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金融制度 - JBIC...BUKU1 BUKU2 BUKU3 BUKU4 全体 ( Total ) 1,690 37,720 商業銀行 (...

Date post: 26-Jan-2021
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17 金融制度 101 金融制度 金融機関(銀行) インドネシアの金融機関(銀行)は、商業銀行(国営銀行、民間外為商業銀行、民間非外為商 業銀行、地方開発銀行、外国銀行、合弁銀行)と地方銀行に大別される。両者の違いとして、地 方銀行は営業地域が限られることや、支店数や取扱商品に制限が課せられている点が挙げられる。 2019 8 月時点、インドネシアには、商業銀行が 111 行、地方銀行が 1,579 行存在する。金融機 関全体の総資産のうち商業銀行が全体の 98.3%を占めるなど、商業銀行は規模の面で地方銀行を 圧倒している(図表 17-1)。 商業銀行 111 行の内訳は、国営銀行 4 行、民間外為商業銀行 41 行、民間非外為商業銀行 20 行、 地方開発銀行 27 行、合弁銀行 11 行、外国銀行 8 行となっている。また、商業銀行は、コア資本 の規模別に 4 段階に分類されており、分類に応じた業務内容の制約がある。コア資本が 50 兆ルピ ア(約 35 億ドル)以上の商業銀行は制約が最も少なく、2019 8 月時点では 28 行ある。 図表 17-1 総資産における商業銀行業態別シェア (注)数値は 2019 8 (出所)OJK, “Indonesia Banking Statistics – August 2019” より作成 銀行数 支店数 1,000億以上 1兆未満 1兆以上 10兆未満 10兆以上 50兆未満 50兆以上 BUKU1 BUKU2 BUKU3 BUKU4 全体 ( Total ) 1,690 37,720 商業銀行 ( Commercial Banks ) 111 4 33 46 28 31,411 国営銀行 ( State Owned Banks ) 4 - - - 4 17,742 民間外為商業銀行 ( Foreign Ex change Commercial Banks ) 41 - 9 16 16 8,430 民間非外為商業銀行 ( Non-Foreign Ex change Commercial Banks ) 20 3 14 3 - 552 地方開発銀行 ( Regional Dev elopment Banks ) 27 - 8 16 3 4,335 合弁銀行 ( Joint Venture Banks ) 11 1 2 6 2 308 外国銀行 ( Foreign Owned Banks ) 8 - - 5 3 44 地方銀行 ( Rural Banks ) 1,579 6,309 コア資本の規模別銀行数(金額の単位は兆ルピア) 兆ルピア 構成比 兆ルピア 構成比 兆ルピア 構成比 全体 ( Total ) 8,388 100.0% 5,571 100.0% 5,910 100.0% 商業銀行 ( Commercial Banks ) 8,245 98.3% 5,465 98.1% 5,812 98.3% 国営銀行 ( State Owned Banks ) 3,376 40.2% 2,338 42.0% 2,422 41.0% 民間外為商業銀行 ( Foreign Ex change Commercial Banks ) 3,295 39.3% 2,169 38.9% 2,416 40.9% 民間非外為商業銀行 ( Non-Foreign Ex change Commercial Banks ) 112 1.3% 74 1.3% 81 1.4% 地方開発銀行 ( Regional Dev elopment Banks ) 699 8.3% 442 7.9% 558 9.4% 合弁銀行 ( Joint Venture Banks ) 311 3.7% 195 3.5% 163 2.8% 外国銀行 ( Foreign Owned Banks ) 451 5.4% 247 4.4% 171 2.9% 地方銀行 ( Rural Banks ) 143 1.7% 106 1.9% 98 1.7% 貸出残高 預金残高 総資産
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  • 第 17 章 金融制度

    101

    金融制度

    金融機関(銀行)

    インドネシアの金融機関(銀行)は、商業銀行(国営銀行、民間外為商業銀行、民間非外為商

    業銀行、地方開発銀行、外国銀行、合弁銀行)と地方銀行に大別される。両者の違いとして、地

    方銀行は営業地域が限られることや、支店数や取扱商品に制限が課せられている点が挙げられる。

    2019 年 8 月時点、インドネシアには、商業銀行が 111 行、地方銀行が 1,579 行存在する。金融機関全体の総資産のうち商業銀行が全体の 98.3%を占めるなど、商業銀行は規模の面で地方銀行を圧倒している(図表 17-1)。

    商業銀行 111 行の内訳は、国営銀行 4 行、民間外為商業銀行 41 行、民間非外為商業銀行 20 行、地方開発銀行 27 行、合弁銀行 11 行、外国銀行 8 行となっている。また、商業銀行は、コア資本の規模別に 4 段階に分類されており、分類に応じた業務内容の制約がある。コア資本が 50 兆ルピア(約 35 億ドル)以上の商業銀行は制約が最も少なく、2019 年 8 月時点では 28 行ある。

    図表 17-1 総資産における商業銀行業態別シェア

    (注)数値は 2019 年 8 月 (出所)OJK, “Indonesia Banking Statistics – August 2019” より作成

    銀行数 支店数

    1,000億以上

    1兆未満

    1兆以上

    10兆未満

    10兆以上

    50兆未満

    50兆以上

    BUKU1 BUKU2 BUKU3 BUKU4

    全体 ( Total ) 1,690 37,720

    商業銀行 ( Commercial Banks ) 111 4 33 46 28 31,411

    国営銀行 ( State Owned Banks ) 4 - - - 4 17,742

    民間外為商業銀行 ( Foreign Exchange Commercial Banks ) 41 - 9 16 16 8,430

    民間非外為商業銀行 ( Non-Foreign Exchange Commercial Banks ) 20 3 14 3 - 552

    地方開発銀行 ( Regional Development Banks ) 27 - 8 16 3 4,335

    合弁銀行 ( Joint Venture Banks ) 11 1 2 6 2 308

    外国銀行 ( Foreign Owned Banks ) 8 - - 5 3 44

    地方銀行 ( Rural Banks ) 1,579 6,309

    コア資本の規模別銀行数(金額の単位は兆ルピア)

    兆ルピア 構成比 兆ルピア 構成比 兆ルピア 構成比

    全体 ( Total ) 8,388 100.0% 5,571 100.0% 5,910 100.0%

    商業銀行 ( Commercial Banks ) 8,245 98.3% 5,465 98.1% 5,812 98.3%

    国営銀行 ( State Owned Banks ) 3,376 40.2% 2,338 42.0% 2,422 41.0%

    民間外為商業銀行 ( Foreign Exchange Commercial Banks ) 3,295 39.3% 2,169 38.9% 2,416 40.9%

    民間非外為商業銀行 ( Non-Foreign Exchange Commercial Banks ) 112 1.3% 74 1.3% 81 1.4%

    地方開発銀行 ( Regional Development Banks ) 699 8.3% 442 7.9% 558 9.4%

    合弁銀行 ( Joint Venture Banks ) 311 3.7% 195 3.5% 163 2.8%

    外国銀行 ( Foreign Owned Banks ) 451 5.4% 247 4.4% 171 2.9%

    地方銀行 ( Rural Banks ) 143 1.7% 106 1.9% 98 1.7%

    貸出残高 預金残高総資産

  • インドネシアの投資環境

    102

    中央銀行

    インドネシア中央銀行(Bank Indonesia:BI)は、1945 年のインドネシア憲法に基づき、政府から独立した組織として設立された。当初は金融(貨幣供給)、銀行、決済システムが主な担当分野

    であった。しかし、アジア通貨危機に見舞われたことで 1999 年に新中央銀行法が施行され、中央銀行の役割は自国通貨ルピアの価値安定となった。インドネシア・ルピアは 1970 年から 1978 年までは固定相場制を採り、1978 年から 1997 年の管理フロート制を経て、アジア通貨危機に見舞われた 1997 年 8 月以降、変動相場制に移行している。

    その後、2004 年の中央銀行法の改訂ではガバナンスの強化を、世界的な金融危機に直面した2008 年の改訂では、国内の銀行の回復力を強化するために、中央銀行による短期資金の供給等が規定されるなど、機能の強化が図られてきている。

    現在のインドネシア中央銀行は、通貨の発行、外国為替管理、金融機関の監督業務等を行い、

    公開市場操作や金利操作(政策金利の変更)、預金準備率操作を手段に金融政策を実施し、経済の

    安定成長が維持できるよう努めている。2005 年には金融政策のターゲットとして、それまでの貨幣供給量(ベースマネー)からインフレ・ターゲットに変更した。また、政策金利の指標レート

    は 2016 年 8 月まで 12 ヵ月の金融オペレーションを基準とする BI レートが用いられたが、市中金利水準からの乖離を踏まえ、7 日物リバースレポ金利へと変更された。尚、2019 年 10 月末時点での 7 日物リバースレポ金利誘導目標は 5.00%である(図表 17-2)。

    図表 17-2 政策金利と消費者物価(CPI)上昇率、コア消費者物価上昇率の推移

    (注 1)コアインフレ率は、基準年の変更のため 2014 年 1 月より算出。 (注 2)2016 年 8 月から BI レートは政策金利指標ではなくなったため、以後記載せず。 (出所)CEIC、Bank Indonesia 資料より作成

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    (暦年)

    BIレート 7日物リバースレポ金利 FASBIレート CPI CPI Core

  • 第 17 章 金融制度

    103

    商業銀行

    ①新規参入と淘汰の歴史

    1988 年、インドネシア政府は、競争環境の整備による効率的な資金配分の実現を目指す金融改革を実施した。この規制緩和により、1968 年以降厳しく規制されていた銀行の新設が解禁され、1989 年初めに 106 行だった銀行数は、アジア通貨危機前の 1997 年 7 月には 237 行に急増した。尚、銀行数が最大であったのは 1995 年 10 月の 241 行である。

    しかし、競争の激化による収益性の低下とアジア通貨危機により多くの銀行で不良債権が急増

    したため、政府は IMF の支援を受けて金融制度改革を進めた。具体的には 1998 年 1 月に「金融制度再建プログラム」を発表し、金融機関の再編(経営不振銀行の監視と資産管理を担当)を推

    進するインドネシア銀行再建庁(IBRA)を設立した。この IBRA は、監視下に置いた 54 行の営業停止・合併(1998 年 8 月)を断行し、民間銀行への公的資金の注入(1999 年 3 月)などの措置を講じ、2000 年 10 月には資本注入を完了した。尚、IBRA は 2004 年 2 月に解散し、接収した資産は新設される譲渡専門機関に移管された。また IBRA 解散時のインドネシアの銀行数は 138 行と、アジア通貨危機前に比べてほぼ 100 行減少した。

    ②最近のインドネシア銀行業界の再編

    近年は、邦銀が絡む銀行部門の合併・買収等もあり、銀行業界の淘汰・再編が進んでいる。

    2018 年 8 月には、三井住友銀行が、同行子会社のインドネシア三井住友銀行と、40%を出資している地場商業銀行バンク・タブンガン・ペンシウナン・ナショナル(PT Bank Tabungan Pensiunan Nasional Tbk:BTPN)との合併計画を発表し、翌 2019 年 2 月に BTPN を存続会社として合併した(PT Bank BTPN Tbk)。三井住友銀行の持ち株比率は合併当初は 97.34%だったが、同年 8 月に一部売却して 92.43%となった。

    また、三菱 UFJ 銀行は、2019 年 1 月、同行が 40%分の株式を保有するバンクダナモン(PT Bank Danamon Indonesia, Tbk)と、三菱 UFJ フィナンシャル・グループ傘下のアコムが 67.59%分の株式を保有するバンク・ヌサンタラ・パラヒャガン(PT. Bank Nusantara Parahyangan:BNP)との合併計画を発表し、同年 5 月にバンクダナモンを存続会社として合併した。三菱 UFJ 銀行の持ち株比率は 94.1%となった。

    2018 年 10 月、りそな銀行は、2018 年 10 月、インドネシア子会社りそなプルダニア銀行(PT Bank Resona Perdania)の株主として、横浜銀行と大同生命を加えることを発表した。これに伴い、りそなプルダニア銀行の株主構成は、りそな銀行が 48.44%(以前は 43.42%)、横浜銀行が 30.00%、大同生命が 14.90%となった。

    邦銀だけでなく、韓国系企業による地場銀行の買収、地場銀行同士の合併も進んでいる。イン

    ドネシア銀行協会では、「健全な競争を確保するため、国内の銀行数は 50~70 行程度が適切である」と述べており、今後も小規模銀行同士の合併や、大銀行による吸収・合併が進むものと予想

    される。

  • インドネシアの投資環境

    104

    ③総資産ランキングと邦銀の位置付け

    2019 年 8 月時点の商業銀行の総資産や貸出残高を比較すると、国営銀行 4 行(PT. Bank Rakyat Indonesia Persero:総資産 1 位、PT. Bank Mandiri Persero :同 2 位、PT. Bank Negara Indonesia Persero Tbk:同 4 位、PT. Bank Tabungan Negara Persero:同 5 位)がいずれも上位にあり、4 行合計で総資産は全体の 40.8%、貸出残高は同 43.2%を占める等、国営銀行の存在感は大きい(図表 17-3)。

    邦銀では、三菱 UFJ 銀行(外国銀行支店)の総資産が 165 兆ルピアと地場上位行に続き、2019年に MUFG フィナンシャル・グループが地場 2 行を合併させたバンクダナモンが 163 兆ルピア、みずほ銀行(合弁銀行)が 67 兆ルピア、りそな銀行(合弁銀行)が 17 兆ルピアとなっている。また、三井住友銀行の Bank BTPN については 2019 年 8 月時点のデータを入手できなかったが、合併時のプレスリリースに基づくと、2018年末時点での2行合算の総資産は189.9兆ルピアとなる。

    図表 17-3 主要商業銀行の勘定残高(2019 年 8 月末)

    (注)三菱 UFJ 銀行の表記は正しくは「MUFG Bank, Ltd.」であるが、ここでは出所に倣った表記で記載する (出所)CEIC より作成

    ④国営銀行

    国営銀行は、1968 年特別法に基づき政策金融機関として特定産業向け金融を担っていた。しかし、その後、業務としての実態は通常の商業銀行と差がなくなり、1992 年の新銀行法により各設置法が廃止され、現在は通常の銀行と同じ業務を行っている。現存する 4 行については、業務効率化と国際競争力向上の観点から、同一の持株会社への移管を通じた統合が検討されている。

    2019 年 8 月時点の支店数は 17,742 店と、インドネシア全体(37,720 店)の 5 割近くを占めている。

    銀行名 分類

    兆ルピア 構成比 兆ルピア 構成比

    1 PT Bank Rakyat Indonesia Persero (BRI) 国営銀行 1,221 14.8% 848 15.8% 2 PT Bank Mandiri Persero 国営銀行 1,066 12.9% 713 13.3% 3 PT Bank Central Asia Tbk (BCA) 民間外為銀行 867 10.5% 563 10.5% 4 PT Bank Negara Indonesia Persero Tbk (BNI) 国営銀行 770 9.3% 526 9.8% 5 PT Bank Tabungan Negara Persero (BTN) 国営銀行 316 3.8% 230 4.3% 6 PT Bank CIMB Niaga Tbk 民間外為銀行 264 3.2% 160 3.0% 7 PT Pan Indonesia Bank Tbk 民間外為銀行 193 2.3% 134 2.5% 8 PT Bank OCBC NISP Tbk 民間外為銀行 175 2.1% 116 2.2% 9 Maybank Indonesia 民間外為銀行 168 2.0% 92 1.7% 10 The Bank of Tokyo Mitsubitshi UFJ Ltd 外国銀行 165 2.0% 117 2.2% - PT Bank Danamon Indonesia Tbk (BDMN) 民間外為銀行 163 2.0% 99 1.8% - PT Bank Mizuho Indonesia 合弁銀行 67 0.8% 47 0.9% - PT Bank Resona Perdania 合弁銀行 17 0.2% 12 0.2%

    商業銀行合計 8,245 100.0% 5,375 100.0%

    総資産 貸出残高

  • 第 17 章 金融制度

    105

    ⑤民間商業銀行

    民間商業銀行は、1988 年 10 月の金融規制緩和以降、63 行から 166 行へと大幅に増加したが、アジア通貨危機後の IBRA 主導による再編・淘汰で 2005 年には 70 行へと大幅減少した。2019 年9 月時点では 61 行と、規制緩和前の水準に戻っている。民間商業銀行は、有力企業グループの経理機能から発展したものが多く、一部を除けば小規模な銀行が多い。尚、このうち小規模な 20 行については、外為取引が禁止されている(民間非外為商業銀行)。

    2019 年 8 月時点の民間商業銀行数は 61 行、支店数は 8,982 店。

    ⑥地方開発銀行

    地方開発銀行は、ほぼすべての州に設置され、地域経済の振興のための中小企業向け融資を主

    業務としている。かつては長期金融専門機関と位置づけられていたが、1992 年の新銀行法によって商業銀行に変更され、一般顧客からの預金も受け入れている。

    2019 年 8 月時点の地方開発銀行数は 27 行、支店数は 4,335 店。

    ⑦外国銀行支店

    インドネシアでは、外国銀行の支店に銀行免許を交付するにあたっては、全世界で総資産規模

    上位 200 行以内の銀行であること等の要件が求められる。新規の免許交付は長らく行われておらず、邦銀では三菱 UFJ 銀行が 1968 年に支店形態で進出している。

    2019 年 8 月時点、インドネシアに支店で進出している外国銀行は 8 行で、支店数は 44 店。

    ⑧合弁銀行

    1988 年の規制緩和によって地場銀行との合弁銀行設立などが認められたため、合弁銀行の設立が急増した。邦銀では、みずほ銀行、りそな銀行が同形態で進出している。

    2019 年 8 月時点の合弁銀行数は 11 行、支店数は 308 店。

    インドネシアの金融市場

    金融政策の変化と金利動向

    インドネシアの金融政策決定会合は、大幅な外部環境等の変化がある場合を除き、毎月中旬に

    開催される。インドネシア中央銀行は基本的に金利調節で物価の安定を図っており、政策金利は

    CPI 上昇率を上回るよう調整されている(図表 17-4)。CPI 上昇率(年率)のターゲットは 2015~2017年は 4.0%±1%に、2018~2019年は 3.5%±1%に、2020年は 3.0%±1%に定められている。

    政策金利の指標レートは、かつては中央銀行の貸出レート(BI レート)が用いられていたが、BI レートを参照した国内資金取引は限定的であり、市中金利への波及効果を期待しにくくなってきたことから、2016 年 8 月に 7 日物リバースレポ金利(当時 5.25%)へと変更された。

  • インドネシアの投資環境

    106

    7 日物リバースレポ金利は、物価動向が落ち着いていたことから 2017 年 9 月にかけて計 4 回、合計 1.00%ポイントの利下げが実施された。しかし、2018 年に入ると、米国の度重なる利上げに伴ってインドネシアからの資金が流出することを予防するため、インフレ率が低位安定する中、

    中央銀行は 5 月から 11 月までの僅か 6 ヵ月で計 5 回、合計 1.75%ポイントの利上げを行った。その後、2019 年には米国が利下げ局面に入ったことや、世界経済の減速感が高まっていることから、7 月から 10 月にかけて 4 ヵ月連続で各 0.25%ポイントの利下げを行っている。

    図表 17-4 政策金利指標と消費者物価上昇率の推移

    (出所)CEIC、Bank Indonesia 資料より作成

    金融市場の構造

    商業銀行の貸出金利や預金金利は、いずれも商業銀行が自由に設定している。基本は両金利と

    も政策金利の影響を受けるが、金利の変化幅や方向性は必ずしも政策金利のそれとは一致してお

    らず、特に貸出金利は他行との競争もあり、従前に比べて政策金利の変動の影響が現れにくく

    なっている。

    例えば、政策金利が 7 日物リバースレポ金利となった 2016 年 8 月から 2018 年 4 月までは政策金利の変動幅(▲1.00%)と同程度に、預金金利(商業銀行、3 ヵ月物、▲1.10%)と貸出金利(商業銀行、設備投資向け、▲1.12%)は低下している。しかし、利上げ局面となった同年 5 月から12 月までは政策金利が 1.75%分引き上げられたのに対し、預金金利の上昇分が 1.01%、貸出金利が同 0.08%と限定的だった。特に貸出金利の政策金利変動に対する感応度が低下している。このような状況の下、金融機関の利ザヤとなる貸出金利と預金金利の差は、2018 年後半から縮小基調にある。中央銀行統計に拠れば、足下、設備投資向け貸出金利と定期預金金利(3 ヵ月物)の差は約 3.5%と、2018 年半ばの約 4.5%から縮小している(図表 17-5)。

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    BIレート 7日物リバースレポ金利 消費者物価上昇率

  • 第 17 章 金融制度

    107

    図表 17-5 政策金利と貸出・預金金利の推移

    (出所)CEIC、Bank Indonesia より作成

    預金金利や貸出金利に対する政策金利の感応度が低下している一方で、社債利回りのベンチ

    マークとなる国債市場では、政策金利変動が反映されている。インドネシアでは、2005 年に 15年物国債、2006 年に 20 年物国債、2007 年に 30 年物国債が発行されたことで、市場では超長期に至るイールド・カーブが形成されている。図表 17-6 では、2019 年 9 月末時点のイールド・カーブと、2018 年 9 月末、2017 年 9 月末のそれぞれのイールド・カーブとを比較している。2019 年 9月時点のイールド・カーブの水準は、2018 年 9 月末と比べて政策金利が低下していることもあり、全般的に下方シフトしているものの、政策金利がより低かった 2017 年 9 月末と比べると、やや上方に位置している。

    債券の残存期間に分けてみると、残存期間が 10 年以下の債券よりも、同 10 年超の債券の方が利回りの変動幅が総じて小さい。長期債は欧米格付け会社がインドネシアの信用格付を引き上げ

    た影響で、全体的にイールド・カーブがフラット化する方向にある。信用格付については、2011年 12 月に Fitch がインドネシアの格付けを「BB+」から「BBB-」へ、Moody’s が「Ba1」から「Baa3」へ、2017 年 5 月に S&P が「BB+」から「BBB-」へと、いずれも投資適格に引き上げている。また各機関ともその後格付けを 1 ノッチずつ引き上げており、2019 年 10 月時点の格付けは Fitch と S&P が「BBB」、Moody’s が「Baa2」となっている。

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    BIレート 7日物リバースレポ金利 貸出金利(設備投資向け) 定期預金金利(3ヵ月物)

  • インドネシアの投資環境

    108

    図表 17-6 インドネシア国債のイールド・カーブ

    (出所)Bloomberg より作成

    資本市場

    インドネシアの資本市場の設立は古く、1912 年に同国最初の証券取引所(The Batavia Stock Exchange)がオランダ・東インド会社(The Dutch East Indies)によって設立された。この証券取引所は第一次世界大戦の影響で閉鎖され、同戦争終了後に一時再開されるが、第二次世界大戦に

    よって再び閉鎖された。

    第二次世界大戦後、1952 年に再び証券取引所が復活するが、当時の取引は株式の売買は活性化せず、インドネシア国債のみの売買に留まり、1988 年時点においても上場企業は 24 社に留まっていた。

    1988 年の銀行部門や資本市場の規制緩和を契機に外国人投資家の関心が高まるなか、インドネシアの上場企業数も 1989 年末には 56 社、翌 90 年末には 122 社へと増加に転じた。上場企業数が増加する一方、国内の証券取引所の統合も進み、1995 年には Indonesia Parael Bourse がスラバヤ証券取引所に合併され、そのスラバヤ証券取引所も 2007 年にはジャカルタ証券取引所に合併され、合併後の取引所名はインドネシア証券取引所に改められた。

    株式市場

    インドネシア証券取引所には株式、債券、株価指数先物、オプションなどが上場し、取引され

    ている。上場会社に民営化した国営企業が多いことや、時価総額や取引において上位銘柄への集

    中度が高い点がインドネシアの株式市場の特徴となっている。

    従来、インドネシアでは少数のファミリーが上場企業の株式を集中して保有していることから、

    海外投資家等より、ガバナンス面で透明性が低く、ディスクロージャーや少数株主保護が不十分

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    0 5 10 15 20 25 30

    (%)

    (残存期間)

    2017/9/29 2018/9/28 2019/9/30

  • 第 17 章 金融制度

    109

    であるとの指摘がされていた。このため、監督官庁 OJK(インドネシア金融サービス庁)やインドネシア証券取引所は、これらの解決を最優先の課題として取り組んでいる。

    2019 年 10 月末時点、インドネシア証券取引所に上場している銘柄の時価総額合計は約 7,200 兆ルピア(約 55 兆円)である。時価総額が最も大きい企業は、民間商業銀行最大手のバンク・セントラル・アジアで、時価総額は 775 兆ルピアと市場全体の約 1 割を占めている(図表 17-7)。また、国営銀行の上位 3 行が時価総額の上位 10 社に入るなど、全般的に銀行の時価総額比率は高い(バンク・ラヤット・インドネシア:第 2 位、バンク・マンディリ:第 5 位、バンク・ネガラ・インドネシア:第 9 位)。

    また、時価総額上位銘柄には、外資系企業が多い点も特徴的である。時価総額第 4 位のユニリーバ・インドネシア(334 兆ルピア)は欧州のパーソナルケア大手であるユニリーバ(持株比率:84.99%)、第 7 位のタバコのハンジャヤ・マンダラ・サンプルナは米フィリップモリス(同 92.50%)、第 12 位の食料品のチャルーン・ポーカパン・インドネシアは、タイの財閥企業であるチャルーン・ポーカパン(Charoen Pokphand、同 55.53%)のインドネシア子会社である。

    図表 17-7 時価総額ランキング

    (注 1) 2019 年 10 月 31 日時点 (注 2) 産業分類は Bloomberg の業種分類ベンチマーク(Industry Classification Benchmark:ICB)を基

    に作成 (出所)Bloomberg より作成

    株式市場の値動きを表す代表的指標として、ジャカルタ総合指数とジャカルタ LQ-45 種がある。前者はジャカルタ証券取引所に上場する全銘柄から構成される時価総額加重平均指数で、1982 年8 月 10 日を基準日とし、その日の時価総額を 100 として算出される。後者は同取引所で最も流動

    時価総額

    (兆ルピア) (累積)

    1 バンク・セントラル・アジア 銀行 775 10.8% 10.8% 2 バンク・ラヤット・インドネシア 銀行 519 7.2% 18.0% 3 テレコムニカシ・インドネシア 固定電話通信 407 5.7% 23.7% 4 ユニリーバ・インドネシア パーソナル用品 334 4.6% 28.3% 5 バンク・マンディリ 銀行 328 4.6% 32.9% 6 アストラ・インターナショナル 自動車 281 3.9% 36.8% 7 ハンジャヤ・マンダラ・サンプルナ タバコ 248 3.4% 40.2% 8 チャンドラ・アスリ・ペトロケミカル 化学 169 2.4% 42.6% 9 バンクネガラインドネシア(ペルセロ) 銀行 143 2.0% 44.6%

    10 インドフードCBPサクセス・マクムール 食料品 136 1.9% 46.5% 11 グダン・ガラム タバコ 108 1.5% 48.0% 12 チャルーン・ポーカパン・インドネシア 食料品 103 1.4% 49.4% 13 バリト・パシフィック 建設資材 85 1.2% 50.6% 14 ユナイテッド・トラクターズ エンジニアリング 81 1.1% 51.7% 15 セメン・インドネシア(ペルセロ) 建設資材 75 1.0% 52.8%

    合計(659銘柄) 7,188 100.0% 100.0%

    会社名 産業分類 構成比

  • インドネシアの投資環境

    110

    性が高い 45 銘柄から構成される時価総額加重平均指数である。上場銘柄全体の時価総額と売買高それぞれの 70%以上をカバーするよう銘柄が調整されている。後者は 1994 年 7 月 13 日を基準日とし、その日の時価総額を 100 として算出されている。よって、株式市場全体の値動きをみるには、ジャカルタ総合指数の方が適している。

    ジャカルタ総合指数の 1990 年以降の推移をみると、2003 年までは 500 ポイント前後で推移していたが、2003 年からは世界的な株高を反映して同指数も上昇に転じた。2008 年 1 月には一時2,838.48 ポイントと、2003 年 1 月の終値(388.44 ポイント)に比べ 5 年間で約 7 倍の水準に高騰した。その後、リーマン・ショックの影響を受けてジャカルタ総合指数も大幅に下落し、2008 年10 月には一時 1,089.34 ポイントまで低下した。

    しかし、内需主導の安定成長の期待が高いこともあり、インドネシア株式市場は、他の ASEAN諸国のそれと比較してリーマン・ショックからの回復は早かった。ジャカルタ総合指数は 2010 年にはリーマン・ショック前の高値を更新し、2019 年 10 月末のジャカルタ総合指数は 6,169.10 ポイントと、既にリーマン・ショック前の最高値の 2 倍を上回る水準となっている(図表 17-8)。

    図表 17-8 株価指数(ジャカルタ総合指数)の推移

    (注)1982 年 8 月 10 日を基準日とし、その日の時価総額を 100 として算出。 (出所)Bloomberg 資料より作成

    債券市場

    インドネシアの債券市場は年々拡大している。ルピア建ての債券(国債、中央政府債、社債)

    の発行残高は 2005 年末の 532 兆ルピアから 2018 年末には 2,838 兆ルピアと、当該 13 年間で市場規模は 5.3 倍、年率平均 13.4%のペースで拡大している。

    債券市場ではインドネシア国債のシェアが高い。インドネシア政府は 2002 年の国債法制定後、国債を定期的に発行している。ちなみに 2006 年からは個人向け国債を、2008 年にはシャリーア(イスラム法)国債も発行している。ルピア建て国債の平均償還年数をみると、10 年超の比率が

    0

    1,000

    2,000

    3,000

    4,000

    5,000

    6,000

    7,000

    90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

    (1982/8/10 = 100)

    (暦年)

  • 第 17 章 金融制度

    111

    徐々に上昇している。2005 年末時点での 10 年超の国債は全体の 31.4%だったが、2018 年末には40.9%へと上昇している。

    また、インドネシアでは外貨建て債券も多く発行されている。2018 年末時点の発行残高を米ドル建てでみると、ルピア建て国債が 1,690 億ドル、同社債が 290 億ドルに対し、外貨建て国債は750 億ドル、同社債は 440 億ドルとなっており、外貨建て債券は、国債ではルピア建ての 45%、社債では 1.5 倍の規模に相当している(図表 17-9)。

    図表 17-9 債券残高の推移

    (注)上図はルピア建て債券のみ。下図は外貨建て債券を含み、米ドル建てで表している。 (出所)Asian Bonds Online より作成

    400 419 478 526 582 641 724

    820 995

    1,210 1,462

    1,773 2,100

    2,368

    75 210 248

    180 260 203 123

    82 96

    97

    39

    105

    10

    58

    58 62

    79 73 88 115 147

    187

    218

    223

    250

    312

    387

    412

    0

    500

    1,000

    1,500

    2,000

    2,500

    3,000

    05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

    (兆ルピア)

    (暦年)

    社債

    中央銀行債

    国債

    48 70 77 63

    90 94 93 92 90 106 109

    139 156 169

    6

    7 8 7

    9 13 16 19 18 18 18

    23 29

    29

    4

    6 7

    11

    15 18 22

    27 33 36

    47

    59

    70 75

    10

    13 13

    12

    16 15 16

    21 26 30

    32

    29

    35

    44

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

    (10億ドル)

    (暦年)

    社債(外貨建て)

    国債(外貨建て)

    社債(ルピア建て)

    国債・中央銀行債(ルピア建て)

  • インドネシアの投資環境

    112

    イスラム金融

    ①イスラム金融とは

    イスラム教の教義(イスラム法=シャリーア)に則った金融取引は、総称してイスラム金融と

    呼ばれる。イスラム金融は、中東産油諸国を中心とした①原油高による石油収入の増加、②石油

    精製設備やインフラ建設などの新規プロジェクトへの投資資金需要の拡大、③2001 年の米国同時多発テロ事件以降の産油諸国への投資資金還流、④イスラム諸国におけるイスラム金融の制度確

    立・普及、⑤イスラム金融の国際的な金融サービス基準との整合性向上などを背景に、2000 年代以降拡大している。

    イスラム金融の特徴は、①金融取引に利子の受取・支払が含まれないこと、②取引相手などの

    当事者がイスラム教の教義に反する事業(賭博、武器、アルコール、豚肉など)に関わっていな

    いことなど、取引がイスラム教の教義に適っていることが挙げられる。イスラム教の教義に適う

    か否かは、イスラム金融サービスを提供する各金融機関に設置されているイスラム学者委員会

    (シャリーア・ボード)から事前に認定を受けることとなっている。

    イスラム金融機関が提供する金融商品は、一般の預金、保険、ローン、リース、貿易・プロ

    ジェクト金融、債券、投資ファンドに相当するものなど多岐にわたっている。また、利子の受取・

    支払に代わるものとして配当や手数料があり、運用利益を配当や手数料の形で預金者、投資家、

    金融機関などに還元している。

    <従来型金融とイスラム金融の主な違い>

    従来型金融(注) イスラム金融

    利息が支払われる 取引対象は金銭や証書 予め約定された元本と利息が支払金 金融機関は商取引には直接関与しない

    利益または賃料が支払われる 取引対象は実物資産 資金や実物資産から実際に発生した利益が支払金 金融機関は商取引に直接参加する

    (注)イスラム金融と対比した、一般的な金融の呼び方 (出所)イスラム金融検討会編著『イスラム金融』(日本経済新聞社、2008 年)

    ②イスラム金融の仕組み

    イスラム金融の代表的な取引形態として、(A)ムラーバハ、(B)ムラーバハ・スクーク、(C)ムダーラバ、(D)ムシャーラカについて、以下で説明する。

    (A)ムラーバハ

    ムラーバハとは、資金提供者(イスラム金融機関)が財需要者(顧客)の代理で商品を購入

    し、マージンを上乗せして転売する購買代行契約を指す。

    単純なムラーバハの場合、買手が購入したい商品・設備などの財を、イスラム金融機関がそ

    の売手からいったん購入して所有権を得た後、コストを上乗せして、買手に転売する。買手は

    支払猶予期間や分割払いなどの支払条件に基づき、銀行が売手から財を購入した価格に手数料

    を上乗せして全代金を支払う(=仕入代金+α)。特定の財を対象とした資金調達方法として、

    幅広く一般的に用いられる取引概念である(図表 17-10)。

  • 第 17 章 金融制度

    113

    図表 17-10 ムラーバハの仕組み

    (出所)経済産業省「通商白書 2007」

    (B)ムラーバハ・スクーク

    上記ムラーバハ方式を証券化した資金調達スキームが、ムラーバハ・スクークである。スクー

    クとはイスラミック・ボンド(イスラム債)と訳されることが多く、イスラム金融資本市場に

    おける代表的な商品である。

    スクークは投資や財の取引を伴う取引であり、不動産や事業から生じるキャッシュフローを、

    通常の債券のクーポンに相当するものとして投資家に配当が支払われる仕組みとなっている

    (図表 17-11)。よって、スクークは売買契約に伴う支払手段や投資事業の資金調達の手段として使用されている。スクーク保有者は、単なる担保資産の保有者ではなく、原契約の当事者と

    しての権利を有する。銀行による購入代金と銀行から最終購入者への売却代金の差額が、スクー

    クの配当原資となる。配当は毎期行われ、満期時には額面相当額が償還金として返還される。

    図表 17-11 ムラーバハ・スクークの仕組み

    (出所)経済産業省「通商白書 2007」

    (C)ムダーラバ

    ムダーラバとは、資金提供者が信頼できる事業家に資金を信託し、その事業家はその資金を

    運用するといった信託金融契約とみることができる(図表 17-12)。資金提供者は、収益配分比率にかかる約定に基づき、その提供した資金の運用から生じた利益を配当として得る。一方、

    運用で損失が生じた場合には、資金提供者がその損失をすべて被る。

    事業が不成功に終わった場合でも、事業家は自身に過失や違反のない限り、提供を受けた資

    金についての責任は問われない。また、資金提供者も、提供資金額の範囲内の責任までしか問

    われない。

    商品の売手

    ①仕入代金支払

    商品商品

    ②支払(仕入代金+α)

    商品の買手 イスラム金融機関

    住宅供給公社 イスラム金融機関

    ③住宅購入代金

    スクーク保有者

    住宅購入者

    ①スクーク発行 ②スクーク購入

    ④所有権 ⑧配当

    ⑥所有権 ⑦代金割賦支払⑤ムラーバハ契約

  • インドネシアの投資環境

    114

    図表 17-12 ムダーラバの仕組み

    (出所)経済産業省「通商白書 2007」

    (D)ムシャーラカ

    ムシャーラカとは、投資組合の一種で、出資者と事業家が共同出資により事業の共同経営を

    行い、生じた利益を契約時に決めた比率で分配するスキームである(図表 17-13)。

    ムダーラバと異なり、事業において損失が発生した場合においても出資比率または事前に合

    意された比率に応じてそれぞれがその損失を負担する。一方、出資者は共同経営者としておお

    むね出資比率に応じた発言権を持つ。

    図表 17-13 ムシャーラカの仕組み

    (出所)経済産業省「通商白書 2007」

    配当支払

    資金提供 投資

    利益

    商品の買手 事業家 投資活動(事業等)

    出資30% 出資70%

    配当支払 配当支払出資者(イスラム金融機関等)

    出資者(事業家等)

    共同事業(例) (例)

    第1章 概観(国土、民族、社会、歴史等)1. 正式国名2. 人口3. 国土4. 首都5. 気候6. 民族7. 言語8. 宗教9. 教育10. 通貨11. 歴史(1) 先史、古代から中世(2) イスラムの拡大とヨーロッパ人の到来(3) オランダ支配(1600年代~)(4) 日本の占領と独立(1940年代)(5) スカルノ時代(1950~65年)(6) スハルト時代(1965~98年)(7) 民主化移行の混乱期(1998~2004年)(8) ユドヨノ政権(2004~14年)(9) ジョコ政権(2014年~)

    第2章 政治・外交・軍事1. 政体2. 元首3. 首相4. 内閣5. 行政組織6. 地方行政制度7. 立法(1) 国民協議会(2) 国民議会(3) 地方代表議会

    8. 政党9. 司法10. 外交11. 国防

    第3章 経済概況1. 経済概観(1) インドネシア経済の歩み(2) 経済成長を牽引する民間消費と建設投資(3) 第2期ジョコ政権での優先課題

    2. 産業構造3. 貿易構造(1) 輸出・輸入・貿易収支の推移(2) 品目別輸出・輸入の動向(3) 輸出入の国別動向

    4. ASEANの中のインドネシア(1) ASEANの中で最大の規模を誇るインドネシア(2) ASEAN域内での貿易額の変化(3) 賃金コストで比較したインドネシアの位置付け

    第4章 直接投資受入動向1. 外国直接投資(FDI)受入動向2. 国別受入動向3. 業種別受入動向4. 日本からインドネシアへの直接投資

    第5章 日イ経済関係1. 日イの経済関係と貿易の概要2. インドネシアにおける日系企業3. 日・インドネシア経済連携協定

    第6章 外資導入政策と管轄官庁1. 管轄官庁2. 外資導入の概要3. 近年の主要な投資促進・優遇策(1) ワンストップサービス(PTSP)(2) 3時間許認可サービス(3) オンライン・シングル・サブミッション(OSS)の導入(4) 保税地域(Bonded Zone)と自由貿易地域(FTZ: Free Trade Zone)(5) 指定業種、政府指定の各地域の特定業種に対する優遇(6) 経済特区(SEZ)

    第7章 主要関連法規1. 会社法2. 投資法3. ネガティブリスト4. 税法5. 外国通貨に関する各法令6. 農業基本法7. 労働に関する法律8. 労使紛争解決法9. 汚職撲滅法10. 日・インドネシア経済連携協定

    第8章 投資形態1. 進出形態2. インドネシアの会社形態3. 会社再編・清算(1) 会社再編(2) 会社清算① 清算時の税務問題② 会社再編時の従業員への退職金支払い③ 清算時の従業員の解雇

    第9章 主要投資インセンティブ1. 輸入関税免除2. 税務優遇措置3. タックスホリデー(法人税減免措置)

    第10章 外資規制業種1. 外資参入規制(1) 外資の参入が禁止される分野① 外資・内資ともに参入が禁止される分野② 外資の参入が禁止される分野

    (2) 条件付きで外資が参入可能な分野

    2. 現地調達比率規制

    第11章 許認可・進出手続き・組織再編・M&A1. 株式会社の設立手続きと必要書類(1) 法人名称の予約(2) 設立証書作成、法務人権省への提出(3) 納税者番号(4) NIBの取得(5) 事業ライセンスの取得(6) 銀行口座開設及び資本金入金(7) 関連許認可の取得

    2. 組織再編・M&A(1) 組織再編・M&Aの概要(2) 買収(3) 事業譲渡(4) 合併

    3. その他の手続き(1) 資本財(設備・機械)、原材料の輸入関税免除申請(2) 外国人労働者雇用許可の取得

    第12章 税制1. 法人所得税2. 付加価値税3. 個人所得税4. 海外支払に対する源泉徴収課税5. 奢侈品販売税6. 物品税7. 印紙税8. 土地建物税9. その他地方税10. 日本・インドネシア租税条約11. 納税と申告期限12. 移転価格税制13. 税務上の問題点と留意点(1) 税務調査(2) 異議申立と税務裁判(3) 恣意的な税務行政(4) 移転価格税制を巡る問題

    第13章 用地取得1. 土地利用の概要2. 事業者権(HGU)3. 建設権(HGB)4. 利用権(HP)

    第14章 知的財産権1. 知的財産権保護の状況2. インドネシアで保護される知的財産権(1) 特許(2) 産業意匠(3) 商標(4) 著作権(5) 集積回路配置

    3. 日・インドネシア経済連携協定

    第15章 環境規制1. インドネシアの環境問題2. 環境保護の体制3. 環境保護の法体系4. 環境基準5. 環境影響評価6. 環境が問題となった事例

    第16章 貿易管理・為替管理1. 輸出入規制(1) 輸入規制① 輸入地域規制② 輸入品目規制③ 輸入業者登録④ インドネシア国家規格の遵守義務

    (2) 輸出規制① 輸出地域規制② 輸出品目規制③ 輸出許可④ インドネシア国家規格(SNI)遵守義務⑤ 輸出のための原産地証明の発行⑥ 輸出標準価格

    2. 関税制度3. 通関手続(1) 輸入通関手続き(2) 輸出通関手続き

    4. 為替制度5. 外国為替管理と外貨交換制度6. ルピア使用義務

    第17章 金融制度1. 金融機関(銀行)(1) 中央銀行(2) 商業銀行① 新規参入と淘汰の歴史② 最近のインドネシア銀行業界の再編③ 総資産ランキングと邦銀の位置付け④ 国営銀行⑤ 民間商業銀行⑥ 地方開発銀行⑦ 外国銀行支店⑧ 合弁銀行

    2. インドネシアの金融市場(1) 金融政策の変化と金利動向(2) 金融市場の構造

    3. 資本市場(1) 株式市場(2) 債券市場(3) イスラム金融① イスラム金融とは② イスラム金融の仕組み

    第18章 資金調達1. 日系企業の資金調達の現状2. 資金調達に係る規制(外部格付取得義務等)3. 商業銀行からの借入4. 株式・債券市場からの資金調達(1) 株式上場による資金調達(2) 社債の発行による資金調達

    第19章 労働事情1. 労働法の体系2. 労働市場と雇用情勢(1) インドネシアの労働市場(2) インドネシアの就業構造(3) インドネシアの雇用情勢

    3. 賃金(1) 賃金に関する法制度(2) 平均的な賃金水準(3) 日本企業の進出が多い主要州・県・市の最低賃金(4) 周辺諸国との賃金比較

    4. 雇用関係(1) 労働規制の概要(2) 従業員の採用(3) 従業員の解雇

    5. 労働条件(1) 雇用契約(2) 賃金表の作成と全従業員への通知義務(3) 宗教大祭手当(レバラン手当)(4) その他

    6. 社会保険7. 労働組合・労使紛争8. 労使紛争の種類9. 外国人就労規制と労働許可の取得(1) 労働法(2003年法律第13号)による規制(2) 外国人労働者雇用許可および暫定居住許可の取得

    第20章 物流・インフラ1. 主要な国際空港と港湾の位置2. 港湾3. 空港4. 道路(1) 概要(2) アジアハイウェイ

    5. 鉄道(1) 概要(2) ジャカルタ都市交通

    6. 電力(1) 電力概要(2) 需給状況(3) 工業団地での最近の電力事情の実態

    7. 水道8. ガス9. 通信(1) 電話① 固定電話② 携帯電話

    (2) 郵便・宅配(3) インターネット

    第21章 投資環境の優位性と留意点1. 進出先としての企業の見方(1) 進出先として注目を集めるインドネシア(2) インドネシアの有望理由と課題

    2. 投資先としての優位性(1) 国民所得の増加による巨大な国内市場(2) 政治・社会の安定性(3) FTA網を活用した無関税での輸出入

    3. 投資にあたっての留意点(1) 労働問題と賃金上昇(2) 法務・税務処理の難しさ(3) インフラの制約(4) 高度人材の確保難(5) 言語と宗教の問題(6) 日系社会と駐在生活

    第22章 主要産業の動向とFTAの影響1. インドネシアの主要産業2. 自動車(1) 自動車産業の歴史(2) 人気車種は「多目的車」から「低燃費小型車」に進むが、起爆剤としての効果は限定的(3) 日系完成車メーカーの存在感が大きいインドネシア自動車市場(4) 所得水準の向上より乗用車普及の加速が期待される

    3. バイク(1) 1993年の自由化以降、2011年にかけてバイク市場は急速に拡大(2) 日系4社で市場を占めるも、足下のバイク市場は弱含む(3) 地方部の購買力がカギを握る今後のバイク市場

    4. 食品(1) 食品加工業の市場規模とその推移(2) カテゴリー別にみたインドネシアの加工食品市場の変化(3) 「ハラル製品保証法」への対応が必要(4) 今後の見通し ~注目はアイスクリーム市場の伸び~

    5. 小売(1) 市場概況(2) 外資規制の緩和は道半ばだが、専門店業態にはプラス(3) 日系企業の進出状況(4) 今後の見通し

    6. 不動産(居住用住宅)(1) ジャカルタ首都圏で顕著な人口増加(2) 日系企業の最近の動き

    7. FTA、EPAの進捗状況

    第23章 最近のトピックス1. インドネシアの首都移転2. 米中貿易摩擦のインドネシアへの影響

    第24章 地域ごとの特徴1. インドネシアの地域分類2. 地域別の経済動向(1) 地域別にみたGDPの構成比(2) 地域別の産業構造の特徴(3) 地域別の実質GDP成長率の推移と特徴

    3. 地域別の労働人口と所得水準4. 賃金水準5. 外国投資が多い地域と工業団地分布6. 【参考】地域別気候

    第25章 地域編①:ジャカルタ、西ジャワ州1. 地域概要(1) 概要① インドネシア国内における経済的地位② 工業団地・日系企業進出動向

    (2) 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト① インフラ・物流② 労働事情③ 生活環境

    2. 主要工業団地

    第26章 地域編②:バンテン州1. 地域概要(1) 概要① インドネシアにおける経済的地位② 工業団地・日系企業進出動向③ インフラ・物流④ 労働事情⑤ 生活環境

    2. 主要工業団地

    第27章 地域編③:中部ジャワ州1. 地域概要(1) 概要① インドネシア国内における経済的地位② 工業団地・日系企業進出動向

    (2) 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト① インフラ・物流② 労働事情③ 生活環境

    2. 主要工業団地

    第28章 地域編④:東ジャワ州1. 地域概要(1) 概要① インドネシア国内における経済的地位② 工業団地・日系企業進出動向

    (2) 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト① インフラ・物流② 労働事情③ 生活環境

    2. 主要工業団地

    第29章 地域編⑤:バタム島1. 地域概要(1) 概要① インドネシア国内における経済的地位② 工業団地・日系企業進出動向

    (2) 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト① インフラ・物流② 労働事情③ 生活環境

    2. 主要工業団地

    第30章 地域編⑥:スマトラ1. 地域概要(1) 概要① インドネシア国内における経済的地位② 工業団地・日系企業進出動向

    (2) 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト① インフラ・物流② 労働事情③ 生活環境

    2. 主要工業団地

    第31章 地域編⑦:カリマンタン1. 地域概要(1) 概要① インドネシア国内における経済的地位② 工業団地・日系企業進出動向

    (2) 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト① インフラ・物流② 労働事情③ 生活環境

    2. 主要工業団地

    第32章 地域編⑧:スラウェシ、マルク・パプア1. 地域概要(1) 概要① インドネシア国内における経済的地位② 工業団地・日系企業進出動向

    (2) 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト① インフラ・物流② 労働事情③ 生活環境

    2. 主要工業団地

    付録1 進出企業へのアドバイス付録2 よくある質問(FAQ)(1) インドネシアへの進出を考えていますが、まず、どこから情報を入手すれば良いでしょうか?(2) インドネシア国民の多くがイスラム教徒だと思いますが、労務面で気を付けるべきことにはどのようなことがあるでしょうか?(3) インドネシアでは外資規制がよく変わると聞きますが、どの位の頻度で変わるのですか?(4) インドネシアの小売業での商慣行の特徴を教えてください。(5) インドネシアの生活環境(教育、医療、娯楽)を教えてください。(6) インドネシアの治安に関する情報はどこで入手できますか?

    付録3 日本国内での相談窓口付録4 インドネシア国内での相談窓口1. 投資行政機関2. 日本政府関連機関等3. 金融機関


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