RDS/RFCC全体最適処理技術開発
2020年度 JPECフォーラム
2020年5月8日
出光興産株式会社
ー禁無断転載・複製 ©出光興産株式会社 2020ー
目次
1.背景・目的
2.開発計画2.1 全体(5年間)2.2 2019年度
3.2019年度の結果3.1 触媒グレーディング技術の開発3.2 RDSシステム技術の開発3.3 RFCC反応制御技術の開発
4.まとめ
1.背景・目的
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RDS/RFCC装置の最大活用・最大効率運転により石油の更なるノーブルユースを実現する
重質油(残油)
(1) 温度偏差改善のための触媒グレーディング技術の開発→ 高性能ガードシステム
による1年安定運転
脱硫重油
ガード触媒システム
(2) RFCC分解向上のためのRDSシステム技術の開発→ RFCCでの分解に適した
DSARの製造
重油脱硫装置(RDS)
重油流動接触分解装置(RFCC)
メイン触媒システム
(HDM+HDS)
製品得率増大
(ガソリン等)
分解残渣油
高硫黄重油低減
(3) DSAR性状に対応したRFCC反応制御技術の開発→ ・転化率向上
・製品硫黄分低減
DSARの分子組成でRDSとRFCCを連成し全体最適を実現する
残油(AR) RDS RFCC
高付加価値炭化水素
脱硫重油(DSAR)
1. 従来の経験に加えて分子レベルの反応メカニズムを考慮することで更なる効率運転を図る(ペトロリオミクス)
2. 極大メリットが得られるようにRDS/RFCCの触媒システムを選びそれぞれの運転を厳密操作する(全体最適処理技術)
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2.開発計画 2.1 全体(5年間)
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H28(2016)
H29(2017)
H30(2018)
R1(2019)
R2(2020)
RFCC選定
RDSシステム・反応条件のRFCC分解性への影響把握(MAT)
改良検討
有望触媒システムライフテスト
上記RDSシステムに適したRFCC反応評価
ベンチ基礎実験触媒システムコンセプト検討
RDS+RFCC組合せシステム
実機実証(性能評価)
候補触媒システム評価
製品S分布制御技術
運転条件触媒システムの影響確認
研究内容
(2) RFCC分解向上のためのRDS触媒システム技術の開発
(1) 温度偏差改善のための触媒グレーディング技術の開発
新規触媒サンプルバスケット⇒EOR性能評価
MICRO SIM / MACRO SIM SIM実証評価・MACRO SIM
MACRO SIM
(3) 最適DSAR性状に対応したRFCC反応制御技術の開発
RDS選定
触媒グレーディング評価
2.2 開発計画(2019年度)
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2019年度は実機運転により開発技術を実証する
(ガード、RDS、RFCC、各触媒システムの優位性を確認し、更なる全体最適化課題を抽出する)
年 月
項 目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
① 反応温度偏差改善のための 触媒グレーディング技術の開発
・従来システムの評価・新規システムの検証
② RFCC分解向上のための RDS触媒システム技術の開発
・新規触媒システムの装置導入・運転期間毎のパフォーマンス確認
③ DSAR性状に対応した RFCC反応制御技術の開発
・新規システムの装置導入・RDS/RFCC全体最適検証
2019年 2020年
過去データに基づく従来ガード触媒システムの性能解析
SOR評価
触媒メークアップ・平衡化
RDS温度偏差・RFCC液収率
搬入・充填
MOR評価 EOR評価
検証運転による新規システムの性能確認
添加剤との組み合わせ検討
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3.2019年度の結果 3.1 触媒グレーディング技術の開発
今年度の目標 • 昨年度、ミクロSIMによる解析結果を踏まえて
選定したガード触媒システムのパフォーマンスを、
実装置で確認する。
• その実装置運転データに基づいて、マクロSIMに
よる解析を行い、反応器内部の固化・偏流状
態を推定できるようにする。
今年度の結果
(ほぼ計画通り)
① 選定ガード触媒システムを含むRDS実装置運転を、
6月より実施し、⊿T、⊿Pとも問題無く、安定性を確
認できた。
② マクロSIM解析の準備として、SOR(運転の初期で
固化・偏流が無い状態)でのチューニングを完了した。
③ さらに、過去の運転実績に基づいて、EOR(運転の
終期)における固化状態と装置パフォーマンスの関
係を解析し、装置パフォーマンスから、反応器内部の
固化・偏流状態を推定できる目処を得た。
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マクロSIMによる解析準備:SOR状態でのチューニング
液分率の分布 温度分布
モデルのパラメータチューニングにより、SORの状態(液分率や温度の分布)を再現できた
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マクロSIMによる解析:EOR状態のシミュレーション
リング状の固化物 温度分布
過去実績(開放後の固化物観察結果)に基づきシミュレーションを行い、固化状態と装置パフォーマンス(温度、圧力、液分率の分布)の関係を解析した
• これまでの結果から、RDSでシビアに反応した深脱DSARがRFCCの分解反応性に優れ、1・2環アロマがFG収率の向上に寄与していることが分った
• しかし、単純にRDSを高過酷度運転すると、コークによる触媒の劣化が促進されて急速に活性が低下し、1年間の安定運転が達成できなくなる
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RDS触媒システムの開発方針
RFCC反応化学を踏まえた新規な開発コンセプト
•RFCCで分解反応に大きく寄与する軽質成分(1A、2A)は、RDSでシビアに水素化・脱硫を行う
•RFCCでコークとなり燃焼される重質成分(PA、As)は、 RDSではできるだけ反応させずにスルーして、RDS触媒のコーク劣化を回避する
ペトロリオミクスを活用し分子レベルで反応を制御する!
3.2 RDSシステム技術の開発
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3.2 RDSシステム技術の開発
今年度の目標 • 新たな開発コンセプトに基づいて、昨年度選定
した触媒システムのパフォーマンスを、実装置で
確認し、その優位性を検証する。
今年度の結果
(計画通り)
① 選定した触媒システムによるRDS実装置運転を、6
月より実施した。
② RDS装置は順調に稼働しており、全運転期間を通
じて運転データは良好なパフォーマンスを示した。
③ 運転データと併せて原料油・生成油のペトロリオミクス
解析結果により、開発コンセプトの実現性と優位性を
確認した。
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選定した触媒システムの実装置運転パフォーマンス
ほぼ全ての運転期間を通じて従来以上に触媒劣化を抑制できた
触媒劣化が進行すると同じ性状のDSARを製造するために平均反応温度(WAT)を上げる必要がある
+ 60
+ 50
+ 40
+ 30
+ 20
+ 10
BASE
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ペトロリオミクスを活用した成分レベルの水素化度合把握
触媒システムの開発コンセプトが実現されていることを、成分レベルでも確認できた
FCCでの分解に大きく寄与する軽質分(1環芳香族:1A)は成分のC/H(炭素/水素比)が低い方にシフトしており、RDSでより水素化されている。平均C/H:0.60(従来)→0.59(改良)
FCCではコークにしかならない重質分(アスファルテン:As)は成分のC/H(炭素/水素比)が高い方にシフトしており、RDSでの水素化が抑制されている。平均C/H:1.34(従来)→1.40(改良)
軽質分(1A) 重質分(As)
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3.3 RFCC反応制御技術の開発
• 従来不明であったDSARの分子サイズを詳細組成構造解析の結果から推定できる可能性がある。
RFCC触媒システムの開発方針
• DSARの分子サイズ分布にマッチした細孔径分布を有する触媒を選定する
ペトロリオミクスを活用し分子レベルで反応を制御する!
細孔径分布の評価方法は確立されている(N2吸着)
Sato et al., Sekiyu Gakkaishi,
Vol. 29, No. 1, 1986
重質油の分子サイズは従来は不明であった
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3.3 RFCC反応制御技術の開発
今年度の目標 • DSARの分子サイズに応じた細孔を有する触媒
の優位性を実装置の運転により検証する。
• 併せて耐メタル性を向上できる反応制御技術を
確立する。
今年度の結果
(計画通り)
① 触媒の細孔分布を、DSRCの主要な分子サイズに
合わせることで、RFCCの分解活性を向上した。
② 新触媒を工業製造して実装置へメイクアップし、十分
な置換率になった段階でパフォーマンスを確認して、
実装置での優位性を検証した。
(ボトム転化率向上)
③ 触媒マトリクスを工夫して耐メタル性を向上させたこと
により、DSARのメタルが増えてもコーク生成を抑制し
活性を維持できていることを確認した。
※ 運転上、再生塔温度をより低減することが望ましく、
更なる全体最適化を目指して、コーク低減に向けた
改良を次年度行う。
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分解活性の向上
RFCC触媒の細孔分布を、DSRCの主要な分子サイズ(100-250Å)に
合わせることで、分解活性を向上した
Base
+ 0.010
+ 0.008
+ 0.006
+ 0.004
+ 0.002
従来触媒 新触媒
100-250Å
細孔
容積
Base
+ 5
+ 4
+ 3
+ 2
+ 1
従来触媒 新触媒
転化
率(%
)
17
実装置平衡触媒の耐メタル性評価
耐メタル性の向上により、触媒に堆積したメタルが増加しても活性を維持できることを確認した
4.まとめ
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# 項目 目標 達度
1 反応温度偏差改善のための
触媒グレーディング技術の開発
• ミクロSIMを使って選定したガード触媒のRDS
実運転を行い、その安定性を確認した。
• 運転実績を踏まえたマクロSIM解析を行い、装
置パフォーマンスから反応器内部の固化・偏流
状態を推定できる目処を得た。
100%
2 RFCC分解向上のための
RDS触媒システム技術の開発
• 新規な開発コンセプトに基づいて選定したRDS
触媒システムによる装置実運転を行い、良好な
パフォーマンスを得てその優位性を検証した。
• 原料油・生成油のペトロリオミクス解析により、
開発コンセプトの実現性を確認した。
100%
3 最適DSAR性状に対応した
RFCC反応制御技術の開発
• DSARのペトロリオミクス解析結果に基づいて選
定したRFCC触媒の実装置運転を行い、高い
分解活性を確認した。
• 更なる全体最適の課題として、再生塔温度低
減のためRFCCにおけるコーク低減を目指す。
100%
2020年度計画
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2020年度はRFCC改良システムを実機実証すると共に全体を総括する
年 月
項 目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
① 反応温度偏差改善のための 触媒グレーディング技術の開発
・検証運転の実績評価・更なる改良のための方針立案
② RFCC分解向上のための RDS触媒システム技術の開発
・検証運転の実績評価・更なる改良のための方針立案
③ DSAR性状に対応した RFCC反応制御技術の開発
・改良システムの装置導入・更なる改良のための方針立案
2020年 2021年
検証運転データとシミュレーション結果の比較による詳細パフォーマンス解析
今後の課題と対策の整理
原料油と生成油の詳細組成構造解析による反応活性と劣化挙動の見極め
今後の課題と対策の整理
触媒メークアップ・平準化
今後の課題と対策の整理
実機パフォーマンス評価
本研究は経済産業省・資源エネルギー庁の補助事業として実施されました。ここに記して、謝意を表します。