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S1 - 5 5章 メタデータと EPG & ECGて,ECG(Electronic Content...

Date post: 26-Jul-2020
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S1 群-5 編-5 章〈ver.1/2019/5/30電子情報通信学会「知識ベース」 © 電子情報通信学会 2019 1/(12) S1 群(情報環境とメディア)- 5 編(通信・放送・インターネットの融合) 5 メタデータと EPG & ECG (執筆者:亀山 渉)[2008 10 受領] ■概要■ 通信・放送・インターネットの各種サービスが融合し,様々なコンテンツ配信サービスが進 展するにつれ,コンテンツに関するメタデータが重要となってくる.また,このような融合環 境で利用されるメタデータには,様々な役割を持ったものが存在する.本章では,まず,メタ データとその役割についてまとめ,メタデータを 5 つの種類に分類してそれらの概要を述べる. 次に,放送用メタデータとして既に運用されている TV-Anytime 規格について,その全体像を 紹介する.そして,現在,ITU-T で標準化が進行中の IPTV 規格において,どのようなメタデ ータの使用が想定されているのかについてまとめる. 【本章の構成】 本章では,メタデータとその役割(5-1 節),TV-Anytime 規格(5-2 節),IPTV におけるメタ データ規定概要(5-3 節)に関して述べる.
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S1 群-5 編-5 章〈ver.1/2019/5/30〉

電子情報通信学会「知識ベース」 © 電子情報通信学会 2019 1/(12)

■S1群(情報環境とメディア)- 5編(通信・放送・インターネットの融合)

5 章 メタデータと EPG & ECG

(執筆者:亀山 渉)[2008 年 10 月 受領]

■概要■

通信・放送・インターネットの各種サービスが融合し,様々なコンテンツ配信サービスが進

展するにつれ,コンテンツに関するメタデータが重要となってくる.また,このような融合環

境で利用されるメタデータには,様々な役割を持ったものが存在する.本章では,まず,メタ

データとその役割についてまとめ,メタデータを5つの種類に分類してそれらの概要を述べる.

次に,放送用メタデータとして既に運用されている TV-Anytime 規格について,その全体像を

紹介する.そして,現在,ITU-T で標準化が進行中の IPTV 規格において,どのようなメタデ

ータの使用が想定されているのかについてまとめる. 【本章の構成】

本章では,メタデータとその役割(5-1 節),TV-Anytime 規格(5-2 節),IPTV におけるメタ

データ規定概要(5-3 節)に関して述べる.

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■S1群-5編-5章

5-1 メタデータとその役割 (執筆者:亀山 渉)[2008 年 10 月 受領]

通信・放送・インターネットによって様々なサービスが提供されており,異なったネットワ

ークをシームレスに結合する融合サービスの登場も期待されている.このような状況で重要と

なってくるのがメタデータである.メタデータ(Metadata)は,“Data about Data”の意味であ

る.後者の“Data”はテレビプログラムやビデオなどのいわゆるコンテンツを指しており,前

者の“Data”はそのコンテンツに対する“Data”を指している.すなわち,メタデータとは,

コンテンツの様々な側面を記述したコンテンツに付随的するデータという意味であり,各種の

サービス構築をするために欠かせないデータである. 一口にメタデータと言っても様々な役割が存在する.ここでは,大きく,5 つにそれを分類

して,以下に概要を述べる. 5-1-1 コンテンツ検索用メタデータ

メタデータの最も大きな役割は,コンテンツ,とりわけマルチメディアコンテンツを検索可

能にすることである.具体的なメタデータ要素としては,タイトル,あらすじ,出演者,放送

時間,等々がある.一般に,テキストを主体とする HTML ページのようなコンテンツの場合,

検索に使用できる各種のキーワードはテキスト情報として文書中に埋め込まれているため,文

章解析などを行って検索用のキーワードを抽出し,それをメタデータとして利用できる.しか

しながら,ビデオ,静止画,音声などのマルチメディアコンテンツの場合,このようなアプロ

ーチは不可能である.そこで,本来のコンテンツデータとは別にメタデータを記述して用意し,

これを検索情報として利用するアプローチがとられる.記述する方式としては,インターネッ

トで主として利用されメタデータの構造を規定する RSS(Really Simple Syndication)1),RSS な

どで記述語彙として使われる Dublin Core メタデータ 2),B2B 用の素材データ交換として使用

されている MXF(Material Exchange Format)3),放送で使用される TV-Anytime メタデータ 4) な

どがある.また,種々のメディアやアプリケーションに対して汎用的にメタデータを記述でき

る標準として MPEG-7 5) がある. このようなメタデータを利用したテレビ番組の案内サービスを EPG(Electronic Program Guide,電子番組案内)と呼んでいる.EPG では,キーワードなどの様々なメタデータを利用

した番組検索が可能であり,一覧表として番組情報を表示することも可能である.これに対し

て,ECG(Electronic Content Guide,電子コンテンツ案内)は EPG よりも広い概念であり,ネ

ットワーク中のサーバなどに蓄積されたコンテンツによる VoDサービスや IPTV サービスを含

んだ番組案内を指している. なお,映像解析や音声解析を利用してコンテンツ検索用メタデータを自動的に取り出す研究

が活発に行われているが,どのようなマルチメディアコンテンツからも正確に所望のメタデー

タを抽出するのは未だ困難であり,これからの研究の進展が待たれている. 5-1-2 サービス制御用メタデータ

一般に,コンテンツを視聴するためには,コンテンツサーバにアクセスしたり,ブロードキ

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ャストあるいはマルチキャストされているコンテンツを取得したりする必要がある.このよう

な一連のプロセスは,セッション制御と呼ばれる. 従来のテレビ放送のような環境では,コンテンツ規格,放送(伝送)規格,端末規格などが

均一であるので,セッション開始にあたっては特段の情報を利用せずとも,暗黙の共通情報を

利用すればよい.しかしながら,様々なコンテンツ規格,伝送規格,端末規格の混在が予想さ

れる IPTV のような環境では,セッションを確立するためには,それに付随してセッションを

記述する情報が必要である.IPTV 環境では,SIP 6) シグナリングによるセッション確立過程に

おいて,SDP(Session Description Protocol)7) を利用して種々の規格や制限に関わるパラメータ

の交換によって,送出側と受信側で最適なパラメータの組合せを選択してストリーミングを受

け取れるようになる. また,IPTV 環境においては,異なったサービスプロバイダ間や異なったアプリケーション

間でのサービス連携が求められることも想定される.例えば,VoD コンテンツの受信中に緊急

放送の告知が入った場合,VoD の視聴をいったん停止したり,別の端末に VoD サービスを転

送したりして,緊急放送を視聴するシナリオが考えられる.このように,異なるネットワーク

やサービスから提供されるコンテンツを,ネットワークやサービスの違いを意識させずにユー

ザが選択して利用できる必要がある.このために利用されるメタデータは,サービス連携用メ

タデータと呼べるだろう. 一方,ホームサーバに蓄積されたコンテンツを,異なったデバイスやネットワークを通して

利用するようなサービスも考えられ,この場合,受信環境に合うよう,トランスコーダによっ

てコンテンツのビットレートを変換したり,符号化フォーマットを変換したりする必要も考え

られる.この場合にも,コンテンツのメタデータ,デバイスのメタデータ,ネットワークのメ

タデータなどが必要となり,これらのメタデータを参照しながらコンテンツを最適に変換する

必要がある.このようなプロセスは,一般に,コンテンツアダプテーション(コンテンツ適応

化)と呼ばれており,例えば,コンテンツ構成をメタデータとして記述する MPEG-21 DID(Digital Item Declaration)8) と,端末,ネットワーク,デバイスなどの特性や制限をメタデー

タとして記述する MPEG-21 DIA(Digital Item Adaptation)9) の利用によって,コンテンツアダ

プテーションが可能となる.なお,同様のコンテンツアダプテーション機能は,SMIL 10) のテ

ストアトリビュートにも見られる. 5-1-3 権利処理用メタデータ

コンテンツ流通においてコンテンツの権利処理は必須である.そして,権利処理を迅速に行

うためには,権利情報を電子的に記述したデータと,それを処理するシステムが必要となって

くる.権利情報を記述したデータはコンテンツの利用面を記述したデータと考えられるため,

一般的に,メタデータの一種として,権利処理用メタデータ,あるいは単に権利メタデータと

呼ばれている.具体的な方式としては,ライセンス発行者,ライセンス利用者,及び使用条件

などを XML を利用して記述する XrML(Extensible Rights Markup Language)11),XrML をもと

に多様なマルチメディア利用を考慮して作られた MPEG REL(Rights Expression Language)12),

MPEG-REL で利用される語彙を規定した MPEG RDD(Rights Data Dictionary),TV-Anytime 4) の

RMP(Rights Management and Protection)などがある.また,IEC で標準化されたディジタル権

利許諾コード 14) は,バイナリーフォーマットではあるが,異なったコンテンツ利用環境間で

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の実用的な権利情報の相互運用を目指したもので,家電業界での幅広い利用が期待されている. 5-1-4 ユーザメタデータ

ユーザの様々な側面を記述するのがユーザメタデータである.ユーザメタデータは多様な利

用価値を持っている.例えば,ユーザの嗜好情報や過去のコンテンツ視聴履歴をコンテンツ検

索用メタデータと併せて利用すれば,より確度の高いコンテンツの検索結果を期待できる.ま

た,ユーザコンテキスト情報をコンテンツアダプテーションの過程で利用すれば,コンテキス

トアウェアネスを考慮したコンテンツ視聴サービスを構築できる.このほかにも,権利処理用

メタデータと連携したサービス提供も考えられ,適用範囲はここに述べたものにとどまらない.

ユーザメタデータを記述する具体的な方式としては,MPEG-7 5) の MDS(Multimedia Description Interface)があり,TV-Anytime 4) のメタデータ規格中にも同様のものが存在する. 5-1-5 コンテンツ識別子

厳密に言うと前述したメタデータとは少々異なるが,コンテンツ識別子も重要なデータであ

り,コンテンツを同定するためにコンテンツに付随する情報ということから,ここではメタデ

ータの一種として扱う.異なるネットワークとサービスによって構築されるコンテンツ配信サ

ービスにおいては,コンテンツ識別子の体系の共通化が重要な要件である.この点で,URL(Uniform Resource Locator)はコンテンツ識別子の一種ではあるが,インターネット環境に特

化したコンテンツの指定しかできず,格納場所を基本としたコンテンツ同定しかできないとい

う問題がある.このため,ネットワークやサービスに依存しないコンテンツ識別子の利用が望

ましい.具体的な方式としては,作品を単位に固有の番号を割り付ける ISAN(International Standard Audiovisual Number)15),編集されたコンテンツなどの作品派生物にも固有のバージョ

ン番号を割り付ける V-ISAN(Version Identifier for ISAN)16) がある.これらの運用は,国や地

域ごとに設けられている ISAN-RA(ISAN Registration Agency)によって行われており,割付け

番号のユニーク性を担保している.一方,このような集中管理方式以外には,TV-Anytime の

CRID(Content Reference Identifier)4),17) があり,FQDN(Fully Qualified Domain Name)を識別

子の一部に含ませることによって,個々の組織(ドメイン)ごとに分散的なコンテンツ識別子

の割付けと管理を可能としている.また,CRID は,一連のエピソードをまとめたものなどの

仮想的なコンテンツに対しても識別子の付与が可能であり,柔軟なサービスを提供できる方式

となっている.

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■S1群-5編-5章

5-2 TV-Anytime 規格 (執筆者:亀山 渉)[2008 年 10 月 受領]

「いつでも」,「どこでも」,「どんな方法でも」コンテンツサービスを受けられるシステムの

実現を目指し,1999 年 9 月に TV-Anytime フォーラム 18) は発足した.TV-Anytime フォーラム

はいわゆる業界標準化団体の一つであり,家電業界,コンテンツ業界,通信業界,放送業界,

広告業界などから広く参加者を集め,2005 年 8 月にその活動を停止するまでに,通信と放送を

融合したサービスを提供できる一連の規格策定に成功した.すなわち,放送とインターネット

が混在し,かつ,大容量のローカルストレージが端末で利用できる環境下において,効率的で

使いやすいコンテンツサービスを実現する技術規格が策定されている.TV-Anytime フォーラ

ムの規格のすべては,ETSI(European Telecommunications Standards Institute)の規格としても正

式に承認されており,ETSI の Web サイト 19) からダウンロードできる.表 2・1 に TV-Anytimeフォーラムが策定した規格の一覧を示す.表から分かるように,TV-Anytime フォーラムの規格

は,コンテンツメタデータに関する規格だけでなく,コンテンツ識別,権利保護,メタデータ

検索,メタデータ保護,メタデータ交換,遠隔端末制御を含んだ,通信と放送の融合サービス

に必須となる規格群となっている.

表 2・1 TV-Anytime フォーラムの規格一覧

規格番号 題 名 内 容 ETSI TS 102 822 Broadcast and On-line Services: Search, Select,

and Rightful Use of Content on Personal Storage Systems (TV-Anytime)

規格全体の名称

ETSI TS 102 822-1 Benchmark Features 一連の規格が提供するサービス機

能の記述 ETSI TS 102 822-2 System Description システム全体の説明と個々のアプ

リケーションシナリオや使用方法

の記述 ETSI TS 102 822-3-1 Metadata: Metadata Schemas メタデータの基本的なスキーマ規

定 ETSI TS 102 822-3-2 Metadata: System Aspects in a Uni-directional

Environment 放送のような一方向性ネットワー

クにおけるメタデータ配信などの

規定

ETSI TS 102 822-3-3 Metadata: Phase 2 Extended Metadata Schemas 多機能メタデータのスキーマ規定 ETSI TS 102 822-3-4 Metadata: Interstitial Metadata 番組間に挟み込まれた広告などの

コンテンツに関するメタデータ

ETSI TS 102 822-4 Content Referencing コンテンツ識別子 CRID の規定 ETSI TS 102 822-5-1 Rights Management and Protection (RMP):

Information for Broadcast Applications 放送環境におけるコンテンツの権

利管理と保護規定 ETSI TS 102 822-5-2 Rights Management and Protection (RMP):

Binding of Rights Management and Protection Information

コンテンツの権利管理と保護規定

の記述方式

ETSI TS 102 822-6-1 Delivery of Metadata over a Bi-directional Network: Service and Transport

IP ネットワークにおけるメタデー

タ検索・取得・伝送 API の規定 ETSI TS 102 822-6-2 Delivery of Metadata over a Bi-directional

Network: Service Discovery IP ネットワークにおけるメタデー

タサービス発見方法の規定

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表 2・1 TV-Anytime フォーラムの規格一覧(続き)

規格番号 題 名 内 容 ETSI TS 102 822-6-3 Delivery of Metadata over a Bi-directional

Network: Exchange of Personal Profiles IP ネットワークにおける個人プロ

ファイル情報の交換規定 ETSI TS 102 822-7 Bi-directional Metadata Delivery Protection IP ネットワークにおけるメタデー

タ配信の保護規定 ETSI TS 102 822-8 Interchange Data Format メタデータの相互交換フォーマッ

ト規定 ETSI TS 102 822-9 Remote Programming 端末遠隔制御プロトコル規定

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5-3 IPTVにおけるメタデータ規定概要 (執筆者:亀山 渉)[2008 年 10 月 受領]

本稿執筆時点(2008 年 9 月)では,ITU-T による IPTV のメタデータ規格は草稿の段階では

あるが,2008 年 9 月に開かれた IPTV-GSI 会合において,メタデータ概要を記述した文書 20) が

基本合意されている.以下では,この文書に沿って IPTV におけるメタデータの概要を説明す

る.なお,最終的に,この文書は ITU-T H.750 として勧告化される予定である. 5-3-1 メタデータサービス概要

図 3・1 に IPTV におけるメタデータサービスの概要を示す.メタデータサーバはコンテンツ

プロバイダもしくはサービスプロバイダによって運営され,コンテンツメタデータ,サービス

メタデータ,ユーザメタデータなどの種々のメタデータを蓄積する.メタデータはメタデータ

配信・交換プロトコルを利用して,サーバと端末間でやり取りされる.端末には Web ベースの

ものや固有のメタデータアプリケーションが搭載されているものなど,様々な実装が考えられ

る.また,ローカルストレージ中のコンテンツも含めたネットワーク透過な ECG が端末に提

供され,異なるネットワークやサービスに依存しない IPTV サービスの享受が可能となる.

図 3・1 IPTV におけるメタデータサービス概要(文献 20) の図 6・1 を参考に作成)

5-3-2 メタデータ記述方式と拡張

各種サービスやアプリケーション間の相互運用性を最大限に保証するためには,共通に標準

化されたモデルやフォーマットに従うメタデータとその記述スキーマの採用が重要である.ま

た,メタデータ中で使用される要素名や語彙などは,保守や拡張が容易なものでなければなら

ない.以上のような要求条件から,TV-Anytime メタデータの利用を基本として採用している.

また,MPEG-7 で使用されている CS(Classification Schema)を利用し,柔軟性と拡張性の確保

も考慮されている. 5-3-3 識別子

IPTV サービスにおいては,コンテンツ,サービス,コンテンツプロバイダ,サービスプロバ

イダ,ユーザ,デバイスなどを識別する識別子が必要となる.これらの識別子によって,サー

ビスプロバイダがサービスやコンテンツを効率的に提供できる.例えば,サービスのカスタマ

イズ,コンテンツアダプテーション,広告のターゲティングなどに種々の識別子が必要である.

識別子の詳細はまだ決まっていないが,コンテンツに関しては 5-1-5 節で述べた CRID と ISANの利用が基本的に合意されている.

メタデータサーバ

コンテンツプロバイダ

サービスプロバイダ

ネットワークプロバイダ

エンドユーザ

クライアントメタデータ

アプリケーション

サービス/コンテンツメタデータ

ユーザ/コンテキストメタデータ

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5-3-4 メタデータ発見・配信

IPTV 端末が様々なサービスを利用するためには,ネットワーク中でメタデータサービスを

行うサーバやサービスプロバイダを発見する必要がある.これを実現するために Web を利用

した方法も考えられるが,例えば,常時接続の双方向 IP ネットワークにおいては DVB 規格の

一部である BCG 21) の使用も考えられる. サーバと端末間でメタデータをやり取りする方法では,プッシュとプルのサポート,ユニキ

ャストとマルチキャスト環境での利用,信頼性の確保,クエリ可能な双方向プロトコルのサポ

ート,といった要件を考慮する必要がある.これらを実現するために,前述の BCG,TV-Anytimeのメタデータ伝送プロトコル,TV-Anytime の双方向メタデータ伝送プロトコルなどを使用す

る.また,TV-Anytime 規定では,表 5・1 にあるようにメタデータを交換するフォーマットも決

められており,この利用によって,異なった環境間でのメタデータ相互運用も考慮する. また,メタデータの効率的な運用のためには,メタデータの更新通知や,メタデータの分割

配信などへの配慮も求められる.BCG や TV-Anytime メタデータはこのような要求に応じるこ

とができる. 5-3-5 サービス及びコンテンツメタデータ

これらのメタデータは,TV-Anytime メタデータを基本としながら,それを補強する幾つかの

規格を組み合わせて構築されている.以下にメタデータ要素の概要を示す.なお,以下で,集

合コンテンツとは,幾つかのコンテンツを集合体としてまとめたものを指し,要素コンテンツ

とは,集合コンテンツ中の要素となるコンテンツを指すものとする.例えば,シリーズものの

番組の場合,集合コンテンツはシリーズそのものであり,要素コンテンツは第 1 話,第 2 話と

いう集合コンテンツ中のコンテンツである.また,セグメントとは,内容をもとに分割された

コンテンツの部分を指す用語である. ● コンテンツ要素:ID,タイトル,権利情報,コンテンツプロバイダ名,サービスプロバイ

ダ名,字幕言語,ジャンル,キーワード,あらすじ,クレジット情報(俳優名,監督名,

プロデューサ名,脚本家名など),受賞情報,制作場所と日時,適切視聴者年齢層を示すパ

ーレンタルガイド情報,番組批評情報,プロモーション・広告などのコンテンツの種類,

暗号化の有無,プレビューなどの関連情報の有無,関連 Web サイト情報,関連アプリケー

ション情報,符号化方式とフォーマット情報,ビデオ情報(アスペクト比,解像度,ビッ

トレート,フレームレートなど),音声識別情報(モノラル,ステレオ,マルチチャネルな

ど),配信スケジュールあるいはコンテンツの開始終了時間,コンテンツ取得プロトコル

とアドレス情報,ライブ配信と蓄積配信の区別,ファイルフォーマットとサイズ,コンテ

ンツの長さ,コンテンツの有効期間,コンテンツ置換のタイミング情報 ● 集合コンテンツ要素:要素コンテンツの数,要素コンテンツの順番情報,要素コンテンツ

の ID,集合コンテンツの値段と条件,要素コンテンツが属する集合コンテンツの ID ● 品質管理要素:ビデオデータの品質情報 ● セグメントグループ要素:ダイジェスト(ハイライト)の再生リスト ● サービス要素:チャンネル番号,サービスロゴ,ライブ放送や VoD などのサービスタイ

プ,放送スケジュール,NVoD(Near VoD,疑似 VoD)サポートの有無,無料有料の区別,

ローカル局情報,コンテンツアドバイス情報

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● 配信モード記述要素:プッシュ・プル,キャッシングポリシー,事前録画情報,要求 QoSレベル

● コンテンツアダプテーション要素:ユーザプロファイルや嗜好情報を利用したターゲティ

ング,広告や宣伝コンテンツの置換とその規則,視聴環境における視聴制御パラメータ ● 使用制限と使用規則要素:有効期間,録画のための出力制御,トリックプレイの可否,最

大バッファサイズと保持期間,PPV(Pay Per View)のためのスケジュール情報,視聴許可

と加入情報,DRM(Digital Rights Management)関連情報(DRM の種類,課金サーバ URL,ライセンス ID など),視聴制限地域,コンテンツ消去日と消去管理情報,録画の可否,広

告視聴による支払い免除機能,コンテンツアダプテーションの可否 5-3-6 ユーザメタデータ

ユーザメタデータは TV-Anytime メタデータを基本として,幾つかの MPEG-21 DIA 要素を組

み合わせて利用する.以下にユーザメタデータの概要を示す. ● ユーザプロファイル及びユーザ嗜好情報要素:ユーザ ID,種々のユーザ統計データ,好き

なチャンネル,視聴履歴,複数のプロファイルデータ,個人プロファイルや個人嗜好情報

などの他のデバイスとの交換の可否 ● 視聴者コンテキスト情報要素:ユーザ ID,端末の状態と使用状況,移動環境におけるユー

ザ環境のローカライゼーション,ユーザ認証,コンテンツサービスを受けるためのデバイ

ス能力,環境情報 ● デバイスとネットワーク記述要素:インタフェース機能(ネットワークインタフェースに

おけるビットレート制限,バンド幅制限など),表示機能(解像度,使用可能コーデックと

フォーマット,メディアプロファイルなど) ● サービスナビゲーション用ユーザインタフェース表現要素:グラフィック表現制御情報

(フォント,アイコン,ポインタ,バックグランドイメージ,サウンドエフェクトなど),

サービスナビゲーションアプリケーションの表示スキン 5-3-7 コンテンツ管理メタデータ

コンテンツ準備段階において,主としてコンテンツプロバイダとサービスプロバイダ間で,

コンテンツの管理に関するメタデータが必要となる.また,コンテンツアグリゲータにはメタ

データアグリーゲータの機能も求められる.以上がコンテンツ管理メタデータの主なものであ

り,以下に概要を示す. ● コンテンツ準備に関わるメタデータ要素:タイトル,コンテンツ間の関係,ブランドの表

示,ID,発行情報,受賞情報,字幕記述,注釈と分類情報,調整期間,脚本情報,ショッ

トとキーポイント情報,関係者情報,コンタクト情報(個人,組織,場所,または以上の

リスト),権利情報とコンタクト先,イメージフォーマット,デバイスパラメータ,コンテ

ンツの種類 ● メタデータアグリゲーション管理要素:メタデータ発行者,メタデータ所有者,メタデー

タの著作権情報

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5-3-8 権利メタデータ

権利メタデータはコンテンツ保護メタデータの一つとも考えられ,使用制限や使用規則も権

利メタデータの一種と考えられる.IPTV では,これらの情報が,コンテンツ消費の色々な側

面で利用される.また,そのセキュリティも考慮に入れている.

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■S1群-5編-5章

5-4 まとめ (執筆者:亀山 渉)[2008 年 10 月 受領]

これからのコンテンツ配信においては,効率的かつ効果的なサービス融合と,それに伴うサ

ービスの複雑化が解決すべき重要な問題となる.よって,サービス記述やコンテンツ記述など

を適切に行い,そのようにして整備された種々のメタデータをアプリケーションやサービス間

で共有して利用するのが重要な鍵となる.このことから,メタデータは次世代サービスを実現

するための重要な技術の一つであると言える.メタデータ規格には,本章で述べたように,現

在までに様々なものが開発されてきた.そのなかでも,TV-Anytime メタデータは,当初は放送

サービスを中心としての利用を想定して作られたメタデータ規格であるが,通信・放送・イン

ターネットが融合する環境下,とりわけ IPTV での利用に適したものとして,ITU-T の IPTV メ

タデータ規格の中心として位置付けられている.そのため,TV-Anytime メタデータを核とし

て,異なったネットワーク環境でのサービス融合と共有が実現されるのではないかと期待され

る. なお,日本では,TV-Anytime の規格は,(社)電波産業会によって「サーバ型放送における符

号化,伝送及び蓄積制御方式標準規格」22) として,日本のデジタル放送規格の一つに採用され

ている. ■参考文献

1) http://www.w3.org/RDF/ 2) http://dublincore.org/ 3) SMPTE, 308M-2004,“Material Exchange Format (MXF) ―Descriptive Metadata Scheme-1” 4) ETSI, TS 102 822 Series,“Broadcast and On-line Services: Search, Select, and Rightful Use of Content on Personal

Storage Systems (TV-Anytime)” 5) ISO/IEC 15938 Series,“Information Technology ―Multimedia Content Description Interface,” 6) IETF, RFC3261,“SIP: Session Initiation Protocol” 7) IETF, RFC4566,“SDP: Session Description Protocol” 8) ISO/IEC 21000-2,“Information Technology ―Multimedia Frame Work (MPEG-21) ―Part 2: Digital Item

Declaration” 9) ISO/IEC 21000-7,“Information Technology ―Multimedia Frame Work (MPEG-21) ―Part 7: Digital Item

Adaptation” 10) http://www.w3.org/AudioVideo/ 11) http://www.xrml.org/ 12) ISO/IEC 21000-5, “ Information Technology ―Multimedia Frame Work (MPEG-21) ―Part 5: Rights

Expression Language” 13) ISO/IEC 21000-6, “Information Technology ―Multimedia Frame Work (MPEG-21) ―Part 6: Rights Data

Dictionary” 14) IEC 62227, “Multimedia Home Server Systems ―Digital Rights Permission Code” 15) ISO 15706, “Information and Documentation ―International Standard Audiovisual Number (ISAN)” 16) ISO 15706-2, “Information and Documentation ―International Standard Audiovisual Number (ISAN) ―Part

2: Version Identifier (V-ISAN) 17) RFC 4078, “The TV-Anytime Content Reference Identifier (CRID)” 18) http://www.tv-anytime.org/ 19) http://www.etsi.org/ 20) ITU-T SG16 TD753R2 (WP2/16),“Draft New ITU-T Rec. H.IPTV-MD ‘High Level Specification of Metadata

Page 12: S1 - 5 5章 メタデータと EPG & ECGて,ECG(Electronic Content Guide,電子コンテンツ案内)はEPG よりも広い概念であり,ネ ットワーク中のサーバなどに蓄積されたコンテンツによるVoDサービスやIPTVサービスを含

S1 群-5 編-5 章〈ver.1/2019/5/30〉

電子情報通信学会「知識ベース」 © 電子情報通信学会 2019 12/(12)

for IPTV Services’ (for Consent)” 21) ETSI, TS 102 539,“Digital Video Broadcasting: Carriage of Broadband Content Guide (BCG) Information over

Internet Protocol” 22) (社)電波産業会, ARIB STD-B38,“サーバ型放送における符号化,伝送及び蓄積制御方式標準規格”


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