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Three-Dimensional Temperature Measurement of Combustion Flames Using a Single Monochromatic CCD...

Date post: 11-Nov-2023
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1. 緒     言 アーク溶接は製造業にとって必要不可欠な技術であり, 更なる高品質・高能率化が求められている.しかし,アー クプラズマを介して生じる溶接現象は極めて複雑であり, 完全な制御下におくことができていないのが現状である. そのため,現象をより深く理解し,解明することが望まれ ている. その取り組みの一つとして,数値解析による現象理解が あげられる.近年,計算機の性能が著しく発展し,アーク プラズマの温度分布や溶滴移行現象,溶融池対流現象など 数値計算を通して,その機構を推測することができるよう になった 14) .本論文で対象とする TIG アークプラズマに関 しても,数多くの二次元軸対称解析モデルが提案されてお り,温度分布や流速分布などを予測することが可能となって きた 57) .一方,それの裏付けとなるアークプラズマの温度 計測実験も行われている.その手法としては非接触でアー クに擾乱を与えない分光法を用いており,二次元軸対称を 仮定とした Abel 変換処理を施すことで,平板上の静止 TIG アークの温度分布を計測している 814) しかし実際の生産現場における溶接は,様々な継手形状 に対して行われたり,高効率化を目指し複数の電極による 溶接が適用されたり,溶接線に沿って動かされたりするこ とから,アークプラズマの形状が非軸対称となるものが数 多く存在する.そのため,アークプラズマを二次元軸対称 として扱った解析や計測ではそうした現象を完全に解明す ることができない.このような問題に対し,近年,非軸対 称の溶接現象を扱う三次元のアークモデルによる現象解析 が進みつつある 1518) .例えば,荻野らは開先形状内でのアー クや,2 電極のアークなど,軸対称とはならないアークプ ラズマの現象解析を行っている 1718) .一方,非軸対称なアー クプラズマに対する温度計測の手法としては,医療用 CT Computed Tomography)スキャンの原理に基づいた画像再 構成法による方法が挙げられる.これは熱プラズマの分野 では既に適用されている方法であるが 1920) ,再構成に要す る処理速度や画像の鮮明さや確からしさといった観点か ら,再構成法には種々の手法が選択されている 2122) .しか し溶接アークの範疇では,先述のとおり軸対称アークを Abel 変換を用いて測定することがほとんどであり,非軸対 称アークの温度分布計測は未だ確立されていないと言って よい.よって近年進められている三次元的な数値解析によ る結果の裏付けはなされていないのが現状である. そこで本研究では,軸対称ではない TIG アークプラズマ の温度を,画像再構成法を用いた三次元温度計測法によっ て実験的に明らかにすることを目的とする.画像再構成法 としては,ノイズの影響が小さく画質も良いとされる最尤 推定‐期待値最大化法(ML-EM 法)を用いた 2123) .まず, 平板上の静止軸対称 TIG アークに対して本三次元温度計測 法を適用し,従来の Abel 変換を用いた温度計測法と比較検 [溶接学会論文集 第 29 巻 第4号 p. 274-279 (2011)] TIG アークプラズマの三次元温度計測 小西 貴也**,平田 好則***,野村 和史***,白井健太郎*** Three Dimensional Temperature Measurement of the Gas Tungsten Arc Plasma by KONISHI Takaya ** , HIRATA Yoshinori *** , NOMURA Kazufumi *** and SHIRAI Kentaro *** Temperature measurement of the arc plasma is so important regarding the realization of the physical property that spectroscopic techniques have been used to measure the temperature distribution in free-burning arcs in argon gas. These methods, however, assume that the arc plasma is axially symmetry, so they can be applied to only the symmetrical arc plasma. In the point of production, since the arc welding is applied to various joint geometries and the welding torch moves along the welding line, most of actual arc plasma phenomena are not axially symmetric. Therefore it is required to develop a measurement method of the non-axial symmetrical arc plasma. This study proposes a three dimensional temperature measurement method with use of the image reconstruction. This method could obtain much the same temperature distribution as previously reported methods and be applied to the non-axial symmetrical arc plasma. Key Words: Non-axial symmetrical arc plasma, Spectroscopy, Temperature measurement, Image reconstruction, ML-EM method, Fowler- Milne method *受付日 平成237 4 日 受理日 平成231011**学生員 大阪大学大学院工学研究科(現在 関西電力株式会 社) Student Member, Graduate School of Engineering Osaka University (Present Address: The Kansai Electric Power Co., Ltd.) ***正 員 大阪大学大学院工学研究科  Member, Graduate School of Engineering Osaka University ****学生員 大阪大学大学院工学研究科  Student Member, Graduate School of Engineering Osaka University
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1. 緒     言

アーク溶接は製造業にとって必要不可欠な技術であり,

更なる高品質・高能率化が求められている.しかし,アー

クプラズマを介して生じる溶接現象は極めて複雑であり,

完全な制御下におくことができていないのが現状である.

そのため,現象をより深く理解し,解明することが望まれ

ている.

その取り組みの一つとして,数値解析による現象理解が

あげられる.近年,計算機の性能が著しく発展し,アーク

プラズマの温度分布や溶滴移行現象,溶融池対流現象など

数値計算を通して,その機構を推測することができるよう

になった1-4).本論文で対象とする TIGアークプラズマに関

しても,数多くの二次元軸対称解析モデルが提案されてお

り,温度分布や流速分布などを予測することが可能となって

きた5-7).一方,それの裏付けとなるアークプラズマの温度

計測実験も行われている.その手法としては非接触でアー

クに擾乱を与えない分光法を用いており,二次元軸対称を

仮定とした Abel変換処理を施すことで,平板上の静止 TIG

アークの温度分布を計測している8-14).

しかし実際の生産現場における溶接は,様々な継手形状

に対して行われたり,高効率化を目指し複数の電極による

溶接が適用されたり,溶接線に沿って動かされたりするこ

とから,アークプラズマの形状が非軸対称となるものが数

多く存在する.そのため,アークプラズマを二次元軸対称

として扱った解析や計測ではそうした現象を完全に解明す

ることができない.このような問題に対し,近年,非軸対

称の溶接現象を扱う三次元のアークモデルによる現象解析

が進みつつある15-18).例えば,荻野らは開先形状内でのアー

クや,2電極のアークなど,軸対称とはならないアークプ

ラズマの現象解析を行っている17,18).一方,非軸対称なアー

クプラズマに対する温度計測の手法としては,医療用 CT

(Computed Tomography)スキャンの原理に基づいた画像再

構成法による方法が挙げられる.これは熱プラズマの分野

では既に適用されている方法であるが19,20),再構成に要す

る処理速度や画像の鮮明さや確からしさといった観点か

ら,再構成法には種々の手法が選択されている21,22).しか

し溶接アークの範疇では,先述のとおり軸対称アークを

Abel変換を用いて測定することがほとんどであり,非軸対

称アークの温度分布計測は未だ確立されていないと言って

よい.よって近年進められている三次元的な数値解析によ

る結果の裏付けはなされていないのが現状である.

そこで本研究では,軸対称ではない TIGアークプラズマ

の温度を,画像再構成法を用いた三次元温度計測法によっ

て実験的に明らかにすることを目的とする.画像再構成法

としては,ノイズの影響が小さく画質も良いとされる最尤

推定‐期待値最大化法(ML-EM法)を用いた21,23).まず,

平板上の静止軸対称 TIGアークに対して本三次元温度計測

法を適用し,従来の Abel変換を用いた温度計測法と比較検

[溶接学会論文集 第 29巻 第4号 p. 274-279 (2011)]

TIG アークプラズマの三次元温度計測*

小西 貴也**,平田 好則***,野村 和史***,白井健太郎***

Three Dimensional Temperature Measurement of the Gas Tungsten Arc Plasma*

by KONISHI Takaya**, HIRATA Yoshinori***, NOMURA Kazufumi*** and SHIRAI Kentaro***

Temperature measurement of the arc plasma is so important regarding the realization of the physical property that spectroscopic techniqueshave been used to measure the temperature distribution in free-burning arcs in argon gas. These methods, however, assume that the arc plasma isaxially symmetry, so they can be applied to only the symmetrical arc plasma. In the point of production, since the arc welding is applied tovarious joint geometries and the welding torch moves along the welding line, most of actual arc plasma phenomena are not axially symmetric.Therefore it is required to develop a measurement method of the non-axial symmetrical arc plasma. This study proposes a three dimensionaltemperature measurement method with use of the image reconstruction. This method could obtain much the same temperature distribution aspreviously reported methods and be applied to the non-axial symmetrical arc plasma.

Key Words: Non-axial symmetrical arc plasma, Spectroscopy, Temperature measurement, Image reconstruction, ML-EM method, Fowler-Milne method

*受付日 平成23年 7月 4日 受理日 平成23年10月11日**学生員 大阪大学大学院工学研究科(現在 関西電力株式会

社) Student Member, Graduate School of EngineeringOsaka University (Present Address: The Kansai ElectricPower Co., Ltd.)

***正 員 大阪大学大学院工学研究科 Member, GraduateSchool of Engineering Osaka University

****学生員 大阪大学大学院工学研究科  Student Member,Graduate School of Engineering Osaka University

討する.また,著者らが過去に行った外部磁場を与えて故

意に非軸対称としたアークプラズマに対して15),本手法に

よるプラズマの温度計測を試み,その有用性を評価した.

2. 三次元温度計測法の概要

分光法によるアークプラズマの温度計測では,まずアー

クプラズマの積分放射光量を測定し,これを放射強度分布

に変換する.さらに放射強度分布から温度分布への変換を

行うことでアークプラズマの温度分布が決定する.軸対称

アークにのみ適用されうる従来の手法と,本研究で用いる

三次元温度計測法で大きく異なるのは,積分放射光量から

放射強度分布へ変換する部分である.以下では,三次元温

度計測法の原理と,その際用いる数値解析手法,および放

射強度分布から温度分布への変換に用いた Fowler-Milne法

について述べる.

2.1 三次元温度計測法の原理

Fig. 1のような TIGアークプラズマの温度を求める場

合,まずその放射光量をアークプラズマの一側面から計測

するが,ここで検出される光量はプラズマの厚み部分から

の積分放射光量である.従来の二次元的手法では,その積

分放射光量の軸対称性を利用してAbel変換処理を施し空間

分解することで,実際の放射光量,すなわち放射強度分布

を求めている8-14).そのため,非軸対称となるアークプラズ

マは計測できない.

これに対し,本研究で用いるのは多方向から積分放射光

量を計測し,求めたい放射強度分布を再構成する手法であ

る.Fig. 2にその原理の概略図を示すが,CTの原理を応用

したものである.アーク軸に対して垂直な面上を検出器が

走査し,一定の角度ごとに多方向からアークプラズマの積

分放射光量を得る.例えば,図のようにアーク断面を

4×4=16個のセルに分割した場合を考える.検出器 iでの

積分放射光量の値を yi,放射強度を xjとすると,検出器 0

には

y0=x0+x4+x8+x12 (1)

なる積分放射光量が入力される.一方,検出器 5の場合,

例えばセル 2を通過する面積が一部であるため,この面積

率を検出確率 C52として放射強度の値に掛ける.他のセルに

対しても同様に検出確率を求めることで,検出器 5には次

の積分放射光量が入力される.

y5=C51x1+C52x2+C53x3+… (2)

同様の操作によって16個の式を導くことができ,この連立

方程式を解くことで16個のアーク断面放射強度分布 xjを求

めることができる.しかし,実際には細かな分割を行うた

め,生成される連立方程式はより複雑となる.これを解く

ための数値解析手法について次節で述べる.

2.2 最尤推定‐期待値最大化法

画像再構成法は主に医療現場での CTスキャンに用いら

溶 接 学 会 論 文 集 第 29 巻(2011)第 4 号 275

Fig. 1 Schematic image of a conventional temperature measurement method based on Abel inversion

Fig. 2 Schematic image of three-dimensional temperature measurement method

れており,ある断面の線積分で得られた結果(積分放射光

量)から原因(放射強度分布)を解く逆問題の解法であ

る.最も単純な方法は連立方程式を立てて解く方法である

が,直接的に解(再構成画像)を求めることが困難である

ため,投影切断面定理を利用した解析的手法や,反復計算

によって真値に近い値を求める逐次近似法によって解が求

められる 23).解析的手法は計算時間の短縮が望めるもの

の,放射状のアーチファクト(画像乱れ)が生じるとされ

ているため24),本研究では,逐次近似法の一つで,再構成

の際のノイズも少ない最尤推定‐期待値最大化法(ML-EM

法)により再構成画像を得ることとした25,26).

ML-EM法は予めアーク断面の放射強度分布を仮定し,そ

の仮定放射強度分布を線積分することで仮定積分放射光量

を得る.その仮定積分放射光量と実際の積分放射光量を比

較した結果を逆投影し,仮定放射強度分布を修正する.こ

の修正を十分に収束するまで繰り返すことによって実際の

放射強度分布に近づけていく方法である.具体的には,先

に示した Fig. 2と同様の表記を用い,任意の検出器を i,アー

ク断面セルを jとし,セル jでの放射強度を xj,検出確率を

Cij,実測の積分放射光量を yiとするとき,順投影 FPi,繰り

返し数 kを用いて以下の反復計算を行う.

(3)

本研究では,xの変化が相対誤差 10-4となるまでこれを繰

り返すことで,放射強度分布を求めた.

2.3 Fowler-Milne法

本節では,前節までの操作で求めた放射強度分布を温度

に変換する方法を説明する.発光分光分析法において,ほ

とんどの温度計測法は線スペクトルの放射強度との関係を

理論的に求め,それと前節までで求めた計測値を照合して

決定している.しかし,アークプラズマによる放射強度の

絶対値を利用するには絶対感度較正を必要とし,一般的に

簡単ではない.そこで,本研究では放射強度の相対比を用

いて温度を算出する Fowler-Milne法を用いた27).Fowler-

Milne法はアーク中心から離れた位置で放射強度の極大値を

見出し,その極大値で全ての計測値を正規化する方法であ

る.最大放射強度値でスペクトル強度を正規化するため,

遷移確率等のデータが不要となり,比較的簡単に温度を決

定することができる.この関係は物質やスペクトルによっ

て異なり,Fig. 3に波長 696.5 nmの Ar Iスペクトルを用い

た場合の,温度と正規化した放射強度の関係を示す.この

図より,特定温度 15,320 Kで,最大放射強度が存在するの

がわかる.故に,その最大放射強度に対する測定放射強度

比から温度を求めることができる.

3. 三次元温度計測法による TIGアークの温度

分布計測結果

3.1 実験方法

本実験では,水冷銅板上での静止 TIGアークを測定対象

とした.シールドガスに 100%Arを,陰極に 2%トリウム入

りタングステン(電極径 3.2 mm,先端角度60°)を用い,

アーク電流 100~200 A,アーク長 5 mmとした.

アークの中心軸を回転中心として,300 mm離れた位置に

設置された光学系を 180°走査することで多方向から輝度を

計測し,角度ごとに得たアークの写真とその輝度分布デー

タを元に分光分析を行った.レンズの先端に 696.5 nmの波

長のみを通す干渉フィルター(半値幅:1.4 nm)を設置

し,アルゴン原子固有の線スペクトルのみを取り出した.

Fig. 4はこのときに得られるいくつかの方向からの写真を示

したものである.電流 100 Aの条件であるが,静止軸対称

アークであるため各写真にそれほど違いはない.また便宜

上,図中に示すようにアーク断面に対して xy面を与え,計

測範囲を-xmax~xmax,-ymax~ymaxとし,アークが十分に計

測範囲内に収まるよう xmax = ymax = 4.5 mm(200 Aの場合は

5.85 mm)とした.アーク断面は 72×72のマトリクスに分

割し,2.5°刻みで72方向からアークプラズマを計測した.

このとき,空間分解能は 0.125 mm( 200 A の場合は

0.1625 mm)である.高さ z方向に関しては電流によらず

5 mmを40分割(空間分解能 0.125 mm)した.また,本手

法では測定時間中は現象が準定常状態である必要がある

が,この条件での測定にはおよそ60秒を要した.

3.2 軸対称アークの温度分布

Fig. 4に示したような写真から積分放射光量を得ることが

できるが,この各高さ(z方向)に対して画像再構成法を適

用することで,放射強度分布を求めることができる.Fig. 5

は,Fig. 4の TIGアークの電極 1 mm下に対して放射強度分

布と温度分布を計算したものである.(a) が放射強度分布で

あるが,中心から離れた位置に最大放射強度が存在するた

め Fowler-Milne法が適用でき,結果,(b) の温度分布が得ら

れる.なお,11,000 K以下は信頼性が低いと判断し,非表

示としている.(c) は (b) に示した x軸上,y軸上での温度

研究論文 小西他:TIGアークプラズマの三次元温度計測276

Fig. 3 Relationship between normalized intensity of Ar (696.5 nm)spectrum and temperature

分布をプロットした図である.これによると,従来法と異

なり測定範囲の中心と現象の中心が一致していなくても温

度分布を求めることができることが示されている.

ここで,本研究の三次元的手法による測定結果が,既に

報告されているAbel変換を用いた温度分布測定結果と同等

の結果を得ることができるのかを検証した.Fig. 6により電

極 1 mm下におけるアーク中心軸から半径方向の温度分布

を過去のデータ9)と比較した.本三次元計測法によるプロッ

トは,Fig. 5 (c) で示した 2軸上の温度分布に対し,そのピー

ク値からの距離を rと考えたときの平均値である.比較結

果より,最大温度がほぼ等しいなど,既存の方法と同等の

結果を得られることがわかる.

Fig. 5のように得られる各高さでの温度分布を合成する

と,アーク軸に平行な平面(xz面)での温度分布が Fig. 7

のように得られる.ここでは,z = 0 を電極直下とし,

150 A,200 Aでの計測結果も示す.一般的に知られている

ように,電極直下で高温となる釣鐘型のアーク形状が計測

されていることがわかる.また,電流の増加に伴い,最大

温度が少し増加するとともに,各温度領域の範囲が広くな

っている.よって,電流増加によるアークへの電気入力エ

ネルギーのほとんどがアークプラズマの体積の増加に使わ

れることがわかる.

3.3 非軸対称アークの温度分布

本節では未だ計測されたことのない,非軸対称アークプ

ラズマの温度分布について報告する.今回は非軸対称アー

クとして,カスプ型磁場によって断面が楕円化したアーク

を対象とした.カスプ型磁場は N極と S極が交互に 4つ並

んだもので,アークの自己磁場との相互作用によりアーク

断面を楕円化するものであり,永久磁石を用いた TIGアー

クの磁気制御が著者らによって報告されている15).本実験

でも Fig. 8のように配置した永久磁石を用いてアークの楕

円化を行い,故意に非軸対称アークを作った.TIGアーク

の条件は先程までと同様であり,アーク電流は 150 Aとし

た.測定範囲は楕円化するアークの広がりを考え xmax = ymax

= 6.75 mm(空間分解能 0.1875 mm)とした.

溶 接 学 会 論 文 集 第 29 巻(2011)第 4 号 277

Fig. 4 Optical images of 100 A argon TIG arc plasma obtained by multidirectional measurement

Fig. 5 Cross sectional distributions for 100 A argon TIG arc plasma atthe position of 1 mm below the cathode tip(a) Local intensity distribution(b) Temperature distribution (c) Temperature distribution along x and y axis

(c) Temperature distribution along x and y axis

(b) Temperature distribution(a) Local intensity distribution

Fig. 6 Comparison of radial temperature distribution between 2D-measurement and 3D-measurement at the position of 1 mm belowthe cathode tip with a current of 100 A

まず Fig. 9に楕円化アークの写真を示す.軸対称アーク

と異なり緊縮面と広がる面が確認でき,緊縮面の方ではアー

クが濃く写る,すなわち積分放射光量が多くなっているこ

とがわかる.先と同様に,このようにして得られた積分放

射光量から,各高さで画像再構成法により放射強度分布を

求め,Fowler-Milne法により温度分布を算出する.Fig. 10

はその結果を示したものである.同図 (a),(b) はアークの

xy断面のうち,電極から 1 mm下と 3 mm下の温度分布,

(c) は緊縮面(xz面,y = 0),(d) は広がる面(yz面,x =

0)の温度分布である.これらより,アーク形状が楕円化し

非軸対称となっていることが確認できる.また,Fig. 9の写

真ではアークは-y方向へ少し偏向しているが,このこと

も温度計測結果として表れていることもわかる.さらに,

通常のアーク(Fig. 7 (b))と比較すると最高温度はおよそ

2,000 K低下している.これは,アーク形状が楕円化するこ

とで,アークプラズマの体積及び表面積が増加することが

原因であると考えられる.150 Aの通常のアーク(Fig. 7

(b))と楕円化アーク(Fig. 10)の温度分布を比較すると,

11,000 Kを超える分の体積及びその表面積は,通常のアー

クで 109 mm3,142 mm2,楕円化アークで 129 mm3,167 mm2

であった.また Fig. 11は電極からの距離 zごとの xy断面に

おいて,11,000 Kを超える断面積をプロットした図であ

る.アーク形状の楕円化に伴って,特に陰極側でのアーク

プラズマの体積,表面積増加が大きいことがわかる.この

ように体積や表面積が増加することで放射や熱伝導による

損失が大きくなるとともに,アークプラズマの密度が小さ

くなり,ピーク温度が下がったものと考えられる.

このように,本手法によって,非軸対称アークプラズマ

の温度計測が可能となった.

研究論文 小西他:TIGアークプラズマの三次元温度計測278

Fig. 9 Optical images of magnetized elliptical TIG arc plasma obtainedby multi directional measurement

Fig. 8 Experimental setup with cusp type magnetic field

Fig. 10 Temperature distributions of magnetized elliptical TIG arcplasma with a current of 150 A

(a) Cross section at the position of1 mm below the cathode tip

(b) Cross section at the position of3 mm below the cathode tip

(c) Longitudinal section ofcompression side

(d) Longitudinal section ofexpansion side

Fig. 7 Temperature distribution in longitudinal section

(c) 200 A

(a) 100 A (b) 150 A

溶 接 学 会 論 文 集 第 29 巻(2011)第 4 号 279

4. 結     言

従来,軸対称性を利用した温度計測法を用いて計測され

ていた TIGアークに対して,多方向からの放射光量計測と

ML-EM法による画像再構成を用いることにより,三次元的

に温度を計測する手法を構築し,アークプラズマの温度を

測定した.本研究で得られた主な成果を以下に示す.

(1)静止 TIGアークにおいて温度計測を行った結果,既

に報告されている水冷銅板上での静止 TIGアークに

おける温度分布と同等の結果を得ることができ,本研

究で用いた三次元温度計測法の妥当性が示された.

(2)カスプ型磁場を用いることでアークを楕円形状化し,

非軸対称となったアークプラズマの温度分布を計測す

ることに成功した.測定結果より,150 Aのアークで

は磁気制御によって最高温度が約 2,000 K程度低下す

ることがわかった.

以上の結果より,画像再構成による三次元温度計測法は,

非軸対称アークへの適用が有効であるといえる.

参 考 文 献

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Fig. 11 Cross sectional area exceeding 11,000 K of the normal and themagnetized elliptical TIG arc plasma (welding current = 150 A)


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