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創造力テスト:n-gram を用いた拡散的思考力の定...

Date post: 23-May-2020
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DEIM Forum 2014 E2 - 1 創造力テスト:n-gram を用いた拡散的思考力の定量的評価 安政 駿 手塚 太郎 †筑波大学 図書館情報メディア研究科 305-8550 茨城県つくば市春日 1-2 ‡筑波大学 図書館情報メディア系 305-8550 茨城県つくば市春日 1-2 E-mail: [email protected], [email protected] あらまし 近年,デジタル機器の普及や技術の体系化により,一般の人々であってもアプリの開発や小説の執筆など創造的 な活動を行える環境が整っている.人々が自らの創造的な能力を定量的に評価する簡便な手法があれば,それを高めるための努 力に関してフィードバックを得ることができ,より効果的な訓練を行うことも可能になると考えられる.本研究では創造性のひ とつの重要な要素とされる拡散的思考力に着目し,それを定量的に評価する手法を提案する.その実装として,被験者に数値を 一定時間入力させ,その n-gram の偏り具合を求めることで拡散的思考力を推定する「創造力テスト」を提案する.実験の結果, 多くの被験者において同じパターンの数列が繰り返し入力されていることが明らかとなった.これによって拡散的思考は意識的 に行わなければ困難であり,訓練が必要であるという結果が示唆された. キーワード 創造性, 拡散的思考, n-gram, 発想支援 1. はじめに 近年まで創造するという行為は主に小説家や脚本 家,発明家といった一部の職種に就く人々のみが行っ ていた.一般の人々は仕事の中で組織として創造的活 動を行うことがあっても,個人的に活動を行うことは ほとんどなかった.しかし情報技術の発展と通信ネッ トワークの普及と共に動画や小説の投稿サイトが広く 使われるようになり,またアプリケーション開発の技 術等が体系化されることで,一般の人々であっても創 造的な活動を行う環境が整ってきている.これからの 時代においてはより多くの人々が芸術的作品や技術的 革新を生み出し,社会を発展させていくことが期待さ れる. 創造的思考において重要な要素とされているもの の一つとして,意図的な「拡散的思考」が挙げられる [2][7] .たとえば,Young らの研究において,発想とは 一つの新しい組み合わせを考え出すことであり,意識 下または無意識化で起こる組み合わせの作業が重要で あると述べられている [1] .拡散的思考とは,概念の組 み合わせをできるだけ多く試みることで思考の幅を拡 大することである.人の思考は既存の概念に制限され ることが多いため,自由な組み合わせを考え出すこと は容易ではない.本研究では,人の思考が組み合わせ 空間における狭い範囲のみを探索し,限られたパター ンのみを生み出す強い傾向を持っていることを実験に よって明らかにし,意図的な拡散的思考の重要性を示 す.また,拡散的思考が実践できている度合いを定量 的に評価する手法を提案する事で,その能力を高める ための訓練や環境選択などに役立てる可能性を示す. 人が拡散的思考を行う上で,いくつかの課題が存在 する.一つ目は概念の組み合わせは膨大な数存在する という点である.これはどのような問題(探索空間) に対し思考するかに依存するが,大きな問題ほどすべ ての組み合わせを見つけることは難しい.二つ目の問 題としては,同じ組み合わせを何度も確認してしまう という点が挙げられる.本研究では人間は同じパター ンを繰り返す傾向があることを実験によって示す.つ まり,人間は均等的に概念の探索を行うことができな いと言える.連続して探索を行うとき,経験に依存す るため他のものよりも出現が多いものも存在する.例 えばサッカー選手の名前を挙げるという課題が出た際 には,特定のチームや国籍などのカテゴリ毎に偏った 選手を多く上げるものと考えられる.組み合わせの数 が膨大な時,経験は重要な役割をはたしていると言え る.しかし,今まで全く経験したことないような探索 空間上では重複することのない思考である拡散的思考 を行う方が効率的であると考えられる.本研究では拡 散的思考を評価するためのシステムである“創造力テ スト”を実装し,拡散的思考の必要性と評価方法につ いて提案する. 2. 関連研究 2.1. 創造性の定義 創造性に対する考え方として Rhodes によって 4-Ps と呼ばれるモデルが提案されている [3] .こ の モ デ ル で は創造的な視点として,人々・プロセス・製品・環境 4 つを挙げている.創造的な人々の研究としては個 人の持つ能力や因子,経歴に焦点を当てている.また, 創造的なプロセスに関する研究としては創造的な問題 解決に関連する部分に焦点を当てている.創造的な製 品の研究は,創造的なプロセスの研究の結果により性 質を明らかにし,その測定値について述べられている.
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DEIM Forum 2014 E2 - 1

創造力テスト:n-gramを用いた拡散的思考力の定量的評価

安政 駿† 手塚 太郎‡

†筑波大学 図書館情報メディア研究科 〒305-8550 茨城県つくば市春日 1-2

‡筑波大学 図書館情報メディア系 〒305-8550 茨城県つくば市春日 1-2

E-mail: †[email protected], ‡[email protected]

あらまし 近年,デジタル機器の普及や技術の体系化により,一般の人々であってもアプリの開発や小説の執筆など創造的

な活動を行える環境が整っている.人々が自らの創造的な能力を定量的に評価する簡便な手法があれば,それを高めるための努

力に関してフィードバックを得ることができ,より効果的な訓練を行うことも可能になると考えられる.本研究では創造性のひ

とつの重要な要素とされる拡散的思考力に着目し,それを定量的に評価する手法を提案する.その実装として,被験者に数値を

一定時間入力させ,その n-gramの偏り具合を求めることで拡散的思考力を推定する「創造力テスト」を提案する.実験の結果,

多くの被験者において同じパターンの数列が繰り返し入力されていることが明らかとなった.これによって拡散的思考は意識的

に行わなければ困難であり,訓練が必要であるという結果が示唆された.

キーワード 創造性, 拡散的思考, n-gram, 発想支援

1. はじめに

近年まで創造するという行為は主に小説家や脚本

家,発明家といった一部の職種に就く人々のみが行っ

ていた.一般の人々は仕事の中で組織として創造的活

動を行うことがあっても,個人的に活動を行うことは

ほとんどなかった.しかし情報技術の発展と通信ネッ

トワークの普及と共に動画や小説の投稿サイトが広く

使われるようになり,またアプリケーション開発の技

術等が体系化されることで,一般の人々であっても創

造的な活動を行う環境が整ってきている.これからの

時代においてはより多くの人々が芸術的作品や技術的

革新を生み出し,社会を発展させていくことが期待さ

れる.

創造的思考において重要な要素とされているもの

の一つとして,意図的な「拡散的思考」が挙げられる

[2][7].たとえば,Young らの研究において,発想とは

一つの新しい組み合わせを考え出すことであり,意識

下または無意識化で起こる組み合わせの作業が重要で

あると述べられている [1].拡散的思考とは,概念の組

み合わせをできるだけ多く試みることで思考の幅を拡

大することである.人の思考は既存の概念に制限され

ることが多いため,自由な組み合わせを考え出すこと

は容易ではない.本研究では,人の思考が組み合わせ

空間における狭い範囲のみを探索し,限られたパター

ンのみを生み出す強い傾向を持っていることを実験に

よって明らかにし,意図的な拡散的思考の重要性を示

す.また,拡散的思考が実践できている度合いを定量

的に評価する手法を提案する事で,その能力を高める

ための訓練や環境選択などに役立てる可能性を示す.

人が拡散的思考を行う上で,いくつかの課題が存在

する.一つ目は概念の組み合わせは膨大な数存在する

という点である.これはどのような問題(探索空間)

に対し思考するかに依存するが,大きな問題ほどすべ

ての組み合わせを見つけることは難しい.二つ目の問

題としては,同じ組み合わせを何度も確認してしまう

という点が挙げられる.本研究では人間は同じパター

ンを繰り返す傾向があることを実験によって示す.つ

まり,人間は均等的に概念の探索を行うことができな

いと言える.連続して探索を行うとき,経験に依存す

るため他のものよりも出現が多いものも存在する.例

えばサッカー選手の名前を挙げるという課題が出た際

には,特定のチームや国籍などのカテゴリ毎に偏った

選手を多く上げるものと考えられる.組み合わせの数

が膨大な時,経験は重要な役割をはたしていると言え

る.しかし,今まで全く経験したことないような探索

空間上では重複することのない思考である拡散的思考

を行う方が効率的であると考えられる.本研究では拡

散的思考を評価するためのシステムである“創造力テ

スト”を実装し,拡散的思考の必要性と評価方法につ

いて提案する.

2. 関連研究

2.1. 創造性の定義

創造性に対する考え方として Rhodes によって 4-Ps

と呼ばれるモデルが提案されている [3].このモデルで

は創造的な視点として,人々・プロセス・製品・環境

の 4 つを挙げている.創造的な人々の研究としては個

人の持つ能力や因子,経歴に焦点を当てている.また,

創造的なプロセスに関する研究としては創造的な問題

解決に関連する部分に焦点を当てている.創造的な製

品の研究は,創造的なプロセスの研究の結果により性

質を明らかにし,その測定値について述べられている.

また,創造的な環境の研究は組織レベルに焦点が当て

られ,人間とその環境との関係を調査している.

一般的な創造性のパフォーマンスとしては,流暢性,

独創性,柔軟性の基準のいずれかが評価される [6].流

暢性は非冗長なアイデア,洞察力,問題解決力を指す.

また,独創性は発明されているアイデア,洞察力,問

題解決,または発明された製品を指す.柔軟性は,異

なる認知・知覚カテゴリで使用される.

2.2. TTCT

創 造 性 を テ ス ト す る こ と を 試 み た 研 究 と し て

Torrance らが行った研究がある [5].彼らは TTCT(ト

ーランス式創造性思考テスト)として様々なテストを

提案している.それらは主に学生を対象に創造性を測

定している.具体的には,「非言語課題」,「非言語的刺

激を用いる言語的課題」,「言語的刺激を用いる言語的

課題」の三つに関連したテストを作成し,各年代の学

生に対し実験を行っている.これらのテストを用いる

ことで,独創性,入念性(複雑性),貫徹性(終結性),

生産性,感受性,伝達性,活動性,好奇心,流動性,

柔軟性,発明性を測定することができる.このテスト

の問題点としては,評価に実験者の主観が入るものが

多いこと,一つの課題に時間がかかることが挙げられ

る.より短い時間で測ることができるテストを考え出

す必要がある.

3. 手法

本研究において提案する創造力テストでは拡散的

思考力を測ることを目的とし,被験者が数字の列を生

成した時に反復されるパターンの頻度を求める.反復

されるパターンとは「12312341234123」の中の「123」

のように,数字を並べたときに頻出する組み合わせを

指す.数字をランダムに生成させた時,現れる数字が

直前の数字と確率的に独立であることを 0 次マルコフ

性と呼ぶ.例えば完全に独立に数字を生成させたとす

ると,「1」の後に「2」が現れる確率は1 10⁄ である.

しかし,「1」の後に「2」がより頻繁に出現する場合,

その生成プロセスは 0 次マルコフ性を満たしていない.

本研究ではこのような傾向(非 0 次マルコフ性)が人

の拡散的思考力を妨げていると考える.また,より長

いパターンでも同じようなことがいえる.同じパター

ンを多く出すユーザであるほど,拡散的思考力は低い

と言える.どの程度の長さ(n-gram)のパターンが頻

出しているのかを明らかにすることで,被験者にどれ

だけ拡散的に思考する能力があるかを定量的に評価で

きる.また,この課題は拡散的思考に関してユーザが

自分自身を制御するためのフィードバック装置である

とも位置づけられる.

このような拡散的思考力を測る課題を「創造力テス

ト」と名付け実験を行った.

4. 創造力テスト

本研究では,マウスによって行うテストと音声で行

うテストの二つについて実験を行った.

4.1. マウスを使ったテスト

4.1.1. 実装

ユーザインターフェースは JavaScript,CSS を用い

て実装した.また,n-gram の分析やデータの保存には

Ruby を用いている.Web アプリケーションとして実装

した理由としては,今後ユーザの拡散的思考力を高め

る仕組みを作ることを目的としており,Web から自由

にアクセスできるアプリケーションとして提供するこ

とを想定しているためである.

4.1.2. 実験

Web ブラウザ上で動作するインターフェース (図 1)

を使用して実験を行った.経過時間はバーを用いて表

示している.0~9 の書かれた青いボタンを押すことで

数字が入力される.ボタン入力にすることにより,キ

ーボード入力のように意図しないボタンを反射的に押

してしまうことを防いだ.

図 1 入力インターフェース

被験者が自分のユーザ名を入力した後,0~9 の数字

の書かれた青いボタンのうちどれかを押すことで実験

が開始する.また,ユーザに対して「3 分間でできる

だけランダムに多くボタンを押す」ことを指示した.

実験後には図 2 のような結果を表示し,どれだけの偏

図 2 フィードバック(3-gram)

図 3 6-gram の例

りがあったかのフィードバックを行った.もっとも多

く出現したパターンは赤色,2 番目は緑色,3 番目は青

色で表示される.また,ユーザ自身が自分の結果を考

察するために 9-gram までを表示できるように作成し

た.ユーザは上部のボタンを選択することで n-gram の

n の値を決定できる.図 3 は 6-gram を分析した例であ

る.実験は大学生 8 人に対し行った.

4.1.3. 実験結果・考察

表 1,表 2 は本実験の結果である.「UserID」は被

験者の番号,「 n for n-gram」は n-gram における n,

「Subseq」は n-gram 分析の中でもっとも多く出現した

数列,「Freq」は出現頻度を示す.

表 1 n-gram の頻度(1)

User

ID

n for

n-gram

Subseq. Fr

eq.

1 1 5 82

1 2 23 18

1 3 123 8

1 4 5123 5

1 5 42685 2

1 6 123564 2

1 7 1235642 2

1 8 0

2 1 5 47

2 2 80 12

2 3 805 6

2 4 6805 4

2 5 68054 2

2 6 0

3 1 5 62

3 2 96 13

3 3 196 5

3 4 5196 3

3 5 63350 2

3 6 0

4 1 5 71

4 2 14 21

4 3 214 9

4 4 5214 4

4 5 14236 3

4 6 365980 2

4 7 0

5 1 5 50

5 2 74 15

5 3 741 9

5 4 2580 6

5 5 32580 4

5 6 325807 3

5 7 9632580 3

5 8 09632580 2

5 9 236987415 2

5 10 0

この結果から人間には同じパターンを繰り返す傾向

が強く存在することが示唆される.しかし,いくつか

の外部的要因も考えられる.例えば,人間は数字とい

うものに慣れ親しんでおり,「123」や「765」といった

連続した数字を想起しやすいという点である.この点

はボタンに配置する数字を記号などに置き換えること

により解消できる可能性がある.また,インターフェ

ースの影響を考慮に入れる必要がある.例えば,今回

の実験では被験者にはボタンを押すためにマウスを使

用させた.そのため,パターンが腕の動きに依存して

繰り返されている可能性がある.例えば,腕の円運動

に沿ったパターンが頻出している可能性がある.また,

「5」の数字がもっとも多く出現していることから,ボ

タンの配置に依存してしまっていることが考えられる.

このような外部的要因を分離し,さらに実験を行う必

要がある.そのため本研究では音声認識によるテスト

もあわせて行った.

表 2 n-gram の頻度(2)

User

ID

n for

n-gram

Subseq. Freq.

6 1 8 29

6 2 08 8

6 3 231 4

6 4 7089 3

6 5 70896 3

6 6 0

7 1 5 68

7 2 26 15

7 3 32 7

7 4 5708 3

7 5 64280 3

7 6 642809 3

7 7 0

8 1 5 33

8 2 53 10

8 3 435 4

8 4 5346 2

8 5 05127 2

8 6 127604 2

8 7 1276043 2

8 8 0

4.2. 音声によるテスト

4.2.1. 実験

音声によるテストを行うための音声認識システム

として,ドラゴンスピーチ 1を使用した.各被験者には

用意されているトレーニングスクリプトを読むことに

よりプロファイルを作成し,認識精度を向上させるこ

1 ドラゴンスピーチ

http://japan.nuance.com/dragonspeech/

とができる.プロファイルを作ったのち,ランダムに

配置された 50 個の数字を読んでもらうことにより認

識精度を測定した.その後,1 秒に 1 回ほどのペース

で思いついた数字を発声するという手順で実験を行っ

ている.

4.2.2. 結果・考察

表 3 は音声認識の精度を測定した表である.被験者

1,2 は女性であるため,音声認識ソフトによって想定

されている音域と異なり,認識精度が落ちた可能性が

ある.そのため今回の n-gram の分析は男性の結果に対

して行った.表 4 は実験の結果の表である.音声認識

の精度に問題がある中でも,マウスによるテストに比

べて,被験者 3 や 8 は長いパターンが表出している.

その中でももっとも多く出現した数字が被験者ごとに

異なっていることから,外部的要因をある程度分離で

きていると考えられる.創造力テストとして音声を使

うのは外部的要因を減らすために有効であると言える.

しかし,音声認識の精度が安定しないという問題があ

り,手軽に行うという目的は達成できない可能性があ

る.

表 3 音声認識の精度

User ID recognition rate

1 46%

2 56%

3 74%

4 66%

5 72%

6 80%

7 66%

8 88%

5. TTCT 実験

5.1. 概要

既存の実験と創造力テストとの関係性を調べるこ

とで創造力テストの有用性を明らかにすることを試み

た.本研究では TTCT の一つである「言語的刺激を用

いる言語的課題」の中から,「普通でない使用法」の課

題を行うことで,被験者の流動性,柔軟性,独創性を

測定することができる.

5.2. 実験

本研究では,ペットボトルに対する普通でない使用

法を 5 分間でできるだけ多くリストさせた.リスト化

された各事象を反応と呼ぶ.流動性の値としては,異

なった適切な反応の数を数えた.また,反応の中から

「加工して使う」,「入れ物として使う」,「組み合わせ

て使う」,「楽器として使う」,「遊びとして使う」,「そ

の他」の 6 つのカテゴリに分類することで範疇とした.

範疇の数を数えることで柔軟性を測定している.また,

その他に分類した反応を普通でない反応とし,独創性

の点数とした.

表 4 音声認識による n-gram 頻度

User

ID

n for

n-gram

Subseq. Freq

.

3 1 7 18

3 2 26 7

3 3 262 3

3 4 6297 2

3 5 62970 2

3 6 629701 2

3 7 6297015 2

3 8 62970152 2

3 9 629701526 2

3 10 6297015268 2

3 11 0

4 1 0 44

4 2 00 13

4 3 004 5

4 4 0040 4

4 5 340040 3

4 6 300406 2

4 7 0

5 1 9 20

5 2 89 8

5 3 790 4

5 4 7903 2

5 5 79035 2

5 6 0

6 1 2 16

6 2 21 6

6 3 998 3

6 4 1394 2

6 5 0

7 1 3 14

7 2 73 5

7 3 399 2

7 4 2346 2

7 5 23461 2

7 6 0

8 1 2 19

8 2 82 6

8 3 082 3

8 4 7438 2

8 5 74382 2

8 6 743829 2

8 7 7438297 2

8 8 74382976 2

8 9 743829760 2

8 10 7438297608 2

8 11 0

5.3. 実験結果・考察

表 5 は言語的刺激を用いる言語的課題を行った結

果とマウスを使った創造力テストで 2 回以上出現した

n-gram のうち,最長のものの長さである.結果を見る

と,独創性が低いユーザは n-gram が長くなる傾向がみ

られる.このことから,創造力テストにおいてユーザ

の独創性が測れる

表 5 TTCT の結果

User ID 流動性 柔軟性 独創性 n-gram

1 6 2 2 7

2 6 3 2 5

3 10 4 2 5

4 12 4 3 6

5 6 4 0 9

6 18 4 6 5

7 18 5 8 6

8 7 4 1 7

可能性が示唆される.独創性というのは人が他の人と

は違った考えを持てるかの指標であるので,これが高

いほど拡散的思考力が高いと言える.すなわち 2 回以

上出現する最長の n-gram が長いほど,拡散的思考力が

低いと言える.

6. まとめ

今回の結果に基づいて,我々はいくつかの創造力テ

ストの使用方法を提案する.一つ目に創造的なタスク

を行う人々のパフォーマンスを向上させるために使用

することが挙げられる.訓練を行う場合,自分のアク

ションに対しフィードバックを行う必要があり,創造

力テストは一つの指針として非常に有効であると考え

られる.

二つ目に,このテストは環境因子が創造的な活動の

パフォーマンスにどのように影響するかを測定するこ

とができる.今回行った言語的刺激を用いる言語的課

題の他にも TTCT の中には創造性のレベルを測定する

様々なテストがある.しかし,多くのテストは長い時

間がかかることや定性的な評価が必要である問題があ

る.創造力テストは実行時間が短いことや結果が定量

的であるという特徴がある.これらの特徴を活用する

ことで創造性に及ぼす環境因子の測定に関する研究に

有用であると期待している.

本研究では創造力テストを実装し,既存の TTCT に

よるテストを同時に行った.これにより,創造力テス

トを用いることで,拡散的思考力を測定できる可能性

が示唆できた.今後の研究課題としては,より詳細な

得点分布を作ることにより,ユーザにとってわかりや

すいフィードバックを行うことが挙げられる.ユーザ

にわかりやすい指標を作ることにより,ユーザ自身が

拡散的思考力を高める活動を行う際に利用できると考

えられる.

謝 辞

本研究は JSPS 科研費 21700121, 25280110,

25540159 の助成を受けたものです.

参 考 文 献 [1] James.W.Young, “アイデアのつくり方 ”, 今井茂雄

訳 , 阪急コミュニケーションズ , 1988

[2] Muller-Wienbergen, Felix, Oliver Muller, Stefan Seidel, and Jorg Becker. "Leaving the Beaten Tracks in Creative Work -A Design Theory for Systems that Support Convergent and Divergent Thinking", Journal of the Association for Information Systems 12, pp. 714-740, 2011.

[3] Rhodes, Mel. "An analysis of creativity." The Phi Delta Kappan 42, pp. 305-310, 1961.

[4] Taro Tezuka, Shun Yasumasa, and Fatemeh Azadi Naghsh, “A System Using n-grams for Visualizing the Human Tendency to Repeat the Same Patterns and the Difficulty of Divergent Thinking”, Proceedings of the 8th International Conference on Knowledge, Information and Creativity Support Systems, Krakow, Poland, 2013.

[5] Torrance.E.Paul,”創造性の教育 ”, 佐藤三郎訳 , 誠信書房 , 1966.

[6] Torrance, E. Paul. "The nature of creativity as manifest in its testing", The Nature of Creativity, pp. 43-75, 1988.

[7] Russ, Sandra W., and Julia A. Fiorelli. "Developmental approaches to creativity", in J.C. Kaufman and R.B. Sternberg (Eds.), The Cambridge Handbook of Creativity, pp. 233-249, 2010.


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