Title 前立腺肥大症患者の手術と予後についての検討

Author(s) 村瀬, 達良; 伊藤, 博; 大石, 睦夫; 鈴木, 弘一

Citation 泌尿器科紀要 (1989), 35(10): 1709-1714

Issue Date 1989-10

URL http://hdl.handle.net/2433/116713

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

泌 尿 紀 要35:1709-1710,1989 1709

前立腺肥大症患者の手術と予後についての検討

名古屋第一赤十字病院泌尿器科(部 長:村 瀬達良)

村瀬 達良,伊 藤 博,大 石 睦夫,鈴 木 弘一

PROGNOSIS OF THE PROSTATECTOMY OF BENIGN

PROSTATIC HYPERPLASIA

Tatsuro MURASE, Hirosi ITO, Mutsuo OHISHI

and Koichi Suzuxt

From the Department of Urology, Red Cross Nagoya First Hospital

Surgery of benign prostatic hyperplasia has been performed in 484 cases during a period of 10 years from January 1978 to December 1987; these 484 cases comprised 345 to transurethral re-section, 130 of subcapsular extirpation and 9 of cryosurgery. Their period of prognosis was examined; 10-year survival rate was 88.9, 95.7, 60.4, 55.8 and 42.8% for 55-59, 60-64, 65-69, 70 —74 and 75,-79 years, respectively, 8-year and 7-year survival rates being 31.7 and 66.7% for 80-

84 and 85-89 years, respectively. Survival rate by age bracket was compared in terms of electro-cardiogram (ECG), pulmonary function and possible anomalies and operative blood transfusion.

The group of patients with abnormal ECG and pulmonary function showed a significant decreasing survival rate with aging. The aged patients showed no difference in survival rate according to possible blood transfusion.

Examination of the cause of death revealed predominant involvement of cardiopathy and cerebrovascular disorder, with comparatively less due to cancers. In terms of postoperative con-ditions of life of these patients and a long period prognosis of their urination, more than 75% of them are living in good condition and 70% are in a state of satisfactory urination.

(Acta Urol. Jpn. 35: 1709-1714, 989)

Key words: Prognosis, Prostatectomy, BPH

緒 言

平均寿命 のめ ざま しい伸長は高齢者 とい う定義 もあ

いまいになるほどで ある.前 立腺肥大症 の患者は増加

していると思われかつ手術を要する患者 も増加 してい

る,前 立腺肥大症が良性の疾患であ り手術 によ り一般

高齢者 の期待生存率 よ り下 まわ っていた り,ま た術後

の十分 なqualityofIifeが 保証 されない ならば前立

腺手術療法に対 して疑問が出る.

われわれ は1978年 か ら1987年 の10年 間の手術患者 の

生活の態様排尿の状態を検討する ことに よ り高齢者 の

前立腺 肥大症 の手術について考察 した.

対象および方法

1978年1月 より1987年12月 までの10年 間に名古屋第

一赤十字病院 で前立腺肥大症で手術が施行され たのは

484例 である.術 後病理組織学的に前立腺 癌 と判 明 し

た ものは除外 して ある.年 齢分布はFig.1に 示す ご

と くで70～74歳 にpcakを 認めてお り8σ歳以上 は69例

であ った.10年 間 の患者の80歳 以上を 占める率は年 々

増加の傾 向があ り最近の3年 間では20%以 上を 占めて

い る(Fig。2).前 立腺肥大症の手術の方法は前立腺被

膜下切除130例,TURPが345例,前 立腺凍結術9例

で最近ではTUR,Pが ほ とん ど占 めてお り1987年 は

TuRPの みであった(Fig.3).な お10年 間の80歳

以上の患者 の手術 の うちわ けはTURP50例(72.5

%),被 膜下切 除17例(24.6%),凍 結術2例(3.0%)

であ った.こ れ ら484例 について55～59歳,60～64歳,

65～69歳,70～74歳75～79歳,80～84歳,85～89歳

の5歳 毎の各年齢層にわけ,各 年齢層毎 に生存率を手術

法,術 前の心電 図,肺 機能,腎 機 能の異 常の有無,術

中術後の輸血 の有無 についてKaplan-Meier法 で生

存率を比較 した.また術後の生活の態様,排 尿の状況の

長期予後についてア ソケー トを郵送 し調査 した.術 後

死亡が確認 され た74名 について死因についても調査 し

た,

1710

(人)130

120

110

100

go

80

70

60

50

40

30

20

10

泌尿紀要35巻10号1989年

`卜44才45.4S才甜一馴才舗ト59才60引才55・69才10.14才15・19才8a-"オ85・89オSO-St才

Fig.1.前 立 腺 肥 大 症 手 術 患 者 の 年 齢 分 布

Table1.前 立 腺 の 切 除 重 量

摘出重量 開腹TUR

0～4914

5～991

10～1497

15～1998

20～2496

25～29916

30～34915

35～39916

40～44912

45～4997

50g以 上33

43

54

60

52

40

25

24

17

7

7

16

(人}

80

70

60

30

10

16人〔21矧

9人 12人(15%, (20%}

「 }

■

.

噸

一52人1湘Al

2人{`9の置46人旧轍却

6人〔13%,一

一42人肺■人1

3人〔9%1-31人

4人〔10%1

-37人〔網AI

0人(oヲの

35人悌1因

9人

{19%)

蛤 人

i㎜A】

10人(鴻%}}

59人団乃幻 ㎝

49人脳1A〕

i計N人1 26人嗣 1齢■A1

¶

Table2.術 後 の カ テ ー テル の 留 置 期 間

留置期間 開腹TUR

0～3日14102

4～9日92265

10～19日

20～29日

30日 以上

2725

11

11

53糾5556575859606162

(』隆)

Fig.2.80歳 以 上 の 手 術 患者 の割 合

1978年

79年

80年

81年

82年

83年

84年

85年

86年

87年

1=コTUR-P

盟 開 腹

■ 凍結術

　050(人)

Fig.3前 立腺肥大症の手術の年度による割合

結 果

Table1に 開 腹 手 術 お よびTURの 摘 出重 量 お

よび 切 除 重 量 を示 す.開 腹 での 摘 出 重 量 は25～399が

最 も多 く,TURの 切除 量 では109～209が 最 も多

く,509以 上 が16例 あ った.Table2に 術 後 の ヵ テ

ー テル 留 置期 間 を 示 す がTUR開 腹 と も4～9日 間

が 最 も多 か った.

Fig.4に 術 後 患 者 の 各 年 齢層 侮 の10年 生存 率 を示

す,た だ し80～84歳 は,8年,85～89歳 は7年 生存 率

で あ る.55～59歳,88.9%,60～64歳,95.7%,65～

69歳,60.4%,70～74歳.55・8%,フ5～79歳,42,3%,

80～84歳,31.7%,85～89歳,66・7%の 生 存 率 で あ

100

90

80

生70

存60

率50

40(%)

10

一 ①55陶59璽一 ②60噌6櫨一 ③65殉69Ω一 ④ro-・7櫨

一 ⑤乃噌79職一 ◎80～ 馴蹴一 ⑦隠～繊

2000

期 間

欄佃)

Fig.4.各 年 齢 層 のKaplan-Meier法 に よ る生 存 率

り,Fig.5は 各年齢層の生存 率の平均 と厚 生省発表

のコーホ ー ト生存 率の平均 とを比較 した ものであ る.

60～64歳,65～69歳,70～74歳,80～84歳 の各年齢層に

ついて比較 してみた.60歳 未満,85歳 以上は数が少な

く比較 していない いずれ の年齢層において も前立腺

肥大症の手術患者 は コーホー}5年 期待生存率 よりも

す ぐれていた.

Fig.6は80歳 以上の高齢者の開腹術 とTURPの

生存 率を比較 した ものであ るが手術法に よる生存率の

差はな く,こ れ は他 の年齢層において も手術法に よる

10年生存 率に有意差を認めていない.

高齢に なれば身体的な合併症は増 加す る.

Fig.7は 各年齢層の心電 図,ス パイ ロメー タ,.,tt

釜

器生認

存1:

串器

11

①65～69歳

＼②

村瀬,ほ か:前 立腺肥大症 ・予後

一 ① 前立隙肥大症の手術例の生存串

ua②7t～74t

①

1器

生 莞

存器

串 罫

鴛100020003000

朔 両

(助0

＼ こ②

鴇

器生;1

存21

串器

看0

一 ② 生命衰による生存率

①

10002000300040ao(日)

朔 圓

③75～79歳 ④80～困躍鴇

器

生 認

存50

率 器

ll

1㎜2000300e4㎜ ㈲10002㎜ ㎜4㎜ ⑧期 闘 期 閣

F三g.5.各 年 齢 層 に おけ る前 立腺 肥 大症 の手 術 患 者 と生 命表 の 期 待 生 存 率 の 比較

1711

σり100

go

80

生70

60

存 釦

40

皐30

一 ① 開腹

一 ②TUR

10002000

期 間

Fig.6.80歳 以 上 の 高 齢 者 の 開腹 術 とTURPの 生

存 率 の 比 較

よる肺機能,血 中Cr,BUNが それぞれ1,5mg/dl

以上20mg/d1以 上 の腎機能異常 の率を各年齢 層 ごと

にみた もの である,心 電図 と肺機 能の異 常者は75歳

以上ではほぼ50%以 上を 占めていた.腎 機能 に関 して

は加齢に よる変化は一定 していない.80～84歳 で18%

に異常者 が認め られ るが 他の年 齢層 とも10%以 下で

あ った.

Fig.8は 心電図の異 常の有 無 に よ る各 年 齢 層の

Kaplan-Meier法 に よる10年 生存 率である.比 較的

年齢層 の若い65～69歳,70～74歳,の 年齢層 では生存

率に有意差は なか ったが,75～79歳,80～84歳 の高齢

者では心電図の異常者は有意に生存率が低か った.

術前の肺機能の異常すなわちスパイ ログラムに よる

拘束性肺機能障害,閉 塞性肺機 能障害 また両者 とも

あ る混合性の肺機 能障害 の患者 の術後の生存率を正常

心電図の興常

65～69歳 多妻多蓼%

70～74歳%多 〃

75～79歳%i%易

80～臓 多笏笏笏 易

肺機能の員常 腎機能の興常

85～89歳%多 多勿〃

F一 幽■■一 一一丁 ■■F■ ■嗣暉剛一一■■■■一▼一 一r-'一 ■一 〒一■■■■一 一〇

50%050%020%

Fig.7,各 年齢層における心電 図,肺 機 能,腎 機能の

異常の割合

に比ぺ ると65～69歳 の年齢層では生存 率に有意差はな

いが,70～74歳,フ5～79歳,80～84歳 の各年齢層では

異常者は有意に生存率が低下 していた(Fig.9).

術中術後の輸血 の有無に よる各年齢層 の生存率をみ

ると65～69歳 の年 齢層では術後約7年 目で,70～74歳

の年齢層では術後2～3年 の ところで有意に生存率の

低下をみたが75～79歳,80～84歳 の各年齢層において

は輸血の有無に よる生存 率の差 は認めていな い(Fig.

10).

なお心電 図,肺 機能の異常者,ま た術 中術後の輸血

者は厚生省発表 のそれぞれの年齢層の コーホー ト生存

率の平均 よ りもす ぐれていた.

術後の死 因について家族等に問いあわせた ところ心

筋硬 塞な どの心疾患が18名 と最 も多 くつ いで脳血管障

害ll名,癌7名 とこれについでいる(Fig.11).80歳

以上の死因 につ い ては 心疾患 で5名 と最 も多いが,

1712 泌尿紀要35巻10号1989年

鴇

器生 認

存 器

寧 器

零0

鴇

器生認

存器

串器

10

①65～69磯

期

③75～79歳

閥

一 ① 心電図の異常あり 一 ②心電図の異常なし

②70～74瀧鴇

go

tooo2000

期 問

3000〔日)

80

生70

60

存50

ω

寧30

10

1〔罰0020003〔 幽004COO〔 日)

潮 ■

④80～ 田電鴇

go

80

生 苅

60

存 駒

寧 鈎

10

10002[X)O

期 閏

F三g・8.心 電図の異常の有無 による生存率の比較

3㎜{則

1認

器生認

存器

寧器

.le

留

器生 認

存 器

寧 器

10

①65～69歳

期 闘

③75～79鷺

薯0002000300e(日 》

潮 聞

F三9.9.

一 ① 異常あり 一 ② 異常なし

②70～74歳鴇

器生器

存50

串30

10

㎜

潮 闘

④80～ 糾歳鴇

器生詔

存 器

寧30

10

期

肺機能の異常の有無による生存率の比較

㎜

聞

とくにめだ った傾 向はない(Table3).

術後生存者に対 しア ンケー トを郵送 し術 後の生活の

態様,排 尿の状態についての長期予後を調査 した.379

名に ア ンケー トを発送 し解答をえた ものは229名 で回

収率は66%で あ った.Fig.12,13に ア ンケー トの結

果を示す60～69歳 の時に手術を受けた人では75%が

大変元気であ ると答え,15%の 人 で寝た り起 きた りで

あ り,1%の 人が寝たき りと答 えてお り9%の 人は こ

の頃に解答はなか った.70～79歳 の年齢層では82%で

大変元気であ ると答えてお り5%の 人が寝た き りと答

え,だ いたい寝ている人は9%解 答な しが8%で あ っ

た,80～89歳 の年齢層では79%が 大変元気である と答

村瀬,ほ か:前 立腺肥大症 ・予後 1713

一 ① 輪皿あり 一 ② 輔皿なし

鴇

器生認

存器

串器

10

生60

存 聞

寧30

10

①65～69磯

10002000

期 岡

③7ト79歳

30004000(日,

㎜

期 間

鴇

器生器

存器

寧器

署0

鴇

器生認

存器

串;1

10

②70～74歳

1000㎜30004000(日)

期 聞

④80～ 糾 歳

10002000

期 間

3000(副

F量g.10.輸 血の有無に よる生存率 の比較

Table3.80歳 以 上 の手 術 患 者 の死 因(人)

20

18

16

14

12

10

8

6

4

2

0

18

11

zらF%

易1

77

孫" / ドドドド「

F

/

1ニ ノ 房

6

釧

9

/ド

〆

15

霧'客汐

第/'//〆/

多〃多ろ

!ク.

心 脳 癌

疲 藤息 害

Fig.11,

心 疾 患

泌尿器疾患

癌

老 衰

脳血管障害

そ の 他

5

2

2

2

1

3

老 泌尿

障器衰 害

そ 不

の

他 明0 50 100%

o

前立腺肥大症術後患老の死因

50 100%

60～69歳

70～79叢

80～89叢60～69歳

70～79歳

80～89歳

Fig.12.

羅 大変元気である

[=コ 寝たり起きたりしている

巨 ≡ ヨ だいたい寝ている

患 者 の術 後 の生 活 の状 態

え,17%の 人が寝た り起 きた りであ り,い わゆ る寝た

き りとい う人 はなか った.

術 後の排尿 の状態 についてのア ンケー トの結果 は60

～69歳 では75%で は大変調子 よい と答え17%が 頻 尿で

羅 大変調子よく問晒ない

[=コ 頻尿である

∈≡≡≡ヨ尿が出にくい

■ 尿がもれる

Fig.12.術 後 の排 尿 の状 態

あると答え4%の 人が尿が出に くい と答 えてい る.1

%の 人に尿失禁があると答 えてい る.70～79歳 の年齢

層では術後調子 よい と答えてお り,11%に 頻尿の訴え

があ った.8%に 尿が 出に くい と解 答 し,5%に 尿失

禁があ ると答えた.80～89歳 の年齢層では74%が 大変

調子が良い と解答 し,19%の 人が頻 尿 を訴え て いた

が,尿 が出に くい,尿 失禁がある と解答 した人はなか

1714

っ た.

考 察

泌尿紀要35巻10号1989年

前立腺肥大症の手術に関する統計は多数 の報告があ

りほぼ満足で きる排尿が得 られている.し か しなが ら

高齢者に対 する前立腺肥大症 憲者 の術後 の生存率に関

す る統計は これ までにない.わ れ われは前立腺肥大症

の手術を受 けた人の手術 日よ り10年生存率をKaplan-

Meier法 で算出 し,さ ま ざまな観点か ら観察 してみ

た.

一般的には前 立腺肥 大症 の手 術 の方 法,す な わち

TURま た開腹に よる生存 率の差は なか った.年 齢が

高齢 になる程 当然の ことながら生存率は低 くなる.55

～59歳,85～89歳 の各年齢層 は母数が少な く統計的に

有意 な生存率は出せなかった が,ほ ぼ各年齢層が高齢

になる程ほぼ階段状に生存率が低下 してお り,手 術に

よる生存率への影響は認めて いない と考 え られ る,ま

た1984年 資料の コーホー ト5年 生存率はいずれ の年齢

層 の前立腫肥大症患者 よりも低 く前立腺 肥大症の手術

患者は健康な老人 といえる.

高齢者の手術 にあた って術前の心 肺機能,腎 機能が

問題 となる.中 島2)ら は80歳 以上の前立腺肥大症患者

に80%強 になん らか の異常を認め心電 図の異常を含め

た循環器系の ものが多い としている.Fox3)ら も70歳

以上で51%に 肺,循 環 器系に 異常 があ った としてい

る.当 院での75歳 以上では心電 図の異常を呈する もの

は50%以 上あ り,ス パ イロメーターに よる肺機能 の異

常者は60%に 達 してお り,心 肺機能の悪い群に生存 率

の差が出た,腎 機能の異常 を呈す る率は10%内 外 と比

較的少な く生存率を比較す ることはで きなかった.な

お心電 図の異常群,肺 機能 の異常群で もコーホー ト生

存 率 より高か った.

術中 術後 の輸 血 の有 無に よる生存 率の差は65～69

歳70～74歳 の年齢層 では輸血を受けた群 では若干生

存 率は低か ったが,75歳 以上の高齢者では輪血に よる

生存率の低下 はなか った.中 島 ら2)は 高齢者は貧血の

ある人が多 く出血量にみあ った輸血 を した方が よい と

している,

術後退院 したあと死亡を確認で きた79名 について死

因を調査 した,最 も多いのは心疾患 で脳血管障害が こ

れについでい る.最 近の厚生省 の発表 の死因第1位 で

ある悪性腫瘍の人が比較的少 な く注 回される.

術後 の生活や排尿の状態につ いて のア ンケー トの結

果 では75%以 上が大変元気であると箒 えてお り,い わ

ゆる寝 たき りは70歳 代で手術 した人に9%み られ たが

80歳 以上で手術を受けた人 には見 られず80歳 以上で手

術を受けた人 の健康 さを 印象づけた.術 後 の排 尿の状

態 も70%以 上がほぼ満足 した排尿があ り手術 の妥 当性

を うらづけ ているが,頻 尿であ ると答えた人が80歳 以

上で19%あ り,こ れ までの報告で も山下4)ら はi日8

回以上 の頻尿が57.7%あ る としてお り,今 村5)ら は夜

間尿3回 以上が35.4%あ った と報 告 してい る.香 川6)

らは排尿回数がひ どくな った と訴える人が16,5%あ っ

たと してお り,頻 尿は前立腺肥 大症の手術に よって も

改善 しない場 合があ り注意 を要す る.

結 語

前立腺肥大症 で手術 した484名 につ いて年齢 層別に

生存 率 と心電 図,肺 機能の異常の有無に よる生存率 の

差をみた.心 電 図,肺 機能 の異常者は高齢に なる程手

術後の生存 率に影響があ らわれた.死 亡者の死因は心

疾患,脳 血管障害が多 く,癌が少なか った.術 後の生活

では75%が 元気 に暮 らしてお り,高 齢老 で も術後の

"qualityoflife"は 良かった.術 後の排 尿の状 態で

は75%以 上が排尿に問題ない と答えているが,頻 尿 と

答えた人が10%内 外あ り頻尿の改善が今後の問題 とし

て残 った.

木論 文は1988年 度前立 腺財団助成金 によった。

文 献

i)北 川 千 恵 子,有 本 弘 子=が ん 予 防,医 療 活 動 に お

け るが ん 登 録 の 役 割 に 関す る研 究.昭 和44年 ～58

年 コ ーホ ー ト生 存 率.昭 和59年 度厚 生 省 が ん研 究

助 成 金 班 会 議 資 料.

2)中 島 均,由 井康 雄,秋 元成 太:80歳 以 上 の 高 齢

老 前 立 腺 肥 大症 に対 す る手 術 療 法 の検 討.西 日泌

尿46:1309-1313,1984

3)FoxM:Prostatectomyinpatientof70and

over.EurUrol7:27-30,1981

4)山 下 拓 郎,吉 住 修,野 田進 士,江 藤 耕作=久 留

米 大 学 泌 尿 器科 学 教 室 に お け る最 近9年 間 の前 立

腺 摘 除術 及 び 術 後 の 成 績.西 日泌 尿":1385-

}389,1982

5)今 村 一 男,中 西 欽 也,菅 孝 幸,近 藤 常郎,落 合

元 宏,吉 田英 機,中 野 博行,丸 山邦 夫,池 内隆

夫,矢 島 七 生=前 立 腺 摘 除 術 に お け る 止血 法 の検

討.日 泌 尿 会誌66:1039-1044,1972

6)香 川 征,滝 川 浩,川 西泰 夫,前 林 浩次,斎 木

喬,河 野 明,塩 津 智 之,秋 山 昌範,黒 川 一 男:

前 立 腺 肥 大 症 の 季 術 成 績 。 西 日泌 尿46=77-771

1984

(1989年1月17日 受 付)