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構造系 665号 【カテゴリーⅡ】 - Kyoto U- 1264 -...

Date post: 29-Jan-2021
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1263 In this study, we evaluate the influence of fault parameters on the ground motion characteristics and building response character- istics in the near-fault region, in order to develop the seismic design load for the Uemachi fault. We simulate ground motions in near-fault region changing several fault parameters using 3D-FDM. As results, the following conclusions are obtained. 1)Back- ground of fault have little effect to near-fault pulse-like ground motion in the period range T>1.25s. 2)Peak ground velocity is affected by asperity size, rupture velocity, rise time, upper depth of asperity. 3)The pulse period on sedimentary layers depends on that of the bedrock and predominant periods of sedimentary layers. 4)The region where we should consider the influence of pulse- like ground motions depends on the ratio of natural periods of buildings and pulse periods of the ground motion. Keywords: Keywords: Keywords: Keywords: Keywords: Fault Parameter, Pulse-Like Ground Motion, Near-Fault Region, 3D-FDM, 断層パラメータ , パルス性地震動 , 断層近傍 , 3 次元差分法 1 .はじめに 大阪府域には、上町断層帯をはじめ多くの活断層が存在する。そ の中でも上町断層帯は、今後 3 0 年以内の発生確率が 2 ~ 3 % と高く 1) また都市直下に存在することから、大阪府域の建物安全性を考える 上で上町断層帯による地震の影響は無視できない。大阪市をはじめ 複数の行政・研究機関により上町断層帯の予測地震動が作成されて きたが 2 ~ 4 など) 、これらの予測地震動には断層近傍地震動に特有のパ ルス状の波形( パルス性地震動) が顕著に見られることから、パルス 性地震動を考慮した構造設計が必要であると考えられる。パルス性 地震動については、特に 1 9 9 5 年兵庫県南部地震以降、その生成要因 5 など) および構造物応答特性 6 , 7 など) などについての数多くの研究がな されてきた。しかし、パルス性地震動の影響を設計に十分に反映さ せるには至っておらず、今後の課題である。特に、現行の設計用地 震荷重では建物被害に大きく影響する 1 秒以上の周期帯においてパ ルス性地震動を過小評価する可能性があり、その影響を地震荷重に 反映させることが必要と考えられる。 鈴木ら 8) は、断層近傍におけるパルス性地震動を正弦波パルスで 理想化し、正弦波パルスに対する 1 自由度系の最大応答理論解を導 出し、これを用いた設計用加速度応答スペクトルの設定法を提案し た。鈴木らの設定法では、パルス周期 T p とパルス速度振幅 V p を与え る事でパルス性地震動の特性を反映した設計用地震荷重を設定する 事ができる。しかし、パルス周期やパルス振幅をどのように設定す るかは提示されておらず、今後の課題となっている。パルス周期や 振幅について、観測記録の分析により推定する研究がなされている 9~11) 、断層近傍の観測記録があまり多くない現状では、観測記録 の分析のみからパルス性地震動の特性値(パルス周期 T p とパルス速 度振幅 V p )を設定することは難しく、理論的な強震動予測手法によ る検討が不可欠である。 一方、強震動予測手法の現状としては、観測記録はおおむね再現 できる程に高精度化されてきている 1 2 , 1 3 など) 。また、「強震動予測レシ ピ」によるシナリオ地震の強震動予測が整備され 14,15) 、今後起こりう る地震に対しても、断層の「平均的」なパラメータによる強震動予 測が可能となってきている。 しかし、レシピによる強震動予測はあくまで「平均的な」地震動 予測であり、各断層パラメータの関係式のバラツキにより、地震動 予測の結果にバラツキが生じる。断層パラメータの設定がどのよう に地震動特性に影響を与えるかという点について検討した事例とし ては、①震源インバージョンの結果から破壊伝播速度のバラツキを 整理したもの 16) 、②破壊伝播速度を変化させてその違いを比較した もの 17) 、③断層破壊過程の複雑さを特性化震源モデルのように単純 化したときに、強震動予測結果にどのような影響が現れるかについ て検討したもの 18) などがあるが、パルス性地震動の特性値や建物応 答に及ぼす影響の観点から、系統だって検討している研究はない。 以上の背景により本論文では、上町断層近傍の設計用地震荷重を 設定する際に、特別な配慮の必要なエリアの抽出や、考慮すべきパ ラメータの幅などに関して意思決定に必要な情報を得ることを目的 とし、3 次元差分法 19) を用いた強震動シミュレーションを行い、パ ルス性地震動の特性を支配する断層パラメータの特定を試みる。た 構造系 665 号 【カテゴリーⅡ】 日本建築学会構造系論文集 766651263-127020117 J. Struct. Constr. Eng., AIJ, Vol. 76 No. 665, 1263-1270, Jul., 2011 上町断層近傍の設計用地震荷重設定に考慮すべき断層パラメータ CONSIDERABLE FAULT PARAMETERS TO ESTABLISH THE SEISMIC DESIGN LOAD FOR THE UEMACHI FAULT 大西良広 鈴木恭平 ** 田中和樹 *** 林 康裕 **** Yoshihiro ONISHI, Kyohei SUZUKI, Kazuki TANAKA and Yasuhiro HAYASHI 京都大学大学院工学研究科 准教授博士 工学Assoc. Prof., Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., Dr. Eng. ** 京都大学大学院工学研究科 修士課程 Graduate Student, Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ. *** 関西電力㈱ 工修 Kansai Electric Power Company, M. Eng. 元 京都大学大学院**** 京都大学大学院工学研究科 教授工博 Prof., Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., Dr. Eng.
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    上町断層近傍の設計用地震荷重設定に考慮すべき断層パラメータCONSIDERABLE FAULT PARAMETERS TO ESTABLISH THE SEISMIC DESIGN LOAD

    FOR THE UEMACHI FAULT

    大西良広*、鈴木恭平**、田中和樹***、林康裕****

    Yoshihiro ONISHI ,Kyohei SUZUKI , Kazuki TANAKA, Yasuhiro HAYASHI

    In this study, we evaluate the influence of fault parameters on the ground motion characteristics and building response character-istics in the near-fault region, in order to develop the seismic design load for the Uemachi fault. We simulate ground motions innear-fault region changing several fault parameters using 3D-FDM. As results, the following conclusions are obtained. 1)Back-ground of fault have little effect to near-fault pulse-like ground motion in the period range T>1.25s. 2)Peak ground velocity isaffected by asperity size, rupture velocity, rise time, upper depth of asperity. 3)The pulse period on sedimentary layers depends onthat of the bedrock and predominant periods of sedimentary layers. 4)The region where we should consider the influence of pulse-like ground motions depends on the ratio of natural periods of buildings and pulse periods of the ground motion.

    Keywords: Keywords: Keywords: Keywords: Keywords: Fault Parameter, Pulse-Like Ground Motion, Near-Fault Region, 3D-FDM,断層パラメータ , パルス性地震動 , 断層近傍 , 3 次元差分法

    1 .はじめに 大阪府域には、上町断層帯をはじめ多くの活断層が存在する。その中でも上町断層帯は、今後3 0 年以内の発生確率が2~ 3 % と高く1)、また都市直下に存在することから、大阪府域の建物安全性を考える上で上町断層帯による地震の影響は無視できない。大阪市をはじめ複数の行政・研究機関により上町断層帯の予測地震動が作成されてきたが2 ~ 4 など)、これらの予測地震動には断層近傍地震動に特有のパルス状の波形( パルス性地震動) が顕著に見られることから、パルス性地震動を考慮した構造設計が必要であると考えられる。パルス性地震動については、特に1 9 9 5 年兵庫県南部地震以降、その生成要因5 など)および構造物応答特性6 , 7 など)などについての数多くの研究がなされてきた。しかし、パルス性地震動の影響を設計に十分に反映させるには至っておらず、今後の課題である。特に、現行の設計用地震荷重では建物被害に大きく影響する1 秒以上の周期帯においてパルス性地震動を過小評価する可能性があり、その影響を地震荷重に反映させることが必要と考えられる。 鈴木ら8 ) は、断層近傍におけるパルス性地震動を正弦波パルスで理想化し、正弦波パルスに対する1 自由度系の最大応答理論解を導出し、これを用いた設計用加速度応答スペクトルの設定法を提案した。鈴木らの設定法では、パルス周期T p とパルス速度振幅V p を与える事でパルス性地震動の特性を反映した設計用地震荷重を設定する事ができる。しかし、パルス周期やパルス振幅をどのように設定するかは提示されておらず、今後の課題となっている。パルス周期や振幅について、観測記録の分析により推定する研究がなされている

      * 京都大学大学院工学研究科 准教授・博士(工学) Associate Prof., Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., Dr.Eng.  ** 京都大学大学院工学研究科 修士課程 Graduate Student, Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ. *** 関西電力(株) 工修 (元京都大学大学院) Kansai Electric Power Company, M.Eng **** 京都大学大学院工学研究科 教授・工博 Prof., Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., Dr.Eng.

    が9 ~ 1 1 ) 、断層近傍の観測記録があまり多くない現状では、観測記録の分析のみからパルス性地震動の特性値(パルス周期T p とパルス速度振幅V p)を設定することは難しく、理論的な強震動予測手法による検討が不可欠である。 一方、強震動予測手法の現状としては、観測記録はおおむね再現できる程に高精度化されてきている12,1 3 など)。また、「強震動予測レシピ」によるシナリオ地震の強震動予測が整備され14,1 5 )、今後起こりうる地震に対しても、断層の「平均的」なパラメータによる強震動予測が可能となってきている。 しかし、レシピによる強震動予測はあくまで「平均的な」地震動予測であり、各断層パラメータの関係式のバラツキにより、地震動予測の結果にバラツキが生じる。断層パラメータの設定がどのように地震動特性に影響を与えるかという点について検討した事例としては、①震源インバージョンの結果から破壊伝播速度のバラツキを整理したもの1 6 )、②破壊伝播速度を変化させてその違いを比較したもの1 7 )、③断層破壊過程の複雑さを特性化震源モデルのように単純化したときに、強震動予測結果にどのような影響が現れるかについて検討したもの1 8 )などがあるが、パルス性地震動の特性値や建物応答に及ぼす影響の観点から、系統だって検討している研究はない。 以上の背景により本論文では、上町断層近傍の設計用地震荷重を設定する際に、特別な配慮の必要なエリアの抽出や、考慮すべきパラメータの幅などに関して意思決定に必要な情報を得ることを目的とし、3 次元差分法1 9 )を用いた強震動シミュレーションを行い、パルス性地震動の特性を支配する断層パラメータの特定を試みる。た

    構造系 665号

    【カテゴリーⅡ】 日本建築学会構造系論文集 第76巻 第665号,1263-1270,2011年 7月J. Struct. Constr. Eng., AIJ, Vol. 76 No. 665, 1263-1270, Jul., 2011

    上町断層近傍の設計用地震荷重設定に考慮すべき断層パラメータCONSIDERABLE FAULT PARAMETERS TO ESTABLISH THE SEISMIC DESIGN LOAD

    FOR THE UEMACHI FAULT

    大 西 良 広*,鈴 木 恭 平**,田 中 和 樹***,林   康 裕**** Yoshihiro ONISHI, Kyohei SUZUKI, Kazuki TANAKA

    and Yasuhiro HAYASHI

    * 京都大学大学院工学研究科 准教授・博士(工学) Assoc. Prof., Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., Dr. Eng. ** 京都大学大学院工学研究科 修士課程 Graduate Student, Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ. *** 関西電力㈱ 工修 Kansai Electric Power Company, M. Eng. (元 京都大学大学院) **** 京都大学大学院工学研究科 教授・工博 Prof., Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., Dr. Eng.

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    だし、断層近傍の地震動特性に影響を与える断層パラメータについては、断層タイプや地盤構造など非常に多くの要素があることや観測記録が少ないことなどにより、一般論として論じることは難しい。そこで本論文では、断層タイプや地盤構造を限定することと、地震の発生確率や発生時の影響度の高さから対象を上町断層に限定し、数値解析により断層パラメータの設計用地震動への影響を論じるとともに、建物応答が大きくパルス性地震動の影響を設計で特に考慮すべき地点(領域)について検討を行った。

    2 .強震動予測手法 本論文で行った強震動計算手法・解析モデルについて述べる。2 . 1 計算手法 本研究では、不連続格子スタッガードグリッドによる空間4 次・時間2 次精度の3 次元差分法2 0 )により強震動を計算した。解析領域は水平方向42km 四方、深さ方向30km とし、グリッド間隔は100m(21.5km以深は不連続格子により3 0 0 m ) とした。地表面以外の解析領域境界には厚さ6 k m の吸収領域を設け、人工的な反射波が生じないようにした。座標軸はN S 方向をX 軸と一致するように設定している( 図 6参照)。後述の地盤の物性値とグリッド間隔により、有効周期は1 . 2 5秒(0.8Hz)以上である。よって、以後の検討では周期1.25 秒以上の周期についてのみ議論する。また、計算された波形には図1 に示す0.8Hzローパスフィルタ処理を施した。 なお、本研究の強震動計算には、解析ソフトG M S 2 1 )を用いた。2 . 2  地下構造モデル 地下構造モデルには、大阪府域の地下構造を想定して、F K S 地盤モデル、府庁地盤モデル、岩盤モデルの 3 種類の水平成層構造を用いる。岩盤モデルは地震基盤(S 波速度Vs=2850m/s)が地表に露頭し、地震基盤上端から地震発生層上端までは物性値を漸増させ、地震発生層ではVs=3500m/s とした。地震発生層内では物性値を一定としている。FKS 地盤および府庁地盤は、大阪府(2005)22)に示されている3次元地盤構造モデルを参考に、関震協F K S 観測点2 3 )および大阪府庁周辺の地盤を模擬した3 層水平成層モデルとした。図2 に、F K S 地点

    および大阪府庁の位置を、図3 に各地盤モデルのS 波速度構造を、表1 には地盤の諸元を示す。また図4 にはF K S 地盤および府庁地盤の1次元増幅特性を示す。本論文では、F K S 地盤を標準とし、地震基盤からの増幅や地下構造の違いの検討に岩盤および府庁地盤を用いている。また、F K S 地点は上町断層下盤側、府庁は上町断層上盤側に位置している。なお、本論文では工学的基盤以浅の表層地盤は考慮しない。2 . 3  断層パラメータ2. 3 . 1 標準ケース 断層パラメータの設定方法および標準ケースの断層パラメータについて述べる。強震動予測レシピ1 4 )を参考に、断層パラメータを設定する。本検討では、アスペリティを正方形と仮定し、設定したアスペリティサイズが全体の2 2 %となるように断層全体の面積を設定した。解析領域の地表面中央に断層線を配置し、断層線から傾斜角に沿って直線を引き、アスペリティ上端深さからアスペリティ幅分だけ面を配置した。断層近傍の地震動はアスペリティから放射されるパルスに支配されると考え、標準ケースでは背景領域から放射される地震動を計算しない。ただし、感度解析として背景領域を考慮した地震動を計算し、背景領域の影響を考察する。すべり速度関数には中村・宮武( 2 0 0 0 ) 2 4 ) の関数を用い、立ち上がり時間にはSomerville.et.al(1999)25)によるものを使用した。破壊開始点をアスペリティ下端中央とし、同心円状に破壊が進展するものとした。 標準ケースでは、アスペリティサイズを8 k m 四方、アスペリティ上端深さを5 k m、傾斜角を6 0°とした。すべり速度関数は図5 のようにした。また、破壊伝播速度Vr はGellar(1986) 26)によりVs の72%(Vr=2520m/s)とした。2 . 3 . 2 感度解析のパラメータ 感度解析で変化させた断層パラメータについて述べる。まず、アスペリティサイズは、アスペリティの一辺の長さを6、8、10、1 2 k m

    図 3 S 波速度構造

    表 1  地盤モデルの諸元

    0 1000 2000 3000 40000

    500

    1000

    1500

    2000

    2500

    3000

    3500

    �����������

    S���Vs(m/s)

    Depth(m)

    �� ��� �� ���

    1 1700 400 1968 133 200 300 200 300

    2 2100 800 1985 267 400 450 600 750

    3 2400 1000 2140 333 300 850 900 1600

    4 5700 2850 2700 250

    5 5743 2943 2700 250

    6 5786 3036 2700 250

    7 5829 3129 2700 250

    8 5872 3221 2700 250

    9 5915 3314 2700 250

    10 5958 3407 2700 250

    11 6000 3500 2700 250

    2600

    2800

    3000

    ����

    ����

    2000

    2200

    2400

    ������� ������� ��������� ������� �����

    200

    200

    200

    200

    200

    200

    200

    1800

    図 4 F K S ・府庁地盤の 1 次元増幅特性

    図 2  地下構造モデル想定地点

    0

    0.5

    1

    1.5

    0 0.5 1 1.5

    Amplitude

    Freqency(Hz)

    cos��

    0.8Hz 1.33Hz

    図 1  ローパスフィルタ

    1

    10

    1 10

    FKS������

    Amplitude

    Period(s)

    表 2  断層パラメータ

    と変化させた。アスペリティ上端深さは、4km、5km、7km、9km と変化させた。傾斜角は4 5°、6 0°、7 5°と変化させた。また、すべり速度関数についての感度解析では、最終すべり量・立ち上がり時間を固定したまますべり速度振幅V m を2 倍と0 . 5 倍に変化させたケース、および最終すべり量とすべり速度振幅を固定したまま立ち上がり時間T r を変化させたケースについて検討した。破壊伝播速度については、Vs の85 % および65% と変化させた。 表 2 に、標準ケースおよびアスペリティサイズを変えた時の断層パラメータを示す。なお、アスペリティサイズの感度解析では、アスペリティサイズの変化に連動して、地震モーメントやすべり量も変化している。また、アスペリティサイズ・すべり速度振幅・立ち上がり時間を変化させた各ケースのすべり速度関数は図 5 のようになる。 なお、表 3 に、本研究で用いた感度解析のパラメータとその変動させた後の値の一覧を示す。2 . 4 評価指標 計算された地震動の評価には、最大地動速度P G V とパルス周期T pを用いる。鈴木ら8 )によるパルス速度振幅V p は、フィルタ処理により短周期成分を除いた波形のPGV とほぼ等しいため、以下では0.8H zローパスフィルタ処理後の最大速度振幅P G V をパルス速度振幅V p と考える。また、建物の応答の大きくなる周期に着目するため、パルス周期Tp は周期1. 2 5 秒以上の擬似速度応答スペクトルの最大値を与える周期と定義する。また、以下では、パルス性地震動が発生しやすいとされる断層直交成分( 図6 のY 方向) について検討する。

    3 . 断層パラメータが地震動特性に与える影響3 . 1  標準ケースでの地震動特性 図6 に、標準ケースでのPGV とTp の分布を、図7 にはX=0(以下X,Yは全てk m )断面上のP G V とT p をそれぞれ示す。標準ケース(アスペリティ8km 四方)の場合、断層近傍でPGV は約100~150cm/s 程度、パルス周期は2 秒強となる。また、P G V は断層線よりやや上盤側で局所的に大きくなり、特に断層線から5 k m 程度の範囲でP G V が大きくなる。図8 にはX = 0 断面上の地点の速度波形を示す。波形からは明瞭なパルスが見られ、パルス性地震動となっていることがわかる。3 . 2  断層パラメータの感度解析 以下では、断層パラメータを変化させたときの地震動特性について述べる。なお本論文では、F K S 地盤での地震動特性を主な対象とし、地震基盤からの増幅について検討するためには岩盤を、堆積地盤構造の違いによるP G V やパルス周期への影響を検討するためには府庁地盤を用いて比較を行う。( 1 ) 背景領域の影響  アスペリティのみで計算した場合と背景領域を考慮して計算した場合の比較をする。図9 に断層線中心部から5 k m 内の地点について、同一出力地点のアスペリティのみの場合P G V と背景領域ありの場合のP G V を比較して示す。図のように、背景領域を考慮しても、P G V

    01234567

    0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

    6km8km(�����)10km12km

    Slip

    Vel

    ocity

    (m/s

    )

    Time(s)

    図 5  標準ケースおよび感度解析に用いたすべり速度関数

    02468

    1012

    0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

    Vm=5.17(�����)Vm=10.35(��)Vm=2.59(����)

    Slip

    Vel

    ocity

    (m/s

    )

    Time (s)

    0123456

    0 0.5 1 1.5 2 2.5

    Tr=0.74s�������Tr=1.6s

    Slip

    Vel

    ocity

    (m/s

    )

    Time(s)

    ( a ) アスペリティサイズによる変化

    ( b )すべり速度振幅 V m による変化

    (c )立ち上がり時間 T r による変化

    表 3  感度解析に用いるパラメータ

    �� ���� �����

    ��������La km ��� 6 8 10 12

    ��������S a km2 S a=La

    2 36 64 100 144

    ��S km2 S a=0.22S 163.8 292.4 453.7 655.4

    ������ km ��� 3 3 3 3

    ���dip � ��� 60 60 60 60

    �������M 0 dyne�cm S=2.23*10-15*M 0

    2/3 1.99E+25 4.75E+25 9.18E+25 1.59E+26

    ������������Mw Mw=(logM 0-9.1)/1.5 6.1 6.4 6.6 6.7

    ������D m M 0=�DS 0.37 0.49 0.61 0.73

    ��������� Mpa M 0=16/(7�3/2)*��*S 3/2 2.31 2.31 2.31 2.31

    �������Tr s Tr=2.03*10-9*M 01/3 0.55 0.74 0.92 1.10

    ���������� �� ��� 5 5 5 5

    ������������Da m Da=2.4D��29� 0.88 1.18 1.47 1.76

    �������������M0a dyne�cm M 0a=�DaS a 1.05E+25 2.49E+25 4.85E+25 8.40E+25

    �������������a Mpa ��a=(S /S a )*�� 10.5 10.6 10.5 10.5

    �������S b km2 S b=S-S a 127.8 228.4 353.7 511.4

    �����������Db m M 0b= �DbS b 0.22 0.30 0.37 0.45

    ����������M 0b dyne�cm M 0b=M 0-M a 9.41E+24 2.25E+25 4.32E+25 7.53E+25

    ������������b Mpa ��b=(D b /W b )*(S a1/2/Da )*��a 1.25 1.25 1.24 1.25

    ������Vs km/s ��� 3.50 3.50 3.50 3.50

    ������Vr km/s Vr =0.72Vs 2.52 2.52 2.52 2.52

    ������ N/m2 � =� *Vs 2 3.3E+10 3.3E+10 3.3E+10 3.3E+10

    ��������� ������� �����

    ���� ����� ����

    ��������� 8km�� 6km�10km�12km��

    ���������� 5km 4km�7km�9km

    ���dip 60° 45°�75°

    �������Vm 5.17m/s ������2����0.5�

    �������Tr 0.74� 25) 1.6� 12)

    ������Vr Vs�72%(2520m/s) Vs�65%���85%

  • - 1265 -

    だし、断層近傍の地震動特性に影響を与える断層パラメータについては、断層タイプや地盤構造など非常に多くの要素があることや観測記録が少ないことなどにより、一般論として論じることは難しい。そこで本論文では、断層タイプや地盤構造を限定することと、地震の発生確率や発生時の影響度の高さから対象を上町断層に限定し、数値解析により断層パラメータの設計用地震動への影響を論じるとともに、建物応答が大きくパルス性地震動の影響を設計で特に考慮すべき地点(領域)について検討を行った。

    2 .強震動予測手法 本論文で行った強震動計算手法・解析モデルについて述べる。2 . 1 計算手法 本研究では、不連続格子スタッガードグリッドによる空間4 次・時間2 次精度の3 次元差分法2 0 )により強震動を計算した。解析領域は水平方向42km 四方、深さ方向30km とし、グリッド間隔は100m(21.5km以深は不連続格子により3 0 0 m ) とした。地表面以外の解析領域境界には厚さ6 k m の吸収領域を設け、人工的な反射波が生じないようにした。座標軸はN S 方向をX 軸と一致するように設定している( 図 6参照)。後述の地盤の物性値とグリッド間隔により、有効周期は1 . 2 5秒(0.8Hz)以上である。よって、以後の検討では周期1.25 秒以上の周期についてのみ議論する。また、計算された波形には図1 に示す0.8Hzローパスフィルタ処理を施した。 なお、本研究の強震動計算には、解析ソフトG M S 2 1 )を用いた。2 . 2  地下構造モデル 地下構造モデルには、大阪府域の地下構造を想定して、F K S 地盤モデル、府庁地盤モデル、岩盤モデルの 3 種類の水平成層構造を用いる。岩盤モデルは地震基盤(S 波速度Vs=2850m/s)が地表に露頭し、地震基盤上端から地震発生層上端までは物性値を漸増させ、地震発生層ではVs=3500m/s とした。地震発生層内では物性値を一定としている。FKS 地盤および府庁地盤は、大阪府(2005)22)に示されている3次元地盤構造モデルを参考に、関震協F K S 観測点2 3 )および大阪府庁周辺の地盤を模擬した3 層水平成層モデルとした。図2 に、F K S 地点

    および大阪府庁の位置を、図3 に各地盤モデルのS 波速度構造を、表1 には地盤の諸元を示す。また図4 にはF K S 地盤および府庁地盤の1次元増幅特性を示す。本論文では、F K S 地盤を標準とし、地震基盤からの増幅や地下構造の違いの検討に岩盤および府庁地盤を用いている。また、F K S 地点は上町断層下盤側、府庁は上町断層上盤側に位置している。なお、本論文では工学的基盤以浅の表層地盤は考慮しない。2 . 3  断層パラメータ2. 3 . 1 標準ケース 断層パラメータの設定方法および標準ケースの断層パラメータについて述べる。強震動予測レシピ1 4 )を参考に、断層パラメータを設定する。本検討では、アスペリティを正方形と仮定し、設定したアスペリティサイズが全体の2 2 %となるように断層全体の面積を設定した。解析領域の地表面中央に断層線を配置し、断層線から傾斜角に沿って直線を引き、アスペリティ上端深さからアスペリティ幅分だけ面を配置した。断層近傍の地震動はアスペリティから放射されるパルスに支配されると考え、標準ケースでは背景領域から放射される地震動を計算しない。ただし、感度解析として背景領域を考慮した地震動を計算し、背景領域の影響を考察する。すべり速度関数には中村・宮武( 2 0 0 0 ) 2 4 ) の関数を用い、立ち上がり時間にはSomerville.et.al(1999)25)によるものを使用した。破壊開始点をアスペリティ下端中央とし、同心円状に破壊が進展するものとした。 標準ケースでは、アスペリティサイズを8 k m 四方、アスペリティ上端深さを5 k m、傾斜角を6 0°とした。すべり速度関数は図5 のようにした。また、破壊伝播速度Vr はGellar(1986) 26)によりVs の72%(Vr=2520m/s)とした。2 . 3 . 2 感度解析のパラメータ 感度解析で変化させた断層パラメータについて述べる。まず、アスペリティサイズは、アスペリティの一辺の長さを6、8、10、1 2 k m

    図 3 S 波速度構造

    表 1  地盤モデルの諸元

    0 1000 2000 3000 40000

    500

    1000

    1500

    2000

    2500

    3000

    3500

    �����������

    S���Vs(m/s)

    Depth(m)

    �� ��� �� ���

    1 1700 400 1968 133 200 300 200 300

    2 2100 800 1985 267 400 450 600 750

    3 2400 1000 2140 333 300 850 900 1600

    4 5700 2850 2700 250

    5 5743 2943 2700 250

    6 5786 3036 2700 250

    7 5829 3129 2700 250

    8 5872 3221 2700 250

    9 5915 3314 2700 250

    10 5958 3407 2700 250

    11 6000 3500 2700 250

    2600

    2800

    3000

    ����

    ����

    2000

    2200

    2400

    ������� ������� ��������� ������� �����

    200

    200

    200

    200

    200

    200

    200

    1800

    図 4 F K S ・府庁地盤の 1 次元増幅特性

    図 2  地下構造モデル想定地点

    0

    0.5

    1

    1.5

    0 0.5 1 1.5

    Amplitude

    Freqency(Hz)

    cos��

    0.8Hz 1.33Hz

    図 1  ローパスフィルタ

    1

    10

    1 10

    FKS������

    Amplitude

    Period(s)

    表 2  断層パラメータ

    と変化させた。アスペリティ上端深さは、4km、5km、7km、9km と変化させた。傾斜角は4 5°、6 0°、7 5°と変化させた。また、すべり速度関数についての感度解析では、最終すべり量・立ち上がり時間を固定したまますべり速度振幅V m を2 倍と0 . 5 倍に変化させたケース、および最終すべり量とすべり速度振幅を固定したまま立ち上がり時間T r を変化させたケースについて検討した。破壊伝播速度については、Vs の85 % および65% と変化させた。 表 2 に、標準ケースおよびアスペリティサイズを変えた時の断層パラメータを示す。なお、アスペリティサイズの感度解析では、アスペリティサイズの変化に連動して、地震モーメントやすべり量も変化している。また、アスペリティサイズ・すべり速度振幅・立ち上がり時間を変化させた各ケースのすべり速度関数は図 5 のようになる。 なお、表 3 に、本研究で用いた感度解析のパラメータとその変動させた後の値の一覧を示す。2 . 4 評価指標 計算された地震動の評価には、最大地動速度P G V とパルス周期T pを用いる。鈴木ら8 )によるパルス速度振幅V p は、フィルタ処理により短周期成分を除いた波形のPGV とほぼ等しいため、以下では0.8H zローパスフィルタ処理後の最大速度振幅P G V をパルス速度振幅V p と考える。また、建物の応答の大きくなる周期に着目するため、パルス周期Tp は周期1. 2 5 秒以上の擬似速度応答スペクトルの最大値を与える周期と定義する。また、以下では、パルス性地震動が発生しやすいとされる断層直交成分( 図6 のY 方向) について検討する。

    3 . 断層パラメータが地震動特性に与える影響3 . 1  標準ケースでの地震動特性 図6 に、標準ケースでのPGV とTp の分布を、図7 にはX=0(以下X,Yは全てk m )断面上のP G V とT p をそれぞれ示す。標準ケース(アスペリティ8km 四方)の場合、断層近傍でPGV は約100~150cm/s 程度、パルス周期は2 秒強となる。また、P G V は断層線よりやや上盤側で局所的に大きくなり、特に断層線から5 k m 程度の範囲でP G V が大きくなる。図8 にはX = 0 断面上の地点の速度波形を示す。波形からは明瞭なパルスが見られ、パルス性地震動となっていることがわかる。3 . 2  断層パラメータの感度解析 以下では、断層パラメータを変化させたときの地震動特性について述べる。なお本論文では、F K S 地盤での地震動特性を主な対象とし、地震基盤からの増幅について検討するためには岩盤を、堆積地盤構造の違いによるP G V やパルス周期への影響を検討するためには府庁地盤を用いて比較を行う。( 1 ) 背景領域の影響  アスペリティのみで計算した場合と背景領域を考慮して計算した場合の比較をする。図9 に断層線中心部から5 k m 内の地点について、同一出力地点のアスペリティのみの場合P G V と背景領域ありの場合のP G V を比較して示す。図のように、背景領域を考慮しても、P G V

    01234567

    0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

    6km8km(�����)10km12km

    Slip

    Vel

    ocity

    (m/s

    )

    Time(s)

    図 5  標準ケースおよび感度解析に用いたすべり速度関数

    02468

    1012

    0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

    Vm=5.17(�����)Vm=10.35(��)Vm=2.59(����)

    Slip

    Vel

    ocity

    (m/s

    )

    Time (s)

    0123456

    0 0.5 1 1.5 2 2.5

    Tr=0.74s�������Tr=1.6s

    Slip

    Vel

    ocity

    (m/s

    )

    Time(s)

    ( a ) アスペリティサイズによる変化

    ( b )すべり速度振幅 V m による変化

    (c )立ち上がり時間 T r による変化

    表 3  感度解析に用いるパラメータ

    �� ���� �����

    ��������La km ��� 6 8 10 12

    ��������S a km2 S a=La

    2 36 64 100 144

    ��S km2 S a=0.22S 163.8 292.4 453.7 655.4

    ������ km ��� 3 3 3 3

    ���dip � ��� 60 60 60 60

    �������M 0 dyne�cm S=2.23*10-15*M 0

    2/3 1.99E+25 4.75E+25 9.18E+25 1.59E+26

    ������������Mw Mw=(logM 0-9.1)/1.5 6.1 6.4 6.6 6.7

    ������D m M 0=�DS 0.37 0.49 0.61 0.73

    ��������� Mpa M 0=16/(7�3/2)*��*S 3/2 2.31 2.31 2.31 2.31

    �������Tr s Tr=2.03*10-9*M 01/3 0.55 0.74 0.92 1.10

    ���������� �� ��� 5 5 5 5

    ������������Da m Da=2.4D��29� 0.88 1.18 1.47 1.76

    �������������M0a dyne�cm M 0a=�DaS a 1.05E+25 2.49E+25 4.85E+25 8.40E+25

    �������������a Mpa ��a=(S /S a )*�� 10.5 10.6 10.5 10.5

    �������S b km2 S b=S-S a 127.8 228.4 353.7 511.4

    �����������Db m M 0b= �DbS b 0.22 0.30 0.37 0.45

    ����������M 0b dyne�cm M 0b=M 0-M a 9.41E+24 2.25E+25 4.32E+25 7.53E+25

    ������������b Mpa ��b=(D b /W b )*(S a1/2/Da )*��a 1.25 1.25 1.24 1.25

    ������Vs km/s ��� 3.50 3.50 3.50 3.50

    ������Vr km/s Vr =0.72Vs 2.52 2.52 2.52 2.52

    ������ N/m2 � =� *Vs 2 3.3E+10 3.3E+10 3.3E+10 3.3E+10

    ��������� ������� �����

    ���� ����� ����

    ��������� 8km�� 6km�10km�12km��

    ���������� 5km 4km�7km�9km

    ���dip 60° 45°�75°

    �������Vm 5.17m/s ������2����0.5�

    �������Tr 0.74� 25) 1.6� 12)

    ������Vr Vs�72%(2520m/s) Vs�65%���85%

  • - 1266 -

    はほとんど変わらず、P G V の大きい断層近傍の地点については、むしろ背景領域を含めた方がP G V が小さくなっている。図1 0 に、背景領域ありの場合の速度波形の例として、断層線中心部(X=0,Y=0)の速度波形を示すが、図のように背景領域のみの場合とアスペリティのみの場合でPGV 発生時刻がずれるため、背景領域を考慮してもPGV は大きくならず、また波形自体もほとんど変わらない。このことから、断層線近傍では、PG V の算定の際に(あるいは地震動算定の際に)背景領域の影響は小さかった。以上の理由により、以後の検討では、背景領域を考慮せずに地震動を計算している。( 2 ) アスペリティサイズ アスペリティサイズを変化させた場合について論じる。なお、アスペリティサイズに連動して、すべり速度関数は図5 ( a ) のようにす

    べり速度振幅V m および立ち上がり時間T r が変化している。また、表2 のように地震モーメントやすべり量も変化している。 図1 1 に、断層線5 k m 以内の地点のP G V を、横軸に標準ケースのPGV、縦軸にアスペリティサイズを6km と1 2 k m に変化させたケースのP G V としてプロットしたものを示す。P G V は、アスペリティサイズが大きいほど( つまり地震規模が大きいほど) 大きくなる。 次に、図12 に断層線5km 以内の地点のTp を、PGV と同様に標準ケースと比較して示す。なお、比較のために岩盤および府庁地盤でのT pについても示している。また、F K S 地盤および府庁地盤については、地盤の卓越周期を点線で示している。岩盤上では、アスペリティサイズの増加に従ってTp は大きくなっている。一方FKS 地盤では、6kmケースを除いて、Tp は標準ケースで2~2.5 秒、10km および12km ケースで2.5~3 秒となっており、Tp は特定の周期に集中している。ここで、図1 3 に、アスペリティサイズを変えた各ケースについて、代表地点における岩盤上のフーリエスペクトル、堆積地盤上のフーリエスペクトル、堆積地盤上の擬似速度応答スペクトル(減衰5 % ) を重ねて示す。図のように、岩盤上のフーリエスペクトルの卓越周期はアスペリティサイズによって変化しており、また堆積地盤上のフーリエスペクトルの卓越周期は図 4 の伝達関数の卓越周期付近で大きくなっている。図1 3 によると、擬似速度応答スペクトルの卓越周期( つまり本研究で定義したパルス周期) は、堆積地盤上のフーリエスペクトルの卓越周期とは必ずしも一致していないが、2 ~ 3 次の卓越周期の範

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    PGV

    (�����������

    )(cm

    /s)

    PGV(��������)(cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    図 9  背景領域の有無によるP G V の変化

    図 1 1  アスペリティサイズを変えた時の P G V

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    0 5 10 15 20

    VEL

    (cm

    /s)

    Time(s)

    Y=0

    Y=5

    Y=-4

    Y=-3

    Y=-2

    Y=-1

    Y=4

    Y=1

    Y=2

    Y=3

    ���

    ���

    図 8  速度波形の例(F K S 地盤、X= 0 断面上の地点)

    0

    50

    100

    150

    200

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    PGVTp

    PGV

    (cm

    /s) Tp (s)

    Y(km)

    X=0

    図 7 X = 0 断面上のP G V と T p 分布

    -100

    -50

    0

    50

    100

    150

    4 5 6 7 8 9 10

    �����������������������

    Vel

    (cm

    /s)

    Time(s)

    X=0,Y=0

    図 1 0  背景領域の有無による速度波形の例

    図 1 2  アスペリティサイズを変えた時の T p(a)岩盤 (b)FKS 地盤 (c)府庁地盤

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    6km

    12km

    PGV(�����)(cm/s)

    PGV

    (cm

    /s)

    X=-5~5Y=-5~5

    1.5

    2

    2.5

    3

    3.5

    1.5 2 2.5 3 3.5

    6km10km12km

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    X=-5~5Y=-5~5

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    3.5

    2 2.5 3

    6km10km12km

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    ��

    ��

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    3.5

    4

    1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2

    6km10km12km

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    ��

    ��

    (a)PGV (b)Tp図 6 標準ケースの P G V と T p の分布

    X

    Y

    (cm/s) (s)

    囲に存在している。以上から、パルス周期はアスペリティサイズに応じた岩盤位置でのパルス周期と、堆積地盤の2 次や 3 次などの高次も含めた地盤の卓越周期によって決定されると考えられる。( 3 ) アスペリティ上端深さ・傾斜角の影響 アスペリティ上端深さ・傾斜角を変化させた時の影響について述べる。なお、ここでは、アスペリティ( 断層) の位置のみを変化させており、他のパラメータは変化していない。 まず、図14 にアスペリティ上端深さを4km と9k m に変化させたときの断層線5km 以内の地点のPGV を、図15 にはX=0 断面上のPGV 分布をそれぞれ示す。平均的には、上端深さが浅いほど( つまり、アスペリティが地表に近付くほど)P G V は大きくなるが、図1 5 のように地点によっては上端深さが深いほうがP G V が大きくなる。特に、断層線近傍では、上端深さの影響が大きく、深さ4km のケースでPGV が180cm/s 程度になる。 次に、傾斜角を変化させた場合について述べる。図1 6 にはX = 0 断

    面上のPGV 分布を示す。傾斜角が変わると、PGV が大きくなる位置が変化し、また高角であるほど断層線付近でP G V が大きくなり、またその範囲は狭くなる。これは、傾斜角が大きくなるほど放射特性係数が大きくなる方向に射出されたS V 波が地表面に到達する範囲が狭くなり、また断層が低角である場合に比べその範囲における震源からの波線距離が短くなり、エネルギーの集中と距離減衰効果の縮小が起きるためと考えられる。平均的には傾斜角を変えてもP G V はあまり変わらない。 なお、パルス周期は、アスペリティ上端深さや傾斜角を変えてもほとんど変化しなかった。つまり、アスペリティの位置が変化しても、パルス周期はほとんど変化しなかった。( 4 ) すべり速度関数 すべり速度関数( 速度振幅および立ち上がり時間) を変化させた場合について述べる。なお、各ケースともに最終滑り量を固定しているので、すべり速度関数は図5( b )、(c )のように変化している。 まず、図5(b)のようにすべり速度振幅Vm を標準ケース(Vm=5.17m/s)に対して、2 倍および0.5 倍と変化させる。図17 に、Vm を変えた時の断層線5km 以内の地点のPGV を標準ケースを比較して示す。図のように、V m が大きくするとP G V も大きくなるが、その変化はあまり大きくない。これは、解析の有効周期が1 . 2 5 秒に対してすべり関数の立

    0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    45�60�(��)75�

    PGV

    (cm

    /s)

    Y(km)0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    4km5km����7km9km

    PGV

    (cm

    /s)

    Y(km)

    図 1 5  上端深さを変えた時のX = 0 断面の P G V

    図 1 6 傾斜角を変えた時のX = 0 断面の P G V

    図 1 7  すべり速度振幅を変えた時の P G V

    図 1 8  すべり速度振幅を変えた時の T p

    1.5

    2

    2.5

    3

    1.5 2 2.5 3

    Vm(0.5�)Vm(2.0�)

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    X=-5~5Y=-5~5

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    PGV

    (Tr=

    1.6)

    (cm

    /s)

    PGV(�����) (cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    図 1 9  立ち上がり時間を変えた時の P G V

    1.5

    2

    2.5

    3

    1.5 2 2.5 3

    T p(Tr=

    1.6)

    Tp(�����) (s)

    X=-5~5Y=-5~5

    1.5

    2

    2.5

    3

    1.5 2 2.5 3

    Vr65%Vr85%

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    図 2 1  破壊伝播速度を変えた時の P G V

    図 2 0  立ち上がり時間を変えた時の T p

    図 2 2  破壊伝播速度を変えた時の T p

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    PGV

    (cm

    /s)

    PGV(�����) (cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    Vm2.0�

    Vm0.5�

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    0 50 100 150 200 250

    PGV

    (cm

    /s)

    PGV(�����) (cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    Vr85%

    Vr65%

    (a)FKS 地盤、6km (b)FKS 地盤、8km

    (c)FKS 地盤、10km (d)FKS 地盤、12km図 1 3  フーリエスペクトルと応答スペクトル

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    1 10

    �����������������������������������������

    pSv

    or F

    ourie

    rAm

    p. (c

    m/s

    )

    Period(s)

    6km���X=0,Y=0h=0.05

    0100200300400500600700

    1 10pSv

    or F

    ourie

    rAm

    p. (c

    m/s

    )

    Period(s)

    10km���X=0,Y=0h=0.05

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    1 10pSv

    or F

    ourie

    rAm

    p. (c

    m/s

    )

    Period(s)

    8km���X=0,Y=0

    h=0.05

    0100200300400500600700

    1 10pSv

    or F

    ourie

    rAm

    p. (c

    m/s

    )

    Period(s)

    12km���X=0,Y=0h=0.05

    図 1 4 上端深さを変えた時の P G V

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    4km

    X=-5~5Y=-5~5P

    GV

    (��

    4km

    )(cm

    /s)

    PGV(�����)(cm/s)0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    9km

    PGV

    (��

    9km

    )(cm

    /s)

    PGV(�����)(cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    (a)深さ 4km (b)深さ 9km

  • - 1267 -

    はほとんど変わらず、P G V の大きい断層近傍の地点については、むしろ背景領域を含めた方がP G V が小さくなっている。図1 0 に、背景領域ありの場合の速度波形の例として、断層線中心部(X=0,Y=0)の速度波形を示すが、図のように背景領域のみの場合とアスペリティのみの場合でPGV 発生時刻がずれるため、背景領域を考慮してもPGV は大きくならず、また波形自体もほとんど変わらない。このことから、断層線近傍では、PG V の算定の際に(あるいは地震動算定の際に)背景領域の影響は小さかった。以上の理由により、以後の検討では、背景領域を考慮せずに地震動を計算している。( 2 ) アスペリティサイズ アスペリティサイズを変化させた場合について論じる。なお、アスペリティサイズに連動して、すべり速度関数は図5 ( a ) のようにす

    べり速度振幅V m および立ち上がり時間T r が変化している。また、表2 のように地震モーメントやすべり量も変化している。 図1 1 に、断層線5 k m 以内の地点のP G V を、横軸に標準ケースのPGV、縦軸にアスペリティサイズを6km と1 2 k m に変化させたケースのP G V としてプロットしたものを示す。P G V は、アスペリティサイズが大きいほど( つまり地震規模が大きいほど) 大きくなる。 次に、図12 に断層線5km 以内の地点のTp を、PGV と同様に標準ケースと比較して示す。なお、比較のために岩盤および府庁地盤でのT pについても示している。また、F K S 地盤および府庁地盤については、地盤の卓越周期を点線で示している。岩盤上では、アスペリティサイズの増加に従ってTp は大きくなっている。一方FKS 地盤では、6kmケースを除いて、Tp は標準ケースで2~2.5 秒、10km および12km ケースで2.5~3 秒となっており、Tp は特定の周期に集中している。ここで、図1 3 に、アスペリティサイズを変えた各ケースについて、代表地点における岩盤上のフーリエスペクトル、堆積地盤上のフーリエスペクトル、堆積地盤上の擬似速度応答スペクトル(減衰5 % ) を重ねて示す。図のように、岩盤上のフーリエスペクトルの卓越周期はアスペリティサイズによって変化しており、また堆積地盤上のフーリエスペクトルの卓越周期は図 4 の伝達関数の卓越周期付近で大きくなっている。図1 3 によると、擬似速度応答スペクトルの卓越周期( つまり本研究で定義したパルス周期) は、堆積地盤上のフーリエスペクトルの卓越周期とは必ずしも一致していないが、2 ~ 3 次の卓越周期の範

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    PGV

    (�����������

    )(cm

    /s)

    PGV(��������)(cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    図 9  背景領域の有無によるP G V の変化

    図 1 1  アスペリティサイズを変えた時の P G V

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    0 5 10 15 20

    VEL

    (cm

    /s)

    Time(s)

    Y=0

    Y=5

    Y=-4

    Y=-3

    Y=-2

    Y=-1

    Y=4

    Y=1

    Y=2

    Y=3

    ���

    ���

    図 8  速度波形の例(F K S 地盤、X= 0 断面上の地点)

    0

    50

    100

    150

    200

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    PGVTp

    PGV

    (cm

    /s) Tp (s)

    Y(km)

    X=0

    図 7 X = 0 断面上のP G V と T p 分布

    -100

    -50

    0

    50

    100

    150

    4 5 6 7 8 9 10

    �����������������������

    Vel

    (cm

    /s)

    Time(s)

    X=0,Y=0

    図 1 0  背景領域の有無による速度波形の例

    図 1 2  アスペリティサイズを変えた時の T p(a)岩盤 (b)FKS 地盤 (c)府庁地盤

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    6km

    12km

    PGV(�����)(cm/s)

    PGV

    (cm

    /s)

    X=-5~5Y=-5~5

    1.5

    2

    2.5

    3

    3.5

    1.5 2 2.5 3 3.5

    6km10km12km

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    X=-5~5Y=-5~5

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    3.5

    2 2.5 3

    6km10km12km

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    ��

    ��

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    3.5

    4

    1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2

    6km10km12km

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    ��

    ��

    (a)PGV (b)Tp図 6 標準ケースの P G V と T p の分布

    X

    Y

    (cm/s) (s)

    囲に存在している。以上から、パルス周期はアスペリティサイズに応じた岩盤位置でのパルス周期と、堆積地盤の2 次や 3 次などの高次も含めた地盤の卓越周期によって決定されると考えられる。( 3 ) アスペリティ上端深さ・傾斜角の影響 アスペリティ上端深さ・傾斜角を変化させた時の影響について述べる。なお、ここでは、アスペリティ( 断層) の位置のみを変化させており、他のパラメータは変化していない。 まず、図14 にアスペリティ上端深さを4km と9k m に変化させたときの断層線5km 以内の地点のPGV を、図15 にはX=0 断面上のPGV 分布をそれぞれ示す。平均的には、上端深さが浅いほど( つまり、アスペリティが地表に近付くほど)P G V は大きくなるが、図1 5 のように地点によっては上端深さが深いほうがP G V が大きくなる。特に、断層線近傍では、上端深さの影響が大きく、深さ4km のケースでPGV が180cm/s 程度になる。 次に、傾斜角を変化させた場合について述べる。図1 6 にはX = 0 断

    面上のPGV 分布を示す。傾斜角が変わると、PGV が大きくなる位置が変化し、また高角であるほど断層線付近でP G V が大きくなり、またその範囲は狭くなる。これは、傾斜角が大きくなるほど放射特性係数が大きくなる方向に射出されたS V 波が地表面に到達する範囲が狭くなり、また断層が低角である場合に比べその範囲における震源からの波線距離が短くなり、エネルギーの集中と距離減衰効果の縮小が起きるためと考えられる。平均的には傾斜角を変えてもP G V はあまり変わらない。 なお、パルス周期は、アスペリティ上端深さや傾斜角を変えてもほとんど変化しなかった。つまり、アスペリティの位置が変化しても、パルス周期はほとんど変化しなかった。( 4 ) すべり速度関数 すべり速度関数( 速度振幅および立ち上がり時間) を変化させた場合について述べる。なお、各ケースともに最終滑り量を固定しているので、すべり速度関数は図5( b )、(c )のように変化している。 まず、図5(b)のようにすべり速度振幅Vm を標準ケース(Vm=5.17m/s)に対して、2 倍および0.5 倍と変化させる。図17 に、Vm を変えた時の断層線5km 以内の地点のPGV を標準ケースを比較して示す。図のように、V m が大きくするとP G V も大きくなるが、その変化はあまり大きくない。これは、解析の有効周期が1 . 2 5 秒に対してすべり関数の立

    0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    45�60�(��)75�

    PGV

    (cm

    /s)

    Y(km)0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    4km5km����7km9km

    PGV

    (cm

    /s)

    Y(km)

    図 1 5  上端深さを変えた時のX = 0 断面の P G V

    図 1 6 傾斜角を変えた時のX = 0 断面の P G V

    図 1 7  すべり速度振幅を変えた時の P G V

    図 1 8  すべり速度振幅を変えた時の T p

    1.5

    2

    2.5

    3

    1.5 2 2.5 3

    Vm(0.5�)Vm(2.0�)

    T p(s

    )Tp(�����) (s)

    X=-5~5Y=-5~5

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    PGV

    (Tr=

    1.6)

    (cm

    /s)

    PGV(�����) (cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    図 1 9  立ち上がり時間を変えた時の P G V

    1.5

    2

    2.5

    3

    1.5 2 2.5 3

    T p(Tr=

    1.6)

    Tp(�����) (s)

    X=-5~5Y=-5~5

    1.5

    2

    2.5

    3

    1.5 2 2.5 3

    Vr65%Vr85%

    T p(s

    )

    Tp(�����) (s)

    図 2 1  破壊伝播速度を変えた時の P G V

    図 2 0  立ち上がり時間を変えた時の T p

    図 2 2  破壊伝播速度を変えた時の T p

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    PGV

    (cm

    /s)

    PGV(�����) (cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    Vm2.0�

    Vm0.5�

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    0 50 100 150 200 250

    PGV

    (cm

    /s)

    PGV(�����) (cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    Vr85%

    Vr65%

    (a)FKS 地盤、6km (b)FKS 地盤、8km

    (c)FKS 地盤、10km (d)FKS 地盤、12km図 1 3  フーリエスペクトルと応答スペクトル

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    1 10

    �����������������������������������������

    pSv

    or F

    ourie

    rAm

    p. (c

    m/s

    )

    Period(s)

    6km���X=0,Y=0h=0.05

    0100200300400500600700

    1 10pSv

    or F

    ourie

    rAm

    p. (c

    m/s

    )

    Period(s)

    10km���X=0,Y=0h=0.05

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    1 10pSv

    or F

    ourie

    rAm

    p. (c

    m/s

    )

    Period(s)

    8km���X=0,Y=0

    h=0.05

    0100200300400500600700

    1 10pSv

    or F

    ourie

    rAm

    p. (c

    m/s

    )

    Period(s)

    12km���X=0,Y=0h=0.05

    図 1 4 上端深さを変えた時の P G V

    0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    4km

    X=-5~5Y=-5~5P

    GV

    (��

    4km

    )(cm

    /s)

    PGV(�����)(cm/s)0

    50

    100

    150

    200

    0 50 100 150 200

    9km

    PGV

    (��

    9km

    )(cm

    /s)

    PGV(�����)(cm/s)

    X=-5~5Y=-5~5

    (a)深さ 4km (b)深さ 9km

  • - 1268 -

    ち上がり時間が短いことなどにより、V m を大きくしても有効周期帯のフーリエ振幅に大きな差はなく、パルス周期付近の成分には影響が小さいためと考えられる。岩盤上では、既往の研究2 7 など)で指摘されているように、すべり速度振幅は地表の地震動特性に大きく影響するが、厚い堆積層上に立地する周期1 秒程度以上の構造物について考える場合には、すべり速度振幅の影響はあまり大きくないことになる。また、図18 にはすべり速度振幅を変えたときのTp を示すが、T p はすべり速度振幅を変えてもほとんど変化しない。 次に、立ち上がり時間を変化させる。図5 ( c ) のように、標準ケース(Tr=0.74 秒)に対して、Tr=1.6 秒と変化させる。なお、これはTr を地震本部による式15 ) rr VWT /5.0 �� で算定したものである。図1 9 にT r を変えた時の断層線付近のPG V を示す。Tr が大きいとPG V は小さい。また、図2 0 にはパルス周期の変化を示すが、T r が変化すると、パルス周期は1.7~2.7 秒の範囲でややばらつくものの、標準ケースと概ね同じである。( 5 )破壊伝播速度 V r 破壊伝播速度V r を変化させる。ここで、すべり速度関数の振幅V mは中村・宮武の式ではV r に依存するが、ここではV r の影響のみを抽出するために、V m は標準ケースのまま固定し、V r のみを変化させる。標準ケースのVr(Vs の72%)に対して、Vs の65% およびVs の85% と変

    化させる。 図21 および図22 に、Vr を変化させた時のPGV およびTp を示す。Vrが大きいほどP G V は大きく、T p はやや小さくなるという傾向にあった。つまり、V r によって、各点震源から放射された波の重なり具合が変わり、V r が大きいほど短時間に波のエネルギーが集中するのでP G V は大きくなり、T p は小さくなる。

    4 . 建物応答特性に及ぼす影響4 . 1  解析手法・解析モデル 建物階数N=10 ~50 を想定し、建物の階高h0 は4.0m、各階の質量m は一定で1.0(tonf・s2/m)とすれば、建物の高さはH=Nh0、総質量はM = N m となる。等価1 質点系せん断型モデル(図2 3 )の内部粘性減衰は初期剛性比例型とし、初期減衰定数h は0 . 0 2 とする。復元力特性は図2 3 のようなバイリニア型とする。降伏せん断力Q y は、降伏せん断力係数C y を、建物階数N と耐力を表すパラメータ γ を用いて次式によって与えることで設定する。

    yC N�� (1)一方、建物の 1 次固有モードが逆三角形分布になると仮定し、等価質量M e、等価高さH e は次式で与える。

    (2)� �� �HNNHe 312 �� (3)

    また、降伏変形角をRy(=1/150rad)とすれば、降伏せん断力Qy、降伏変位 δ y は次式で表される。

    MgCQ yy � (4)

    yey RH�� (5)上式より求まる初期剛性K = Q y/ δy を用いて固有周期T を計算すると、

    表 4  建物階数と固有周期

    図 2 4  ベースシヤー係数と固有周期

    図 2 3 解析モデル

    図 2 5 標準ケースの最大層間変形角 R m a x の分布(a)N=10 (b)N=20

    ����Me

    ����He

    Q

    �yey RH��

    MgCQ

    y

    y

    K

    K/100

    �=3

    �=5�� ���������� ����������

    10 1.40 1.0915 2.07 1.6120 2.74 2.12

    25 3.41 2.64

    30 4.08 3.1635 4.75 3.6840 5.42 4.2045 6.09 4.7250 6.76 5.23

    0

    0.01

    0.02

    0.03

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=10N=20N=30N=40N=50R max

    Y(km)

    �����X=0

    図 2 6 X = 0 断面上の最大層間変形角 R m a x の分布( 標準ケース) 図 2 7 X = 0 断面上の P G V とT / T p の分布(標準ケース)

    0

    1

    2

    3

    4

    0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=10N=20

    N=30N=40

    N=50

    PGV

    T/T p

    PGV(cm/s)

    Y(km)

    ��������

    0

    0.01

    0.02

    0.03

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=15N=25N=35N=45

    R max

    Y(km)

    �����X=0

    � �01.5 12 23

    ye R h N NMTK g

    � ���

    � � � (6)

    のようになる。参考のために、降伏せん断力係数C y( γ= 3 )と固有周期T との関係を図2 4 に示す。図中には、ビルディングレターに掲載された評定シートから、鋼構造高層建物の短期許容応力度設計用のベースシア係数C b と固有周期T との関係2 8 )を白丸で示し、さらに、許容応力度計算における1 次設計時の2 種地盤におけるR t C 0 曲線(C0=0.2)を実線(点線は2倍のC0=0.4)で示す。高層建物のCbはRtC0 曲線(C0=0.2)の概ね1 ~2 倍の範囲に分布しており、本論文で設定した解析モデルのC y は、一般の建物の設計用ベースシア係数を少し上回る程度となっている。また、表4 に階数と式( 6 )より算定される等価固有周期の関係を示す。概ね固有周期は階数に比例しており、1 0 階で1.4 秒、50 階で6.8 秒となっている。4 . 2  標準ケースでの建物応答 標準ケースでの建物応答について述べる。まず図2 5 に、建物階数N=10 とN=20 の最大層間変形角Rmax の面的分布を示す。また図26 には、X=0 断面上のRmax の分布を示す。N=10 の場合、断層線付近でRmaxが0.03 近くになるが、Rmax が0.01 を超える地点の範囲はN=20 に比べて小さい。一方N=20 では、断層線付近ではRmax は0.02 程度でありN=10に比べて小さいが、断層線から離れるとR m a x は N = 1 0 よりも大きくなっている。ここで図2 7 に、各建物階数の固有周期T を入力波のパルス周期Tp で無次元化したT/Tp とPGV のX=0 断面上の分布を示す。ま

    た図28 には、図8 に示した標準ケースのX=0,Y=0 地点の入力波の変位応答スペクトルを、横軸をパルス周期T p で無次元化して示す。図中には、N=10 およびN=20 の初期の固有周期と最大変形角となったときの等価固有周期をそれぞれT p で無次元化したものを示している。図28 のように、弾性応答を考えるとN=10 よりもN=20 の方が大きいが、塑性化により周期が伸びると、N = 1 0 では応答が大きくなるが、N=20 では応答が小さくなる。図27 のように、T/Tp はN=10 では0.6 程度であり、入力振幅の大きい断層線付近で特にR m a x が大きくなる。一方、N=20 ではT/Tp は1.2 程度であり、断層線付近では周期の伸びによりRma x がN = 1 0 よりも小さくなるが、入力振幅の小さい断層線から離れた地点では、N = 1 0 よりも大きなR ma x となっている。4 . 3  建物耐力の影響 4.2 節では、建物耐力(降伏せん断力係数)を(1)式で γ= 3 として算定した。ここでは、入力波は標準ケースのまま、γ= 5 とした場合(耐力上昇) について示す。γ= 5 としたときの階数を等価固有周期は表3に示している。なお、γ=5 の場合N=10 でT=1.09 秒となり、有効周期外となるため、ここではN = 1 5 以上の場合について述べる。 図29 に γ=5 とした場合のX=0 断面上のRmax 分布を、図30 にはT/TpとP G V の分布をそれぞれ示す。N = 1 5 では、耐力上昇により断層線付近では応答が大きくなり、断層線から離れた地点では応答が小さくなっている。N=15 では、耐力上昇によりT/Tp が約1.0 から約0.7 に変化しており、図2 8 に示したように塑性化による周期の伸びによって応答が大きくなった。N=30 では、T/Tpが約1.75 から2.0 に大きくなり、応答が小さくなっている。4 . 4  アスペリティサイズを変えたケース 断層パラメータを変化させた場合の例として、アスペリティサイズを1 2 k m 四方とした場合の建物応答について示す。なお、降伏せん断力係数は式(1)で γ=3 としたものを用いる。図31 にN=10,20 のRmax

    図 3 1 アスペリティサイズ 1 2 k m ケースの最大層間変形角 R m a x の分布(a)N=10 (b)N=20

    図 2 8  変位応答スペクトル

    0

    50

    100

    150

    0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

    N=10N=20

    S d�(cm)

    T/Tp

    X=0,Y=0Tp=2.2h=0.05

    ������

    ������

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=10N=20

    N=30N=40

    N=50

    PGV

    T/T p

    PGV(cm/s)

    Y(km)0

    0.01

    0.02

    0.03

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=10N=20

    N=30N=40

    N=50

    R max

    Y(km)

    図 2 9 X = 0 断面上の最大層間変形角Rmax の分布の比較(γ=3,5)

    図 3 0 X = 0 断面上の P G V とT/Tp の分布( γ=5 のケース)

    図 3 2 X = 0 断面上の最大層間変形角 R ma x の分布( 1 2 k m のケース)

    図 33 X=0 断面上の PGV と T/T pの分布( 1 2 k m のケース)

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=15N=20

    N=30N=40

    N=50

    PGVT/T p

    PGV(cm/s)

    Y(km)

    0

    0.01

    0.02

    0.03

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=15N=20N=30

    R max

    Y(km)

    ������������

  • - 1269 -

    ち上がり時間が短いことなどにより、V m を大きくしても有効周期帯のフーリエ振幅に大きな差はなく、パルス周期付近の成分には影響が小さいためと考えられる。岩盤上では、既往の研究2 7 など)で指摘されているように、すべり速度振幅は地表の地震動特性に大きく影響するが、厚い堆積層上に立地する周期1 秒程度以上の構造物について考える場合には、すべり速度振幅の影響はあまり大きくないことになる。また、図18 にはすべり速度振幅を変えたときのTp を示すが、T p はすべり速度振幅を変えてもほとんど変化しない。 次に、立ち上がり時間を変化させる。図5 ( c ) のように、標準ケース(Tr=0.74 秒)に対して、Tr=1.6 秒と変化させる。なお、これはTr を地震本部による式15 ) rr VWT /5.0 �� で算定したものである。図1 9 にT r を変えた時の断層線付近のPG V を示す。Tr が大きいとPG V は小さい。また、図2 0 にはパルス周期の変化を示すが、T r が変化すると、パルス周期は1.7~2.7 秒の範囲でややばらつくものの、標準ケースと概ね同じである。( 5 )破壊伝播速度 V r 破壊伝播速度V r を変化させる。ここで、すべり速度関数の振幅V mは中村・宮武の式ではV r に依存するが、ここではV r の影響のみを抽出するために、V m は標準ケースのまま固定し、V r のみを変化させる。標準ケースのVr(Vs の72%)に対して、Vs の65% およびVs の85% と変

    化させる。 図21 および図22 に、Vr を変化させた時のPGV およびTp を示す。Vrが大きいほどP G V は大きく、T p はやや小さくなるという傾向にあった。つまり、V r によって、各点震源から放射された波の重なり具合が変わり、V r が大きいほど短時間に波のエネルギーが集中するのでP G V は大きくなり、T p は小さくなる。

    4 . 建物応答特性に及ぼす影響4 . 1  解析手法・解析モデル 建物階数N=10 ~50 を想定し、建物の階高h0 は4.0m、各階の質量m は一定で1.0(tonf・s2/m)とすれば、建物の高さはH=Nh0、総質量はM = N m となる。等価1 質点系せん断型モデル(図2 3 )の内部粘性減衰は初期剛性比例型とし、初期減衰定数h は0 . 0 2 とする。復元力特性は図2 3 のようなバイリニア型とする。降伏せん断力Q y は、降伏せん断力係数C y を、建物階数N と耐力を表すパラメータ γ を用いて次式によって与えることで設定する。

    yC N�� (1)一方、建物の 1 次固有モードが逆三角形分布になると仮定し、等価質量M e、等価高さH e は次式で与える。

    (2)� �� �HNNHe 312 �� (3)

    また、降伏変形角をRy(=1/150rad)とすれば、降伏せん断力Qy、降伏変位 δ y は次式で表される。

    MgCQ yy � (4)

    yey RH�� (5)上式より求まる初期剛性K = Q y/ δy を用いて固有周期T を計算すると、

    表 4  建物階数と固有周期

    図 2 4  ベースシヤー係数と固有周期

    図 2 3 解析モデル

    図 2 5 標準ケースの最大層間変形角 R m a x の分布(a)N=10 (b)N=20

    ����Me

    ����He

    Q

    �yey RH��

    MgCQ

    y

    y

    K

    K/100

    �=3

    �=5�� ���������� ����������

    10 1.40 1.0915 2.07 1.6120 2.74 2.12

    25 3.41 2.64

    30 4.08 3.1635 4.75 3.6840 5.42 4.2045 6.09 4.7250 6.76 5.23

    0

    0.01

    0.02

    0.03

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=10N=20N=30N=40N=50R m

    ax

    Y(km)

    �����X=0

    図 2 6 X = 0 断面上の最大層間変形角 R m a x の分布( 標準ケース) 図 2 7 X = 0 断面上の P G V とT / T p の分布(標準ケース)

    0

    1

    2

    3

    4

    0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=10N=20

    N=30N=40

    N=50

    PGV

    T/T p

    PGV(cm/s)

    Y(km)

    ��������

    0

    0.01

    0.02

    0.03

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=15N=25N=35N=45

    R max

    Y(km)

    �����X=0

    � �01.5 12 23

    ye R h N NMTK g

    � ���

    � � � (6)

    のようになる。参考のために、降伏せん断力係数C y( γ= 3 )と固有周期T との関係を図2 4 に示す。図中には、ビルディングレターに掲載された評定シートから、鋼構造高層建物の短期許容応力度設計用のベースシア係数C b と固有周期T との関係2 8 )を白丸で示し、さらに、許容応力度計算における1 次設計時の2 種地盤におけるR t C 0 曲線(C0=0.2)を実線(点線は2倍のC0=0.4)で示す。高層建物のCbはRtC0 曲線(C0=0.2)の概ね1 ~2 倍の範囲に分布しており、本論文で設定した解析モデルのC y は、一般の建物の設計用ベースシア係数を少し上回る程度となっている。また、表4 に階数と式( 6 )より算定される等価固有周期の関係を示す。概ね固有周期は階数に比例しており、1 0 階で1.4 秒、50 階で6.8 秒となっている。4 . 2  標準ケースでの建物応答 標準ケースでの建物応答について述べる。まず図2 5 に、建物階数N=10 とN=20 の最大層間変形角Rmax の面的分布を示す。また図26 には、X=0 断面上のRmax の分布を示す。N=10 の場合、断層線付近でRmaxが0.03 近くになるが、Rmax が0.01 を超える地点の範囲はN=20 に比べて小さい。一方N=20 では、断層線付近ではRmax は0.02 程度でありN=10に比べて小さいが、断層線から離れるとR m a x は N = 1 0 よりも大きくなっている。ここで図2 7 に、各建物階数の固有周期T を入力波のパルス周期Tp で無次元化したT/Tp とPGV のX=0 断面上の分布を示す。ま

    た図28 には、図8 に示した標準ケースのX=0,Y=0 地点の入力波の変位応答スペクトルを、横軸をパルス周期T p で無次元化して示す。図中には、N=10 およびN=20 の初期の固有周期と最大変形角となったときの等価固有周期をそれぞれT p で無次元化したものを示している。図28 のように、弾性応答を考えるとN=10 よりもN=20 の方が大きいが、塑性化により周期が伸びると、N = 1 0 では応答が大きくなるが、N=20 では応答が小さくなる。図27 のように、T/Tp はN=10 では0.6 程度であり、入力振幅の大きい断層線付近で特にR m a x が大きくなる。一方、N=20 ではT/Tp は1.2 程度であり、断層線付近では周期の伸びによりRma x がN = 1 0 よりも小さくなるが、入力振幅の小さい断層線から離れた地点では、N = 1 0 よりも大きなR ma x となっている。4 . 3  建物耐力の影響 4.2 節では、建物耐力(降伏せん断力係数)を(1)式で γ= 3 として算定した。ここでは、入力波は標準ケースのまま、γ= 5 とした場合(耐力上昇) について示す。γ= 5 としたときの階数を等価固有周期は表3に示している。なお、γ=5 の場合N=10 でT=1.09 秒となり、有効周期外となるため、ここではN = 1 5 以上の場合について述べる。 図29 に γ=5 とした場合のX=0 断面上のRmax 分布を、図30 にはT/TpとP G V の分布をそれぞれ示す。N = 1 5 では、耐力上昇により断層線付近では応答が大きくなり、断層線から離れた地点では応答が小さくなっている。N=15 では、耐力上昇によりT/Tp が約1.0 から約0.7 に変化しており、図2 8 に示したように塑性化による周期の伸びによって応答が大きくなった。N=30 では、T/Tpが約1.75 から2.0 に大きくなり、応答が小さくなっている。4 . 4  アスペリティサイズを変えたケース 断層パラメータを変化させた場合の例として、アスペリティサイズを1 2 k m 四方とした場合の建物応答について示す。なお、降伏せん断力係数は式(1)で γ=3 としたものを用いる。図31 にN=10,20 のRmax

    図 3 1  アスペリティサイズ 1 2 k m ケースの最大層間変形角 R m a x の分布(a)N=10 (b)N=20

    図 2 8  変位応答スペクトル

    0

    50

    100

    150

    0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

    N=10N=20

    S d�(cm)

    T/Tp

    X=0,Y=0Tp=2.2h=0.05

    ������

    ������

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=10N=20

    N=30N=40

    N=50

    PGV

    T/T p

    PGV(cm/s)

    Y(km)0

    0.01

    0.02

    0.03

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=10N=20

    N=30N=40

    N=50

    R max

    Y(km)

    図 2 9  X = 0 断面上の最大層間変形角Rmax の分布の比較(γ=3,5)

    図 3 0 X = 0 断面上の P G V とT/Tp の分布( γ=5 のケース)

    図 3 2 X = 0 断面上の最大層間変形角 R ma x の分布( 1 2 k m のケース)

    図 33 X=0 断面上の PGV と T/T pの分布( 1 2 k m のケース)

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    0

    50

    100

    150

    200

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=15N=20

    N=30N=40

    N=50

    PGV

    T/T p

    PGV(cm/s)

    Y(km)

    0

    0.01

    0.02

    0.03

    -15 -10 -5 0 5 10 15

    N=15N=20N=30

    R max

    Y(km)

    ������������

  • - 1270 -

    の分布を示す。また図32 にはX=0 断面上のRmax 分布を、図33 にはX=0断面上のPGV とT/T p の分布をそれぞれ示す。N=10 では、断層線付近でR m a x が極端に大きくなるが、その範囲は断層線から数k m に限定されている。一方N=20 では、Rmax はN=10 ほど大きくはないが、Rmax が1/1 0 0 を超える地点の範囲は広くなっている。図32 を見ると、N=10ではT/Tpは0.5程度であるが、N=20ではT/Tpは1.0程度となっており、T/T p が1 よりも小さいN=10 では、入力振幅の大きい地点で特に応答が大きくなっている。  以上の考察より、次のことが言える。T/Tp によってRmax が大きい地点の範囲は変化する。T/Tp が0.5~1 の周期帯域にある場合には、Rmaxは断層線から数k m 以内の地点( 入力振幅の大きい地点) で特に大きくなる。これは図28 に示したように、T/Tp が0.5~1 の場合には塑性化により周期が伸びることで応答変位が大きくなるためである。

    5 . まとめ 本研究では、上町断層帯の地震を主たる対象として、3 次元差分法による強震動計算と等価1 自由度系による建物応答解析を行い、断層近傍の設計用地震荷重設定で考慮すべき断層パラメータおよび建物応答が大きくなる地点について考察した。 以下に得られた知見を示す。1)背景領域の考慮の有無は、本研究で対象とした周期1. 2 5 秒以上の周期帯では、断層線近傍のパルス性地震動のP G V やパルス周期および建物応答に及ぼす影響は小さい。

    2 )断層近傍のP G V には、アスペリティサイズ、アスペリティ上端深さ、立ち上がり時間、破壊伝播速度の影響が大きい。

    3 )地表面の地震動のパルス周期は、シングルアスペリティの場合、アスペリティから生成されるパルス周期と、堆積地盤の卓越周期により決定され、大阪府域の地下構造を考慮した本研究では2 ~3 秒程度であった。

    4 ) パルス性地震動の影響の大きい地点は、建物の固有周期T とパルス周期Tp との比T/Tp によって変化するが、特にT/Tp が0.5~1 の周期帯域にある場合には断層線から数k m 以内の地点で建物応答が大きくなる傾向にある。

    謝辞本研究の解析には、解析ソフトGM S 2 1 )を用いた。記して感謝の意を表する。

    参考文献1) 地震調査研究推進本部地震調査委員会:上町断層帯の長期評価について,http://www.jishin.go.jp/main/chousa/04mar_uemachi/index.htm, 2004年 (2010.12.1参照)

    2) 大阪市:大阪市土木・建築構造物震災対策技術検討会報告書, 1997.33) 大阪府:大阪府自然災害総合防災対策検討(地震被害想定)報告書, 2007.34) 産業技術総合研究所活断層研究センター:大阪湾周辺の地震動地図 地震動予測研究報告 暫定版, 2005.

    5) 宮武隆:断層近傍の強震動パルスの成因, 地震第2輯, 第51巻, 第2号,pp.161-170, 1998.

    6) Balak Alavi, Helmut Krawinkler : Behavior of moment-resistingframe structures subjected to near-fault groud motions, Earth-quake Engneering and Structural Dynamics, 33, pp.687-706, 2004.

    7) G. P. Mavroeidis, G. Dong and A. S. Papageorgiou : Near-faultground motions, and the response of elastic and inelastic single-degree-of -freedom (SDOF) systems, Earthquake Engneering and

    Structural Dynamics, 33, pp.1023 - 1049, 2004.8) 鈴木恭平, 川辺秀憲, 山田真澄, 林康裕:断層近傍のパルス性地震動特性を考慮した設計用応答スペクトル, 日本建築学会構造系論文集,Vol.75, No.647, pp.49-56, 2010.1.

    9) Paul G. Somerville : Magnitude Scaling of the Near Fault rupturedirectivity pulse, Physics of the Earth and Planetary Interiors,137, pp.201-212, 2003.

    10)George P. Mavroeidis and A. P. Papageorgiou : A mathimaticalrepresentation of near-fault ground motions, Bulletin of theSeismological Society of America, Vol.93, No.3, pp.1099-1131,2003.

    11)Jonathan D. Bray, Adrian Rodriguez-Marek : Characterization offorward-directivity ground motionsin the near-fault region, SoilDynamics and Earthquake Engineering 24, pp.815-828, 2004.4.

    12)Kamae, K., K. Irikura : Source Model of the 1995 Hyogo-ken NanbuEarthquake and Simulation of Near-Source Ground Motion, Bulle-tin of the Seismological Society of America, Vol.88, No.2,pp.400-412, 1998.

    13)Kamae, K., K. Irikura, A. Pitarka : A technique for simulatingstrong ground motion using hybrid Green's function, Bulletin ofthe Seismological Society of America, Vol.88, No.2, pp.357-367,1998.

    14)入倉孝次郎, 三宅弘恵 : シナリオ地震の強震動予測, 地学雑誌, 特集号「地震災害を考える-予測と対策」, No.110, pp.849-875, 2001.

    15)地震調査研究推進本部地震調査委員会:震源断層を特定した地震の強震動予測手法, http://www.jishin.go.jp/main/kyoshindo/08apr_kego/recipe.pdf (2010.12.1参照)

    16)宮腰研, PETUKHIN Anatoly, 長郁夫 : すべりの時空間的不均質性のモデル化, 地震災害軽減のための強震動予測マスターモデルに関する研究第3回シンポジウム論文集, pp.11-16, 2005.

    17)地震災害軽減のための強震動予測マスターモデルに関する研究 内陸地震予測グループ : 強震動予測マスターモデルの構築 - 上町断層による地震を想定した強震動予測, 地震災害軽減のための強震動予測マスターモデルに関する研究 第3回シンポジウム論文集, pp.173-178, 2005.

    18)渡辺基史, 藤原広行, 佐藤俊明, 石井透, 早川崇 : 断層破壊過程の複雑さが強震動予測結果に及ぼす影響と支配的パラメータの抽出 -2003年十勝沖地震に対する検討-, 地震 第2輯, 第60巻, pp.253-265, 2008.

    19)Robert W. Graves : Simulating seismic wave propagation in 3Delastic media using staggered-grid with non-uniform spacing,Bulletin of Seismological Society of America, 86, pp.1091-1106,1996.

    20)Aoi, S. and H. Fujiwara : 3-D finite difference method usingdiscontinuous grids, Bulletin of the Seismological Society ofAmerica, Vol.89, pp.918-930, 1999.

    21)青井真, 早川俊彦,藤原広行 : 地震動シミュレータ:GMS, 物理探査,Vol.57, pp.651-666, 2004.

    22)大阪府 : 大阪平野の地下構造調査成果報告書, 2005.23)関西地震観測研究協議会:http://www.ceorka.org/ (2010.12.1参照)24)中村洋光, 宮武隆 : 断層近傍強震動シミュレーションのためのすべり時間関数の近似式, 地震 第2輯, 第53巻, pp.1-9, 2000.

    25)Paul Somerville .et al : Characterizing crustal earthquake slipmodels for the prediction of strong ground motion, SeismologicalResearch Letters, Vol.70, pp.59-80, 1999.

    26)Robert J. Geller : Scaling relations for earthquake sourceparameters and magnitudes, Bulletin of Seismological Society ofAmerica, 66, No.5, pp.1501-1523, 1976.

    27)松島信一, 川瀬博:1995年兵庫県南部地震の複数アスペリティモデルの提案とそれによる強震動シミュレーション,日本建築学会構造系論文集No.534, pp.33-40, 2000.8.

    28)斉藤幸雄:設計者から見た入力地震動, 2004年度日本建築学会大会(北海道) 構造部門(振動) パネルディスカッション資料 強震動予測と設計用入力地震動,pp.50-61,2004.8.

    29)入倉孝次郎, 三宅弘恵, 岩田知孝, 釜江克宏, 川辺秀憲:将来の大地震による強震動を予測するためのレシピ、京都大学防災研究所年報, 第46号B, pp.105-120, 2003.

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    FULL-SCALE DYNAMIC TESTS OF TUNED VISCOUS MASS DAMPER WITH FORCE RESTRICTION MECHANISM AND ITS ANALYTICAL VERIFICATION

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    Hidenori KIDA , Yoshihito WATANABE , Shigeki NAKAMINAMI , Hisaya TANAKA Yoshifumi SUGIMURA , Kenji SAITO , Kohju IKAGO , and Norio INOUE

    The authors have proposed the tuned viscous mass damper system based on the fixed points theory, and have proved the validity of the theory and the analysis method through the vibration tests of the small scale test specimen. The testing program revealed that an increase in equivalent inertial mass of viscous mass damper and increase in input resulted in an excessive stresses in the supporting member, damper body and the primary structure connected to the damper. In this paper, authors built the rotation slipping mechanism into the main body of the full-scale tuned viscous mass damper with the spring member of 18,200kN/m and the equivalent inertial mass of 1,350ton, and tested the tuned viscous mass damper with the force restriction mechanism. Analysis parameters of the tuned viscous mass damper with the force restriction mechanism were evaluated accurately and the test results corresponded well with the analytical results. From the analysis results for a 1-story structure, it is shown that this restriction mechanism can effectively reduce the damper maximum force and the maximum response displacement is almost the same as the result obtained by a restriction-free damper.

    Keywords : Passive Control, Rotative Inertia, Tuned Viscous Mass Damper, Full-Scale Dynamic Tests, Damper force Restriction Mechanism

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    *1� ��������������� ���������� � � � � ��������������Structural Design Department, Aseismic Devices, CO., LTD., Dr. Eng. *2� ���������������������������������� � � � � ��������������Amenity Creation Engineering Division, THK CO., LTD. *3 ������������� ������� � � � Technical Department, Aseismic Devices, CO., LTD., M. Eng. *4 ������������������������� � � � Technical Department, Aseismic Devices, CO., LTD.�*5 ������������������� ������ Research and Development Headquarters, NTT Facilities, INC., M. Eng. *6 ������������������� ������� ����������������Design Headquarters, NTT Facilities, INC., Dr. Eng. *7 �������� ����������� � � � � � � � Associate Prof., Graduate School of Engineering, Tohoku University, Dr. Eng. *8� �������� �������� � � � � � � � � � Prof., Graduate School of Engineering, Tohoku University, Dr. Eng.

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    (2010年12月 9日原稿受理,2011年 3月29日採用決定)


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