〒 596 - 8 5 2 2 岸 和 田 市 加 守 町 4 丁 目 27 - 1

    電 話 番 号 : 072 - 4 4 5 - 9 9 1 5

    メ ー ル ア ド レ ス : hir o k a z u . n i s h i y a m a @ t o k u s h u k a i . j p

    6) K e y w o r d s : r e n a l a r t e r y , v e s s e l i n j u r y , N B C A , T A E

    7) 本 論 文 を 、 日 本 脳 神 経 血 管 内 治 療 学 会 機 関 紙 JNE T J o u r n a l

    o f N e u r o e n d o v a s c u l a r T h e r a p y に 投 稿 す る に あ た り 、 筆 頭 著

    者 、共 著 者 に よ っ て 、国 内 外 の 他 雑 誌 に 掲 載 な い し 投 稿 さ れ て

    い な い こ と を 誓 約 致 し ま す

  • 1

    【 ⽬ 的 】 コ イ ル 塞 栓 術 で ガ イ デ ィ ン グ シ ー ス 誘 導 の 際 に 腎 動 脈 損 傷

    を 来 し 、n - b u t y l - 2 - c i a n o a c r y l a t e ( N B C A ) に よ る 経 動 脈 的 塞 栓 術 で ⽌

    ⾎ し 得 た 1 症 例 を 報 告 す る 。【 症 例 】 6 5 歳 ⼥ 性 、 未 破 裂 脳 動 脈 瘤 に

    対 し て コ イ ル 塞 栓 術 を 施 ⾏ し た 。 完 全 閉 塞 で 終 了 し た が 術 中 よ り ⾎

    圧 低 下 を 認 め て お り 術 後 腹 部 C T で 腎 被 膜 下 出 ⾎ を 認 め た 。 術 中 ビ

    デ オ で は ガ イ デ ィ ン グ シ ー ス 誘 導 時 に 右 腎 動 脈 に 0 . 0 3 5 ガ イ ド ワ イ

    ヤ ー が 迷 ⼊ し て お り こ れ に よ る 腎 動 脈 損 傷 が 疑 わ れ た 。 直 ち に

    N B C A に よ る 経 動 脈 的 塞 栓 術 を 施 ⾏ し 、 ⽌ ⾎ を 得 る こ と が で き た 。

    【 結 論 】 ガ イ ド ワ イ ヤ ー に よ る 腎 動 脈 損 傷 は 稀 な 合 併 症 で あ る が 、

    重 篤 化 す る 場 合 も あ り 早 期 診 断 と 確 実 な ⽌ ⾎ 処 置 が 重 要 で あ る 。

    は じ め に

    脳 血 管 障 害 に 対 す る 血 管 内 治 療 は 、 そ の 侵 襲 性 の 低 さ か ら 近 年

    そ の 治 療 数 は 増 加 傾 向 に あ る 。 し か し こ れ ら の 治 療 は 病 変 部 に 到

    達 す る ま で に ガ イ デ ィ ン グ カ テ ー テ ル を 誘 導 す る 必 要 が あ り 、 穿

    刺 時 や カ テ ー テ ル 誘 導 時 の 血 管 損 傷 に 伴 う 後 腹 膜 出 血 な ど の 合

    併 症 が こ れ ま で 報 告 さ れ て い る 1 ~ 4 )。 ま た 頸 動 脈 ス テ ン ト 留 置 術

    や 脳 動 脈 瘤 コ イ ル 塞 栓 術 を 施 行 す る 際 に あ ら か じ め 抗 血 小 板 薬

    を 2 剤 内 服 し て い る 症 例 も 多 く 、 血 管 損 傷 を 来 し た 場 合 に は 重 篤

    な 合 併 症 を 引 き 起 こ し 得 る と 考 え ら れ る 。

    今 回 我 々 は 未 破 裂 脳 動 脈 瘤 の コ イ ル 塞 栓 術 の ガ イ デ ィ ン グ シ

    ー ス 誘 導 の 際 に 、 0.0 3 5 i n c h の ガ イ ド ワ イ ヤ ー に よ っ て 腎 動 脈 損

    傷 を 来 し 、 n- b u t y l - 2 - c i a n o a c r y l a t e ( N B C A )に よ る 経 動 脈 的 塞 栓

    術 で 止 血 し 得 た 症 例 を 経 験 し た た め 報 告 す る 。

  • 2

    症 例

    患 者 6 5 歳 女 性

    主 訴 偶 発 的 に 発 見 さ れ た 未 破 裂 脳 動 脈 瘤

    既 往 歴 高 血 圧

    現 病 歴 め ま い 精 査 で 施 行 し た 頭 部 ma g n e t i c r e s o n a n c e

    a n g i o g r a p h y ( M R A ) で 前 交 通 動 脈 (a n t e r i o r c o m m u n i c a t i n g

    a r t e r y ; A c o m )に 11 . 6 m m×10 . 7 m m×11 . 3 m m、ネ ッ ク が 6.7 m m×6. 4 m m

    の 未 破 裂 脳 動 脈 瘤 を 認 め た 。 治 療 方 針 に つ い て 本 人 と 相 談 し 、 コ

    イ ル 塞 栓 術 を 施 行 す る こ と と な っ た 。 大 型 で ブ ロ ー ド ネ ッ ク の 動

    脈 瘤 で あ り 、 治 療 の 際 に ス テ ン ト ア シ ス ト も 必 要 と な る 可 能 性 が

    あ っ た た め 治 療 1 週 間 前 か ら バ イ ア ス ピ リ ン (10 0 ㎎ /日 )、ク ロ ピ

    ド グ レ ル (75 ㎎ /日 )の 内 服 を 開 始 し た 。

    脳 血 管 内 治 療 手 技 手 術 は 全 身 麻 酔 下 で 行 っ た 。 ま ず 透 視 下 で 大

    腿 骨 頭 を 確 認 し 、そ の 中 央 ラ イ ン が 血 管 穿 刺 部 位 と な る よ う に 80

    ㎝ 6F r ア ク セ ル ガ イ ド (メ デ ィ キ ッ ト 、 東 京 )に 付 属 す る 穿 刺 針 で

    穿 刺 を し た 。 0.0 3 5 i n c h×1 5 0 ㎝ R a d i f o c u s g u i d e w i r e (テ ル モ 、

    東 京 )を 透 視 下 で 腹 部 大 動 脈 ま で 誘 導 し 、 ダ イ レ ー タ ー で 刺 入 部

    を 広 げ た 後 に 透 視 下 で ア ク セ ル ガ イ ド を 胸 部 大 動 脈 ま で 誘 導 し

    た 。ア ク セ ル ガ イ ド 挿 入 後 に ヘ パ リ ン 500 0 単 位 投 与 し た 。6F r J B 2

    型 カ テ ー テ ル (メ デ ィ キ ッ ト 、 東 京 )と 同 軸 に し て 左 内 頚 動 脈 に 留

    置 し た 。 6Fr セ ル リ ア ン (メ デ ィ キ ッ ト , 東 京 )を 4F r セ ル リ ア ン

    と 同 軸 に し て 左 内 頚 動 脈 錐 体 部 ま で 誘 導 し た 。 Dou b l e c a t h e t e r

  • 3

    t e c h n i q u e で 治 療 を 行 い 完 全 閉 塞 で 塞 栓 術 を 終 了 し た 。 手 技 時 間

    は 3 時 間 55 分 で あ っ た 。 手 術 終 盤 に な っ て 術 者 が 収 縮 期 血 圧

    70m m H g 台 、 脈 拍 100 / m i n 台 で 持 続 し て い る こ と に 気 付 い た た め 、

    麻 酔 記 録 を 見 直 し て み る と 、 大 腿 動 脈 穿 刺 の 1 時 間 後 よ り 収 縮 期

    血 圧 が 80m m H g 台 と 低 下 傾 向 で あ り 、 麻 酔 科 医 に よ り 昇 圧 薬 が 投

    与 さ れ て い た こ と が 分 か っ た 。 そ の 後 も 徐 々 に 血 圧 は 低 下 し 、 頻

    脈 傾 向 と な っ て い た 。シ ー ス を 抜 去 す る 直 前 の 採 血 で は ACT は 29 8

    秒 、Hb は 術 前 の 12. 8 g / d l か ら 10 . 0 g / d l に 低 下 し て い た 。こ の 時

    点 で 穿 刺 に 伴 う 出 血 を 疑 っ た た め プ ロ タ ミ ン 硫 酸 塩 40 ㎎ 投 与 し

    総 腸 骨 動 脈 撮 影 を 行 う も 、 腸 骨 動 脈 、 大 腿 動 脈 か ら の 出 血 は 認 め

    ら れ な か っ た (F i g . 1 A )た め 、 6F r A n g i o - S e a l S T S P L U S ( S t . J u d e

    M e d i c a l , M i n n e t o n k a , M N )で 止 血 し 手 術 終 了 と な っ た 。

    術 後 経 過 術 後 抜 管 し た 時 点 で 顔 面 発 汗 及 び 末 梢 冷 感 を 認 め 、 収

    縮 期 血 圧 80 台 、 脈 拍 120 / m i n 台 と hy p o v o l e m i c s h o c k の 状 態 で

    あ っ た 。腹 腔 内 出 血 を 疑 い 腹 部 単 純 CT を 撮 影 し た と こ ろ 、右 腎 被

    膜 下 、 後 腹 膜 を 中 心 に 出 血 を 認 め た (F i g . 1 B C )。 術 中 の 記 録 ビ デ

    オ を 見 直 す と ガ イ デ ィ ン グ シ ー ス を 誘 導 す る 際 に 0. 0 3 5 i n c h ×

    15 0 ㎝ R a d i f o c u s g u i d e w i r e が 一 瞬 右 腎 動 脈 に 迷 入 し た 時 が あ

    り (F i g . 2 )、 そ れ に よ る 右 腎 動 脈 上 極 枝 か ら の 出 血 が 疑 わ れ た 。

    動 脈 瘤 塞 栓 術 で 300 m l の 造 影 剤 を す で に 使 用 し て い た た め 、 腹 部

    造 影 CT 検 査 は 施 行 せ ず に 放 射 線 科 に 出 血 部 位 の 同 定 及 び 止 血 処

    置 を 依 頼 し た 。 再 度 採 血 し た と こ ろ Hb 7 . 7 g / d l ま で 低 下 し て お

    り sho c k v i t a l も 持 続 し て い た た め 、す ぐ に 治 療 に 移 行 し た 。NBC A

    に よ る 経 動 脈 的 塞 栓 術 の 可 能 性 も 考 慮 し 、 術 前 に イ ン フ ォ ー ム ド

  • 4

    コ ン セ ン ト ( リ ス ク 説 明 等 ) を 得 た 。

    経 動 脈 的 塞 栓 術 治 療 経 過 左 鼠 径 部 の 大 腿 動 脈 を 穿 刺 し 、 4Fr シ

    ー ス 挿 入 し 、 4Fr オ プ チ フ ラ ッ シ ュ 70c m ピ ッ グ テ ー ル (テ ル モ 、

    東 京 )で 腹 部 大 動 脈 撮 影 を 施 行 し た が 、 明 ら か な 出 血 源 は 認 め な

    か っ た (F i g 3 A )。 4F r S T 4 0 (メ デ ィ キ ッ ト 、 東 京 )で 右 腎 動 脈 選 択

    撮 影 し た と こ ろ 腎 上 極 動 脈 か ら の ext r a v a s a t i o n を 認 め た (F i g .

    3 B )。 AS A H I M e i s t e r 0 . 0 1 6 i n c h ( A s a h i I n t e c c , A i c h i , J a p a n )で

    AS A H I T e l l u s ( A s a h i I n t e c c , A i c h i , J a p a n )を 腎 上 極 動 脈 に 誘 導

    し て 撮 影 し 、 ext r a v a s a t i o n を 確 認 し た (Fi g 4 A )。 5% ブ ド ウ 糖

    で カ テ ー テ ル 内 の 造 影 剤 を 洗 い 流 し た 後 、 そ こ か ら リ ピ オ ド ー ル

    で 20% に 希 釈 し た NBC A を 0 . 5 m l 動 注 し た 。 再 度 撮 影 す る と

    ext r a v a s a t i o n が 持 続 し て い た た め (Fi g 4 B )、 も う 少 し 手 前 の 分

    枝 か ら の 出 血 で あ る と 判 断 し た 。 こ の 血 管 の さ ら に 末 梢 に マ イ ク

    ロ カ テ ー テ ル を 進 め 、同 様 の NBC A を 0. 5 m l 動 注 し た 。腎 動 脈 本 幹

    か ら 撮 影 し 、 ext r a v a s a t i o n が 消 失 し て い る こ と 確 認 し て 手 技 を

    終 了 し た (F i g 4 C )。

    塞 栓 術 終 了 後 に 、赤 血 球 6 単 位 、新 鮮 凍 結 血 漿 6 単 位 を 輸 血 し

    た 。 コ イ ル 塞 栓 術 か ら 経 動 脈 塞 栓 術 、 輸 血 開 始 ま で の 経 過 を 時 系

    列 と し て Ta b l e 1 に 示 す 。

    術 翌 日 の 採 血 で は ま だ Hb9 . 1 g / d l、 血 小 板 6.6 万 /μ l で あ っ た

    た め 、さ ら に 赤 血 球 6 単 位 、新 鮮 凍 結 血 漿 6 単 位 、血 小 板 10 単 位

    を 追 加 輸 血 し た 。 ま た BU N / C r e 2 3 . 7 / 1 . 9 7 m g / d l 、 e G F R

    2 0 m l / m i n / l と 腎 機 能 低 下 も 認 め た 。 以 後 も 採 血 及 び 腹 部 CT で フ

  • 5

    ォ ロ ー を 行 い 、術 後 26 日 目 の 採 血 で は Hb 1 0 . 1 g / d l、血 小 板 21

    万 /μ l、 BU N / C r e 1 4 . 2 / 0 . 5 8 m g / d l、 eG F R 7 8 m l / m i n / l ま で 改 善 を

    認 め 、 腹 部 CT で も 後 腹 膜 血 腫 は 消 失 し て い た 。 術 後 30 日 目 に 独

    歩 で 自 宅 退 院 と な っ た 。

    考 察

    今 回 我 々 は 脳 動 脈 瘤 コ イ ル 塞 栓 術 の 序 盤 の 時 点 で 0.0 3 5 ガ イ ド

    ワ イ ヤ ー に よ る 腎 動 脈 損 傷 を き た し 、 終 盤 に な っ て 病 態 に 気 づ い

    た の ち 、NBC A に よ る 経 動 脈 的 塞 栓 術 を 施 行 す る こ と で 止 血 し 得 た

    症 例 を 経 験 し た 。 大 腿 動 脈 穿 刺 に 伴 う 血 管 損 傷 に つ い て 、

    Cha n d r a s e k a r ら は 11 8 2 1 例 の 冠 動 脈 撮 影 に お い て 、穿 刺 に 伴 う 血

    管 損 傷 は 、 診 断 カ テ ー テ ル で は 1.8% 、 治 療 介 入 を 行 っ た 場 合 は

    4.0% で あ っ た と 報 告 し て い る 1 )。ま た 大 腿 動 脈 穿 刺 に 伴 う 後 腹 膜

    出 血 は 0.1 5% で 認 め 、 比 較 的 稀 で あ る が mot a l i t y は 20% で あ っ

    た と の 報 告 も あ り 2 )、 注 意 す べ き 合 併 症 で あ る 。 今 回 我 々 が 経 験

    し た 腎 動 脈 損 傷 に よ る 後 腹 膜 出 血 は 合 併 症 と し て は 極 め て 稀 で

    あ り 、 症 例 報 告 が 散 見 さ れ る 程 度 で あ る 3 , 4 )。

    当 施 設 で は ガ イ デ ィ ン グ シ ー ス 誘 導 時 に は ア ン グ ル 型 の 0.0 3 5

    R a d i f o c u s g u i d e w i r e を 用 い て い る 。 特 徴 と し て コ ア に ニ ッ ケ ル

    と チ タ ン の 超 弾 性 合 金 を 採 用 し て い る た め 、 良 好 な ト ル ク 伝 達 性

    と pus h a b i l i t y を 有 し て お り 、 ま た 表 面 に 親 水 性 ポ リ マ ー を コ ー

    テ ィ ン グ し て い る た め 非 常 に ス ム ー ズ な 誘 導 が 可 能 と な っ て い

    る 点 が 挙 げ ら れ る 。 し か し 本 症 例 の よ う に 分 枝 に 迷 入 し た 場 合 も

  • 6

    ワ イ ヤ ー が 先 進 し て 容 易 に 血 管 損 傷 に 至 る ケ ー ス も あ る と 考 え

    ら れ 、 透 視 下 で 確 実 に 血 管 選 択 を し な が ら 慎 重 に 誘 導 し 、 不 用 意

    に ワ イ ヤ ー を 上 げ す ぎ な い よ う に 注 意 す る 必 要 が あ る 過 去 の 文

    献 で 報 告 さ れ て い る 同 様 の 合 併 症 は 0.0 3 5 親 水 性 ポ リ マ ー コ ー テ

    ィ ン グ ガ イ ド ワ イ ヤ ー 使 用 が 原 因 で あ り 4 )、 シ ー ス 挿 入 時 か ら 親

    水 コ ー テ ィ ン グ の ラ ー ジ フ ォ ー カ ス ワ イ ヤ で は な く 、先 端 が J 型

    と な っ て い る ス プ リ ン グ ワ イ ヤ ー を 使 用 し 透 視 下 で 慎 重 に 誘 導

    し て い れ ば 今 回 の 合 併 症 は 防 げ た と 考 え ら れ る 。

    ま た 後 腹 膜 出 血 の 兆 候 、 症 状 と し て Ht の 低 下 (73 % ) 、

    Hy p o v o l e m i c s h o c k ( 6 4 % ) 、 大 腿 神 経 麻 痺 (54 % ) 、 下 肢 の 疼 痛

    (45% )、 側 腹 部 痛 (36% )が 報 告 さ れ て お り 、 早 期 診 断 、 治 療 介 入

    が 重 要 で あ る 2 )。 今 回 の 症 例 で も ret r o s p e c t i v e に 経 過 を 見 直 し

    て み る と 、 術 中 に 血 圧 低 下 及 び 頻 脈 を 認 め 、 ま た そ の 際 の 採 血 で

    も Hb 10 . 0、 Ht 2 9 . 3 と 軽 度 低 下 し て お り 、 何 ら か の 出 血 の 兆 候 は

    認 め て い た 。 動 脈 瘤 塞 栓 術 終 了 後 シ ー ス を 抜 去 す る 直 前 に 大 腿 動

    脈 撮 影 を 施 行 し た と き に は 血 管 損 傷 は 認 め ら れ な か っ た が 、 術 後

    の 腹 部 CT で 後 腹 膜 出 血 及 び 腎 被 膜 下 出 血 を 認 め た 。 造 影 CT を 施

    行 し ext r a v a s a t i o n を 確 認 す る こ と で 出 血 部 位 を 同 定 す る 報 告 も

    あ る が 3 )、 今 回 の 症 例 で は 腎 動 脈 の 選 択 的 撮 影 に よ り 初 め て 出 血

    部 位 を 確 認 す る こ と が で き た 。Hyp o v o l e m i c s h o c k の 兆 候 や Ht 低

    下 な ど 出 血 が 強 く 疑 わ れ る 場 合 は 、 そ の ま ま 速 や か に 治 療 に 移 行

    可 能 な 点 か ら 、 出 血 が 疑 わ れ る 部 位 の 選 択 的 な 血 管 撮 影 を 行 う べ

    き で あ る と 考 え ら れ る 。 ま た 今 回 の 症 例 で は 塞 栓 術 開 始 1 時 間 後

    か ら 血 圧 低 下 傾 向 を き た し 、 麻 酔 科 医 師 に よ り 知 ら ぬ 間 に 昇 圧 薬

  • 7

    投 与 が 開 始 さ れ て い た が 、 早 期 の 診 断 の た め に は 術 中 の 他 科 と の

    連 携 、 意 思 疎 通 も 重 要 で あ る と 考 え ら れ た 。

    腎 動 脈 血 管 損 傷 に 対 す る 経 動 脈 的 塞 栓 術 を 行 う 際 の 塞 栓 物 質

    と し て は コ イ ル 、 Gel f o a m、 po l y v i n y l a l c o h o l ( P V A )、 NB C A な ど

    に よ る 単 独 、 あ る い は そ れ ら の 組 み 合 わ せ に よ る 塞 栓 術 が 報 告 さ

    れ て い る 5 )。 Ka r l ら は 医 原 性 腎 動 脈 に 対 し て 塞 栓 術 を 行 っ た 50

    例 の う ち 34 例 は コ イ ル 単 独 に よ る 塞 栓 術 を 報 告 し て い る が 5 ) 、

    近 年 で は 大 腿 動 脈 穿 刺 に 伴 う 血 管 損 傷 に 対 す る NBC A に よ る 塞 栓

    術 の 報 告 も 増 え て き て い る 6 )。NB C A は 濃 度 を 調 整 し 標 的 血 管 に 注

    入 す る こ と で 末 梢 ま で 十 分 に 塞 栓 が 可 能 で あ り 、 高 い 止 血 効 果 が

    期 待 で き る が 、 逆 流 や 正 常 血 管 迷 入 の リ ス ク が あ る た め 、 手 技 に

    習 熟 す る 必 要 が あ る 。

    腎 動 脈 塞 栓 術 を 施 行 し た 場 合 、 術 後 の 腎 機 能 障 害 の リ ス ク が あ

    る と 考 え ら れ る 。 本 症 例 で も 一 過 性 で は あ る が 術 後 に eGF R の 低

    下 を 認 め た 。 Kar l ら は 50 例 の 医 原 性 腎 動 脈 損 傷 に 対 し て 経 動 脈

    的 塞 栓 術 を 施 行 し 、eGF R は 術 前 後 で 有 意 な 低 下 は 認 め な か っ た と

    報 告 し て い る 7 )。 し か し 術 前 か ら eGF R が 非 常 に 低 い 2 症 例 で 術

    後 透 析 が 必 要 と な っ た と 述 べ て お り 、 特 に 腎 機 能 低 下 を 有 す る 症

    例 で は 必 要 最 小 限 の 塞 栓 に 留 め る べ き で あ る と 考 え ら れ る 。

    今 回 我 々 は ガ イ ド ワ イ ヤ ー に よ る 腎 動 脈 損 傷 を き た し た 極 め

    て 稀 な 症 例 を 経 験 し た 。 ガ イ デ ィ ン グ シ ー ス を 誘 導 す る 際 は 透 視

    下 で 分 枝 血 管 に ワ イ ヤ ー が 迷 入 し て い な い こ と を 確 実 に 確 認 す

    る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。 今 回 は 術 後 の ビ デ オ を 見 返 し て 初 め

    て ガ イ ド ワ イ ヤ ー に よ る 腎 動 脈 損 傷 を 疑 っ た が 、 手 術 中 に す で に

  • 8

    ワ イ ヤ ー が 右 腎 動 脈 上 部 に 深 く 迷 入 し て お り も っ と 早 期 に 診 断

    及 び 治 療 介 入 が 可 能 で あ っ た と 考 え ら れ 非 常 に 反 省 す べ き 点 で

    あ る 。 最 近 施 行 さ れ る 機 会 が 多 く な っ た 急 性 期 血 行 再 建 術 の 際 に

    は 、 時 間 的 な 制 限 も あ る た め 速 や か に ガ イ デ ィ ン グ カ テ ー テ ル を

    留 置 す る 必 要 が あ り 、 tPA を 先 行 投 与 し て い る 症 例 も 多 く 、 今 回

    の よ う な 血 管 損 傷 が 致 命 的 と な り 得 る こ と は 常 に 念 頭 に 置 か な

    け れ ば な ら な い 。ま た 術 中 に 血 圧 低 下 や 頻 脈 、Ht の 低 下 な ど を 認

    め た 場 合 は 血 管 損 傷 を 疑 っ て 、 速 や か に 損 傷 が 疑 わ れ る 部 位 の 選

    択 的 血 管 撮 影 を 施 行 し 、 早 期 の 診 断 及 び 治 療 介 入 が 必 要 で あ る と

    考 え ら れ る 。

    結 語

    0 . 0 3 5 ガ イ ド ワ イ ヤ ー に よ る 腎 動 脈 損 傷 に 対 し て NBC A に よ る 経

    動 脈 塞 栓 術 を 施 行 し 止 血 を 得 た 1 例 を 報 告 し た 。 血 管 内 治 療 に お

    い て は 稀 な 合 併 症 で あ る が 、 血 管 損 傷 は 重 篤 化 す る 場 合 も あ り 早

    期 の 診 断 と 確 実 な 止 血 処 置 が 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。

    利 益 相 反 の 開 示

    筆 頭 著 者 及 び 共 著 者 全 員 が 利 益 相 反 は な い 。

  • 9

    文 献

    1) C h a n d r a s e k a r B , D o u c e t S , B i l o d e a u L , e t a l .

    C o m p l i c a t i o n s o f c a r d i a c c a t h e t e r i z a t i o n i n t h e c u r r e n t

    e r a : a s i n g l e - c e n t e r e x p e r i e n c e . C a t h e t e r C a r d i o v a s c I n t e r v

    2 0 0 1 ; 5 2 : 2 8 9 - 9 5

    2 ) S r e e r a m S , L u m s d e n A B , M i l l e r J S , e t a l . R e t r o p e r i t o n e a l

    h e m a t o m a f o l l o w i n g f e m o r a l a r t e r i a l c a t h e t e r i z a t i o n : a

    s e r i o u s a n d o f t e n f a t a l c o m p l i c a t i o n . A m S u r g 1 9 9 3 ; 5 9 : 9 4 -

    8

    3 ) P e t e r s S A , Y a z a r A , L e m b u r g S P , e t a l . R e n a l p e r f o r a t i o n

    a n d r e t r o p e r i t o n e a l h e m a t o m a : a n u n u s u a l c o m p l i c a t i o n

    f o l l o w i n g c a r d i a c c a t h e t e r i z a t i o n . I n t J C a r d i o v a s c I m a g i n g

    2 0 0 7 ; 2 3 : 8 0 5 - 8

    4 ) L e e S Y , K i m S M , B a e J W , e t a l . R e n a l a r t e r y p e r f o r a t i o n

    r e l a t e d w i t h h y d r o p h i l i c g u i d e w i r e d u r i n g c o r o n a r y

    i n t e r v e n t i o n : s u c c e s s f u l t r e a t m e n t w i t h p o l y v i n y l a l c o h o l

    i n j e c t i o n . C a n J C a r d i o l 2 0 1 2 ; 2 8 : 6 1 2 . e - 6 1 2 . e 7

    5 ) I e r a r d i A M , F l o r i d i C , F o n t a n a F , e t a l . T r a n s c a t h e t e r

    e m b o l i s a t i o n o f i a t r o g e n i c r e n a l v a s c u l a r i n j u r i e s . R a d i o l

    M e d 2 0 1 4 ; 1 1 9 : 2 6 1 - 8

  • 10

    6 ) J u n y a T , E i t a r o O , H i d e f u m i S , e t a l . E m e r g e n c y

    E n d o v a s c u l a r H e m o s t a t i c T e c h n i q u e U s i n g N - b u t y l

    C y a n o a c r y l a t e f o r R e t r o p e r i t o n e a l H e m a t o m a C a u s e d b y

    I n f e r i o r E p i g a s t r i c A r t e r y I n j u r y a f t e r U n d e r g o i n g C a t h e t e r

    A b l a t i o n f o r A t r i a l F i b r i l l a t i o n : A C a s e R e p o r t . J o u r n a l o f

    N e u r o e n d o v a s c u l a r T h e r a p y 2 0 1 7 ; 1 1 : 6 0 8 - 6 1 4

    7 ) S a m K , G a h i d e G , S o u l e z G , e t a l . P e r c u t a n e o u s

    e m b o l i z a t i o n o f i a t r o g e n i c a r t e r i a l k i d n e y i n j u r i e s : s a f e t y ,

    e f f i c a c y , a n d i m p a c t o n b l o o d p r e s s u r e a n d r e n a l f u n c t i o n .

    J V a s c I n t e r v R a d i o l 2 0 1 1 ; 2 2 : 1 5 6 3 - 8

    F i g . 1 R i g h t f e m o r a l a n g i o g r a p h y s h o w e d n o e v i d e n c e o f e x t r a v a s a t i o n

    ( A ) . A b d o m i n a l c o m p u t e d t o m o g r a p h y s h o w i n g a p e r i n e p h r i c ( a r r o w )

    ( B ) a n d r e t r o p e r i t o n e a l ( a r r o w h e a d ) h e m a t o m a ( C ) .

    F i g . 2 A 0 . 0 3 5 i n c h g u i d e w i r e w a s p a s s e d d e e p l y i n t o t h e r i g h t r e n a l

    a r t e r y ( a r r o w ) .

    F i g . 3 A b d o m i n a l a o r t i c a n g i o g r a p h y s h o w e d n o e v i d e n c e o f

    e x t r a v a s a t i o n ( A ) . S e l e c t i v e r i g h t r e n a l a r t e r i o g r a p h y s h o w i n g

    e x t r a v a s a t i o n f r o m t h e s u p e r i o r s e g m e n t a l r e n a l a r t e r y ( w h i t e c i r c l e )

  • 11

    ( B ) .

    F i g . 4 S e l e c t i v e s u p e r i o r s e g m e n t a l r e n a l a n g i o g r a p h y s h o w i n g

    e x t r a v a s a t i o n ( A ) . A n o t h e r s e g m e n t a l r e n a l a n g i o g r a p h y s t i l l s h o w i n g

    e x t r a v a s a t i o n ( B ) . T r a n s - a r t e r i a l e m b o l i z a t i o n u s i n g N B C A r e s u l t e d i n

    c o m p l e t e h e m o s t a s i s ( w h i t e c i r c l e ) ( C ) .

    Ta b l e 1 . T i m e c o u r s e o f c o i l e m b o l i z a t i o n a n d t r a n s - a r t e r i a l

    e m b o l i z a t i o n .

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