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ネットブック市場の生成

首都大学東京大学院 社会科学研究科経営学専攻

水越康介・加藤央一・橘田淳一郎・茶谷卓哉・松本謙一1

1.EeePCの登場 .............................................................................................................. 1 2.EeePCの開発背景 ....................................................................................................... 2

2.1.OLPCとCPU...........................................................................................................2 2.2.低価格の実現 ...........................................................................................................3

3.日本市場の動向 ........................................................................................................... 4 3.1.日本におけるパソコン市場の概要 ...........................................................................4 3.2. EeePCに対する対応 ...............................................................................................5 3.3.100 円PCモデルの登場............................................................................................7

4.小型ノートパソコンへのニーズの自明性 .................................................................... 7 4.1.日本における小型ノートパソコンの歴史 ................................................................7 4.2.ノートパソコン利用の社会的可視性 .......................................................................9

5.帰結............................................................................................................................10 1.EeePC の登場 2007 年 10 月、台湾メーカーであるASUS(華硯電脳)は、台湾や香港、北米にて「EeePC」

の販売を開始した2。小型ノートパソコンであるEeePCの 大の訴求点は、その価格にあっ

た。5 万円を切る金額だったのだ。それでも、決して性能が悪いわけではない。厚さは 1.8cm、

重さは 1kg、バッテリーは 5 時間持ち、インターネットに必要な無線機能を備えていた。

「パソコンメーカーは、ヘビーユーザーばかりを意識してきた。だが、これからは世界中の人がネット

を楽しめるようにしなくてはならない」「利用者はシンプルを求めている3」

これまで、多くのパソコンメーカーは、パソコンの性能向上を求めてきた。それは同時

に、多くのユーザーが求めるものであると考えられてきた。少しでもCPUやグラフィック

ボードの処理速度を高くし、メモリやハードディスクの保存容量を増やしていく。そして、

重いソフトウェアや動画処理も快適に動くようにする。だが、EeePCは、そうした考え方

を逆転させた。インターネット接続に焦点を当て、そのために必要な性能だけを追求し、

1 本稿は、2009 年度首都大学東京大学院ビジネススクール「マーケティング・マネジメント特論」履修者

28 名、および担当教官によるディスカッションを元に作成されたものである。 2 『日経ビジネス』、2008 年 11 月 17 日号、126-127 頁。 3 『日経ビジネス』、2008 年 11 月 17 日号、127 頁、ASUS施会長。

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高性能を求めていないユーザー層の掘り起こしに成功したのだった。EeePCは、2 台目需要

を取り込んだだけではなく、中低所得者が初めて買うパソコン、いわば「エントリーモデ

ル」としての地位を確立していった4。ASUSやACER、GIGABIYEなどネットブック市場

に参入した各メーカーは、すでにネットブックをワイヤレス・ブロードバンド端末として

位置付けているという。インテルの現在のCPU戦略においても、ネットブックはネット閲

覧のためにデバイス機器を使う人々を対象とした商品であると定義される5。 ネットブック、ミニノートと呼ばれるこれら低価格の小型ノートパソコンの台頭は、世

界市場において確実に広まりつつある。その理由を考えたとき、まずはその安さを指摘す

ることはできよう。しかし、ただ安いからといって、すべての商品が売れるわけではない。

あるいは、短期的には売れたとしても、長期的にはブランドイメージの低下を伴う大きな

リバウンドとなることはよく知られている。ここで考えなければならないのは、第一に、

低価格を実現することのできた背景であり、第二に、類似した低価格型の小型ノートパソ

コンの多くが、長期的には(あるいは短期的にですら)、市場を獲得することができずにき

たということの理由である。 さらに、われわれにとって興味深いことに、日本においても、こうした低価格の小型ノ

ートパソコンがシェアを広げつつある。日本のパソコン市場は、世界市場とは異なった形

で形成されており、特にノートパソコン市場においては、高性能高機能を売りとするメー

カーが大きなシェアを有していた。ネットブックは、こうした特殊な市場において、いか

にして受けいれられたのであろうか。われわれの見る限り、その理由を、価格の安さや、

あるいは、モバイルノートへのニーズに直接求めることは難しい。以下では、EeePC の開

発経緯を確認した上で、日本におけるネットブック市場の生成を確認していくことにしよ

う。 図1.日本におけるノートパソコンの台数別構成比(上)と平均単価(下:千円)の推移 2.EeePC の開発背景 2.1.OLPC と CPU

ASUSTeK Computer Eee PC 開発部門ジェネラルマネージャーS.Y.Shian氏によれば、

ASUS内でのEee PCの開発は、2007 年始め頃に、OLPC(One Laptop per Child)といっ

4 『NIKKEI COMMUNICATION』2008 年 6 月 15 日、17 頁。当初からターゲットはライトユーザー

と呼ばれる「インターネットにつないでネットサーフィンができる程度で十分」な人々だったという

(『NIKKEI DESIGN』2009May、80 頁、ASUSシステムプロダクト・デザイン部課長)ただし一方で、

ASUS沈総経理によれば、主婦などをターゲットにしながらも、2 台目需要を狙っていたという(『NIKKEI ELECTRONICS』、2008/2/11、39 頁)。おそらく、複数のターゲットが想定されていたということであろ

う。 5 『日経パソコン』2008 年 4 月 14 日、18-19 頁。続けて、その一方で、インテルにおいては、同様の小

型PCであるUMPCをビジネス用途として捉えていることは興味深い。

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たローコストPCを作ろうという運動に影響されて始まった6。 OLPCとは、もともと、2005 年、MITのニコラス・ネグロポンテ教授がダボス会議で提

唱した「100 ドルパソコン」の思想に由来する7。これは、廉価なPCを開発して途上国の政

府に購入してもらい、貧しい子供たちに無料で配布するという構想であった。同事業は、

国連などの支援を受け、台湾の広達電脳によるAMDのMPUを用いた受託開発が進められて

きた。 こうした事情を受けて、ASUS では、 初に AMD と低価格 x86 プロセッサ Geode につ

いて価格交渉が進められた。そして、結果的には、AMD の提示した価格を交渉材料として、

Intel からそれよりも安価に Dothan を提供させることに成功した。Intel 側でも、Dothanは 2 年以上経過した古い CPU であり、余剰在庫が残っていたという事情があったという。

さらに、発展途上国にこうした OLPC が普及することになれば、PC 市場の業界図は大きく

変わる可能性がある。AMD に対抗すべく、Intel もまた同様の MPU(CPU)の開発を進

める必要が生じており、ASUS との連携には十分な意義があった。 実際、Intelは、2007 年の段階でOLPC計画への参加も表明し、MPUの供給を目指すとし

ている8。2008 年 4 月 3 日には、インテルは、新興国の教育現場向けパソコン「クラスメ

ートPC」の昨年発売した初代機に続く第二世代モデルを発表した9。9 インチの液晶画面や

カメラを備えた小型ノートパソコンであるともに、金額も 300 ドル程度を見込んでいたと

いう。このパソコンの設計は、OEMとしてELITE(精英電脳)が請け負っていた。 しかし、結局、Intelは 2008 年の時点でOLPCからの脱退を表明している。これは、競合

製品へのMPU供給を行うことに対して、OLPCから供給中止の求めがあり、この要求を受

け入れられないとしたためである10。 2.2.低価格の実現 CPUの次に大きなコストを占めるOSについても、価格を引き下げるための検討が行われ

た。現在、パソコン市場におけるOSの主流はMicrosoftのWindowsである。しかし、ネット

ブック市場においては、その約 3 割をLinuxが占めている11。これは、近年のVistaがネッ

トブックの性能にうまく対応できていないことや、価格そのものが廉価ではないという理

由のために、当初、EeePCにおいてもLinuxが採用されたからであった。だが、EeePCの成

功を見たマイクロソフトは、XPをライセンスとして廉価で販売することで対応し、新たな

市場におけるシェアの確保に乗り出した12。 6 PC Watch【特別企画】台湾ネットブック開発者インタビュー ASUSTeK編(2008/9/29)http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0929/netbook04.htm 7 『日経産業新聞』2008 年 6 月 7 日、3 頁。 8 『日本経済新聞』2007 年 7 月 16 日、7 頁。 9 『日本産業新聞』2008 年 4 月 4 日、4 頁、『日本経済新聞』2008 年 4 月 4 日、7 頁。 10 『日本経済新聞』2008 年 1 月 5 日、7 頁。CPUの競争で言えば、近年では、今度は携帯電話端末など

で普及しているARMとの競合関係が生じつつあるとされる。 11 『NIKKEI COMMUNICATIONS』2009 年 2 月 1 日、87 頁。 12 『NIKKEI LINUX』2008 年 1 月 1 日、81-84 頁。

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ASUSとしては、もともとMicrsoftとの連携を模索していた。当然のことながら、大きな

シェアを持つWindowsは、ユーザーにとっても使い慣れたOSであり、多くの便利なソフト

ウェアとの互換性も確保されている。それゆえに、Linuxの採用は、やむを得ないものであ

ったとともに、Microsoftに対してプレッシャーを与えるための戦略であった1314。 そのほか、価格をうまく引き下げるために、ストレージや液晶パネルについても見直し

が行われている15。ストレージについては、駆動部分などがあるために 40 ドルを切る事が

難しいとされるHDDを採用せず16、容量が小さくなるものの、10 ドルや 20 ドルといった

価格が可能なSSDを採用した。また、SSDの選択については、エントリーノートPCとの競

合を避けるためという戦略上の理由もあったという。 液晶についても、その当時、デジタルフォトフレームや自動車のカーナビ需要が増えて

価格が下がっていた 7 型(800×480 ドット)の液晶パネルを採用した。PC では、デジタ

ルフォトフレームやカーナビほど輝度を必要としないので、さらにスペックを下げて低価

格化を図ることができた。ただし、2 代目以降の液晶パネルについては、ユーザー利用の多

くがネットであることに対応し、8.9 型(1024×600 ドット)を採用することになっている。 3.日本市場の動向 3.1.日本におけるパソコン市場の概要17

EeePC は、2008 年 1 月に日本市場にも投入された。低価格ノートパソコンとして当初よ

り注目を集めることになるが、何よりも興味深いのは、日本市場の特異性を障壁とするこ

となく、急激に市場を拡大していった点にある。 一般に、パソコンは、3 つのカテゴリーに分けられる。据置型の「デスクトップ」、持ち

運びもできる「ノートブック」、そして、セカンド PC や持ち運び専用として位置づけられ

る「モバイル」である。「デスクトップ」では、世界的には DELL と HP が 2 強体制を築い

ているが、日本では少し状況が異なる。これは、日本市場の独特な性格に関係している。

日本市場では、海外市場とは異なり、デスクトップ市場が小さく、ノートブックやモバイ

ルタイプのパソコン市場が大きいのである。海外市場では、約 7 割がデスクトップ、2 割強

がノートブック、1 割未満がモバイルで、圧倒的にデスクトップが多い。これに対して、日

本ではノートとモバイルの比率が 5 割を超えているという。市場の構造が異なるわけだ。 日本市場の状況に呼応するように、日本メーカーが得意とするのはノートブックとモバ

イル分野である。これらの市場は、パソコン全体のシェアからみるとまだまだ小さい。し

13 PC Watch【特別企画】台湾ネットブック開発者インタビュー ASUSTeK編(2008/9/29) 14 なお、Microsoftの引き込みに成功することで、Intelにおいても、MIDやUMPCに利用する予定であったCPU「Atom」の提供を受けることができるようになったという。 15 PC Watch【特別企画】台湾ネットブック開発者インタビュー ASUSTeK編(2008/9/29) 16 HDDの下限については、もちろん一定というわけではない。例えば、クリステンセンでは、120 ドルが

下限であるとされている(C.クリステンセン『イノベーションのジレンマ』翔泳社、2000 年、邦訳p.90。) 17 石井淳蔵・水越康介「ターゲットを絞り込んで対応する 松下電器産業『レッツノート』」、嶋口充輝他

著『マーケティング優良企業の条件』、日本経済新聞社、2008 年。

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かし、世界の趨勢としてノートブックとモバイルの伸びは大きくなっており、日本メーカ

ーはいわば成長部門に注力していると言える。特に日本において独特の地位を形成してい

たのは、パナソニックのレッツノートであろう。2002 年に 30 万台、2003 年に 37 万台、

2004 年が 50 万台、それから 2005 年には 60 万台に届くという。 デスクトップ市場は完全なモジュール組み合わせ型の製品であり、メーカーの利益率は

低くなる。これに対して、ノートパソコン市場はすり合わせ型の製品開発が必要であり、

メーカーの高い技術が必要とされる18。それだけに、性能比の単価も高い。さらに、ノート

パソコンでもよりサイズの小さいモバイルタイプになると、ますますメーカーに求められ

る要求が高まる。まさに、高い技術力を誇る日本企業が有利な市場であった。

図 2.日本市場における出荷台数シェア(2006 年 国内出荷台数 1428 万台)19

3.2. EeePC に対する対応 日本企業の多くは、EeePCをはじめとするネットブックの登場に際して、それゆえ当初

は静観を装った。やがてネットブックが一定の人気を集めるようになった2008年の夏以降、

各社はネットブック市場に参入し始める。東芝は 9 月に入り、「NEB100」を 75000 円前後

で投入することを発表する。だが、東芝に対抗する形でNECが 65000 円前後の参入を表明

すると、東芝は価格をすぐに引き下げるなどして対応を進め、実販売の 10 月下旬以降も価

格変更を行った20。2009 年 1 月には、いよいよソニーが独自の携帯性とデザイン性を重視

した小型ノートパソコン「VAIO type P」を発表し、7 月には初めて「ネットブック」とい

う言葉を公式に冠した「VAIO type W」を市場に投入した。 日本企業に出遅れた感があるのは、これまで自らが追い求めてきた、高性能高機能のノ

ートパソコンという仕組みを脱することが困難だったからである。こうした事態は、今回

が初めてというわけではなかった。2000 年まで世界ノートパソコン市場においてシェア一

位だった東芝は、2001 年にはDELLに首位の座を譲り渡す。そして、2003 年には、HPによるノートパソコンの大幅な値下げが行われ、一気にHPにもシェアを逆転されていた21。

出荷数量という意味では決して劣っていたわけではない東芝ではあったものの、急激な価

格競争に対応することができなかった。優れた技術への自負が、組織内部での部品共通化

などを妨げたと共に、台湾メーカーへのOEM委託も妨げたからであるという22。2004 年 3月に、低価格の設計・生産をすべて台湾メーカーに委託することを決定し、既存工場の抜本

的な見直しを行うことで 悪の事態は免れていた。 仕組み上の問題や感情の問題を踏まえて、今回においては、改めて大きく 3 つの理由を

18 森田正隆・國領二郎「松下電器産業株式会社 パナソニック コンピュータ カンパニー」慶応義塾

大学経営管理研究科ケース、1997 年、3 頁。 19 IDCジャパン調べ『市場占有力 2008』、30 頁。 20 『日経産業新聞』2008 年 11 月 28 日、3 頁。 21 『日経ビジネス』、2005 年 6 月 13 日、50 頁。 22 『日経ビジネス』、2005 年 6 月 13 日、53-54 頁。

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指摘しておくことができよう。第一に、高性能高機能のノートパソコンは、高い価格で販

売されることが想定されている。もし、こうした市場にネットブックを投入することにな

れば、市場全体としてのノートパソコンに対する価格が引き下げられることになりかねな

い。これまでの価格を維持しようとするのならば、ネットブックの台頭は決して望ましい

ことではなかった。実際、東芝やNECでは、遅れてネットブックを投入することになった

際にも、ネットブックが従来型とは全くの「別物」であることが強調され23、カニバリゼー

ションや全体としての価格下落が否定されている。 第二に、ネットブックの低価格性は、一台あたりの利益率の低さにもつながる。この低

い利益率を補うためには、基本的に大量生産を通じて規模の経済を実現するほかない。だ

が、日本企業が作り上げてきたノートパソコン市場は、国内の限られた市場規模を前提と

して、より高い付加価値のついたノートパソコンを販売するというモデルであり、グロー

バルマーケットで多くのシェアや流通チャネルを持つ HP や DELL などと比較して不利な

状況にあった。例えば、2007 年のデータにおいて、HP や DELL は 4,500 万台を出荷する

のに対し、日本メーカーの多くは一ケタ規模が小さい(図 3)。ASUS などはパソコンの出

荷数こそ少ないが、その基盤となるマザーボードを大量に生産している。この生産量の差

はそのままコストに跳ね返ってくる。

後に第三の理由として、そもそも、日本企業の多くは、ネットブック市場の可能性を

意図的かどうかは別にしても、低く見積もっていたように思われる。例えば、2008 年 4 月

時点においてNECパーソナルプロダクツ社長は、EeePCは国内市場の一部を取り込むに留

まるとし、付加価値を盛り込んだ商品開発の重要性を指摘している24。この認識は、付加価

値を削ることによって価値を作り出そうとしたEeePCとは逆の方向性である。

この認識を後押しするように、6 月時点において、IDCの需要予測として、低価格UMPC(EeePCも含まれる)と彼らが呼ぶ市場の規模が予測されている。この予測によれば、2007年時点の出荷ベースで 1,414 万台であった日本のパソコン市場において、低価格UMPCの

規模は、2008 年で 0.5%程度、2012 年でも 0.8%に留まるという25。その理由としては、

セキュリティの問題から法人には普及しにくいこと、携帯電話との棲み分けが難しいこと、

そして無料での通信環境などの不備が指摘されていた。だが、それから約 1 年経った 2009年、これまでの販売実績を踏まえて米ディスプレイリサーチによって予測された市場の規

模では、ネットブック市場は今後鈍化したとしても年 140 万台程度、従って 2007 年に対し

て約 10%規模で推移するとされている26。単純に考えると、一年間で、約 10 倍の見込み違

いが生じていたということになる。

23 『日経産業新聞』2008 年 11 月 28 日、3 頁、2008 年 10 月 17 日、3 頁。 24 『日経産業新聞』、2008 年 4 月 10 日、8 頁。 25 『日経産業新聞』、2008 年 6 月 12 日、9 頁。 26 『日経ビジネス』、2009 年 5 月 18 日号、12 頁。ただし、算出方法は不明であり、比較可能性には議論

の余地がある。

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図 3.主要パソコンメーカーの出荷台数27

3.3.100 円 PC モデルの登場 日本企業の多くや調査会社の見込みが裏切られることになった理由の一つとして忘れて

はならないのは、「100 円パソコン」の登場である28。これは、2008 年 7 月に、イー・モバ

イルとコジマやヨドバシなどの大手家電量販店が連携して、ネットブックとデータ通信端

末をセット販売することによって始まった29。100 円パソコンは、イー・モバイルのデータ

通信に 2 年間契約(月額 2,900 円から 6,880 円程度、2 年間で 69,600 円から 165,120 円程

度)することを条件にして、初期費用としてのパソコン代を引き下げることによって実現

される30。携帯電話などに見ることができるこの価格戦略は、他メーカーのネットブックに

も波及し始めており、DELLやHPにも同様の傾向が見られるようになっている。さらに、

ヨドバシカメラでは、携帯ゲーム機PSPやDSについても、イー・モバイル、およびトリプ

レットゲートの無線LANサービスとセットにすることによって、100 円で販売するとして

いる31。 イー・モバイルによれば、100 円パソコン開始前の契約者数の純増は 5 万人程度であった

が、開始後の 7 月には 6 万 5 千人、8 月には 8 万 4 千人に増えたという32。初期費用が下

がることで、ビジネスマンだけではなく学生や主婦などに普及してきたとしている。10 月

には、携帯電話・PHS契約の純増数において、イー・モバイルはドコモ、KDDIを抜いて初

めて 2 位に浮上した33。携帯電話が販売手法の見直しによって初期費用が割り増しになっ

たこととは対照的に、初期費用を通信費に割り当てるかつての携帯電話販売の手法が効を

奏した形だという。 この背景には、ネットブックが通信端末として市場に投入されていたという理由がある。

通信端末である以上、携帯電話のビジネスモデルとして普及していた通信料で利益を得る

というビジネスモデルにうまく合致するものであった。また、ターゲットとなった顧客層

にとっても、イニシャル・コストの低減は極めて望ましいものであったに違いない。 4.小型ノートパソコンへのニーズの自明性 4.1.日本における小型ノートパソコンの歴史 このように見ていくと、近年のネットブック市場の拡大の背景には、多様なプレイヤー

の思惑が入り込んでいることがわかる。このとき考えなくてはならないのは、顧客のニー

27 『NIKKEI COMPUTER』2008 年 11 月 1 日、17 頁。 28 『日経流通新聞』、2008 年 11 月 26 日、7 頁。 29 『日経産業新聞』、2008 年 7 月 11 日、3 頁。 30 従来の通信料金よりも若干割高に設定されている。月額 900 円ほど高くなるという(『日本経済新聞』

2008 年 7 月 10 日、11 頁。) 31 『日本経済新聞』、2008 年 10 月 18 日、31 頁。 32 『日経流通新聞』、2008 年 9 月 10 日、1 頁。 33 『日経産業新聞』、2008 年 12 月 1 日、3 頁。

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ズに対応することがマーケティングであるという考え方の限界である。 確かに、われわれは昔からモバイルタイプのパーソナルコンピュータを夢見てきた。映

画やアニメ、あるいは SF 小説をみてみれば、モバイルタイプのパーソナルコンピュータは

もちろんのこと、腕につけられたコンピュータや眼鏡に取り付けられた超小型のコンピュ

ータをみることができる。

SF世界ではなく現実世界においても、モバイルタイプのコンピュータを実現させようと

いう試みは数多く存在していた。例えば、1990 年代においても、NECによるモバイルギア、

富士通のOASIS POCKET 、さらにはドコモからシグマリオンが発売されるなど、

WindowsCEを搭載したハンドヘルド型PCなどが存在していた。これらは、価格面におい

ても、いずれも 10 万円を切る低価格であり、一般のノートパソコンよりも廉価であった。

さらに、こうしたノートパソコンに併せてCPUも開発されており、例えばトランスメタ製の

CPUは、カシオFIVA、富士通LOOX、SONY VAIO type Uをはじめとして多くの小型のノー

トパソコンに搭載され、1 kg台の軽量タイプPCが多く販売されていった34。

図 4.代表的なパソコンやワープロについての年表イメージ だが一方で、Windows CE プラットフォームの小型ノートパソコンの多くは、ネイティブ

Windows のアプリケーションとの連携性・データ互換性が悪く、ユーザー自身に高いスキ

ルが求められた。たとえば、WindowsCE 機には Pocket Word や Pocket Excel といった、ネイ

ティブ Windows 用の Word や Excel に互換性を持たせたソフトを搭載していたが、ファイル

交換をすると再現性が低下するなど、一般の使用には困難を伴うものであった。そのため、

一部のマニアやヘビーユーザー層には強く支持されることになるものの、一般への普及は

進まなかった。これらの小型ノートパソコン、あるいは PDA は、マニア向けの製品として

進化し、マニアが製品をドライブし、再び製品がマニアを引きつけるという一種のガラパ

ゴス的な進化を遂げた。当時のユーザーたちは、PDA のインターフェイスをハッキングし

て GPS 信号を入力し、まだ世の中に存在していなかったハンドヘルド・カーナビさえも実

現させていたという。

こうした特殊なパソコンの独特な発展とは別に、結局のところ、通常のデスクトップタ

イプや通常サイズのノートパソコンもまた着実に高性能・多機能になっていた。このため、

特殊なパソコンは、機能や使い勝手の悪さがますます強調されて認識されるようになり、

いよいよ以降の発展にはつながらなかったものと考えられる35。また、性能・機能が低いか

34 当時、トランスメタ製のCPU(MPU)「クルーソー」には、多くの期待が寄せられていた(『日本経済新

聞』2000 年 1 月 21 日、11 頁)。当時のインテル会長は警戒感を示し、一方でAMD会長は敵ではないとし

ている(『日本経済新聞』2000 年 8 月 23 日、9 頁、12 月 25 日、15 頁)。省電力、高速性、そしてペンテ

ィアムとの互換性を元に、ノートパソコン市場への参入が進められ、特に日本市場が 初のターゲットで

あったとされる(『日本経済新聞』2000 年 9 月 27 日、13 頁)。興味深いことに、クルーソーにおいては、

廉価であるという記述を見ることはできない。 35 『日経パソコン』2008 年 7 月 28 日、76 頁。

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わりに携帯性が良いといった程度のデバイスは、高機能化が著しい携帯電話に代替品とし

て市場を奪われていったとも考えられる。

たとえ、モバイルタイプのパーソナルコンピュータに対する漠然としたニーズの存在を

認めたにしても、これまでは、具体的な形を伴って市場を形成することはなかったことが

わかる。それは、消費者のニーズに応えたから成功することができたのだという直線的な

認識を相対化するとともに、低価格だから売れたのだという認識も相対化するだろう。第

一に、低価格実現を可能にした多様な政治的交渉の背景や、消費者ニーズの経路依存的な

成熟過程を捉えることなくして、ネットブックの台頭を理解することはできない。そして

第二に、時間の中で生まれた補完産業や補完技術、あるいは補完ニーズ36の存在こそが、今

回のネットブックを支えているということが見いだされねばならない。

4.2.ノートパソコン利用の社会的可視性

当初から存在したであろう少数のマニア層とでもいうべき彼らの存在は、それゆえにま

ったく無意味であったというわけではない。むしろ、技術的な側面においてではなく、そ

うした人々の存在が今日のノートパソコン市場に与えた影響は大きい。この点については、

補完産業の成立、あるいは社会的可視性という点から補足しておくことができる。

例えば、彼らは自らモバイルタイプのノートパソコンを持ち歩き、様々な場所で利用す

るとともに、一種のパフォーマンスとしてもその先鋭的なスタイルを提示した。結果、や

がて彼らに対応して電源を用意する施設も増えてくる。会議での発表は各自が PowerPointで行うことがいつのまにかルール化し、主催者は言われなくてもプロジェクターを用意す

るようになった。会議室や図書館、またホテルなどにも、LAN や AC 電源が整備されてい

く。 今では、ファーストフード店にまでも無線 LAN が設置され、ネット・インフラの整備が

人々を集める要因にさえなっている。カフェでは、忙しいビジネスマンや、課題の終わら

ない学生がモバイルを使っている。当初のマニア層が望んだ形での技術的発展とは別に、

社会としてモバイルタイプのパソコンを受け入れる土壌が整えられていったのである。 さらに、こうしてモバイルを持ち歩く風景は、きっと多くの人々によって観察されたこ

とであろう。当初、その風景は彼らがマニアであることを象徴するものであったかもしれ

ない。しかし、そうした人々が徐々に増え始め、カンファレンスや会議で複数の人々がモ

バイルを利用するようになっていく。やがて、その風景はありふれたものになると共に、

人によっては、自らもモバイルを所有したいという欲望を新たに喚起させられたかもしれ

ない。モバイルを持ち歩く風景が広がることによって、その社会的可視性を通じて、モバ

イルに対する欲望もまた作り出されていくのである。

社会的可視性は、一方で、ネットブックにとっては今や逆説かもしれない。なぜならば、

36 補完技術の何かを必要とするニーズは、ネットブックそれ自体に向けられたニーズとは少し異なってい

る、すなわち補完的なニーズであるとみるべきであろう。

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社会的可視性の高い商品は、性能以上に高い価格プレミアムがつけやすいとされているか

らである。ブランド品などに端的なように、社会的可視性の存在は、消費者行動を商品性

能から逸脱させる傾向がある。人目に触れる商品を消費するにあたっては、われわれはよ

り高い商品を購入しがちであるとされるのである。市場を形成する上で重要な役割を演じ、

モバイルをリードしたユーザーらの存在は、一つの市場が立ち上がりつつある今、良くも

悪くも性能とは別の方向性に向かうのかもしれない37。 5.帰結 わずか 1 年程度の間に、日本におけるノートパソコン市場の状況は様変わりした。もち

ろん、以前からの高性能高機能型のノートパソコン自体がなくなってしまったわけではな

い。だが、そうしたパソコンとは逆に、機能を制約した廉価なノートパソコンの市場が生

成しつつある。しかもそれは、かつての携帯電話販売の手法をうまく取り込みつつ、携帯

電話市場の状況とも連動しているように見える。 今では、ネットブックの性能についても、大画面化、大容量化など向上をみることがで

きる38。当初日本企業の多くが期待したような高機能高性能のモバイルとの棲み分けは、少

しずつ不明確になっているともいえる。しかもやや皮肉なことに、その原因の一つとして、

日本企業によって発売されたネットブックの独自性を挙げることができる39。 表1.代表的なネットブックの発売経緯と性能 また、パソコンを取り巻く状況として、ソフトウェアをパソコン上において動かすので

はなく、ネット上で動かすという「クラウドコンピューティング」の試みが始まっている40。

すでにグーグルではそうした機能を利用できるとともに41、マイクロソフトも、クラウドコ

ンピューティングへの参入を行うとしている42。ネット上にデータを保存するストレージ機

能などは言うに及ばず、こうしたクラウドタイプのパソコン利用が進むことになれば、い

よいよ高性能高機能のノートパソコンと廉価なネットブックとの違いは見えにくくなる可

能性がある。この他にも、グーグルが将来的に「Google Chrome OS」を無料でメーカーに

供給すると発表していることから、低価格が重要な構成要素であるネットブックにとって

37 こうした流れを、パソコンのCPUや大容量HDDに焦点があてられていた時代から、むしろそうしたス

ペックが制限されることで所与となり、その先の利用方法やスタイルが問われる時代として考えることも

できよう。製品から製品機能やベネフィットへと捉えることもできようし、あるいは、可視化の問題にひ

きつけて考えれば、パソコンが可視化されていた時代から、パソコンが不可視化され、その先の問題が可

視化されるようになった、ということができるだろう。 38 『日本経済新聞』、2008 年 12 月 4 日、31 頁。 39 例えば、ソニーから発売された 新のネットブック「VAIO W」は、1366x768 ドットという高い解像

度を誇る。 40 『日経産業新聞』、2008 年 12 月 1 日、3 頁。 41 Googleドキュメントの名称ですでに導入されている(『日本経済新聞』2009 年 7 月 14 日)。 42 『NIKKEI COMPUTER』2008 年 11 月 15 日、16-17 頁。

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の追い風は続く。 ネットブックの登場は、機能という問題だけではなく、消費者のパソコンに対するニー

ズ、さらにはそもそもパソコンとは何であるのかと言うことについての再考を迫っている

のかもしれない。考えてみれば、日本においては、国民機と呼ばれたNECの 88・98 機シリ

ーズが存在し、その前後には、ワープロと呼ばれる文書機能に特化したパソコンも登場し

ていた。特にワープロにあっては、手書きの文章を清書するためのものであるという認識

が強かったにもかかわらず、短い時間の中で一般にも普及していった43。パソコンの普及に

あたっても、文章を書くという性能がパソコンの基本的な機能として認識されていたよう

に思われる。Officeや一太郎、古くは松といった文書作成ソフトは、まさにパソコンの根幹

をなすソフトウェアであった。 ネットブックの登場は、こうした基本的機能が今やインターネットに取って代わられた

ことを象徴している。もちろん、文書作成機能そのものが一切不要になったというわけで

はないが、パソコンに対するニーズや、パソコンそのものの定義がいつの間にか変わって

いた可能性はある。ネットブックは、そうした変化の中で生まれてきた商品であるといえ

る4445。

43 清水信年(1997)「日本語ワードプロセッサーの入力方式を決めたもの」、石井淳蔵・石原武政編著『マ

ーケティング・インタフェイス』白桃書房、251-270 頁。 44 近になり、テキスト入力に機能特化した「モペラ」が好調であるという。こちらは、テキスト入力へ

の原点回帰の象徴ということになるのかもしれない。 45 なお、もう一つ補足として、ネットブックの火付け役となったASUSは、2008 年 10-12 月期に赤字と

なっている点も指摘しておいた方が良いだろう。景気の問題も大きいとはいえ、やはり価格競争の反動が

出ているとも言える。日本企業が出遅れてしまったのは、あるいはこうした赤字になるリスクを低く見積

もった企業戦略の可能性を読めなかった、あるいは読んだ上で回避したからかもしれない(『日経産業新聞』

2009 年 2 月 13 日、3 頁)。

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94 91 87 91 90 88 8879 77

73 71 71 70 7166

7267

54

54 4 5 5

43

3 3 3 3 34

43

1 4 7 5 6 7 717 20

25 26 26 26 26 3025

30

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月

A4ノート B5ノート ミニノート(ネットブック)

2007年 2008年 2009年

12.4 12.4 12.9 12.311.7 12.0 11.6 11.0 10.9 11.5 11.7

19.6 19.3 19.4 19.7 19.4 19.018.2

17.5 17.6 17.6 18.0

10.5

6.3 6.3 5.9 5.9 5.7 5.7 5.5 5.4 5.1 4.9

0

5

10

15

20

25

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

単価(万円)

A4ノート B5ノート ミニノート(ネットブック)

2007年 2008年

図 1.日本におけるノートパソコンのタイプ別構成比と平均単価の推移(BCN 調べ)

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富士通17.5

その他31.8

東芝 9.9 デル 14.2

NEC 20.1

日本HP6.5

図 2.日本市場における出荷台数シェア(国内出荷台数 1428 万台)

図 3.主要パソコンメーカーの出荷台数

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電子手帳・携帯 モバイル ノート ラップトップ ワープロ

1980 年代

1990 年代

2000 年代

図 4.代表的なパソコンやワープロについての年表イメージ 著者作成。

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表1.代表的なネットブックの発売経緯と性能

出来事、発売商品 市販価格 ディスプレイ CPU OS ストレージ重さ

(kg)

駆動

時間

2006/3 Intel 社が UMPC(Ultra-Mobile PC)を提唱

2007/4 Intel 社が MID(Mobile Internet Device)を提唱

2007/6 Eee PC 701 を発表 /ASUSTek 299US$ 7" SSD 4GB

2007/10 Eee PC 701 /ASUSTek 299-

499US$

7",800x480 Celeron M Linux

Windows XP Home

SSD 2-8GB 0.9 3

2008/1 Eee PC 4G-X /ASUSTek

日本発売(Eee PC 701の日本版)

49,800* 7",800x480 Celeron M Windows XP Home SSD 4GB 0.92 3.2

2008/3 Intel 社が Netbook を提唱

2008/4 Microsoft 社が一定条件を満たすミニノートに限って Windows XP Home Edition を延長して提供する事を発表

2008/6 HP 2133 Mini-Note PC /HP

C7-M ULV 1.6GHz

C7-M ULV 1.2GHz

79,800

59,850

8.9",1280×768 VIA C7-M

ULV

Vista Business

Vista Home Basic

HDD 160GB

HDD 120GB

1.27 2.3

2008/7 Eee PC 901-X /ASUSTek 59,800* 8.9",1024x600 Atom N270 Windows XP Home SSD 12GB 1.1 8.3

2008/8 Aspire One /Acer 54,800* 8.9",1024x600 Atom N270 Windows XP Home HDD 120GB 1.1 3

2008/9 Eee PC 701SD-X /ASUSTek 39,800* 7", 800x480 Celeron

M353

Windows XP Home SSD 8GB 0.91 3.7

Inspiron mini 9 /DELL 49,980 8.9",1024x600 Atom N270 Linux SSD 4GB 1.04 3.7

57,980 Windows XP Home SSD 8GB

64,980 Windows XP Home SSD 16GB

2008/10 Eee PC 900-X /ASUSTek 49,800* 8.9",1024x600 Celeron

M353

Windows XP Home SSD 16GB 0.99 4.3

2008/10 Eee PC 1000H-X /ASUSTek 59,800* 10",1024x600 Atom N270 Windows XP Home HDD 160GB 1.45 6.9

2008/10 NB100 /東芝 74,800*1 8.9",1024x600 Atom N270 Windows XP Home HDD 120GB 1.05 2.9

*1:9/29 発表後の予約価格 74,800 円は、10/19 頃から 69,800 円に、発売後の 11/3 には 59,800 円に値下げされた

2008/11 Eee PC S101 /ASUSTek 69,800* 10.2",1024x600 Atom N270 Windows XP Home SSD 16GB 1.06 6

2008/11 LaVie Light /NEC 65,000* 8.9",1024x600 Atom N270 Windows XP Home HDD 160GB 1.17 2.6

2008/11 Eee PC 901-16G /ASUSTek 54,800* 8.9",1024x600 Atom N270 Windows XP Home SSD 16GB 1.1 8.1

2008/12 HP Mini 1000 /HP 49,800

54,600

54,600

10.2",1024x600 Atom N270 Windows XP Home SSD 8GB

SSD 16GB

HDD 60GB

3.5

3.5

3.3

1.1

2008/12 IdeaPad S10e /Lenovo 54,800 10.1",1024x576 Atom N270 Windows XP Home HDD 160GB 1.38 5.3

2009/1 VAIO type P /SONY 79,800- 8",1600x768 Atom Z520 Vista Home Basic HDD 60GB 0.63 4.5

市販価格中の*は店頭予想価格、ディスプレイはサイズ(型)、ドットの順に表示、著者作成

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